スワップってなに?

多くの金融商品では使われているスワップ取引について、関連する用語や例などを交えて、わかりやすく説明します。

スワップってなに?

スワップの関連用語集

スワップの関連用語集

スワップは日本語にすると「交換」のことを指します。そしてスワップ取引とは、相対する当事者間でお互いに「等価」と思われるキャッシュフローを交換する取引のことです。
スワップについて詳しく説明していく前に、まずはスワップを理解するのに必要となる関連用語を覚えておきましょう。

・エクイティスワップ
株式(エクイティ)のパフォーマンス(リターン)と金利を交換する取引。「株価スワップ」「株価インデックス・スワップ」とも呼ばれ、広義のスワップ取引です。

・キャッシュフロー
企業の活動による実際の現金の流れのこと。現金収支とも言います。

・金利スワップ
同一通貨間で異なる種類の金利の、将来におけるキャッシュフローを交換する取引。

・クーポンスワップ
通貨スワップの一つ。通貨スワップの中でも、元本交換をせず異なる通貨の金利部分の交換のみを行う取引。

・コマーシャルペーパー
企業が短期資金調達の目的で、公開市場において割引形式で発行する無担保の約束手形のこと。

・スワップポイント
受取金利と支払金利を金額で示したもの。

・想定元本
金利を計算するために設定された名目上の元本のこと。

・通貨スワップ
異なる通貨間で異なる種類の金利の、将来におけるキャッシュフローを交換する取引。

スワップ取引とは?

スワップ取引とは?

スワップ取引とは「将来の一定期間に起こる、経済価値が等価であると考えられる2つのキャッシュフローを、相対する当事者間で合意した条件のもとで支払い・受け取りをお互いに行う取引」のこと。スワップ取引の代表として挙げられるのが、金利スワップと通貨スワップです。すべてのキャッシュフローが単一の通貨で受け払いされるスワップは、広義における金利スワップ、キャッシュフローに複数の通貨が登場する場合は、広義における通貨スワップと呼びます。

公表されているスワップ取引でもっとも古いものは、1981年のIBMと世界銀行との間で取引された通貨スワップです。IBMの米ドル調達ニーズと世界銀行のスイスフラン調達ニーズが存在し、お互いの米国市場・スイス市場における比較優位性(当時の市場間の不合理性制約)によって生じたものを利用することで、おのおのが直接起債するよりも有利な条件で調達が可能となりました。

主なスワップの種類

主なスワップの種類

スワップにはさまざまな種類がありますが、主に以下の4つが代表格です。

  • 金利スワップ
  • 通貨スワップ
  • クーポンスワップ
  • エクイティスワップ

それぞれ、わかりやすく解説していきましょう。

金利スワップ

金利スワップとは、同一通貨間で異なる種類の金利の、将来におけるキャッシュフローを交換する取引です。この取引は元本の交換はなく、金利計算の際に名目上の元本(想定元本)が契約されます。基本的には、固定利付債の固定金利部分と変動利付債の変動金利部分とが切り離され、相互に交換される取引です。

円金利同士の交換であれば円円スワップと呼ばれます。この円円スワップには、2通りの取引がありますのでしっかり理解しておきましょう。

(1)固定金利を支払って、変動金利を受け取る
(2)固定金利を受け取って、変動金利を支払う

例えば国の制度融資をはじめ、低金利の長期固定金利融資により資金調達が可能な場合などに、スワップ取引を通じて低利固定金利を変動金利に変えることができます。一見すると、せっかくの低利固定金利を変動金利化することで、金利上昇リスクにさらされると思われるかもしれません。しかし、金利情勢によっては銀行の調達コストを下回る資金調達が可能となり、設備投資などの実需がなくても調達しておくことで銀行に預金すればサヤ抜きできます。こうした取引は、グローバルに活動する大企業などでよく利用されています。

企業の資金調達方法の一つにコマーシャルペーパーの発行があります。しかし、コマーシャルペーパーは短期間での償還となるため、発行を繰り返す間に金利上昇により調達金利が上昇する可能性があるでしょう。つまり、景気動向などから判断して近いうちに金利上昇の可能性が高いと予想した場合、コマーシャルペーパーによる資金調達を継続しながら同時に金利スワップ取引を行うことで、短期の変動金利を長期の固定金利に交換でき、将来の金利上昇に備えることが可能です。

身近な金利スワップの例としては、銀行が取り扱っている固定金利型の住宅ローンが挙げられます。一般的に銀行は、1年や2年の短い期間の定期預金などで資金を集めています。しかし、これを原資に固定金利型の住宅ローンを貸し出した場合、将来もし定期預金金利が上昇し、この住宅ローン金利を上回ると、逆ざやに陥る可能性があるでしょう。そこで銀行はこのリスクを回避するために、金利スワップにより金利上昇のリスクをヘッジするのです。このように、金利スワップは身近な金融商品にも使われていますので、しっかり理解しておきましょう。

通貨スワップ

通貨スワップとは、異なる通貨間で異なる種類の金利の、将来におけるキャッシュフローを交換する取引です。この取引は金利スワップと違って元本の交換があり、金利計算の際に2つの通貨ごとに元本(想定元本)が契約されます。債務の交換によって為替リスクが回避されるとともに、債券市場における発行者の資金調達力や信用力の格差を利用することで、調達コストを低減させることが可能です。

通貨スワップは、金利スワップと同様に現在価値の等しいキャッシュフローの交換です。しかし、スワップ開始時と満期日に実際に元本の交換が行われること、2通貨分の金利変動リスクと為替リスクがあるという点で金利スワップとは異なります。
通貨スワップは、外債発行に際して利用されるケースが多いでしょう。具体的に、年利5%の1,000万米ドルの米ドル建て債券を発行した、外債の発行体であるA社を例として見ていきます。
A社は、もともと円の資金を必要としていました。そのため、調達した米ドルを日本円に転換する必要があります。そこで、A社は銀行と通貨スワップの契約をしました。通貨スワップによってA社は取引時に銀行へ1,000万米ドルを支払い、その代わり、そのときの為替レートが100円だったため、10億円(年利1%)を受け取ります。途中の金利受け払いでは年に5%のドル金利を受け取り、1%の円金利を支払います。そして、通貨スワップ終了時には1,000万米ドルを受け取り、10億円を支払うことによって通貨スワップ取引は完了となります。

A社は利払いについて、銀行から受け取るドル金利をそのまま外債のクーポン支払いに充てていました。終了時に受け取る1,000万米ドルを外債の償還金に充てれば、結局のところ米ドル債による資金調達が、実質的に円建て債券を発行したのと同じことになり、為替リスクの回避が可能となるわけです。

外国政府や国際機関が発行するサムライ債(円建て債券)には通貨スワップが密接に関係しており、円での資金調達後は米ドルや自国通貨建てに変えます。金利が他国対比相対的に低く、世界一の債権国である日本や世界中の資産家が集まるスイスの通貨を利用すれば安く調達できると考え、債券の発行に利用しているのです。また、通貨スワップは資金調達だけでなく、外国債券投資をするときに、円べースでの運用利回りを確定する場合などにも使われています。

クーポンスワップ

クーポンスワップは通貨スワップの一つで、通貨スワップの中でも元本交換をせず、異なる通貨の金利部分の交換のみを行う取引のことです。「元本が円、クーポンが外貨」というリバースデュアル債などの円ヘッジに利用されています。

エクイティスワップ

エクイティスワップとは、株式のパフォーマンス(リターン)と金利を交換する取引で、「株価スワップ」「株価インデックス・スワップ」とも呼ばれ、広義のスワップ取引に分類されます。従来、エクイティスワップは賭博性が高いとして禁止されていました。しかし約20年前に解禁され、大手証券に続き都市銀行などの大手銀行が相次いで参入している分野です。大手銀行は銀行本体が株式関連業務を行うことで、グループ全体の金融力を底上げできると考えているのでしょう。今後、さらに銀行と証券会社の業務の垣根がなくなると見られています。

スワップの例

スワップの例

スワップの概念を理解するのは、なかなか難しいかもしれません。しかしスワップは、私たちが利用する金融商品でもよく使われている取引手法です。ここでは身近なスワップの代表例として、「FXの金利スワップ」「住宅ローン」の二つを解説します。

FXの金利スワップ

FX取引は、日本円と米ドルなどの異なる2か国の通貨を使う金融商品です。例えば日本円を売って米ドルを購入する場合、米ドルが上昇(円安)になれば利益が出ます。通貨の交換だけでなく、実は金利の交換も行われていることになります。通貨ごとに金利は異なるため、通貨本体だけでなく金利も交換しないと不公平に思われる方が多いのではないでしょうか。

例えば日本円の金利が1%、米ドルの金利が3%とします。そして日本円を売って米ドルを購入し、米ドルを保有するとしましょう。この例では、米ドルの金利である3%を受け取ることができます。しかし、日本円に戻したときの金利は1%なので、この3%の金利から日本円の1%を払わなくてはいけません。このことを「金利差調整額」、もしくは「スワップポイント」と呼びます。

つまり、金利の低い通貨を売って金利の高い通貨を買うことで、スワップポイントを受け取ることが可能になります。逆に、高い金利の通貨を売って低い金利の通貨を買うと、スワップポイントはマイナスになってしまいます。コロナショックの影響で、先進国を中心に政策金利は軒並み低い状態が続いています。しかしメキシコやトルコ、南アフリカランドなどの新興国の政策金利は、いまだ高い状態です。このように高い金利の通貨を利用すれば、多くのスワップポイントを受け取ることができます。

住宅ローン

住宅ローンを「固定金利」で借りているものの、変動金利に変えたいというAさんを例にします。Aさんが変動金利に変えたい理由は、今後の金利が下がると予測しているから。一方、Bさんは住宅ローンを「変動金利」で借りていますが、今後金利が上昇すると予測しているので固定金利に変えたいと思っているとします。
真逆の希望を持っている2人の悩みを解決する方法は、Aさんが固定金利をBさんに受け渡し、Bさんが変動金利をAさんに受け渡すことです。この受取金をおのおのの住宅ローン返済に充てることで、実質的な金利の交換を行うことになります。

住宅ローンの固定金利は、このようにスワップが使われています。変動金利の金利を支払っても、金利スワップで同額の変動金利を受け取るので、変動金利同士が相殺されるのです。残るのは金利スワップの固定金利の支払いのみとなり、この仕組みを使うことで固定金利の住宅ローンを利用できます。

まとめ

まとめ

スワップ取引について、関連用語も含めながら詳しく解説しました。スワップ取引について理解するためには、まず関連用語について知っておく必要があります。

スワップ取引はFXのスワップポイントや住宅ローンなど、身近な金融商品にも利用されている仕組みです。また投資信託の中にも、スワップ取引を利用している商品はたくさんあります。そのためスワップ取引の理解は、資産運用を行ううえでとても重要と言えるでしょう。ここで解説した内容を参考に、スワップ取引についてしっかりと理解を深めましょう。

監修者プロフィール

渡辺 智(ワタナベ サトシ)
FP1級、証券アナリスト。

<プロフィール>
大学商学部卒業後は某メガバンクに11年勤務し、リテール営業やプライベートバンカー業務、資産運用コンサルティング(投資信託、保険、債券、外貨預金など)、融資関係業務(アパートローン、中小企業融資)などを経験。銀行在籍中、2度の最優秀営業賞を受賞。銀行在籍時の金融商品販売額は500億円を超え、3000人を超える顧客に金融商品営業を行う。その後、外資系保険会社でコンサルティング営業として従事し、現在は業務経験・知識を活かして金融ライターとして独立。難しい金融をわかりやすく伝えことをモットーに活動中。