株主総会とは?

株主総会とはどのようなものなのか。また、どういった流れで進められるのか、株主総会の議決権を得るための注意点等を解説します。

株主総会とは?

株主総会とは

株主総会という言葉は、ニュースや新聞など耳にしたことのある方が多いでしょう。しかし意味を問われれば、ちゃんと説明するのは難しいかもしれません。株式投資を行ううえでは配当や株主優待、売却益など、直接的な利益に注目しがちです。しかし、株主総会の議決権を持つということも、株式投資の醍醐味の一つと言えます。

株主総会では、株式投資を行っていくうえで非常に重要な判断材料となる情報も得られるはず。権利をお持ちの方は、株主総会への理解を深めたうえで参加してみると良いでしょう。

株式会社の持ち主である株主が会社にとっての意思決定を行う会議

会社の意思決定を行うもっとも重要な機関が株主総会で、会社の基本的な方針や重要な経営戦略や人事を決めたりします。

株主総会は、会社の実質的な所有者である株主を構成員としています。株主総会において株主は、「議決権の行使」という形で自らの権利を行使することができます。
株主総会は、日本の会社法において、取締役とともに必要機関とされているものです。取締役会や監査役、監査役会などは任意設置期間であり、これらが設置されていない場合は株主総会が代替機能を有します。そのため、一定の要件を満たせば会議を開催しない書面決議も認められていますが、基本的には開催が義務付けられているのです。

株主は大きく分けて、「共益権」と「自益権」の2つの権利を持ちます。これらの権利を行使すれば利益を受け取ったり、会社の意思決定に参加したりすることができます。

・共益権
株式会社の意思決定の場への参加、経営の監督と是正をできる権利。
代表的なものに株主総会においての議決権があります。権利を行使することで経営が改善し、株主全体の利益に繋がるものが「共益権」です。その他にも、取締役会の招集の請求、訴訟の提起権、差し止め請求権、取締役会の議事録閲覧等請求権などがあります。
なお、株主総会での議決権など単独株主権は一単元でも保有していれば認められ、株主総会招集権や解散請求権などの招集株主権には一定の株式の保有が必要です。

・自益権
株を所持している会社から経済的な利益を受ける権利のこと。権利行使の結果が、当該株主個人の利益だけに関係するのが自益権です。
代表的なものとして配当を受け取る権利があります。これは利差配当請求権と呼ばれ、会社が利益を上げて配当を出すとすべての株主は持ち株数に応じて配当がもらえるというもの。
自益権にはこの他、増資の場合に新株を引き受けられる新株引受権、会社解散時に残った財産の分配を受けられる残余財産分配請求権、会社合併の際の株式買い取り請求権などがあります。

株主総会議決権を得るには

株式を保有して株主総会議決権を得るには、権利確定日に株式を保有している必要があります。権利確定日とは、株主としての権利を受け取ることができる日。この権利確定日に株主の名簿に名前が記載されていることが必要で、そこで株主総会の議決権、配当を受け取る権利、株主優待を受け取る権利等を得ることができます。

ただし、権利確定日に株式を買えば良いというわけではありません。権利確定日の2営業日前までに株式を購入している必要があり、その日を「権利落ち最終日」と言います。これは、株式を購入してから株主の名簿に名前が載るまでに2日間かかるため。権利落ち最終日までに株式を購入しておく必要性については、見落としがちなのでご注意ください。

また、株主総会議決権を得るためには一単元以上保有することが必要です。ミニ株等の単元未満株では配当を受け取る権利はありますが、株主優待を受け取る権利(一部の銘柄を除く)や、株主総会の議決権は与えられません。信用取引で購入した株式にも、参加する権利が認められていませんので注意しましょう。

株主総会の成立

株主総会が成立するには、出席した株主の持つ議決権数が出席していない株主も含めた全議決権数の過半数以上でなければ成立しません。法令に沿って株主総会が行われていない場合、決議が無効になる場合もあります。

株主総会の種類と開催時期

株主総会の種類と開催時期

定時株主総会

定時株主総会とは、毎事業年度の終了後に必ず開催される定時株主総会のこと。通常は会社決算後3ヵ月以内に招集し、開催されなければなりません。1年を1事業年度と定める会社がほとんどですが、半年を1事業年度とする会社では半年に1回定時総会を招集することになります。

定時株主総会では当事業年度の決算書類の承認・報告、事業報告の内容の報告、及び余剰金の配当の決定を会議の目的としますが、その他の事項を決議することも可能です。また、本会で役員の任期が満了する場合には、役員の選任あるいは定款の変更等の議題も会議にかけられます。

臨時株主総会

定時株主総会以外に、必要に応じていつでも臨時に開催する株主総会のこと。
事業目的の定款変更を行ったり資本金を増額したり、あるいは取締役の欠員の補充役員の選任、新株予約権を発行するときなど臨時で決議が必要な場合に開催します。

会社法では株主総会について必要があるときにいつでも招集できると定めており、臨時で決議が必要なことがある場合等に開催。定時株主総会は決算日から3ヵ月以内に開かれますが、臨時総会はいつでも必要なときに開かれます。定時株主総会との相違点は招集時期と付議事項に関する点のみで、招集手続きや決議方法などに違いはありません。

株主総会での決議について

株主総会での決議について

株主総会の決議はその内容に応じて、普通決議、特別決議、特殊決議の3種類に分けられます。

普通決議

もっとも一般的な決議方法が普通決議です。全議決権の2分の1超を有する株主が株主総会に参加し、その参加者が持つ議決権の内2分の1超の賛成を得ると可決。このような決議の際、株主総会は資本多数決といった形式を取られています。資本多数決は単に参加者で多数決を取るのではなく、1株あたりに1つの議決権が与えられていて、株式の所有数が多ければ多いほど議決権が大きくなるというものです。

特別決議

特別決議は議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の多数で決議されます。特別決議となる内容は定款の変更や事業譲渡、株式の分割、資本金額の減少、株式併合など。会社組織の変化や株式に関する決議事項を取り扱うことが多くなっています。

特殊決議

特殊決議は、その会社の株主総会において議決権を行使できる株主の半数以上であって、参加している株主の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって行わなければなりません。株式の譲渡制限のための定款の変更など、経営の最重要課題について決議されます。特別決議と特殊決議は会社法において、普通決議よりも厳格な要件を課せられている重要事項の決議です。

株主総会で決まること

株主総会で決まること

株主総会で決議される内容は多岐にわたり、会社の経営に関わることについて決議されます。

株式会社は取締役などの経営陣が株主から受けた出資金を元手に利益を上げていき、利益の一部を配当という形で株主に還元します。株主にとって、取締役の選任は株主の利益を左右する重要なことです。そのため、取締役などの経営陣は会社が候補者を提示しますが、実際に決議するのは株主となります。株主総会で決議されることは、「会社の根幹に関わる事項」、「会社の役員に関する事項」、「株主の利害に大きくかかわる事項」と大きく3つに分けられるでしょう。

会社の根幹に関わる事項

定款の変更や新株発行、会社の合併、会社分割、減資などが会社の根幹に関わる事項です。会社の在り方を根本から変更したり、組織を大きく変更したりする場合は、株主総会での承認が必要になります。

役員の人事

株式会社は所有と経営が制度上分離しており、会社の実質的所有者は出資者である株主、経営者である取締役は株主から経営を任されている関係にあります。株主にとって経営陣である取締役の選任は利益に多大なる影響を及ぼすため、選任及び解任の権限は株主が有しています。そのため、経営者である取締役や監査役の選任や解任なども株主総会で行われるのです。

株主の利害に関わること

剰余金の配当や株式譲渡制限会社における新株発行、自己株式の取得、役員報酬額の決定などが株主の利害に関わることとされています。例えば役員の報酬を役員が無制限に決定できる場合、業績にかかわらず高い役員報酬を設定されてしまい、会社の利益に大きな影響を与えるでしょう。そのため、株主の利害に関わる事項とされて株主総会で決議されることになっています。

株主総会の流れ

株主総会の流れ

定時株主総会は期末から3ヵ月以内に実施されるのが一般的です。決算後、計算書類(決算)を承認して確定させ、税務申告を終えるという流れが多くなっています。通常は取締役会を開き、そこで株主総会の開催日時や場所、議題を決定。株主総会の内容が決まったら株主に招集通知を送ります。株主に出席と準備の機会を与えるため、株主総会の日の2週間前までに送られてきます。

株主総会は通常平日に行われるため、会社員などで時間が取れない場合は、郵送により議決への賛否の投票を行うことも可能です。郵送のためのハガキや出席するために必要な議決権行使書も、株主総会の招集通知に同封されています。議決権行使書は右側が切り取られるようになっていますが、切り取らずにそのまま持っていきます。

株主総会に参加できない場合は議決権行使書の右側を切り離して賛否表示欄に丸を付け、郵送で議決権を行使することが可能です。

株主総会への参加について、どのような服装で参加すれば良いか迷う方がいるかもしれません。基本的に、スーツ等ではなく普段着でも問題ありません。

株主総会の流れに関して規定はないものの、会社の状況説明や具体的な議案を進め決議をとり、株主からの質問事項を受け付け、回答することが一般的です。一例として、株主総会当日は以下のような流れになっています。

  1. 議長の就任
  2. 開会宣言
  3. 議事署名人決定
  4. 監査報告読み上げ
  5. 事業内容の報告
  6. 議案上程
  7. 審議方法
  8. 質疑応答
  9. 閉会宣言

質疑応答は、企業の経営者に直接質問ができる良い機会です。決議事項以外の経営に対する質問や、業績に対する質問を認めてくれる場合もあります。せっかくの機会ですから、質問してみると良いでしょう。なお、業績が悪化した企業や不祥事が発覚した企業の株主総会では、株主からの質問が飛び交うといったケースがあります。

まとめ

まとめ

株主総会の仕組みやどのようなことが行われているのか、流れなどについて詳しくお伝えしました。株式投資を行うことは、会社の経営権の一部を持つということ。そのため、会社経営に参加する権利が与えられます。株式投資を行う際に、もちろん株主優待や配当を目的とするのも良いでしょう。しかし、株主として株主総会に参加できるのも、株主となる大きなメリットと言えます。

その会社の決算報告や今後の展望、経営方針等は、その会社のホームぺージ等でも見ることが可能です。しかし、その会社の財務状態の説明を受けたり、当期の目標に対しての実績を聞いたり、今後の方針や展望といった投資において重要な情報は、株主総会に出席して直接聞くことでしか知り得ません。
株主総会は平日に行われますので、なかなか時間が作れない場合は多いでしょう。しかし、せっかく権利を持っているのであれば、ぜひ株主総会に参加してみてください。参加者にお土産を渡している企業もありますし、大企業のトップに直接質問することができるチャンスでもあります。

また、株主総会の議決権や配当、株主優待を受け取るためには、権利確定日に名簿に名前が載っているなどの条件が必要です。株主総会の議決権と株主優待(一部の銘柄を除く)については、一単元以上の株式を保有していなくてはならない点に注意してください。

株主総会に参加し、議決権を得られるのも株式投資の醍醐味の一つです。ここで解説した内容を参考に、より株式投資を楽しみながら行っていきましょう。

監修者プロフィール

小川 洋平(オガワ ヨウヘイ)
日本FP協会認定 CFP®、合同会社clientsbenefit 代表、FP相談ねっと認定FP、SG中越代表

<プロフィール>
25歳でお金の知識・営業経験ゼロから保険営業の世界に飛び込み6年半従事。2年目に将来の資産形成のため金融知識が必要なことに気が付き、FPの勉強を始めて金融・経済の知識を学ぶ。その後、保険に限らずあらゆるお金の面でクライアントにとってベストな提案をしたいという想いで、商品販売ではなく相談業務を開始。2013年より資産形成の考え方に関するセミナーを自主開催。その他、大手金融機関からの委託により実施。現在は小規模事業者の年金や資産運用のサポートを中心に相談・経営支援の業務に携わり、確定拠出年金など起業家の将来の資産形成と経営のサポートを行っている。投資信託や資産形成の分野を得意としている。