資産運用とはどういうもの?

資産運用について、覚えておきたい基本的な知識を解説します。

資産運用とは?

資産運用とはどういうもの?

資産運用とは手元のお金を増やすことであり、貯蓄と投資に分けられます。資産運用という言葉を聞くと、投資をイメージされる方が多いかもしれません。しかし、例えば預金で利子を得て手元のお金を増やす貯蓄も資産運用の一部です。

現在のような低金利では、貯蓄によってお金が増えることはあまり期待できません。ただし貯蓄には、減らすことなく貯められるという特徴があります。一方で投資は元本が減る可能性もありますが、逆に大きく増える可能性もある資産運用の方法です。手元のお金を増やすうえでは、このような特徴を理解し、お金の目的に応じて貯める方法や増やす方法を使い分けることが大切です。ここでは、そんな資産運用について、覚えておきたい基本的な知識を解説します。

資産運用の種類

資産運用の種類

まずは資産運用について、具体的な種類とそれぞれの特徴を見ていきましょう。

普通預金

多くの方にとって、普通預金はもっとも身近な資産運用でしょう。普通預金は、いつでもお金を引き出せる流動性の高さが特徴です。利子で増やすというより、いつでも引き出せる生活費の管理用に適しています。

定期預金

定期預金は決められた期日まで預金する金融商品です。普通預金と違い、満期までお金を引き出すことができないという特徴があります。普通預金と比較し、金利が高いという点はメリットでしょう。ただし金利が高いと言っても、現在の超低金利の時代では、その恩恵を受けることはあまりできなくなっています。定期預金は、解約しなければ満期までお金を引き出せません。そのため、将来的に必要となる時期のためにお金を準備するのに適しています。

外貨預金

外貨預金は、日本円を米ドルやユーロといった外国の通貨に換えて預金する金融商品です。預け入れたときよりも円に換えるときに円安になっていれば為替差で利益が生まれ、反対に円高になっていると損失になります。現在では日本円よりも金利が高くなっているのが特徴。円を外貨に換える際、また外貨を円に換える際には為替手数料が発生します。

株式投資

株式投資とは、簡単に言えばその会社の経営権の一部を持つことです。その会社の利益によって配当が支払われ、株価が上がっていれば売却した際の売却益を得ることができます。ただし、利益が出ていなければ配当が支払われないこともあり、株価が下落していれば売却で損失が出たり、会社が倒産すれば投資した資産がゼロになったりする可能性もあります。

債券

債券とは借用書のようなもので、期日になったら額面の金額を返してもらうことができ、その間金利を受け取ることができる金融商品です。国が発行する債券を国債、会社が発行する債券を社債と言います。
日本国債は満期まで保有していれば元本は保証され、年2回利息を受け取ることが可能です。個人向け国債では年利0.05%が最低保証されており、3年・5年の国債は固定金利、10年国債は変動金利となっています。

金は世界中に流通し、古くからその価値を認められてきました。有事の際にも株式のように大きく価格が下落しにくく、長期的には価格は上がりやすいという特徴があります。
金の購入には貴金属店などで金貨・地金を購入する方法、純金積み立てや金に投資する投資信託を購入する方法などがあります。購入時には手数料が掛かるため、長期的にどの程度の手数料負担になるのかを踏まえて利益を考えましょう。

投資信託

投資信託は投資のプロ(ファンドマネージャー)が投資家から集めたお金をまとめて、株式や債券、不動産、金等の現物に投資し、その成果を投資家に返す金融商品です。少額でも複数の会社の株式や債券等に分散投資でき、先進国や新興国など海外の株式や債券にも投資することが可能です。
中には購入時や保有時、売却時に手数料が発生し、購入時と売却時の手数料は不要な商品もあります。手数料を差し引いて、どの程度のリターンを得られるかを考えることが大切です。

投資信託

NISA

NISAは個人投資家のための税制優遇制度。金融商品ではなく、金融商品の税制が大変お得になる投資の口座です。株式や投資信託等の金融商品の配当、売却して得られる利益には通常約20%の税金が掛かります。しかしNISAを利用して金融商品を売買すると、毎年120万円までは配当や売却益に税金が課せられません。
ジュニアNISAは未成年者を対象としたNISAで、年間80万円までの配当、売却益が非課税です。原則として18歳になるまでは払い出しが制限され、それまでに売却した場合には配当や譲渡益に課税されます。つみたてNISAは、少額の長期・積立・分散投資を支援するためのNISAです。購入できる金額は年間40万円まで、最長20年間となっていて、購入方法も毎月定額で投資する累積投資契約に限られます。また、運用実績や運用方法などが一定の基準を満たし、長期の資産形成に適していると認められた一定の投資信託に限られている点が特徴です。

iDeCo

iDeCoは個人型確定拠出年金の愛称で、公的年金を補完するための制度です。iDeCo専用の口座を開設し、その口座に毎月お金を積み立てしながら自分が選んだ預金や保険、投資信託等で積み立てしていきます。iDeCoの口座内で受け取った預金の利息、あるいは投資信託等の利益はNISA同様に非課税です。また、iDeCoは掛け金の全額が所得から控除される、つまり貯金したら毎年の所得税や住民税がお得になるという点が大きなメリットでしょう。
原則として60歳まで引き出しができないという留意点があるため、無理なく続けられる掛け金で資産形成を行う必要があります。ただし、掛け金の節税メリットとNISA同様の税制のメリットを受けることができるため、老後の資産形成のためには大変有利な制度です。

積み立てたお金を受け取る際には「一時金で受け取る」、「5年~20年の年金で受け取る」、もしくは「組み合わせて受け取る」のいずれかを選ぶことが可能。退職金や公的年金の税制の優遇を受けることができるため、金額と受取額によっては課税される場合もありますが、有利に受け取ることができます。

初心者におすすめの資産運用方法は

初心者におすすめの資産運用方法は

初心者が預金以外でお金を増やそうと考えるなら、まずは投資信託、そして投資信託を利用したつみたてNISAやiDeCo等で、ローリスクローリターンな投資から始めてみると良いでしょう。初心者は大きく価格が下がってしまった際に怖くなって売ってしまうなど、誤った判断をしてしまうことがあります。そのため、まずは価格の変動が少ない安定した投資から始めて、価格の変動に慣れることが大切です。

少額から複数の株式や債券に投資することができる投資信託、投資信託を利用したNISAやiDeCoを利用することがおすすめです。また、つみたてNISAで購入できる投資信託には、手数料などに一定の基準が設けられています。そのため、投資信託の商品選びを失敗しにくいという特徴があり、長期・分散・積立投資という投資の基本を自動的に実践する仕組みなので初心者向けと言えるでしょう。
iDeCoについても投資信託の購入時の手数料が掛からず、保有時の手数料は運営管理機関によっては比較的割安な商品を選ぶことができます。つみたてNISAと同様、長期・分散・積立投資を自動的に実践することが可能です。

また、つみたてNISAやiDeCoでも購入することができる投資信託には、バランス型ファンドと呼ばれるものがあります。バランス型ファンドは株式のみでなく債券にも自動的に分散投資し、値動きの大きな株式と値動きが小さく株式と逆の値動きをしやすい債券とを組み合わせることで、リスクを低減しながら安定的なリターンを狙えます。

なお、ロボアドバイザーはその人の運用スタンスを登録することで自動的に商品を選んでくれたり、商品選びのアドバイスをしてくれたりします。何が自分に適しているのかわからないという方は、ロボアドバイザーを活用するのも良いでしょう。

資産運用のポイント

資産運用のポイント

資産運用を行う前に、大切なポイントを押さえておきましょう。

お金を目的別に分ける

資産運用を考えるうえでまず大切なポイントは、お金を目的別に分けることです。主に10年以内を目安に使う予定のお金の場合、投資よりも預金等の貯蓄の方が向いていると言えます。なぜなら10年以内だと、投資では相場が下落した際に相場が回復するまで待つ時間があまりないからです。期間が短いことから投資の複利の効果もあまり期待できず、投資のメリットは小さくなってしまうでしょう。定期預金や国債などで、10年以上使う予定がないお金については投資信託等を利用して増やすなど、目的別に分けて管理してみてください。

10年以上使う予定がないお金については、投資の方が向いているでしょう。お金の目的に応じて適した金融商品は異なります。自分が何年後にいくらお金を準備する必要があるか、目的に合わせて金融商品を活用することが、失敗しないために重要なことなのです。
そのため、まずは自分がどんな人生を歩んでいきたいのかライフプランを考えてみてください。そこから準備しておきたいお金の目標を立て、必要なお金を準備するため、目的に合わせて預金や投資などを活用し将来の資金をつくりましょう。

長期・分散・積立投資

投資は「長期」「分散」「積立」投資という基本を押さえて行いましょう。長期・分散・積立投資は、金融庁が積立NISA特設ページでも伝えている投資の考え方の基本。アメリカや日本以外の先進国では、学校教育でも取り入れられている将来の資金を投資でつくるための方法です。

<長期>
長期で運用する理由は、おおよそ10年程度を目安にすることで複利の効果を得ることができるためです。価格が変動しても元本を下回ることが少なくなり、反対に大きく増えることも期待できます。

<分散>
分散投資が重要な理由は、一つの投資先や業種、国等にお金を集中させるよりも、複数に分散させた方がリスクの分散につながるからです。異なる値動きをする資産に分散することで、価格の変動を安定させる効果があります。投資信託自体が複数の会社に分散投資できる仕組みですが、業種も一つに偏らないよう、複数の業種に投資している商品を選ぶことが望ましいでしょう。また、日本だけでなく世界中の国や会社に投資をすることも大切。バブル崩壊後の日本のように経済が停滞して株価も大きく伸びない時期でも、世界経済の成長を取り込んで資産を増やすことができます。そして、株式投資信託のように大きな値動きを抑えるため、債券投資信託等も組み合わせながら運用することで資産全体での価格の変動を抑えることが可能です。

これらを自動的に組み合わせてくれる商品として、先ほど取り上げたバランス型ファンドと呼ばれる商品があります。株式の割合が小さく債券の割合が大きい商品ほど、価格の変動が少なく安定した運用が可能です。初心者なら、まずこのバランス型で様子を見るのも良いでしょう。

<積立>
長期分散投資を実践していても、価格の高いときもあれば安いときもあります。もちろん安いときに買って、高いときに売ることができればベストです。しかし実際のところ、そのタイミングを見計らうのは難しいものがあります。そこで有効なのが、高いときも安いときも一定額ずつ買い続ける積立投資(別名「ドルコスト平均法」)です。毎月同じ金額ずつ買っていくため、高いときには少ししか買えず、安いときにたくさん買うことができる点が特徴。高いときに集中して買ってしまうことを避け、さらに買い始めた頃より価格が下落していたとしても、売却時には資産が増えていることもあります。つみたてNISA、iDeCo、純金積み立てでは、このドルコスト平均法をそのまま応用した形で投資することが可能です。

このように基本を守ることで、投資は価格の変動を自分の性格やスタンスに合わせて、コントロールしながら将来のお金を増やすことができます。

また、将来物価が上昇してお金の価値が下がるインフレが起きた場合、預金等では物価の上昇よりも預金の利子の方が下回ることが多いでしょう。そのため対物価で考えると、元本自体は減っていなくてもお金の価値が減ることで、実質はお金が減ってしまうインフレリスクがあります。その場合、株式にはインフレ時に価格が上がりやすいという性質があるため、インフレによるお金の価値の目減りから資産を守るためにも有効です。
「投資はギャンブル」と思われる方は多いでしょう。しかし、預金だけでなく長い間使う予定のないお金は、「長期」「分散」「積立」投資の基本を守りながら増やすよう意識することが望ましいと言えます。

まとめ

まとめ

ここまで資産運用とは何か、どのような種類があるのか、初心者におすすめの方法や重要なポイントなどを解説しました。まず重要な点は、何のためのお金なのか目的別に色分けし、それぞれの目的に合った金融商品を選ぶこと。そして長期の運用には投資を利用し、資産を増やすことを意識することも大切です。

投資の価格変動に慣れてきた段階で仮にゼロになっても将来困らないようなお金があれば、自分の好きな会社や応援したい会社など、個別の会社に投資してみるのも良いでしょう。もちろん将来必要なお金は減らさないよう、基本を守って運用することが重要です。ただし、仮になくなっても困らないと割り切れるお金があれば、守るだけでなく楽しむために使ってみるのも良いかもしれません。

人それぞれライフプランや性格が違い、リスクへの考え方や許容度も異なります。これと同じく、資産運用も適した形は人それぞれ違うものです。自分に適した資産運用の形を考えて、目的に合った金融商品を上手に活用しましょう。

監修者プロフィール

小川 洋平
日本FP協会認定 CFP®、合同会社clientsbenefit 代表、FP相談ねっと認定FP、SG中越代表

<プロフィール>
25歳でお金の知識・営業経験ゼロから保険営業の世界に飛び込み6年半従事。2年目に将来の資産形成のため金融知識が必要なことに気が付き、FPの勉強を始めて金融・経済の知識を学ぶ。その後、保険に限らずあらゆるお金の面でクライアントにとってベストな提案をしたいという想いで、商品販売ではなく相談業務を開始。2013年より資産形成の考え方に関するセミナーを自主開催。その他、大手金融機関からの委託により実施。現在は小規模事業者の年金や資産運用のサポートを中心に相談・経営支援の業務に携わり、確定拠出年金など起業家の将来の資産形成と経営のサポートを行っている。投資信託や資産形成の分野を得意としている。