分散投資について知りたい!

投資で安定的に利益を出すためには、分散投資が重要です。今回は、分散投資について詳しくご説明します。

分散投資について知りたい!

分散投資とは

分散投資とは

資産運用にはいろいろな投資手法がありますが、安定的な運用を行うためには分散投資を行うことがとても重要です。分散投資とは投資対象を多様化させることで、資産運用に伴う価格変動リスクを低減させて好リターンを目指すという方法です。資産運用を行うためのアセット(資産)は多くあり、代表的なものには株式や債券、不動産、金などの商品が挙げられます。

株式は景気が良い時に基本的に上昇しますが、債券は逆に景気が悪い時に価格が上昇する傾向にあります。このように、アセットによって異なる動きをするので、多くのアセットに投資することで全体の値動きを安定させられるのです。一方、資金を1つの金融資産に集中させると、運用が不調な際にマイナス影響が資産全体に及んでしまいます。分散投資がよく勧められる理由は、安定的に資産運用を行えるからなのです。

投資に潜むリスク

投資に潜むリスク

分散投資についての理解を深めるためには、投資のリスクについて知っておくことが重要です。分散投資の必要性を、より理解することにも繋がるでしょう。具体的な投資のリスクを解説しますので、参考にしてください。

価格変動リスク

価格が変動することで、投資資産の価値が変動するリスクのことを「価格変動リスク」と呼びます。これは価格が「下落するリスク」だけを示すのではなく、上昇したり下落したりする場合の「値動きの振れ幅」のことを示すものです。

大きいリターンが期待できる金融商品は価格変動リスクも大きく、小さいリターンしか期待できない金融商品は価格変動リスクも小さい傾向にあります。定量的に分析する場合、金融商品の値動きをもとに、標準偏差などの統計指標を使って算出するのが一般的です。なお、価格変動リスクをさらに細かく分けると以下のようになります。

  • 株価変動リスク
    投資信託などの金融商品によっては、株式に投資を行い、実質的に株式に関連するデリバティブ取引を活用しますので株価変動の影響を受けます。特に新興国の株価変動は、先進国以上に大きいものになるのが一般的です。

  • 券価格変動リスク
    債券(公社債など)は、市場金利や信用度の変動により価格が変動します。ファンドなどの投資商品によっては債券に投資を行い、実質的に債券に関連するデリバティブ取引を活用しますので、債券価格変動の影響を受けるのです。特に、新興国の債券価格の変動は、先進国以上に大きいものになることが予想されます。

  • 商品(コモディティ)市況変動リスク
    コモディティ投資とは、商品先物市場で取引されている原油やガソリンなどのエネルギー、金やプラチナなどの貴金属、大豆などの穀物といったようなコモディティ(商品)に投資することを言います。投資する商品によっては、商品に関連するデリバティブ取引を活用することなどを通じて、市況変動の影響を受けます。コモディティは、一般的に値動きが大きく、リスクが高いと言われています。

信用リスク

信用リスクの代表例は、デフォルトリスクです。信用リスクが特に重視されるのが債券投資です。

債券は「借用証書」のため、お金を貸した先がきちんと約束を守って、元本や利息を支払うかどうかが問題になります。この「信用」に関するリスクが、「信用リスク=債務不履行リスク」と呼ばれるものです。
また、債券はいつでも売買されており、第三者にも流通していきます。そのため、第三者にもその発行体の信用度を判断できる指標が必要です。この信用リスクを判断する尺度として、民間の格付け会社が評価する「格付け」が利用されるのが一般的となっています。この「格付け」は信用度の高いものから「Aaa(トリプルA)」「B(シングルB)」などの記号で表されます。

流動性リスク

売買が極端に少ない銘柄を換金しようと思った時、希望した価格で売れない可能性のあるリスクのことを言います。市場に出回る株式の絶対量や取引量が少なく、人気薄の状態にあるなどの銘柄に起こりやすいでしょう。

為替リスク

為替相場の変動により、投資した外貨建て資産の円評価額(価値)が上がったり下がったりする可能性があることを指し、為替変動リスクとも言います。

例えば、10,000ドルの外貨を1ドル=110円で購入した場合、為替相場が変わらなければその価値は110万円のままです。しかし、1ドル=120円(円安)になると、10,000ドル×120円=120万円に上昇します。逆に、1ドル=100円(円高)になると10,000ドル×100円=100万円に下落します。つまり、以下のことが言えます。

  • 購入時点より「円安」になると利息や償還金の手取り額が増える
  • 購入時点より「円高」になると利息や償還金の手取り額が減る

償還金や利息を外貨のままで受け取る場合は、為替の影響は受けません。

分散投資のメリット

分散投資のメリット

分散投資の主なメリットについて、ここで2つを取り上げて解説します。

1つの投資対象に集中して投資をするよりもリスクを低減できる

1つの投資対象に集中して投資を行うと、その投資対象が上昇すれば大きな利益を得られますが、逆に大きく下落してしまうと資産は大きく減ってしまいます。逆に株式や債券、不動産などで動きが違う様々な資産に分散投資すれば、短期的な値上がりは小さいかもしれませんが、それぞれの資産がカバーし合うため下落も抑えることが可能です。

投資で成功するためには利益を出すことはもちろん、それ以上に損失を抑えることがとても重要になります。そのため、リスクを抑えられることは分散投資の大きなメリットと言えるでしょう。

長期的な価格変動を意識する投資方法のため、売買のタイミングを見極める必要がない

分散投資を成功させるためには、長期目線で資産運用を行う必要があります。なぜなら、いくら分散投資を行っていても、短期で見ると大きく下落してしまう可能性があるからです。

例えば、リーマンショックやコロナショックのようなことが起きると、どんなに分散投資を行っていても価格の下落を防ぐのは難しいでしょう。しかし、そうした経済危機が起きても、長期目線で見ればマーケットは回復していくのが一般的です。
もちろん、どのアセットが早く回復するかは誰にも分かりません。しかし、分散投資を行うことによって何かしらの資産が上がる可能性が高いため、長期目線で考えると分散投資は非常に高い効果があります。

また、長期投資の場合、短期で利益を狙う投資のように頻繁にマーケットを確認する必要はありません。マーケットを頻繁に確認しなくても、安定的に利益が狙える可能性が高いでしょう。

分散の種類

分散の種類

分散と言っても様々な種類がありますので、ここで解説しておきます。

地域の分散

外国の株式や債券に投資することを言い、国ごとの信用リスク分散になります。

商品の分散

株式や債券、投資信託など投資する商品を分散させることを言います。投資する商品によって、価格変動リスクや流動性リスク、通貨リスクなどを分散できます。

通貨の分散

投資する通貨を分けることを言い、為替リスクの分散になります。

時間の分散

買付のタイミングに分散することを言い、価格変動リスクを分散できます。

分散投資のコツ

分散投資のコツ

分散投資を成功させるために、3つのコツをご紹介します。

リターンが大きければリスクも大きくなることを理解する

大きなリターンを狙えるということは、リスクも大きくなることをしっかり理解する必要があります。ローリスクハイリターンはあり得ません。高いリターンを狙うのであれば、当然ながらハイリスクになります。

しかし、ハイリターンを短期間で狙おうとすると、大きな損失を負うことになってしまいがちです。長期分散投資は短期で利益を狙いたい方にとって、回りくどい方法に見えるかもしれません。しかし、安定的に利益を積み上げられる可能性が高い投資手法と言えるでしょう。「急がば回れ」ではありませんが、結局は堅実な運用こそが投資で利益を上げるためにもっとも大切になります。

つみたて投資を活用し購入価額を分散させる

分散投資を成功させるために、つみたて投資を併用することはとても有効です。なぜなら、つみたて投資を行うことによって時間分散ができ、ドルコスト平均法を活用できるからです。

ドルコスト平均法とは、一定金額で定期的に投資信託や株式などの金融商品を購入していく投資手法のことを言います。一定金額で定期的に金融商品を購入することによって、投資信託などの金融商品の価格が高い時は少ししか買えず、価格が低い時はたくさん買うことになります。

例えば、1月から3月まで100,000円で株式を購入するとして、1月の株価は5,000円、2月の株価は2,000円、3月の株価は4,000円だったとしましょう。この時、各月で買える株数は以下の通りです。

  • 1月:20株(100,000円÷5,000円)
  • 2月:50株(100,000円÷2,000円)
  • 3月:25株(100,000円÷4,000円):

この場合、3月の株価である4,000円で売却した場合、380,000円を手にすることができます(4,000円×95株)。もしも、1月の時点で300,000円(3ヵ月分の投資資金)で株を買ったとすると、購入できる株数は60株です(300,000円÷5,000円)。そして、これを3月に売却した場合、手元に入るお金は240,000円になります(4,000円×60株)。

このように一括で購入するより、株価が高い時も安い時も購入することによって、利益を得やすくなるというのがドルコスト平均法です。つみたて投資を利用すれば、このドルコスト平均法を活用できますので、より分散投資で利益を出せる可能性を高められます。

投資信託を活用したリスク分散

一般的に投資信託は、投資信託のみで様々な銘柄やアセットに投資されています。つまり、投資信託を利用すれば簡単に分散投資できます。
もちろん、株式や債券などで分散投資を行えますが、投資初心者の方にとってはなかなか難しいでしょう。そのため、分散投資を行う際には、ぜひ投資信託の利用も検討してみてください。

まとめ

まとめ

王道の投資手法ともいえる、分散投資について詳しくご説明しました。投資手法には様々な種類がありますが、分散投資は損失によるリスクを抑えられるなどメリットがあります。この分散投資に長期投資とつみたて投資を併用すれば、より効果的な資産運用が可能となるでしょう。投資初心者などで不安がある方は、投資信託を利用するのも1つの方法です。投資信託であれば、基本的にいくつもの銘柄やアセットに分散投資されます。ここで解説した内容を参考に、分散投資による資産運用を検討してみてはいかがでしょうか。

監修者プロフィール

渡辺 智(ワタナベ サトシ)
FP1級、証券アナリスト。

<プロフィール>
大学商学部卒業後は某メガバンクに11年勤務し、リテール営業やプライベートバンカー業務、資産運用コンサルティング(投資信託、保険、債券、外貨預金など)、融資関係業務(アパートローン、中小企業融資)などを経験。銀行在籍中、2度の最優秀営業賞を受賞。銀行在籍時の金融商品販売額は500億円を超え、3000人を超える顧客に金融商品営業を行う。その後、外資系保険会社でコンサルティング営業として従事し、現在は業務経験・知識を活かして金融ライターとして独立。難しい金融をわかりやすく伝えることをモットーに活動中。