円安と投資の関係とは?

円安/円高という言葉について、本記事で詳しくご説明します。

円安と投資の関係とは?

円安/円高とは

円安/円高とは

外国為替市場で日本円と米ドルやユーロなどの外国通貨との交換比率(為替レート)は、常に変化しています。円安とは、日本円の価値が外国通貨より安くなることです。例えば、為替レートが1ドル=100円から1ドル=120円に向かう状況を円安と言います。

円安になると、「1ドル=100円」で取引していたものが「1ドル=120円」となります。そのため、国内から海外へ製品を輸出する企業にとっては、従来よりも売り上げが増えます。一方、海外から国内に製品を輸入する企業にとっては、従来よりも高く製品を購入することになってしまうのでデメリットでしょう。

これに対して円高とは、日本円の価値が、外国通貨より高くなることです。例えば、為替レートが「1ドル=100円」から「1ドル=80円」の方向に向かう状況のことを言います。円高になると、「1ドル=100円」で取引していたものが「1ドル=80円」となるため、国内から海外へ製品を輸出する企業にとっては従来よりも売り上げが減ります。

一方、 海外から国内に製品を輸入する企業にとっては、従来よりも安く製品を購入することが可能です。

円安/円高のメリット・デメリット

円安/円高のメリット・デメリット

円安や円高には、様々なメリットやデメリットがあります。ここで、代表的なものを取り挙げてご説明しましょう。

円安のメリット

円安のメリットは、自動車などを海外で販売した場合、円高の時に比べてたくさんの円を受け取れることです。例えば、米ドルで代金を受け取り、円に換えるケースはたくさんあるでしょう。円高の時に比べて、円安の状況下ではたくさんの円を受け取れます。日本経済は輸出産業の影響が大きいので、一般的に円安になった方が経済全体に良い影響であると言われています。

円安のデメリット

円安になると輸入品が高くなります。同じ1,000ドルの商品でも1ドル100円であれば10万円で買えますが、1ドル130円になると13万円が必要です。このように、円安になると海外の輸入品が高くなるのはデメリットと言えます。

円高のメリット

円の価値が高くなり、米ドルやユーロなどの外国通貨の価値が低くなるので、 海外製品を安く買えます。ブランド品やスマートフォンなど、海外製品が安くなる可能性があるのは大きなメリットです。

また、海外旅行に行く際、米ドルに円から換えれば、円安の時よりたくさんの米ドルに換えることができます。10万円を米ドルに換えるとしましょう。1ドル130円の時は、「10万円÷130円で≒770ドル」ですが、1ドル100円の時は「10万円÷100円=1000ドル」に換えられます。このように、円高になると円安の時よりも多くの外国通貨に換えられるのはメリットと言えるでしょう。

円高のデメリット

円高になると、海外で稼いでいる日本法人などが稼いだ外貨を円に換える場合、円安の時に比べて換えられる円の金額は少なくなります。そのため、自動車など海外で商品を売る際は受け取れる円が少なくなってしまう点がデメリットといえそうです。特に、日本は輸出企業中心の経済構造なので、一般的に円高になると、日本経済全体へのダメージは大きいと言われています。

円安/円高が投資に与える影響

円安/円高が投資に与える影響

円安と円高が投資に与える影響についてご説明します。

円安の影響

輸入商品の価格が日本国内で上昇します。海外で作られている商品を円で購入する場合、同じ1,000ドルの商品でも1ドル100円なら10万円で買えます。

しかし、1ドル130円になると13万円必要です。このように、輸入品の価格が上がることから輸入品の売れ行きが悪くなり、輸入企業の業績が悪くなる可能性があります。

一方、輸出企業にとって円安はメリットです。なぜなら、同じ1,000ドルで販売しても1ドル100円の時は10万円ですが、1ドル130円になると13万円受け取れるからです。しかし、行き過ぎた円安が続いてしまうと、海外からの輸入商品が高くなってしまうため、日常生活に大きな影響を与えてしまうでしょう。

円高の影響

円高になると、輸入商品の価格は日本国内では下落するのが一般的です。海外で作られている商品を円で購入する場合、同じ1,000ドルの商品でも1ドル130円の時は13万円が必要ですが、1ドル100円になると10万円で購入できます。輸入品の価格が下がるので、輸入品の売れ行きが良くなり、輸入企業の業績が上昇する可能性があります。

一方、輸出企業にとって円高はデメリットです。なぜなら、同じ1,000ドルで販売しても1ドル130円の時は13万円受け取れますが、1ドル100円になると10万円しか受け取れません。
日本は資源がないため、輸出産業が中心なので円高になると輸出企業の業績は悪化してしまいます。しかし、輸入品の価格は安くなるので、一般生活にはプラスになるでしょう。

円安が投資商品に及ぼす影響

円安が投資商品に及ぼす影響

円安になると、投資商品にどのような影響を及ぼすのでしょうか。代表的な金融商品を例にして、円安になった際の影響を見ていきましょう

外貨預金

外貨預金にとっての円安のメリットは、為替差益が出ることです。外貨預金で狙える利益には、キャピタルゲインとインカムゲインの2つがあります。

外貨預金のインカムゲインは金利収入です。最近、アメリカを中心にようやく各国の金利は上昇してきていますが、コロナ前に比べるとまだまだ低い国が多くなっています。インカムゲインは安定的な収入が期待できますが、外貨預金の最大の醍醐味はやはり為替差益でしょう。外貨預金の為替差益はキャピタルゲインです。

円安になるほど、円に戻した時の利益が大きくなります。ただし、外貨預金のキャピタルゲインには総合課税の雑所得がかかります。総合課税の税率は最大55%(住民税含む)なので注意してください。なお、国内FXの為替差益の利益額にかかわらず、一律20.315%の税率です。

外貨預金のデメリットは、為替が円高になると為替差損が出ることです。2022年に入ってからは大幅な円安になっていますが、2008年のリーマンショックや2011年の東日本大震災など、大きく円高になったこともあります。外貨預金をする際は為替の影響が大きいので、為替レートを注視する必要があるでしょう。

外債

外債とは、アメリカ国債や企業が発行している外貨建ての債券です。満期まで保有すれば債券を発行した発行体に、問題なければ投資したお金が保障されます。金利は、満期までの期間が長ければ長いほど高いのが一般的です。また、先進国の外債よりも新興国の外債の方が金利は高くなります。

外債にとっての円安のメリットは、外貨預金と同じく、円に換えた際の利益が大きくなることです。しかし、円高になると逆に損失が発生する可能性があります。また、円安の時に円から外債を購入すると、円高の時に購入するのに比べて割高になってしまいます。

日本株式

日本株式にとっての円安のメリットは、特に自動車産業などの輸出企業では円安になると業績に好影響があるため、株価が上昇する可能性があることです。また、多くの輸出企業が含まれている日経平均株価などにも良い影響でしょう。一方、円高になると逆に輸入企業の業績は圧迫されるため、輸入企業の株価は厳しいかもしれません。

米国株式

米国株式にとっての円安のメリットは、米ドルなどの外貨で購入しているので、円安になると評価額が上昇することでしょう。また、アメリカの輸入企業にとって円安は業績をよくする要因なので、株価が上昇する可能性があります。一方、円高になると評価額が下落してしまいますし、輸入企業にとってはマイナス要素です。

ただし、円高では米国株式を購入する際、円安の時に比べて安い値段で購入ができるなどのメリットがあります。

投資信託

投資信託では円安になると、特に海外の株式や債券などに投資しているものについて基準価格上昇の要因になります。また、日本の株式に投資している投資信託の場合でも、輸出企業の業績を上げる要因になります。そのため、そのような企業に投資している投資信託であれば上昇するでしょう。また、「為替ヘッジなし」の投資信託なら円安になると為替差益を直に受けられますので、大きなメリットと言えるでしょう。

一方、特に海外の株式や債券などに投資をしている投資信託は、円高になると基準価額下落の要因になります。日本株に投資をされている投資信託については、輸出企業の業績悪化要因です。また、「為替ヘッジ有り」の投資信託の場合は円高になっても基本的に影響はありません。ただし、「為替ヘッジなし」の投資信託では、基準価格下落要因になりますので注意が必要です。

まとめ

円安と円高について詳しくご説明しました。テレビのニュースやインターネットなどで、これらはよく見かける言葉でしょう。しかし、詳しく理解できている方は、意外と少ないかもしれません。円安や円高は、投資商品に大きな影響を与えます。ぜひ本記事を参考に、円安と円高の本質について理解を深めてみてください。

監修者プロフィール

渡辺 智(ワタナベ サトシ)
FP1級、証券アナリスト。

<プロフィール>
大学商学部卒業後は某メガバンクに11年勤務し、リテール営業やプライベートバンカー業務、資産運用コンサルティング(投資信託、保険、債券、外貨預金など)、融資関係業務(アパートローン、中小企業融資)などを経験。銀行在籍中、2度の最優秀営業賞を受賞。銀行在籍時の金融商品販売額は500億円を超え、3000人を超える顧客に金融商品営業を行う。その後、外資系保険会社でコンサルティング営業として従事し、現在は業務経験・知識を活かして金融ライターとして独立。難しい金融を分かりやすく伝えることをモットーに活動中。