整理銘柄/監理銘柄とは?指定されるとどうなる?

整理銘柄/監理銘柄とはどのような意味を持つのか。また、これらに指定されるとどうなるかなどについて詳しく解説します。

整理銘柄/監理銘柄とは?指定されるとどうなる?

整理銘柄とは?

整理銘柄とは?

上場廃止が決定された銘柄

整理銘柄とは証券取引所が定めている上場廃止基準に該当し、上場廃止が決定された銘柄のことです。業績不振やTOP(株式公開買い付け)による完全子会社化などで上場廃止することがあります。なお、TOBは企業買収やM&Aの手法の1つです。上場企業の発行する株式を通常の市場売買でなく、あらかじめ買い取る「期間」「株数」「価格」を提示して市場外で一括して買い付けます。

上場廃止までの流れ

取引所に上場する上では厳しい審査基準が設けられていますが、市場ごとに設定されている上場廃止基準に該当した銘柄は上場廃止となります。ただし、いきなり上場廃止となるわけではありません。「監理銘柄」への指定を受けた後に「整理銘柄」への指定を受け、1ヵ月後に上場廃止といった段階を経ることになります。

1ヵ月を過ぎると証券取引所での売買ができなくなる

上場廃止が決定すると1ヵ月間「整理銘柄」に指定され、整理銘柄を保有している投資家は上場廃止を受けて保有している銘柄を整理売買することが可能です。そして、整理銘柄に指定されて1ヵ月を過ぎると、証券取引所での売買ができなくなります。

議決権や配当請求権などの権利はそのまま残り、あまり現実的ではないかもしれませんが、1ヵ月が過ぎた後でも売却する相手を自分で見つける方法もあります。ただし、民事再生などによる上場廃止の場合は債務超過になっていることが考えられるため、価値は失われていくでしょう。
企業が倒産をすれば株式の価値はゼロになるため、早めに整理をしておくことが望ましいと言えます。なお、株式交換による完全子会社化に係る上場廃止の場合などは、整理銘柄へ指定することなく上場廃止となる場合もありますから、注意しましょう。

監理銘柄とは?

監理銘柄とは?

監理銘柄の2つの区分

監理銘柄とは上場銘柄が上場廃止基準に該当する恐れがある場合に、投資家にその事実を周知するため、証券取引所により指定された銘柄のことです。監理銘柄には、「監理銘柄(審査中)」と「監理銘柄(確認中)」の2つの区分があります。
例えば、「有価証券報告書などに虚偽記載を行い、その影響が重大である場合」などには「監理銘柄(審査中)」に指定され、MBOやTOBに応じ完全子会社化されるなど「監理銘柄(審査中)」に該当しない場合は「監理銘柄(確認中)」に指定されます。
なお、監理銘柄に指定されても売買は可能です。MBOとは「Management Buyout(マネジメント・バイアウト)」の略で、経営陣が自社の株式などを買収し経営権を獲得することを示します。

特設注意市場銘柄

また、上場企業が上場廃止基準に接触する恐れがあり、審査の結果、上場廃止には至らないものの内部管理体制に改善の必要性が高いと判断された場合には「特設注意市場銘柄」に指定されます。特設注意市場銘柄に指定されてから1年以内に内部管理体制が改善されず、改善の見込みがないとされる場合や、特設注意市場銘柄に指定されてから1年6ヵ月以内に改善されなかった場合には上場廃止が決定されます。

監理銘柄から整理銘柄への流れ

東京証券取引所には、東証一部・二部、マザーズ、ジャスダック(JASDAQ)ごとに上場廃止基準が設定されています。上場廃止基準に該当しそうになった銘柄は「監理銘柄」へと指定され、そのまま改善されずに上場廃止基準に該当してしまうと「整理銘柄」に指定され、その1ヵ月後に上場廃止となります。上場廃止の恐れがなくなれば監理銘柄の指定が解除され、一方で監理銘柄の上場廃止が決定されると「整理銘柄」に指定されます。

企業側にとってのメリット

上場廃止が行われると投資家にとっては損をしやすい状況ですが、実は企業側にとってはメリットがあります。上場廃止をすると、企業は上場するために支払っていたコストを削減することが可能です。上場企業は四半期ごとに決算を開示したり、有価証券届出書などを作成したりしなければなりません。監査法人にも依頼し、IR活動を行うなど様々な面でコストが発生するでしょう。しかし上場廃止をすれば、これらのコストを削減できます。

もう1つのメリットは、経営再建がしやすくなることです。株主の権利に議決権がありますが、この議決権は会社が行おうとしている事業や人事に対して意見を言える権利です。上場企業の株主は会社に資金提供する代わりに、この議決権を得ています。
上場廃止をすることでこの議決権を社外の人間が持つリスクを減らし、社内の意見を統一しやすくなるため、経営の意思決定が早くなるため経営再建がしやすくなります。

実際に指定された銘柄

実際に指定された銘柄

実際に整理銘柄に指定されたものとして、LINE株式会社(コード:3938)はヤフー株式会社の親会社であるZホールディングス株式会社との経営統合のため、株式会社NTTドコモ(コード:9437)も完全子会社化のために上場廃止されて整理銘柄に指定されていました。

また、監理銘柄に指定されたものとして、日立金属株式会社(コード:5486)はTOBにより監理銘柄(確認中)に、株式会社東芝(コード:6502)は不正会計のため監理銘柄(審査中)に指定され、「特設注意市場銘柄」に指定された過去があります。

このように、私たちにとって身近な企業やそのグループ会社なども、多くが整理銘柄や監理銘柄に指定されてきました。東芝のようにネガティブな要因で監理銘柄に指定されるケースは少なく、他は完全子会社化やTOBなどにより上場廃止されています。なお、東芝のグループ会社の東芝プラントシステム株式会社(コード:1983)はその後に整理銘柄に指定され、上場廃止されています。

整理銘柄/監理銘柄に指定された場合

整理銘柄/監理銘柄に指定された場合

整理銘柄は1ヵ月後に上場廃止され、それまでは市場に残り売買することができます。上場廃止された後も売却は可能ですが、個人投資家が非上場銘柄を持っておくことはあまり現実的ではありません。そのため、その間に売却することが望ましいと言えるでしょう。

監理銘柄は企業次第で、日本取引所グループが上場廃止する必要がないと判断した場合はその企業は上場したままになります。2018年3月まではグリーンシート銘柄制度(非上場会社の銘柄を取り扱う市場)があったものの、現在は廃止されました。TOBなど上場廃止の理由によっては、監理銘柄に指定されることで株価が上がる可能性もあります。経営不振などのネガティブな理由による上場廃止なのか、TOBや経営の効率化などの理由なのかによっても、株価にどのような影響を与えるかが異なるのです。

株主への影響

株主への影響

整理銘柄の場合に経営破綻や虚偽記載が原因で上場廃止になる場合、1ヵ月以内に価値がなくなるため需要がなく、株価は下がる一方です株式は最終的には文字通りの紙くずになってしまいます。しかし、実際に上場廃止となるのは、以下のようなことがキッカケとなるケースが多いようです。

  • 第三者が株式を指定価格および日時で買い集めるTOB(株式公開買い付け)
  • 経営陣が株式の買い取りを行うMBO(マネジメント・バイアウト)
  • 従業員が会社の経営権を取得するEBO(エンプロイー・バイアウト) など

TOBやMBO、EBOを理由に上場廃止となると、株式は第三者や経営陣、従業員が買い取ることになるため投資家が損することにはなりません。なお、「従業員が行う企業買収」とも呼ばれ、会社の株をその会社に勤める社員が購入することで、企業買収を目指すというM&A手段の一種です。

また、ネガティブな要因により低価格になった銘柄を購入し、株価が少し上昇した時に株式を売却してキャピタルゲインを狙う投資家もいます。この手法は、非常に短い時間で多大な利益を上げられる可能性があるでしょう。しかしその反面、タイミングを間違えると資金を多く失ってしまうかもしれません。

監理銘柄は上場廃止となる可能性がある銘柄のため、株価は下がる傾向があるものの、必ず株価が下がるとは限りません。上場廃止とならなかった際に株価が回復することも多く、安い株価で購入する投資家もいます。TOBが理由となって整理銘柄に指定された場合は、今よりも高い株価でTOBすることが期待できるため株価は上がりやすくなります。

上場廃止になる銘柄を避けるためには

上場廃止になる銘柄を避けるためには

ネガティブな理由による上場廃止は、投資家にとって損失になります。そんな上場廃止になる銘柄を避けるためには、情報収集が必要です。証券会社が発表する疑義注記がある企業をチェックし、日本取引所グループが発表する監視銘柄に目を通しましょう。また、新聞や経済ニュースなどで経済や企業の動向をチェックすることも必要です。

特に、企業の財務諸表を読むことはとても重要です。それによって企業の経営状態がわかり、過去の業績の推移を読み解くことができます。財務諸表は企業のホームページなどからいつでも見ることができますので、購入前にチェックし、保有している銘柄も定期的に確認しておきましょう。
反対に、TOBの場合には公開買い付けによって通常よりも高い株価で買い付けされ、また、市場における取引も株価が上りやすくなることがあります。上場廃止といえ、投資家にとってメリットになるケースも少なくありません。そういった情報を入手できた場合は、積極的に購入を検討するという判断もあるでしょう。

まとめ

まとめ

整理銘柄や監理銘柄とは何なのか、どのような場合に指定されるのか、投資家にとってどのような影響があるかなどを解説しました。

上場廃止という言葉に対しては、ネガティブな印象を持つ方も多いでしょう。特に初心者なら自分が保有する銘柄が上場廃止になる、もしくはその可能性があると聞けば不安になってしまう方は多いはずです。しかし、上場廃止はネガティブな理由だけではありません。会社は様々な観点から、より良い未来へ向けた上場廃止を行う場合があります。

上場廃止後は再上場して市場を活性化させる会社もあれば、もちろん再上場せず一般社会において経済に好影響を与えてくれる会社もあるでしょう。上場廃止という言葉へ一方的にネガティブな印象を持つだけでなく、様々なメリットがある場合も多いことを理解しておきましょう。まずはその理由を知ること、そして、その後どのように行動するかを考えましょう。

自分の保有する銘柄が整理銘柄に指定された場合は、持ち続けていると市場で売却できなくなります。そのため、TOBであればそれに応じて売却したり、そうでない場合には上場廃止までに売却したりすることが無難でしょう。また、経営不振による上場廃止の場合、整理銘柄に指定された際には投資家にとっては損失となります。そのため、できるだけ事前に避ける方が無難です。

一方で、そういった銘柄を買い、業績の回復による株価の上昇を狙う戦略もあります。しかし、できるだけリスクを避けたいのであれば、事前に企業の情報を収集しておくことがとても重要です。企業のホームページなどから財務諸表を読むことができますので、購入前はもちろん、保有している株式も定期的に経営の状態を把握するようにしましょう。
経営不振による上場廃止の可能性のある銘柄を避けたり、監理銘柄や整理銘柄に指定される前に事前に売却しておいたりするために、判断材料を仕入れておくことはとても重要です。整理銘柄や監理銘柄が何を意味して、どのような場合に使われるのか。もし自分が保有している銘柄がこれらに該当したらどうするかなど、ここで解説した内容を参考に考えてみてください。

監修者プロフィール

小川 洋平(オガワ ヨウヘイ)
日本FP協会認定 CFP®、合同会社clientsbenefit 代表、FP相談ねっと認定FP、SG中越代表

<プロフィール>
25歳でお金の知識・営業経験ゼロから保険営業の世界に飛び込み6年半従事。2年目に将来の資産形成のため金融知識が必要なことに気が付き、FPの勉強を始めて金融・経済の知識を学ぶ。その後、保険に限らずあらゆるお金の面でクライアントにとってベストな提案をしたいという想いで、商品販売ではなく相談業務を開始。2013年より資産形成の考え方に関するセミナーを自主開催。その他、大手金融機関からの委託により実施。現在は小規模事業者の年金や資産運用のサポートを中心に相談・経営支援の業務に携わり、確定拠出年金など起業家の将来の資産形成と経営のサポートを行っている。投資信託や資産形成の分野を得意としている。