ESG投資とは?

2021年9月13日

 

資産運用ブームで多くの方が投資を行うようになりました。投資の種類は多様ですが、今回はESG投資についてご説明します。

ESGとは

ESGは「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の頭文字を取ったもので、主に次の視点で見ています。

 

・環境(Environment):製品を製造する際などの環境への配慮がある企業か

・社会(Social):従業員の働きやすい環境を整えている企業か

・ガバナンス(Governance):業績悪化回避のための適切なリスク対処や情報開示などを行っているか

 

投資行動の責任投資原則(PRI)が作成され、世界の年金運用会社が続々と署名しました。日本でも2017年にGPIF(世界最大の年金基金)が1兆円規模のESG投資を開始したことを契機として、ESG投資が拡大しています。責任投資原則(PRI)は2006年に国連グローバル によって制定され、機関投資家に対してESG要素の投資行動への組み込み(ESG投資)を要求。PRIへの署名機関は運用実績を定例報告し、資産の50%以上に本原則を適用できない場合は、除名になる内容になっています。

 

署名機関は年々増加してきました。PRIが制定された 2006年当時は63機関(日本7機関)にすぎなかったものの、2021年8月13日時点では4,249機関(日本96機関)まで広がっています。今後も署名機関は増加していくと見られており、それだけESGは世界的に関心が高いのです。

ESG投資とは

ESG投資とは、環境・社会・企業統治に配慮している企業を重視・選別して行う投資のこと。企業の長期的な成長やリスク把握に、ESGが必要であるという考え方が世界的に広まりつつあります。ESG評価の高い企業は事業の社会的意義、成長の持続性など優れた企業特性があると言えるのです。

 

ESG活用の投資手法には特定の業種(例:タバコ、武器、温室ガス排出など)や企業グループ、個別企業を投資対象から除外する「ネガティブ・スクリーニング」や、財務情報などによる定量的な分析だけでなく、ESGに関する分析も投資意思決定プロセスに組み入れる「ESGインテグレーション」など、いくつかの手法があります。資産別では株式や債券だけでなく、不動産、インフラ、ベンチャーキャビタル、プライベート・エクイティなど資産クラスの裾野も拡大。今後、ますます裾野が広がることが期待されている非常に有望な投資なのです。では、そんなESG 投資の動向について見ていきましょう。

 

ESG 投資の国際的な枠組み

ESG投資のグローバルな普及・拡大においては、投資家がESGの要素を投資分析や株主行動に組み込み、中長期的な視点からリスク軽減や投資収益の増加を促すための行動原則を示したPRIの役割が大きいでしょう。

 

アメリカ・ヨーロッパにおけるESG投資

米国のESG投資の市場規模(2018年)は17.1兆ドルで、その9割超がESG要素を投資分析や銘柄選択に用いる手法になります。欧州(13カ国)の ESG投資の市場規模(2018年)は12兆ドルで、機関投資家の割合が高いことが大きな特徴です。

 

日本におけるESG投資

2020年の市場規模は2.9兆ドル(2018年比+32%) と急拡大。今後の検討課題には情報開示や対話を促進するプラットフォームの設立、機関投資家の投資判断やスチュワードシップ活動における価値協創ガイダンスの活用、資本市場における非財務情報データベースの充実とアクセス向上の取り組みが挙げられます。

また、日本では2000年代は個人向けの投資信託(通称:SRIファンド)や社会貢献型債券に偏り、市場規模は海外対比小さかったです。2010年以降は機関投資家を中心に、ESG要素のインテグレーションやエンゲージメントといった投資手法が徐々に浸透。市場規模は急拡大しています。

 

政策面ではスチュワードシップ・コードおよびコーポレートガバナンス・コードによって、投資家および企業の両面からESG要素を考慮する投資環境を整備。また、GPIFをはじめとする、国内機関投資家によるPRI署名の増加に加え、健康経営銘柄の選定や女性活躍促進法などがESG要素に対する企業による、情報開示の積極化に寄与しています。

 

日本のESGの課題

欧米比でESGに関する情報開示や対話の不足が、投資判断や建設的な対話を損なうとの観点を踏まえ、経産省は情報開示や対話の質の向上を図るための企業・投資家の手引きとなる「価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス (価値協創ガイダンス)」を取りまとめました。価値協創ガイダンスでは、「ESGに対する認識」や「ESGの企業戦略への組込」 を提示しています。

 

また、経産省がまとめた「持続的成長に向けた長期投資(ESG・無形資産投資)研究会報告書」では、日本のESGに対する取り組みの提言を行いました。第一に一般論として、ESGはリスク要因であるとともに事業機会要因にもなり得ると認識が共有。投資家としても、 ESG要素が収益予測や中長期の価値に結び付くのであれば、株式評価において考慮するでしょう。その中で、特にESGが長期投資を行う上でのリスク要因であることについては、投資家の間で一定のコンセンサスがあります。

 

ESGが企業価値の向上、ひいては投資リターンにつながるのか、そのような事実・証拠はあるのかについては議論が分かれ、少なくとも現時点では共通認識には至っていません。具体的に、ESGに対する評価(レーティング)が良い企業はそうでない企業と比べ、株価や資本市場の評価を示すPBR が上昇する傾向があるとの調査結果が示されました。

 

一方で過去のデータを見る限り、ESG投資で超過収益を上げられるというコンセンサスに現状は至っていないとの認識も示されています。ESGの概念・範囲にはさまざまな考え方があり、これらを超過収益の源泉ととらえる投資家も少なくありません。しかし、多くの投資家は、少なくとも中長期的なリスク要因として認識しています。

ESG投資に対する取り組み

ESG投資に対する取り組みについて、機関投資家などポジション別に見ていきましょう。

 

機関投資家

GPIFは「投資原則」などにESG要素を考慮することを明記しています。ESG全ての要素を考慮した 2つの総合型指数と、女性活躍に着目したテーマ型指数を選定して約1兆円の運用を開始。ノルウェー政府年金基金グローバルは、経済・環境・社会の持続的発展のもとでの収益確保や非倫理的行為などへ投資しないことを前提とした倫理規程を制定し、運用規則に ESG要素の投資戦略を組み込んでいます。

 

アセットマネージャー

ある運用会社では、 ESG取り組み方針の策定・開示や企業との対話を通じた運用プロセスへのESG評価(ESG レーティング付与)の組み込みなどを実施しています。

 

評価会社 ・情報提供会社

グローバルベースで見るとMSCI ESGやsustainalyticsなどが有力評価会社で、各企業のESG情報に基づくレーティングやESG関連インデックスの提供などに取り組んでいます。ESG格付けやESGスコアといった評価情報などを提供。また、これら格付けやスコアESGテーマ別の分析に基づく、ESGインデックスを作成・提供している会社もあります。

 

事業会社

ESG投資の拡大とともに、企業の非財務情報の開示の枠組みや制度化の動きがグローバルに進展。日本でも統合報告書を作成する企業数は増加傾向にあります。政策面では金融審議会の「企業情報の開示・提供のあり方の検討」の中で、経営の戦略やリスクなどに係る情報の充実などについて議論しています。

 

金融機関

環境分野では地球温暖化対策などに人を限定したグリーンボンド市場が急拡大し、民間金融機関の発行額も増加傾向です。環境省が「グリーンボンドガイドライン」を策定し、同債券発行の普及に取り組んでいます。社会分野では、社会的課題への直接的な効果を意図する社会的インバクト投資への関心が高まっています。日本でもG8タスクフォースの提言を受け、ソーシャル・インパクト・ボンドの発行など同市場規模は拡大傾向にあるのです。

ESG投資のメリット

ESG投資を行うメリットはさまざまありますが、主に3つに集約されます。ここで、ESG投資のメリットについて1つずつわかりやすく解説しましょう。

 

間接的に社会貢献につながる

ESGに取り組んでいる企業は環境や貧困、人権、労働など、さまざまなESGの課題解決に取り組む企業です。このことから、ESG投資はその企業の社会的課題解決を後押しすることになります。つまりESGに取り組んでいる会社に投資することによって、間接的に現在人類が直面している課題に対して社会貢献できるのです。間接的に社会貢献につながるのは、ESG投資を行う大きなメリットでしょう。

 

長期の資産運用向き

ESGに力を入れている会社は、環境や人権などの問題に取り組んでいる成熟企業が多い点が特徴です。成熟企業なので、短期間の大きな成長は期待できませんが、長期的に安定して成長することは期待できます。資産運用の基本は長期分散投資になるので、ESGに力を入れている複数の銘柄に投資すれば、安定的な収益を期待できる可能性が高くなるでしょう。ご自身で複数銘柄に対する分散投資が難しいなら、ESG 投資されている投資信託を利用するのが良いかもしれません。

 

安定した運用が期待できる

先ほどの長期資産運用向きにも似ていますが、 ESG投資は安定運用が期待できます。ESG に力を入れている企業は大手企業が多く、短期間に大きな値上がりを狙うのは難しいかもしれません。しかしその分だけ、安定した運用が期待できるでしょう。じっくりと時間をかけて運用し、安定した運用を期待したい方には、非常におすすめの投資手法と言えます。

ESG投資のデメリット

ESG投資には、主に3つのデメリットが挙げられます。それぞれのデメリットについて、わかりやすくご説明します。ESG投資を始める前に、しっかり確認しておいてください。

 

短期的なリターンは小さい

ESGに力を入れている企業は大手企業が多いため、安定的なリターンは期待できますが、短期で大きな利益を狙うのは難しいでしょう。ESG投資は、あくまで長期投資を前提に行うと良いでしょう。

 

銘柄選定に時間がかかる

近年、ESG投資に力を入れる企業が多くなっていますが、まだまだ数が少ないのが現状です。ESG投資はもちろん個別銘柄への投資で行えますが、数が少ないESG銘柄の中から自分に合った企業を選定するには、通常の銘柄選定に比べて時間がかかるでしょう。投資信託を使ってESG投資を行うこともできますが、ESG関連の投資信託も数は多くありません。いずれにしても、銘柄選定に時間を要することは一つのデメリットとなります。

 

銘柄にグリーンウォッシュの企業が含まれている可能性がある

グリーンウォッシュとは、「ESGに力を入れているふりをしている企業」のこと。ESGは世界的な大きなテーマなので、これに力を入れている企業は注目を集めやすく 株価にも影響を与えます。これを利用し、一部の企業では実際にESGへ力を入れていないにも関わらず、力を入れているふりをして資金を集めているケースが少なからずあるのです。ESG投資をする場合は、投資先の企業がグリーンウォッシュでないか十分に注意しましょう。

まとめ

ESG投資について詳しく解説しました。ESG投資は世界的に注目されている投資方法であり、今後もさらに注目を集める可能性が高いでしょう。特に長期的な資産運用のために投資を考えているのであれば、おすすめの投資方法と言えます。逆に、短期で大きなリターンを目指すことは難しいでしょう。ここで解説した内容をもとに、ESG投資がご自身に適しているかどうか参考にしてください。

監修者プロフィール:

渡辺 智(ワタナベ サトシ)

FP1級、証券アナリスト。

<プロフィール>

大学商学部卒業後は某メガバンクに11年勤務し、リテール営業やプライベートバンカー業務、資産運用コンサルティング(投資信託、保険、債券、外貨預金など)、融資関係業務(アパートローン、中小企業融資)などを経験。銀行在籍中、2度の最優秀営業賞を受賞。銀行在籍時の金融商品販売額は500億円を超え、3000人を超える顧客に金融商品営業を行う。その後、外資系保険会社でコンサルティング営業として従事し、現在は業務経験・知識を活かして金融ライターとして独立。難しい金融をわかりやすく伝えことをモットーに活動中。