株式分割とは?

株式投資で利益を出すためには、株式分割について理解しておく必要があります。今回は、株式分割についてご説明します。

株式分割とは?

株式分割とは

株式分割とは1株をいくつかに分割し、発行済みの株式数を増やすことです。株主に対し無償で株数の保有を増やすことになることから、「株式無償割り当て」とも呼ばれます。株式分割をすることで株の保有数は増えますが、資産価値の上下動はないため、1株当たりの価値は下がります。

投資家の株式分割によるメリット

投資家の株式分割によるメリット

株式分割について、投資家から見た株式分割による4つの主なメリットについて見ていきましょう。

最低購入金額が下がる

株式分割を行うことによって最低購入金額が下がるので、投資家はその株式を購入しやすくなります。また、多くの人が株式分割を行うことによって株式を購入する可能性がありますので、価格が上昇する可能性もあるでしょう。当然、価格が上昇すればキャピタルゲインが得られますので、最低購入金額が下がります。多くの投資家にとって買いやすくなるのは大きなメリットと言えるでしょう。

将来的に、配当がたくさん受け取れる可能性がある

株式分割を行ったからといって、株式の価値の総額は変わりません。そのため、株式分割を行って手持ちの株式数が増えたとしても、現時点で受け取れる配当も同じです。あくまでも現時点で受け取れる配当が同じなだけです。

ただし、その企業の業績が良くなれば、より多くの配当が受け取れる可能性は十分にあります。株式分割によって手持ちの株式数が増え、将来的に配当がたくさん受け取れる可能性があるのは、投資家にとってメリットになるでしょう。

株主優待が安くもらえる可能性がある

株式分割によって、今までより多くの株式数を保有できます。もちろん価値の総額は変わりませんが、それは現時点での価値の総額です。今後その企業の業績が良くなり、株主優待をさらに充実したものにする可能性もあります。株式優待が充実したものになると、株式数を多く持っている保有者は、より多くの株主優待を受けられることになるでしょう。

市場参加者の増加が期待でき、流動性が高まり売買しやすくなる

株式分割を実行することによって1株当たりの株価が下がり、投資家にとって買いやすい状況になります。その結果、流動性が高まり、売買しやすくなる点もメリットと言えるでしょう。

株式売買は、流動性がないと希望した価格での売買が難しくなります。株価が上昇することは非常に重要ですが、希望した価格で売買できる流動性もとても大切です。株式分割によって市場参加者の増加が期待でき、流動性が高まり売買しやすくなるのもメリットでしょう。

投資家の株式分割によるデメリット

投資家の株式分割によるデメリット

投資家にとって、株式分割にはデメリットもあります。ここで、投資家の株式分割による主な2つのデメリットを解説しておきましょう。

株価の変動が大きくなる可能性がある

株式分割によって、その株式は以前より注目を集めます。そのため、一般的に売買が大きく膨らむでしょう。売買が膨らむのは、流動性が高まることなので良いことです。しかし、あまりにも売買が大きくなるとボラティリティー(株価の変動率)が大きくなり、投機的な投資になってしまう可能性があります。短期で利益を狙いたい方にとっては良いかもしれませんが、長期で安定したトレードを望む方にとっては、大きなデメリットになってしまうかもしれません。

株式分割が何度も繰り替えされると、信頼性が下がり値下がりする場合もある

投資の世界には「株式分割バブル」という言葉があります。株式分割の目的は様々ですが、主な目的は株価の上昇と資金の調達でしょう。しかし、この目的が想定以上に達成されてしまうと、一部には株式分割を繰り返す企業があります。

株式分割は、決して悪いことではありませんが、小手先の株価上昇に使われる可能性がある点については注意が必要です。株式分割が本来の目的から逸脱して何度も繰り返されると、その企業の信頼性が下がり、大きく株価が下落する可能性があることをしっかり理解しておきましょう。

企業の株式分割によるメリット

企業の株式分割によるメリット

株式分割は投資家だけではなく、企業にとってもメリットがあります。ここで、株式分割による企業にとってのメリットを3つ取り上げてご説明しましょう。

株価の安定性が高まる

株式分割を行うと、一般的に投資家の注目を集めるため、株価の売買は活発になります。また、1株当たりの株価が下がるため、より多くの投資家に購入してもらえる可能性があるでしょう。流動性が高まって多くの投資家に購入してもらえることで、株価の安定性も高まります。そして、株価の安定性が高まると長期的な経営が行えるようになり、企業にとっては大きなメリットをもたらすのです。

時価総額が上がり、信用性が高まる

株式分割を行う多くの投資家に株式を購入してもらえるようになるため、一般的に株価は上昇しやすくなります。当然、株価が上昇すると時価総額が大きくなるので、企業の信用性はより高まるでしょう。多くの投資家は時価総額を重要視します。時価総額が大きい企業ほど安定性の高い会社だと判断されるケースが多いため、企業にとっては大きなメリットと言えるのではないでしょうか。

上場基準を満たすことができる

東京証券取引所などの証券市場には、市場によって様々な上場基準があります。上場基準の中には株主数や流通株式数、時価総額などの項目があり、上場するためにはそれぞれの市場の上場基準を満たさなくてはいけません。参考までに、新市場のプライム、スタンダード、グロースの上場基準についてまとめました。

上場基準

株式分割を行うことによって株式数が増え、時価総額も増えることが期待できます。その結果、上場基準を満たせる可能性があるのです。

企業の株式分割によるデメリット

企業の株式分割によるデメリット

続いて、企業にとって考えられる株式分割のデメリットをご説明します。

株主が増えることにより管理が大変になる

株式分割の実施によって、1株当たりの株価が下がります。その結果、売買しやすくなり、株主が増える可能性があるでしょう。株主が増えることはメリットも多いですが、様々な意見を聞かなければならないこと、あるいは株主優待の発送など管理が大変になる点はデメリットとなります。

株価の変動により信頼性の低下を招く恐れがある

株式分割を行うことによって、株価が大きく変動する可能性があります。あまりにも大きな株価の変動になってしまうと、その企業の信頼性は大きく損なわれてしまうでしょう。流動性が高くなって売買が活発になるのは、企業にとっても大きなメリットです。一方、株価の変動により信頼性の低下を招いてしまう可能性があることは、株式分割を行うデメリットになります。

株式分割の事例

株式分割の事例

株式分割について、実際の事例をいくつかご紹介します。

ライブドア

かつて世間の注目を集めたホリエモンこと堀江貴文氏が率いたライブドアは、頻繁に株式分割を行いました。1株から10株の株式分割などを行ってきましたが、特に注目を集めたのは、2003年12月に行った100分割の株式分割です。結果として15営業日連続でストップ高をつけ、その後に大きく下落するなど、非常に荒い値動きになりました。

ガンホー

スマホゲームのパズドラの大ヒットで一躍注目を集めたガンホーは、大きな株式分割を行ったことでも有名です。2013年には1対10の株式分割を2回行い、さらに1対100の株式分割を行いました。結果として時価総額は大きく上昇したのです。しかし、あまりにも大きな株式分割を複数回行ったことにより、1株当たりの株価は非常に小さいものになってしまいました。東京証券取引所が推奨している必要最低投資金額「5万円以上50万円未満」の基準を大きく下回ってしまう事態が続いたのです。その結果として、ガンホーは2019年に株式を統合する株式分割とは逆の株式併合を行い、1株当たりの株価を上昇させました。

まとめ

株式分割について詳しくまとめて解説しました。株式分割は多くの企業で実施しており、2022年も多くの企業が株式分割をするでしょう。株式投資をするにあたって、株式分割についてしっかり理解しておくことはとても重要です。ここで取り上げた内容を参考にし、株式分割に関する知識を深めておきましょう。

監修者プロフィール

渡辺 智(ワタナベ サトシ)
FP1級、証券アナリスト。

<プロフィール>
大学商学部卒業後は某メガバンクに11年勤務し、リテール営業やプライベートバンカー業務、資産運用コンサルティング(投資信託、保険、債券、外貨預金など)、融資関係業務(アパートローン、中小企業融資)などを経験。銀行在籍中、2度の最優秀営業賞を受賞。銀行在籍時の金融商品販売額は500億円を超え、3000人を超える顧客に金融商品営業を行う。その後、外資系保険会社でコンサルティング営業として従事し、現在は業務経験・知識を活かして金融ライターとして独立。難しい金融を分かりやすく伝えることをモットーに活動中。