つみたてNISAとは?

金融機関の店頭パンフレットやインターネット広告などで、よく目にする「つみたてNISA」について詳しく解説します。

つみたてNISAとは?

つみたてNISAとは

つみたてNISAとは

つみたてNISAとは、2018年1月から開始された、少額で長期・積立・分散投資を支援するための制度のことです。通常、投資で利益が出ると、その利益に対して税金が掛かりますが、この制度を利用すると税金の優遇を受けられます。これにより投資のメリットを強化して、投資を活用した長期的な資産形成を支援している制度です。

つみたてNISAには毎年の上限が定められており、年間最大で40万円、最長で20年(投資可能期間2018年~2037年)、最大投資総額は800万円(40万円×20年)です。1人につき1口座まで持つことができ、一般NISAとの併用はできません。
対象商品は長期の積立・分散投資に適した一定の条件を満たした株式投資信託のみとなります。また、初心者でも長期の資産形成に適した商品を選びやすい制度設計となっているのが特徴です。

つみたてNISAと一般NISAとの違い

つみたてNISAと一般NISAとの違い

つみたてNISAと一般NISAとの違いは、どのような点にあるのでしょうか。
まず、2つの制度に共通していることは、対象商品に掛かる配当金・分配金、売却益が非課税となる点、金融機関の変更は各年で可能な点となります。
そして、2つの制度の違いには、下記が挙げられます。

NISAと一般NISAとの違い

つまり、つみたてNISAは長期の資産形成を目的とした制度となります。そのため、年間の投資額も一般NISAより低く、積み立て方式に限定され、対象商品も長期の資産形成に適したものに限られているのが特徴です。

一般NISAについては、投資額もつみたてNISAに比べて大きく、個別銘柄の株式や幅広い種類の投資信託の中から投資する商品を選ぶことが可能です。目的に応じて、つみたてNISAと一般NISAのどちらが良いのかを選ぶと良いでしょう。

つみたてNISAのメリット

つみたてNISAのメリット

運用益が非課税になる

つみたてNISAのメリットには、まず運用益が非課税になることが挙げられます。つみたてNISAを利用することで、最長で20年間は運用益・分配金が非課税となります。運用益・分配金には税金が掛かり、源泉徴収ありの場合には一律20.315%の税金が発生します。自分で確定申告を行う際は、その人の所得税率の分税金を支払うことが必要です。しかし、つみたてNISAを利用することで非課税になりますので、同じ運用成績でもより多くのお金を残すことができるでしょう。

例えば、毎月2万円を20年間年利3%で積立運用した場合、元本は480万円になり、税引き後の利益は約136万円です。それに対し、非課税で積立すると約178万円になり、この場合には20年後に約42万円もの差が出ます。税金でこれだけの差が出ますので、非課税で運用できるのは大きなメリットと言えるでしょう。

ドルコスト平均法を活用して、長期・分散・積立投資を自動的に実践できる

つみたてNISAは投資方法が積立投資のみなので、長期間(最長で20年間)購入するタイミングを気にせずにドルコスト平均法を用いて長期・分散・積立投資を自動的に実践することができます。

投資で利益を得るには価格が安い時に買って高い時に売ることが基本ですが、そのタイミングを見計らうのは難しいものです。投資するタイミングを見測らっているうちに逃してしまうことは、特に初心者によくあることですが、ドルコスト平均法を活用することで毎月一定額ずつ、価格が高い時には少し、安い時には多く買うことができます。そのため、いつが買い時かを気にせずに、高値買いを防ぎタイミングを気にせずに買い続けることが可能です。

商品選びで失敗する可能性が低い

また、つみたてNISAの対象商品は手数料が一定の水準を満たし、資産形成に適した商品に限定されています。そのため、初心者でも商品を選びやすく、商品選びで失敗する可能性が低くなっている点もメリットと言えるでしょう。
投資信託の中には手数料が高いもの、あるいは分散投資があまり実践できていないハイリスク・ハイリターンなものなど、長期の資産形成に不向きな商品も数多くあります。初心者にとっては、その中から適した商品を選ぶことをハードルに感じる方も多いはずです。

目的に合わない商品を選んでしまうと大きなリスクを背負ってしまったり、高い手数料が資産から引かれて利益が出なかったりする問題が起きてしまいます。その点、つみたてNISAはそのような商品が除外されています。そのため、資産形成に適した商品を選ぶことができることは、初心者にとって大きなメリットと言えるでしょう。

つみたてNISAのデメリット

つみたてNISAのデメリット

つみたてNISAのデメリットについても解説します。

元本割れの可能性がある

つみたてNISAは投資なので、当然のことですが元本割れの可能性があります。長期・分散・積立投資を実践することでリスクを抑えながら運用できますが、投資した元本を下回る可能性がある点はデメリットです。そのため、長期・分散・積立投資の基本を学び、リスクとどのように付き合うか、自分なりのスタンスを決めた上で活用すると良いでしょう。

選べる商品が少ないと感じることも

つみたてNISAは、資産形成に適した商品のみが対象になっています。このことはメリットと言える一方で、もっと幅広い商品の中から選びたいという方にとっては、選べる商品数が少ないと感じられるかもしれません。
つみたてNISAでは個別株やREITを購入することはできませんし、デリバティブを使った運用を行う商品を選ぶこともできません。そのため、長期・分散・積立投資の基本から少し進化し、ご自分で投資する業種を選び分散投資するなど、組み合わせて投資したいと望む方には物足りなく感じる可能性があります。

債券投資信託も購入することができない

また、つみたてNISAでは、債券投資信託も購入することができません。債券にも資産を配分する場合には、すでに債券が組み合わせられているバランス型ファンドという商品を選ぶか、つみたてNISAではなく総合口座で債券投資信託を購入し、ご自分の希望する資産配分にすることが必要です。

つみたてNISA口座以外の口座と損益通算ができない

つみたてNISA口座以外の口座と損益通算ができません。通常、投資で得られた利益と発生した損失とを通算することで、利益に掛かる税金を抑えることができます。しかし、つみたてNISA口座では、そもそも非課税ですので通算することもできません。

そして、非課税枠は翌年に持ち越しすることができない点もデメリットと言えるでしょう。つみたてNISAの期間が終了時などに損失が発生した場合、その後に相場が持ち直した際には、つみたてNISAの期間終了時の価格との差額が利益となり課税されてしまいます。メリットの大きなつみたてNISAですが、上記のようなデメリットも理解しておくことが必要です。

つみたてNISAを始めるには

つみたてNISAを始めるには

まずは、つみたてNISAの口座開設を行います。つみたてNISA口座を開設する場合、証券会社であれば総合口座も同時に開設することが必要です。そして、証券会社に入金手続きを行い、各証券会社制定の上限金額の範囲で入金額を決めましょう。

主な商品である投資信託を選ぶ際は、「投資対象」「運用方法」「コスト」「過去の実績」を比較して、自分に合った商品を選ぶことがポイントです。つみたてNISAの商品が失敗は少ないとはいえ、これらの特性を知って比較することは、将来的にご自分の資産に大きな影響が出ることもあるため大変重要となります。

そのためには何のためのお金を積み立て、いつ頃に使う予定があるのか、まずはご自身のライフプランからお金の目標設定を行いましょう。それに合わせてどの程度のリターンが欲しいか、同時にどの程度までリスクを許容できるかを決め、求めるリターンと許容できるリスクに合った資産配分を決めておいてください。

その上で、資産配分に合った投資対象の商品を運用方法・コスト・過去の実績を比較しながら選びます。このような手順で選んでいくと、ご自身に合った商品選びができるでしょう。

つみたてNISAをおすすめしたい方

つみたてNISAをおすすめしたい方

つみたてNISAは投資信託を活用し、将来のための資産形成を行いたい人に向いています。例えば、学資保険の代わりに、お子さんが大学や専門学校に進学する18歳になる頃までつみたてNISAを使い、資金を貯めるなどが有効です。以前はお子さんの進学資金の積立に、学資保険が人気でした。しかし、昨今の低金利で、学資保険の魅力も以前と比べて大幅に薄れてしまっています。つみたてNISAを活用することで、安定的に運用しても学資保険の返戻率(へんれいりつ)を大幅に上回るリターンも期待できるでしょう。

そのほか、老後の資金など長期の資産形成の目的に適しており、金融庁もこれらの資産形成を目的とした活用を推奨しています。退職金の運用や、老後のために貯蓄したまとまったお金があったとしても、一括投資せずにつみたてNISAを活用し分散投資するのも良いでしょう。

しかしながら、リターンが保証されているものではありません。そのためリスク・リターンの特性をしっかり理解した上で、適正な資産配分を決めて投資を開始することが重要です。なお、投資初心者や経験の浅い人、少額で投資をしたい人にも、毎月少額から長期・分散・積立投資を自動的に行うことができます。対象商品の中から選ぶことで失敗が少ないため、そのような方たちにも適しているといえるでしょう。

iDeCoとの違い

同様に税金をお得に資産形成を行うことができる有利な制度としてiDeCoがありますが、こちらは60歳まで払い出しができないという点が特徴です。つみたてNISAは途中で売却することができますので、それ以前に必要になるお金を準備するにはiDeCoは不向き、つみたてNISAの方が適切な手段と言えます。

60歳までに使う予定のあるお金はつみたてNISA、60歳以後に使うお金はiDeCoというように使い分けても良いでしょう。このように、それぞれの制度の特性を踏まえ、ご自身のライフプランにおけるお金の目標に合わせ使い分けるのもおすすめです。

まとめ

まとめ

つみたてNISAとは何か、メリット、デメリットについて解説しました。これまで日本では将来の資産形成に、学資保険や個人年金保険などの保険商品を活用することが王道でしたが、昨今では、その魅力は大幅に薄れてしまっています。その結果、投資信託を利用した資産形成が少しずつ普及し始め、保険商品でも変額保険や変額個人年金といった投資性の商品も積極的に推奨されるようになり、身近になってきています。

つみたてNISAは数ある資産形成の方法の中でも、運用益の税金の優遇を受けられるというとても大きなメリットがあります。そのため、将来準備できる資金に大きな差が出ることも考えられるでしょう。iDeCoの特性と使い分け、60歳以後の老後のための資産形成やお子様の進学資金目的など、使い分けるのもおすすめです。

そして、それらを上手に活用するためには、長期・分散・積立投資の知識が必要不可欠です。また、何のためのお金なのかを、ライフプランから明確にしておくと良いでしょう。お金は使う目的に合わせ、流動性・安定性・収益性のどれを重視して運用方法を選ぶかが重要です。

短期~中期的な目線でつみたてNISAで運用すると、お金が必要なタイミングと相場が下がったタイミングがちょうど重なってしまった場合、大きく損失が発生した時点で突然、現金化しなければならないことも起こり得ます。

反対に、しばらく使う予定がないにも関わらず、預金で持っておくと、得られるはずだったリターンを逃してしまうことにもなるでしょう。

まだ、「投資=ギャンブル」「投資で将来の資金を積立するのは危険」といったような考え方があるかもしれません。しかし、日本を除く先進国では、投資は一般的に利用されており、日本でも金融庁が特設ページを開設して投資の基礎知識を伝えています。
さらに、2022年からは高校の家庭科の授業で一部に投資が取り入れられるようになり、日本人にとっても、これから投資は身近なものになってくるでしょう。まずは、つみたてNISAをきっかけに資産形成から始めることで投資に興味を持つことから始めてみましょう。

監修者プロフィール

小川 洋平(オガワ ヨウヘイ)
日本FP協会認定 CFP®、合同会社clientsbenefit 代表、FP相談ねっと認定FP、SG中越代表

<プロフィール>
25歳でお金の知識・営業経験ゼロから保険営業の世界に飛び込み6年半従事。2年目に将来の資産形成のため金融知識が必要なことに気が付き、FPの勉強を始めて金融・経済の知識を学ぶ。その後、保険に限らずあらゆるお金の面でクライアントにとってベストな提案をしたいという想いで、商品販売ではなく相談業務を開始。2013年より資産形成の考え方に関するセミナーを自主開催。その他、大手金融機関からの委託により実施。現在は小規模事業者の年金や資産運用のサポートを中心に相談・経営支援の業務に携わり、確定拠出年金など起業家の将来の資産形成と経営のサポートを行っている。投資信託や資産形成の分野を得意としている。