デリバティブって何?

投資のリスクを抑える、あるいは反対にその性質を利用して利益を得たりするための取引「デリバティブ」について解説します。

デリバティブとは

デリバティブとは

デリバティブは、日本語で「金融派生商品」と呼ばれているものです。商品先物やオプション取引など投資のリスクをコントロールしたり、資金効率を高めたり、下がり相場で利益を得るなど利益の追求を企図した取引です。

また、企業の為替の影響やコモディティ価格の変動による商品現物の仕入価格の高騰や、外貨建ての売り上げの為替リスクを抑える財務戦略としても活用されています。デリバティブ取引は、デリバティブ市場というマーケットで行われ、デリバティブ市場には取引所取引と店頭取引の2種類があります。

デリバティブの種類

デリバティブの種類

デリバティブは大きく下記3つに分類され、これらを組み合わせた商品もあります。

  • 先物取引
  • 為替予約
  • オプション取引

先物取引

先物取引は将来の取引について、あらかじめ現時点で約束をする取引です。例えば、商品先物や為替予約などがあります。商品先物とは、現在の価格で将来その現物を買う権利を得る取引のことを言います。金や原油、トウモロコシなどは相場が常に変動しており、これらはコモディティとも呼ばれ投資の対象にもなっています。

商品先物は現在の価格で、将来の一定の期日に現物を売買する約束をすることです。例えば、原油からガソリンや石油を精製して販売する企業にとって、原油価格の上昇は収益を圧迫する原因になります。反対に安く仕入れることができれば、大きな利益を得ることができるでしょう。将来的に価格の上昇が見込まれる場合、価格が低いうちに決められた価格で購入する約束をしておくことで、価格が予想以上に上昇しても仕入価格の高騰を防げます。

反対に先物売りの場合、上記のようなケースでは損をすることになりますが、反対に価格が下落すれば相場より高い価格で売ることができるため、利益を得ることができると考えられます。この仕組みを利用することで、価格が上昇した際には大きな利益を得られる可能性があります。反対に下落した場合にも先物売りで利益を得られると考えられます。

為替予約

為替予約は商品先物と同様、将来の一定期日の為替取引を、現在決められた価格で行うことを約束するものです。日本では原油をほぼ100%輸入に頼っていますが、例えば、円安になった場合、外貨での原油価格に変化がなかったとしても輸入する価格が上昇します。しかし、為替予約を行えば、円安になった場合でも為替レートをあらかじめ約束しておくことができるため、仕入価格の高騰を防ぐことができます。

また、外国株式や債券などを購入する場合、日本円に換算すると株式や債券の価格変動のみでなく、為替の変動も価格に影響します。その際、決められた為替相場で取引すれば為替リスクを抑え、株式や債券などに投資することが可能です。投資信託の商品で「為替ヘッジ」と呼ばれるものがありますが、これらは為替予約を使って為替リスクを抑えています。

オプション取引

オプション取引は、将来の取引についての権利を売買する取引のことを言い、株式オプションや金利オプション、通貨オプションなどがあります。先物取引と同様に思えるかもしれませんが、先物取引は将来の一定の期日に売買することを約束するものです。
これに対し、オプション取引は売買する権利を買うことであり、必ずしもその価格で取引する必要はありません。つまり、価格が上がったときにはオプションの権利を行使して約束された価格で購入し、価格が下がった場合には権利を行使するメリットがないので権利を放棄すれば良いのです。

例えば、株式を100万円で買うことができる権利を、3万円で買うことができるとしましょう。権利を買った後に株価が上がり120万円となった場合にも、約束した100万円で買うことができます。そのとき、オプションを購入するために掛かった3万円と100万円で買う株式の価格を合わせた103万円で購入できるため、120万円から103万円を差し引いた17万円がオプションの利益ということになります。

これに対して80万円に値下がりした場合は、100万円で買える権利を行使しても損をするだけです。そのため、買わずに権利を放棄すれば、損失はオプションを購入するのに必要な手数料の3万円のみとなります。なお、この手数料のことを「プレミアム」と呼びます。このように、自分にとって有利な条件のときは権利を行使し、不利な条件になったら権利を放棄することができるのがオプション取引の特徴です。

また、この例のように一定期間後に決められた価格で買うことができるオプション取引を「コールオプション」、反対に決められた価格で売ることができる権利を「プットオプション」と言います。

プットオプションは、先に取り上げたコールオプションの例とは逆です。
株式を100万円で売ることができる権利を3万円で買えるとした場合、その株式が80万円に値下がりしても100万円で売却する権利があり、差額分の20万円が利益となります。コールオプションと同様に3万円のプレミアムが発生するため、最終的な利益は17万円です。さらに、120万円に値上がりした場合には、100万円で売ると損失になるため、売る権利を放棄すれば損失はプレミアム分の3万円に抑えることができます。

ここまでご紹介してきたコールオプションとプットオプションは、「買い」のポジションですが、「売り」のポジションを選ぶことも可能です。オプション取引は収益目的だけでなく、オプション取引によって保有する株式などが下落する際のリスクヘッジもできます。
その他、金利オプションや通貨オプションといったものがあり、株式のオプションと同様にプレミアムを支払うことで有利な為替相場で取引する権利を得たり、金利に上限を設けたり、最低金利を設定したりすることができます。

スワップ取引

スワップ取引

スワップ取引とは、二者がある一定期間にわたり将来のキャッシュフローを交換する取引のことです。「スワップ=SWAP」は、日本語にすると「交換する」という意味です。スワップ取引には、同一通貨で異なる金利を交換する金利スワップ、異なる通貨の金利・元本を共に交換する通貨スワップなどがあります。

金利スワップ

金利スワップには、変動金利と固定金利に交換することなどが挙げられます。例えば、住宅ローンを変動金利で返済している場合、今後、金利の上昇が予想されれば支払う金利が大きくなるでしょう。一方、固定金利を組んでいると、今後金利が下がり支払う金利が小さくなると予想される場合でも、固定金利を払い続けなくてはいけません。その際に、当事者間の金利を交換し、返済元本は変えずに支払う金利のみを交換することを金利スワップと言います。

債券を保有する立場では、今後、金利の上昇が予想される場合に変動金利に交換することで、固定金利のまま受け取るよりも、受け取る金利を増やすことが可能になります。金利の低下が予想される場合には、固定金利に変えることで金利が低下しても決められた金利の受け取りを確保することができます。

通貨スワップ

通貨スワップとは異なる通貨間での金利・元本の受け取りを交換すること。例えば、アメリカ国債を保有して金利を受け取ることができる場合、日本円に換算したときに円安であれば受け取る利息や元金は大きくなりますが、円高であれば小さくなる為替リスクがあります。その際に通貨スワップを利用すれば、あらかじめ約束した日本円で金利や額面を日本円で受け取ることができ、為替リスクを抑えることが可能です。

なお、FXやCFDのように証拠金を元手に、レバレッジ効果で証拠金の何倍もの大きな金額を取引することができるのも、このデリバティブの仕組みを使ったものです。FXは為替の変動を利用して利益を狙うものですが、CFDは為替も含め株式や債券などでFXのようにレバレッジを効かせ、証拠金よりも大きな取引を行うことができます。

LINE FXでは通貨ペアの売買の際に発生する為替手数料のような、スプレッドと呼ばれるコストも業界最低水準です(https://line-fx.com/)。少額から手軽にレバレッジを活用することができるため、入門編として始めてみるのも良いかもしれません。

デリバティブのメリット

デリバティブのメリット

デリバティブのメリットとして、利益を得る場面を増やせることがあります。例えば、値下がり局面でもコールオプションの売り、プットオプションの買いなどを活用することで利益を出せると考えられます。手持ち資金以上に大きな取引が行えますので、資金効率の良い取引も可能となります。株式の現物とプットオプションの買いなどを組み合わせることで相場変動へのリスクヘッジにも活用できるでしょう。

また、組み合わせによって、あらゆる場面で利益を狙うことができるかもしれません。
例えば、コールオプションとプットオプションの買いと売りのポジションを組み合わせることで、プラスにもマイナスにも大きく相場が動いた場合に利益を得ようとする方法や、価格の動きが小さい場合に利益を得られるような方法などあります。取引の幅が大きく広がることになり、さらには企業の財務戦略に使うことも可能となるでしょう。

デリバティブのデメリット

デリバティブのデメリット

デリバティブは、仕組みが複雑で難易度が高いということもあり、あまり初心者には向かないかもしれません。それぞれの特徴と、どのようなときに利益が出て、どのようなときに損失になるのかを理解しておくことが大切です。理解していないと、レバレッジ効果により大きな損失が発生する可能性があったり、ポジションによっては株価が上昇した際に損失が青天井に大きくなってしまったりと、思わぬ損失に繋がることもあります。

また、レバレッジを大きくし過ぎることで、FXなどではロスカットと呼ばれて損失が出たまま自動的に決済されてしまうこともあります。自分が意図しない損切りが行われ、損失が発生してしまうことにも注意しましょう。取引の幅を広げられて投資の面白みが大きくなる反面、十分にその仕組みを理解して活用することが必要です。

まとめ

まとめ

デリバティブは仕組みが複雑で、初心者にはなかなか理解するのが難しいかもしれません。しかし、デリバティブを活用すれば、下がり相場でも利益を得ることができる可能性があります。リスクヘッジのために活用することもできるので、取引の幅が大きく広がるでしょう。また、投資のみならず、企業が為替リスクを抑えて経営の安定のために利用しているケースもあります。そのため、デリバティブは企業の財務戦略にも利用されています。

投資信託の商品にもこれらデリバティブの仕組みを利用し、その成果を受け取る商品があります。投資信託の利用を検討している場合でも、どのような場面でデリバティブが活用されているのか、理解しておくことをおすすめします。
まずは、無理のない少額から始めてみることで、少しずつ活用できるようになると思います。ここで取り上げた内容を参考にしながら、デリバティブの特徴をご理解いただいたうえで、ご自身の目的に合わせた範囲での活用を考えてみてください。

監修者プロフィール:

小川 洋平(オガワ ヨウヘイ)
日本FP協会認定 CFP®、合同会社clientsbenefit 代表、FP相談ねっと認定FP、SG中越代表

<プロフィール>
25歳でお金の知識・営業経験ゼロから保険営業の世界に飛び込み6年半従事。2年目に将来の資産形成のため金融知識が必要なことに気が付き、FPの勉強を始めて金融・経済の知識を学ぶ。その後、保険に限らずあらゆるお金の面でクライアントにとってベストな提案をしたいという想いで、商品販売ではなく相談業務を開始。2013年より資産形成の考え方に関するセミナーを自主開催。その他、大手金融機関からの委託により実施。現在は小規模事業者の年金や資産運用のサポートを中心に相談・経営支援の業務に携わり、確定拠出年金など起業家の将来の資産形成と経営のサポートを行っている。投資信託や資産形成の分野を得意としている。