値嵩株(ねがさかぶ)ってなに?

株式投資において値嵩株について理解しておくことは非常に重要です。今回は、値嵩株についてご説明します。

値嵩株(ねがさかぶ)ってなに?

値嵩株(ねがさかぶ)とは

値嵩株(ねがさかぶ)とは

値嵩株とは株価が高い銘柄のことで、1株当たりの株価が高かったり最低売買単位で大きな金額が必要とされたりする企業のことです。
ただ、値嵩株に具体的な金額の定義はありません。一般的には1売買単位の高いものを「値嵩株」、高くも安くもないものを「中位株」、売買単位の金額が安い水準にある株のことを「低位株」と呼びます。つまり、値嵩株と対極にある銘柄が低位株ということです。

株式投資をしていると、値嵩株に関する話題をよく見るでしょう。そのため、値嵩株についてしっかり理解しておくことは非常に重要です。

値嵩株の特徴

値嵩株の特徴

日経平均株価構成銘柄に大きな影響を与えるのは、値嵩株の大きな特徴でしょう。日経平均株価に影響を与える値嵩株、上位20位銘柄をまとめました。

値嵩株、上位20位銘柄

2019年12月30日から2020年12月30日までの期間における日経平均株価の上昇幅に対し、寄与額の大きい上位20銘柄。
出所:三井住友DSアセットマネジメント

上記より、多くの有名銘柄が並んでいることが分かります。日経平均株価は225銘柄で構成されていますが、値嵩株によって大きく影響されます。なぜ、値嵩株の影響が大きいかと言うと、日経平均株価は構成銘柄の平均値によって算出されるためです。
そのため、日経平均株価に連動するインデックスファンドなどで投資する方は値嵩株についても、しっかり確認するようにしましょう。

また、値嵩株は値段の変動率が大きくなります。なぜなら、値嵩株には日経平均株価の寄与率が高く、非常に値動きが大きいことで有名なソフトバンクグループやファーストリテイリング等が含まれているからです。
ただ、値動きが大きいと、短期間で大きな損失を被ってしまう可能性もあります。値嵩株に投資をする際には注意が必要です。

LINE証券のいちかぶ

値嵩株は株価が高いのである程度まとまった資金がないと投資できません。しかし、LINE証券の「いちかぶ」のように1株から購入できる証券会社も増えています。1株であれば値動きが大きくても損失を限定できますし、少ない金額から投資ができるので投資初心者の方には特におすすめです。
値嵩株に投資する際は、投資金額や投資できる期間をしっかり確認してから行うようにしてください。

値嵩株のメリット

値嵩株のメリット

値嵩株の主なメリットは3つに集約されます。それぞれ分かりやすくご説明しましょう。

株価が値下がりしにくい

値嵩株は最低購入金額が大きいため、小口の投資家はあまり保有していません。大口の投資家が主な購入者のため長期保有する投資家が多く、株価が下降しにくい傾向にあります。そのため、配当狙いの長期投資家にとっては非常に良い銘柄だと言えるでしょう。

安定した値上がり益を狙える

値嵩株はすぐに売却するのではなく長期で保有する投資家が多いと言われており、中長期で見ると安定した値上がり益を狙える特徴があります。短期で見ると非常に値動きが激しい銘柄も多いため、あまり安定していないと思われがちです。

しかし、大口株主以外の小口株主含め値嵩株は一度購入されると他の銘柄の株と比較して長期保有される傾向にあるので、中長期で見ると安定した値上がり益を狙えます。配当を受け取りながら中長期目線で持つには、おすすめの銘柄と言えるでしょう。

有名な企業が多い

先ほどの日経平均株価に影響を与える値嵩株上位20銘柄を見てみると、ほとんどが誰もが知っている有名企業ばかりです。

株式投資を行う際は、しっかりとした銘柄分析を行わなければなりません。銘柄分析をしっかりしなくても利益を得られることもありますが、それはあくまでビギナーズラックです。ビギナーズラックは未来永劫続くものではないので、安定的に株式投資で利益を上げたい場合は、しっかりとした銘柄分析は必要不可欠となります。

その点、既に知っている企業の場合には、まったく知らない企業の場合と比較して銘柄分析の負担も少ないでしょう。既に知っている企業から銘柄分析を行い、安定的に株式投資で利益を上げる確率を高めていきましょう。

値嵩株のデメリット

値嵩株のデメリット

値嵩株の主なデメリットについて、ここでは3つご説明します。

購入に必要な金額が高い

値嵩株は株価が高いので、その分だけ購入に必要な金額が高くなります。値嵩株の中には1株100万円を超える銘柄もあり、投資できる資金が少ない投資家にとってはなかなか投資するのが難しいでしょう。

最近は1株から投資できる証券会社も増えていますが、それでも1株100万円を超えてしまうと、すべての人が投資できるとは言えません。投資するハードルが高いのは、値嵩株のデメリットと言えます。しかし、先ほど説明したLINE証券の「いちかぶ」のように1株から購入できる証券会社も増えていますので、利用を検討してみましょう。

機関投資家の影響を受けやすい

値嵩株は購入単価が高いため、なかなか個人投資家が投資しにくい傾向にあります。必然的に値嵩株は機関投資家が売買するケースが多くなるため、機関投資家の影響を受けやすくなるのです。

機関投資家の中には年金基金のように長期で利益を狙っている投資家もいますが、短期で利益を狙っている投資家も多くいます。機関投資家の動向によって株価が左右されるのはデメリットと言えるでしょう。

変動率が大きい

値嵩株は変動率が非常に大きいです。短期で急激に下落することもありますので、大きな損失を被ってしまう可能性があります。値嵩株の変動率が高い理由は、低位株や中位株の場合は1円単位で株価が変動しますが、値嵩株の場合は10円刻みで売買されるためです。

逆に言うと、変動率が大きいので大きな利益を短期で狙える可能性はあります。しかし、株式投資の基本が中長期投資であることを考えると、変動率があまりにも大きいのはデメリットになってしまうでしょう。

日本の値嵩株

日本の値嵩株

日本の主な値嵩株について5つの銘柄をご紹介します。株式投資を行うにあたって重要な成長性、収益性、安全性の3つに分けて見ていきましょう。

ファーストリテイリング

ファーストリテイリングはユニクロやGUなどを運営する、日本を代表する企業です。ファーストリテイリングの2022年2月1日現在の株価は65,670円で、100株買うには約657万円必要になります。

(1)成長性
成長性は一般的には増収率 (売上がどれくらい伸びているかを示す指標)で判断されます。ファーストリテイリングの2021年の売上高は2兆1,329億円に対して2022年の予想売上高は2兆2,000億円となっており、増収率は103%です。この規模の会社で、しっかり増収をしているのは立派の一言でしょう。

(2)収益性
ファーストリテイリングの2021年の最終利益は1,698億円に対し、2022年の予想最終利益は1,750億円で前期比3%増の予想です。2020年の最終利益が903億円だったことを考えると、コロナが治まっていない2021年、2022年の決算で大幅に回復しているのはさすがと言えます。

(3)安全性
安全性は自己資本比率が高いと良いとされていますが、33%以上の自己資本比率があると安定性が高いと言われています。ファーストリテイリングの自己資本比率44.5%(2021年8月時点)で、非常に高い比率です。
また、有利子負債は約3,707億円となっています。一見すると多いように見えますが、自己資本比率や利益から見てまったく問題ない水準と言えるでしょう。

ソフトバンクグループ

ソフトバンクグループは情報通信業界の最大手企業です。2021年3月期の連結純利益(国際会計基準)は4兆9,879億円となり、国内企業で過去最高を更新しました。ソフトバンクと聞くと、携帯電話会社であると思われている方も多いかもしれません。しかしソフトバンクグループは、もはや携帯電話会社ではなく投資会社です。ソフトバンク・ビジョン・ファンドなどの投資事業が、同社の利益の大部分を占めています。

ソフトバンクグループは日経平均225の銘柄に採用されており、同社の株価は小売業のユニクロやGUを展開するファーストリテイリングと並んで影響が大きい値嵩株としても有名です。ソフトバンクグループだけで、日経平均株価が100円以上動くことも決して珍しくありません。なお、ソフトバンクグループの2022年2月1日現在の株価は5,067円となっています。

(1)成長性
年20%以上の増収率を達成していれば、かなり成長性が高い会社であると言えるでしょう。しかし、ソフトバンクのような巨大企業になると、売上高はちょっとした要因で大きく動くことになります。そのため、成長性に重点を置く必要はないでしょう。
ソフトバンクは日経平均株価にもっとも寄与度の高い影響力の大きい会社ですし、先述の通り、実質的には投資会社のため、あまり成長性は関係ないと言えます。

(2)収益性
ソフトバンクグループの主な収益源は投資収益です。当然ながら、投資収益はマーケット環境によって大きく左右されますので、なかなか安定した収益を計上しつづけることは難しいでしょう。実際、2019年度の営業利益はマイナスでしたが、2020年度の決算は日本企業過去最高益の4兆9,800億円となっています。

(3)安全性
ソフトバンクグループの自己資本比率は2021年3月時点で22.32%です。近年、ソフトバンクグループは自己株式を積極的に購入している傾向が強いようです。そのため、今後も自己資本比率は上昇していくかもしれません(2020年3月時点の自己資本比率は15.87%)。
また、余裕があれば有利子負債の有無についても見ておきましょう。ソフトバンクグループの有利子負債比率は1.91倍と高い水準にありますが、ソフトバンクは積極的に借り入れして投資に回す戦略をとっています。そのため、有利子負債が多いからと言ってすぐ問題になることはないでしょう。

ソニーグループ

ソニーはエレキやエンタメ、金融コングロマリットの総合力の会社です。ソニーの製品を何かしら使ったことがある方は、多くいらっしゃるでしょう。

東京通信工業からソニーに社名変更をした際、メインバンクから「ソニー株式会社では何の会社か分からないから、せめてソニー電子などにしないか」と言われ、創業者の1人である盛田昭夫氏が「ソニーが将来、エレクトロニクスの会社であるとは限らない。現在の経営者が将来のソニーの可能性を狭めることはしたくない」と述べたことは有名です。なお、ソニーグループの2022年2月1日の株価は12,770円となっています。

(1)成長性
ソニーグループの2021年の売上高は8兆9,993億円に対し、2022年の予想売上高は9兆9,900億円と約11%の増収になっています。過去の売上実績を見ても、かなり順調に推移していることが分かるでしょう。

(2)収益性
ソニーグループの最終利益は2020年が1兆1,717億円、2021年が7,300億円です。 減益ではありますが、日本有数の収益力に変わりはありません。

(3)安全性
ソニーグループの自己資本比率は、前述した目安と比較して21.2%と低いことが分かります。ただし、積極的に事業へ資金投下しているため、そこまで大きな問題ではないでしょう。

商船三井

商船三井は、日本郵船・川崎汽船と並ぶ日本の三大海運会社の1社です。LNG輸送分野に強みを持ち、海運業界では日本第二位の売上高と利益を誇ります。
日経平均株価にも採用されており、値嵩株としてたびたび注目を集めています。1日で10%以上の値動きすることも多く、デイトレード銘柄としても有名です。なお、商船三井の2022年2月1日現在の株価は9,280円となっています。

(1)成長性
成長性は一般的に、増収率 (売上がどれくらい伸びているかを示す指標)で判断されます。年20%以上の増収率を達成していればかなり優秀であると言われています。
商船三井の2021年の売上高は9,914億円に対し、2022年の予想売上高は1兆2,600億円と127%の増益です。大きく売上高を伸ばしているのが分かるでしょう。

(2)収益性
最終利益は2021年が900億円、2022年の予想は6,300億円の黒字で、V字回復しています。

(3)安全性
安全性は自己資本比率が高いと良いとされ、安全性が高いとされている目安は33%です。商船三井の自己資本比率は27.6%ですが、この規模の企業であればまったく問題ないでしょう。

任天堂

ゲームの歴史は古く、現在30代以上の方はファミリーコンピューター(通称:ファミコン)からゲームを始めた方がほとんどでしょう。このファミコンを発売したのが任天堂です。

任天堂はコロナ禍の中、ゲーム需要の波に乗って大きく業績を上げました。「あつまれ どうぶつの森」などのゲームタイトルは、コロナ禍でも頻繁に耳にしたことでしょう。なお、任天堂の2022年2月1日現在の株価は56,720円となっています。

(1)成長性
任天堂の2020年3月期の売上高は1兆7,589億円。2019年3月期は1兆3,085億円でしたので、伸び率は約136%です。
2020年はコロナでゲームの需要が高まったとはいえ、成熟した大企業としては驚異的な売上高になっています。また、2022年3月期の売上高予想は1兆6,500億円であることから、順調な成長が期待できるでしょう。

(2)収益性
任天堂の2021年3月期の最終利益は約4,800億円でした。2022年3月期の予想最終利益は4,000億円です。今後は、ゲーム機だけでなくスマートデバイス分野での収益進捗も期待できることから、さらなる高収益が見込めるでしょう。

(3)安定性
安定性は自己資本比率で確認できます。一般的に自己資本比率が33%以上の場合は、その企業の安全性は高いと言われています。任天堂の2021年3月期の自己資本比率は76.60%であり、安定性は高いと言えるでしょう。
また、余裕があれば有利子負債の有無についても確認してください。任天堂の有利子負債は「0」で、非常に健全性が高くなっています。

まとめ

まとめ

今回は、値嵩株について説明しました。値嵩株は、日経平均株価に大きな影響を及ぼすなど株式投資を行う上で非常に重要なものになります。

値嵩株は、最低購入金額が高いなどのデメリットがありますが、中長期で保有すると上昇しやすいなど様々な特徴があります。今回の記事を参考に値嵩株の理解を深めていただければ幸いです。

監修者プロフィール

渡辺 智(ワタナベ サトシ)
FP1級、証券アナリスト。

<プロフィール>
大学商学部卒業後は某メガバンクに11年勤務し、リテール営業やプライベートバンカー業務、資産運用コンサルティング(投資信託、保険、債券、外貨預金など)、融資関係業務(アパートローン、中小企業融資)などを経験。銀行在籍中、2度の最優秀営業賞を受賞。銀行在籍時の金融商品販売額は500億円を超え、3000人を超える顧客に金融商品営業を行う。その後、外資系保険会社でコンサルティング営業として従事し、現在は業務経験・知識を活かして金融ライターとして独立。難しい金融を分かりやすく伝えることをモットーに活動中。