株の長期保有とは?

株の長期保有についてメリットとデメリット、期間や短期保有との違いなどを解説します。

株の長期保有とは?

株の長期保有とは?

株の長期保有とは?

明確に定義されているわけではありませんが、一般的には10年以上にわたり株式を保有することを長期保有と呼びます。長期的に保有することにより、「インカムゲイン」と「キャピタルゲイン」で利益を得ることが可能です。

インカムゲインとキャピタルゲイン

・インカムゲイン

インカムゲインとは、資産を保有し続けることで、配当金や株主優待で得られる収益のことです。配当や株主優待を受けるためには、権利確定日に株主として名簿に名前が載っていなくてはいけません。

インカムゲインは、権利確定日の2営業日前の権利付最終日までに、株式を購入する必要があります。株主総会の議決権もこれにより得られますが、株主優待や議決権は原則、一定の株数(単元)を保有していないと与えられません。一方、配当は単元に達していなくても受け取ることが可能です。

・キャピタルゲイン

キャピタルゲインとは、保有している資産の価格が変動することで得られる売買差益のことです。株式を買った時よりも、売った時の方が値上がりした場合の利益のことを言います。反対に、売った時に値下がりしてしまい、発生した損失が「キャピタルロス」です。

長期保有することによるリターンの源泉は、企業の成長による業績の向上、事業規模の拡大です。業績がよい企業は配当も増配する傾向にあります(配当を増やさず、事業への再投資に充てている場合もある)。長期保有に対し、短期保有では主にキャピタルゲインを狙うもので、短期での売買を繰り返して利益を積み重ねていきます。

長期保有メリット/デメリット

長期保有メリット/デメリット

長期保有と短期保有について、それぞれのメリットとデメリットについてご説明します。まずは、長期保有から見ていきましょう。

長期保有のメリット

長期保有では、インカムゲインを長期的に得られるメリットがあります。配当や株主優待を長期的に得ることで、株式の売却益だけでなく、コツコツと利益を積み上げることが可能です。また、長期間保有している間に企業が成長し、大きく株価も成長して大きな利益を得られるかもしれません。中には数年間業績の低迷が続いていても、ヒット商品の開発などにより10年後、20年後に現在の株価の10倍・20倍など成長を遂げる企業もあります。

また、短期的に株価を確認しなくてよいという点もメリットでしょう。長期保有の場合、基本的には目先の株価に一喜一憂する必要はありません。株価をこまめにチェックする時間がなくても、腰を据えてじっくり企業の成長を待つことができます。

その他、無駄な手数料が発生しないこともメリットと言えるでしょう。株式を売買する際には手数料が発生します。そのため、短期で売買を繰り返していると手数料を多く払うことになるでしょう。しかし、長期保有は一度購入したら基本的に売買せず長期的に保有するため、無駄に手数料を多く払う必要はありません。

不況やマイナスな出来事により、株価は大きく値下がりすることが考えられます。株価が暴落した場合、長期で保有していることで、以後回復した場合は大きな利益を得られる可能性があることも、長期投資のメリットとも言えるでしょう。

暴落の要因や企業の財務状態にもよりますが、一時的な暴落であれば、回復が予想される場合に利益を狙うことができます。ただし、暴落の要因が企業の体質的な問題が原因で発生した事故だったり、財務状態によってはさらに値下がりしてしまったり、塩漬け状態(※)になってしまったりする可能性もあるでしょう。

(※)塩漬け状態:買い付けた銘柄の株価が大幅に下落し、売却した場合に損が発生するため、売却できずに長期で保有している状態のこと。

また、一定期間株主でいると株主優待の内容がグレードアップする、「長期保有優遇」を受けられる場合もあります。

長期保有のデメリット

長期保有のデメリットとして、長期的に資金が固定されることが挙げられます。長期投資は長い間にわたり、一つの銘柄を保有し続けることです。そのため、資金が一つの銘柄に固定されてしまいます。その間、他の銘柄に投資することで得られたかもしれない利益を逃すこともあるでしょう。

そして、利益が出るまでに時間がかかります。短期保有であれば大きな相場の動きではなく、小さな値動きの幅を利用し、早ければ数秒後や数分後に利益を得られることもあります。しかし、保有期間が長いと利益を確定させるために、当然ながら時間がかかるのです。しかも、利益が出るかどうかはわかりません。場合により、含み損を抱えたまま保有しなければならない可能性があります。

長期で保有していれば、株価はよい時もあれば悪い時もあります。株価が下落すると、いつ回復するかわかりません。含み損を抱えたままになり、これから回復するのか低迷したままなのか、さらに下がってしまうのかが不明なまま保有しなければならないこともあるでしょう。特に、景気の要因ではなく企業の体質面や販売不振などの影響で株価が下落した場合は、株価が低迷したまま数年その水準で推移しているケースも少なくありません。

もちろん、ヒット商品の開発で業績が向上したり、技術の開発などによって株価が下落前より成長したりすることもあります。しかし、これから株価が回復するかどうか判断することは難しく、損失を抱えたまま保有しなければならないケースがある点はデメリットと言えるでしょう。

短期保有のメリット/デメリット

短期保有のメリット/デメリット

短期保有のメリット

短期保有のメリットは長期保有の逆で、資金を持ち越すことが少ないことが挙げられます。短期保有では短期で売買を繰り返すので、長期間一つの銘柄に投資していることはありません。そのため、資金を一つの銘柄に固定して塩漬け状態になったり、他銘柄に投資することができなかったりすることがありません。

短期で売買を繰り返すため、手元の資金で何度も投資でき、利益を積み重ねられるので資金効率がよいと言えるでしょう。

また、取引のスタイルにもよりますが、早ければ数秒後や数分後といった短期間で利益を出せる可能性があります。長期投資と比べて利幅は小さいですが、短期の価格変動によって得られた小さな利幅を積み重ねられるのは短期保有のメリットと言えるでしょう。

短期保有のデメリット

短期保有は、日中に株式チャートを細かくチェックする必要があります。株式市場が開いているのは平日の日中です。そのため、仕事などで忙しいとチェックが難しい場面もあり、売買のタイミングを逃してしまうこともあるでしょう。

また、相場の動きが小さいため、大きな利益が出しにくい点もデメリットです。長期投資は大きな相場の変動を狙うもののため、あまり頻繁に株価をチェックする必要もありません。

しかし、短期保有では相場変動を把握できていないと、相場が予想と反対方向に大きく動くようなケースで損失が大きくなり、積み重ねてきた利益が消えてしまう可能性があります。また、株式を売買する際には取引手数料がかかり、売買を繰り返す短期保有では手数料負担が大きい点もデメリットになるでしょう。

株の長期保有に向いている人

株の長期保有に向いている人

長期保有に向いている人の特徴として、日中忙しい人や長期的に固定できる余裕資金を持っている人、企業の長期的な成長を見込んでいる人などが挙げられます。特に、「企業の長期的な成長を見込んでいる人」という点がポイントです。

株式投資とは、「他人のビジネスにお金を出し自分も経営者になること」と言えます。その企業がどのような事業を行い、どのように収益を得て返済してくれるのか、自分がお金を出す企業について知るのは重要なことです。

そして、事業は短期で収益を出せることもあれば、じっくり時間をかけなければならない場合もあります。そのビジネスにお金を出すからには、経営陣がどのような考え方で、どのように利益を得ようと考えているのかを知ることが大切です。また、定期的に発表されるIR情報から、業績やその業績となった理由、今後の見通しなどをチェックしつつ、長い目で見て自ら判断していかなくてはいけません。

また、株式投資は余裕資金の範囲で行うことが基本です。株式は売却すれば現金化できますが、お金が必要になったタイミングで売却しようとした時に株価が下落していたり、今売却するよりもまだ保有していた方が利益を期待できたりする場合もあるでしょう。そのため、人生設計を考え、仮に大きく損失が発生しても今後の人生に必要な資金が不足しないよう、余裕資金の範囲で行うことが大切です。

株の長期保有のコツ

株の長期保有のコツ

株を長期保有するコツは、3~5年に一度くらいは大きな下落の可能性があると認識しておくことです。過去に大きく成長している企業も、その間には大きく株価が下落することがあります。その際、慌てないためにも大きな下落の可能性をよく理解しておいてください。

また、下落・横ばい展開が訪れても、情報を集めて冷静に対応することです。業績の低迷、不況などの要因によってそのまま回復しない企業もあれば、ヒット商品の開発や新たな事業展開、技術の開発などにより大きく成長する企業もあります。

今は低迷していても、企業の財務自体が健全であれば今後どのような方針を目指し、どのような戦略を立てていくのかによってさらなる成長を遂げるかもしれません。こういった企業の考え方や技術などの定性的な情報、あるいは財務諸表などにより得られる企業の安全性や収益の実績など定量的な情報によって分析する手法を、「ファンダメンタルズ分析」と言います。

そして、定期的に決算情報や株価の確認を行い、目標に対する実績によって目標をどの程度達成できそうなのかに注目し、今後の成長の可能性を判断していきましょう。

また、投資可能な資金のうちどの程度の割合を投資して、どの程度の割合を現金で持っておくのか資金管理を行うことも大切です。複数の銘柄に分散投資を行うことで、株価が暴落した場合のリスクを分散することも重要と言えるでしょう。その企業の成長を長い目で見守り、短期的な株価の変動に一喜一憂することなく、腰を据えて配当や株主優待を楽しむ余裕を持つことも大切です。

まとめ

まとめ

株の長期保有について解説しました。有名なウォーレン・バフェット氏も長期保有を行い、「10年待てないなら株を買ってはいけない」というような言葉を残しています。本来、株式投資とは長期でその企業の成長に対して資金を投じるものです。そのため、長期保有こそが株式投資の基本とも考えられています。

短期保有で、機械的に小さな利益を積み重ねていくのもよいでしょう。しかし、株式投資の醍醐味は配当や株主優待などを受け取りながら、将来的に企業が大きく成長し、自身の資産を増やすことが期待できることとも言えます。

自分が日常生活や仕事で使用している商品やサービスを提供している企業、あるいは今後社会に必要とされるであろう商品やサービスを提供している企業など、身近な企業から考えてみると興味を持ちやすく、市場の動向もわかりやすいのではないでしょうか。

また、長期保有する銘柄の選び方のポイントとしては、以下のような点に注意しましょう。

・業績が成長しているか

・配当などの利益率

・株価が割安であるかどうか

・株主優待の内容が自分にとってメリットの大きなものであるか

・外部要因(為替、金利、資源価格、景気)などに左右されにくいか など

これらの情報から銘柄を選定し、複数の銘柄に分散投資するなど予想に反した値動きをした際の対策も考えておくことで、安定的に利益を狙っていくことができるでしょう。

なお、株式投資は余裕資金の範囲で行うことが必要です。特に個別の銘柄を保有する場合には株価が暴落し、資産が大きく減ってしまう場合もあります。万が一、そうなっても、問題ない金額の範囲で行うようにしてください。そのためにはライフプランを考え、将来的に必要になる資金を確保し、どの程度の余裕資金を持っておけるかを知ることが大切です。

監修者プロフィール

小川 洋平(オガワ ヨウヘイ)
日本FP協会認定 CFP®、合同会社clientsbenefit 代表、FP相談ねっと認定FP、SG中越代表

<プロフィール>
25歳でお金の知識・営業経験ゼロから保険営業の世界に飛び込み6年半従事。2年目に将来の資産形成のため金融知識が必要なことに気が付き、FPの勉強を始めて金融・経済の知識を学ぶ。その後、保険に限らずあらゆるお金の面でクライアントにとってベストな提案をしたいという想いで、商品販売ではなく相談業務を開始。2013年より資産形成の考え方に関するセミナーを自主開催。その他、大手金融機関からの委託により実施。現在は小規模事業者の年金や資産運用のサポートを中心に相談・経営支援の業務に携わり、確定拠出年金など起業家の将来の資産形成と経営のサポートを行っている。投資信託や資産形成の分野を得意としている。