出来高とは?

出来高は、株式の人気度を示す指標で、売買を行う際の参考になるものです。この記事では出来高の見方や活用方法について詳しくご説明します。

出来高とは?

出来高とは?

出来高とは?

出来高は、株式の人気度を示しており、売買を行う際に参考になる指標です。出来高は通常、日本を代表する有名銘柄が集まる東京証券取引所1部がもっとも多くなります。
逆に、出来高が少ない株式は「流動性リスク」が高いと言えるため注意が必要です。この流動性リスクとは、売買が極端に少ない銘柄を購入や換金しようと思ったとき、希望した価格で購入・売却できない可能性のあるリスクのことで、市場に出回る株式の絶対量や取引量が少なく、人気薄の状態にある銘柄に起こります。出来高と株価は非常に関係が深く、常に両者の動きに注目する必要があります。

出来高の変動要因

出来高の変動要因

出来高の変動要因はさまざまですが、主な理由は下記の3つになります。

  • 業績関連の発表
  • 資本関係など事業の成長に関する発表
  • 上場に関する発表

つまり、「その企業に注目が集まる」と出来高は増すと言えるでしょう。上記のような発表は「適時開示」と呼ばれ、企業は適時、適切な発表をすることが義務付けられています。

以前は、証券会社に問い合わせて確認するのが一般的でしたが、最近はインターネットで簡単に適時開示について調べることができます。ご自身が気になる企業については、しっかり確認するようにしましょう。以下に参考として、東証一部上場企業の出来高上位10社をご紹介します。

東証一部上場企業の出来高上位10社

また、出来高10位占有率というその日の出来高の上位10社が、株式市場全体の取引のうちどの程度シェアを占めたかを示す指標があります。集中度が高い(占有率が高い)ときは、物色対象がはっきりしており、低い(占有率が低い)ときは物色対象が分散します。焦点が定まらない状況であることがわかるので、こちらにも注目するようにしましょう。参考までに、東証全体の出来高上位10社もまとめておきました。

東証全体の出来高上位10社

東証一部の銘柄が出来高上位をほぼ占めており、1位の日経ダブルインバース上場投信に関しては、短時間で売買をする投資家が多いETFなので出来高が多くなりました。また、東証一部の有名銘柄以外でも投機の対象になっている場合、東証二部やマザーズ、ジャスダックに上場されている銘柄でも大きな出来高を作ることがあります。ちなみに投機とは、短期的な価格変動から利益を得ようとする行為のことです。

出来高の見方と株価との関係

出来高の見方と株価との関係

投資家の動きは出来高に反映されるため、出来高分析は株価予測に重要です。相場別の出来高について見ていきましょう。

上げ相場での出来高

銘柄の注目度が増加し、投資家の買い需要が高まっている状態です。上昇トレンドが続いているとき、さらに株価が上昇するだろうと考えている人が多いと、出来高が多くなり株価はさらに上昇します。また、下落トレンドのときでも「もうそろそろ底だろう。これ以上下がるのは考えづらい」と考える人が増えると、その銘柄を購入する人が増えるので出来高が増え、株価は上昇する傾向にあります。

下げ相場での出来高

一般的に下げ相場のときの出来高は銘柄の注目度が減り、投資家の買い需要が低下していることを意味しているので、出来高は少なくなる傾向にあります。出来高が減るタイミングは、業績が予想以上に悪かったときや成長性に鈍りが出たとき、上場廃止や下位の証券取引所に市場変更になったときなどです。

出来高が株価に先行する場合

一般的に出来高は、株価に先行する場合が多いでしょう。これは出来高が増え、取引が活発になると株価が上昇しやすくなるからです。好業績やM&Aなどの好材料が発表されると出来高が急増し、その後に大きく株価が上昇することはよくあります。

出来高が少なくても株価が上昇することも…

出来高と株価には相関関係がありますが、出来高が減っても株価が上昇する銘柄もあります。出来高が少なくても株価が上昇する主なパターンは、材料待ちのケースです。

出来高が少ない銘柄の場合、そもそも売買をする人がいないのでまばらに株価が動いて、1日の出来高が数百や数千くらいしかない銘柄もよくあります。基本的に、出来高が少ない銘柄は少しの売買でも、株価は大きく上下するのが特徴です。株価の動きに方向性はありませんが、直近で大きな材料を控えている場合はトレンドが出ることもあります。

トレンドが出始めたときは気づいている人が少ないため、徐々に株価が上がっても出来高は少ないものです。しかし、トレンドに投資家が気づき始めると出来高が大きくなり、株価が一気に上昇することがあります。このように、直近に大きな材料を控えている場合、出来高が少なくても株価が上昇することがあるのです。

出来高の株価予想への活用方法

出来高の株価予想への活用方法

出来高は、よく株価予想にも使われます。株価予想を正確に行えれば、株式投資で大きな利益が狙えると考えられます。そのため、出来高を利用した株価予想の方法については、しっかり理解しておいてください。

出来高の株価増加率を分析

出来高は、銘柄の人気を測るのに最適です。出来高が多くなってきた銘柄は、投資家から注目されている銘柄です。なぜ出来高が上がっているかを分析することで、投資戦略を立てることができます。
例えば、ビジネスモデルに着目されている場合、同じようなビジネスモデルを持つ企業が注目される可能性があります。そのような企業にいち早く投資できれば、大きな値上がり益を狙える可能性があります。このように出来高に注目することで、有効性の高い投資戦略を立てることができると考えられます。

価格帯別出来高とは

価格帯別出来高は、過去の一定期間内で売買が成立した株数を価格帯(株価)別に表したものです。価格帯別出来高を見ることで、「過去にどの株価で多くの投資家が売買したか」を知ることができます。過去の価格帯を参考に、「どのタイミングで出来高が増えそうか」を予想できるのです。例えば、「株価上昇局面で一定の価格帯に達したら出来高が増えそう(利益確定の売りが多くなる)」といった予想ができます。

多くの証券会社で、価格帯別出来高はツールなどを用いて確認可能です。なお、価格帯別出来高などを元に売買することを「テクニカル分析」と言います。株式やFXの相場を読むための分析手法は、大きく分けて「テクニカル分析」と「ファンダメンタルズ分析」の2種類です。テクニカル分析は過去の値動きをチャートで示し、トレンドやパターンを把握することで、株価や為替の値動きを予想するものです。そして、ファンダメンタル分析は企業の財務状況や業績を分析し、株式や為替の動きを予測する手法です。

テクニカル分析では為替レートや株価を基にして計算したテクニカル指標を中心に分析を行って、株価や為替を予想します。チャートを使った分析では過去のチャートを使い、過去の為替や株価の値動きを調べ、そこからエントリーや決済のタイミングを分析していきます。株価や為替レートは、長期的に見るとファンダメンタルにおおむね沿って変化していくでしょう。しかし、デイトレーダーのように、短い期間で利益を狙いたい投資家も一定数いるでしょう。短期間での株価や為替レートの予測は、ファンダメンタルズ分析ではなかなか難しいものですが、テクニカル分析を利用すれば、短期の株価や為替レートの予測をすることができます。

もちろん、百発百中で当たるわけではありません。しかし、ある程度は精度の高い予想ができるので、多くの短期トレーダーはテクニカル分析を行っています。このように出来高を利用することで、テクニカル分析を行うことも可能です。

まとめ

まとめ

株価を予想するうえで非常に役に立つ、出来高についてご説明しました。出来高という言葉は、株式投資を行っていれば多くの方々がご存じでしょう。しかし、出来高の細かい意味や活用方法について、十分に理解できている方は意外と少ないかもしれません。ここで取り上げた内容を頭に入れ、具体的な投資手法までを理解したうえで、実際のトレードに役立ててください。

監修者プロフィール:

渡辺 智(ワタナベ サトシ)
FP1級、証券アナリスト。

<プロフィール>
大学商学部卒業後は某メガバンクに11年勤務し、リテール営業やプライベートバンカー業務、資産運用コンサルティング(投資信託、保険、債券、外貨預金など)、融資関係業務(アパートローン、中小企業融資)などを経験。銀行在籍中、2度の最優秀営業賞を受賞。銀行在籍時の金融商品販売額は500億円を超え、3000人を超える顧客に金融商品営業を行う。その後、外資系保険会社でコンサルティング営業として従事し、現在は業務経験・知識を活かして金融ライターとして独立。難しい金融をわかりやすく伝えることをモットーに活動中。