コモディティとは?

投資対象の中には株式や債券が代表的ですが、コモディティと呼ばれるものにも投資できます。ここで、コモディティについて解説します。

コモディティとは?

コモディティとは?

コモディティとは?

コモディティ(Commodity)とは、日本語で「商品」のことを意味します。商品とは金や銀、プラチナなどの貴金属、原油や天然ガスなどのエネルギー、小麦やトウモロコシなどの農産物、牛肉などの畜産物のことを言い、コモディティ投資とはそれらの商品先物市場に投資することです。

商品先物市場とは、農産物や鉱工業材料などの商品を将来の一定日時に、一定の価格で売買することを現時点で約束する取引のことを言います。例えば、将来原油の価格の上昇を懸念している場合、その日時においていくらで取引するかを決定することを言います。

これによって将来原油の価格が上がった場合には、あらかじめ決められた金額で取引できるため高い価格で買わずにすみ、反対に価格が下落した場合には上乗せした価格で購入することになり損失になります。先物取引にあたっては、現物を購入するわけではなく、先物価格と取引時点での価格の差額が利益、もしくは損失になります。

新型コロナウイルス(Covid-19)の影響で、原油などの需要が低下しました。それに伴って市場価格が下落して投資家による買いが増えたことで、コモディティ投資が注目されています。

コモディティのメリット

コモディティのメリット

分散投資が可能

コモディティ投資のメリットの1つとして、分散投資が可能な点があります。コモディティの価格は商品ごとの需給バランスや天候、生産量や在庫、為替レートなど様々な要因に影響を受けます。そのため、株式市場やその他の資産の変動要因と異なるので、コモディティへの分散投資はリスク低減効果があるのです。

例えば、金は安全資産とも呼ばれており、大きな政治イベントなどが発生して株式市場が不安定になった際に値上がりする傾向にあります。この特徴を生かして、株式に投資をしながら金にも投資を行うことで、リスクヘッジをするなどの戦略を取ることができるでしょう。

インフレに強い

インフレ(インフレーション)とは貨幣の価値が下落し、相対的にモノの価値が上昇することです。

40年ほど前の大卒の初任給と、現在の大卒の初任給を比較してもらうとわかりやすいでしょう。当時は月額10万円程度でしたが、現在では20万円程度になっており、大きく増えています。初任給10万円では現在なら最低賃金を割ってしまうような金額ですが、当時は現在に比べて物価も低かったために賃金も低かったのです。

その後、物価は上がっていきましたが、日本では1998年以降、経済成長の停滞と共に物価上昇もストップし、デフレーションと呼ばれる状態が続いています。しかし、他の先進国においてはゆるやかな物価上昇が続いているため、日本だけが長期にわたるデフレとなっているのです。

今後、日本においてもデフレ脱却に成功し、他の先進国と同様にインフレが起きることで物価が上昇する可能性があります。その場合は、現預金などの資産で保有していると物価に対してお金の価値が減ることになり、実質的にはお金が減っていると同じことになります。

例えば、原油の価格が上昇することで、原油を原材料とする製品や製造業の製造コストが上がるため、製品価格の上昇が起きることが考えられるでしょう。また、小麦や農産物、牛肉といった畜産など複数の商品価格が上がることは、全体的な物価の上昇に影響しやすくなります。これらのコモディティに投資していた場合には資産が増えやすくなるため、インフレに強い資産であると言えるのです。

また、企業の財務戦略においても、原油価格の高騰や材料の価格の高騰は事業の利益を圧迫するリスク要因となります。しかし、コモディティ投資を行うことで、これらの価格高騰に対策するリスクヘッジを行うことが可能です。特に、商品先物は取得価格を固定することができ、多くの企業が採用しているリスクヘッジの手法の1つとなります。

コモディティのデメリット

コモディティのデメリット

価格変動が予測しがたい

コモディティのデメリットとして、価格の変動が予想しがたいことが挙げられます。農産物などの商品は災害や天候などにより価格が影響されるため予測しづらく、値動きを予測するのが困難です。商品ごとに価格の変動要因が異なるため、急な価格上昇または下落が起こることがあります。

例えば、原油に代表されるエネルギー・天然資源は、政治や世界情勢によっても価格が変動しやすいものです。特に原油は、中東の混乱が生じると供給側の不確実性を高め、価格に大きな影響を与えます。また、原油は経済の景気が影響することもあり、景気が良く生産活動が活発になると原油価格が上がり、景気が悪く生産活動が縮小することで価格が下がることもあるでしょう。

小麦などの農作物は、災害や天候不順などにより生産量に影響が出た場合、需要と供給のバランスが崩れて価格も変動します。このような価格の変動要因は事前に予測することが難しく、コモディティ投資のデメリットの1つと言えるでしょう。

インカムゲインがない

コモディティ投資では売買差益による利益(キャピタルゲイン)のみが期待でき、インカムゲインは発生しません。株式投資を行うのであれば、株価が上がった場合に売却すれば売却益を得ることができるだけでなく、保有していることで配当を受け取ることもできます。配当のような利益や不動産の家賃収入、債券の利息のことをインカムゲインと言います(これに対して売買益のことをキャピタルゲインと言います)。コモディティはそれぞれの商品の価格の変動であるため、株式などとは異なりインカムゲインがないのです。

為替リスクがある

外貨建てで決済されるため為替リスクがあります。為替リスクとは、相場変動により外貨建て資産の価値が変動する可能性のことです。円高になれば価格が下がりやすく、円安になると価格が上がりやすくなる傾向にあります。

コモディティの種類

コモディティの種類

コモディティは、大きくハードコモディティとソフトコモディティに分けられます。

ハードコモディティ

ハードコモディティとは、エネルギーや金属のことです。WTI原油や北海原油などの原油、NYヒーティングオイル、NY無鉛ガソリン、NY天然ガスなどが挙げられます。

エネルギーは景気などによる需要と供給のバランスや、中東の情勢など国際情勢によって価格が変動する可能性が高いでしょう。その他にも、生産動向やOPECで減産の合意がなされた場合、米国のシェールオイルやシェールガスの生産状況の影響を受ける可能性があります。

金属には金やプラチナなどの貴金属と亜鉛やアルミニウムなどの産業用の金属があり、生産量や流通量により価格変動が生じます。貴金属、特に金は古くからその価値を認められ、取引されていた最も歴史のある資産と言えるでしょう。経済状況や金融市場が不安定になった場合などの安全資産として人気が高いものです。

ソフトコモディティ

ソフトコモディティとは農産物や畜産物のことです。農産物には小麦やトウモロコシ、大豆や小豆、米、コーヒー、砂糖、ゴムなどが挙げられます。これらは天候や自然災害の影響によって需要と供給のバランスが変化すると、価格変動に影響が出やすくなります。

畜産物には飼育牛や生牛、赤身豚肉などがあり、農産物と同じく需要と供給のバランスが変化し価格変動につながりやすいものです。生活必需品である畜産物は、需要が安定しているとされています。しかし、飼育するための飼料価格に変動があった場合や、また狂牛病などの疫病が発生した場合に影響を受ける可能性があるでしょう。

コモディティ投資の始め方

コモディティ投資の始め方

コモディティ投資を始めるには、大きく2つの投資方法があります。これまでコモディティ投資はその単価の高さから、投資できる人は限られていました。しかし、近年では投資信託やETF、CFDなど多様な方法でコモディティに投資できるようになり身近なものになってきています。以下に、コモディティを対象とした金融商品をご紹介しましょう。

投資信託・ETF

コモディティに対して投資する投資信託やETFを購入することで、複数のコモディティに間接的な投資が可能です。エネルギーや農業、畜産など、複数のコモディティに対し投資できる投資信託があります。コモディティETFは証券取引所で価格が決まるため、個別株のように証券会社で売買を行うことができます。複数のコモディティに対して分散投資できることも、投資信託のメリットだと言えるでしょう。

投資信託では個別のコモディティを取引することができません。コモディティを個別に取引したい場合は、商品CFDなどで取引することができます。なお、金や原油先物に対して個別で投資できる投資信託はあります。

金・プラチナ積立

純金積立は毎月1,000円から、プラチナ積立は毎月3,000円から、毎月定額で買い付けすることができるサービスが一般的です。貴金属メーカーや地金商、証券会社や銀行などが取り扱っています。

多くのサービスでは1,000円単位で積み立てることができるため、小額から資産形成を始めること可能です。購入した金は手元に置いておくわけではないので保管場所も不要ですし、盗難されるリスクがない点がメリットであると言えるでしょう。

ただ、手数料が高く、購入時には消費税も掛かります(売却する際には返還されます)。また、短期で利益を出すことは難しく、買った時点より価格が下がって損失を出す可能性があることはデメリットとなります。

CFDを利用する

商品CFD(差金決済取引)を活用することで、個別のコモディティに対して投資できます。商品CFDとは実際に商品の現物を購入することなく、ポジションを保有した際の価格と、ポジションを決済した価格の差額のみが取引される差金決済です。

FXは為替の差金を決済するものですが、商品CFDはコモディティの価格の変動によって利益を得ます。CFDを利用すれば原油や金、農産物など、幅広い銘柄を取引することが可能です。

また、現物を保有していなくても売りを行うこともでき、相場が上昇した場合のみでなく下落時にも利益を狙えます。また、レバレッジを掛けることで手持ち資金の何倍もの金額の取引を行うことも可能です。ご自身の投資の目的に合わせて商品を選んでいきましょう。

まとめ

まとめ

コモディティとはどのようなものか、どのような特徴があるかなど解説しました。コモディティでは、金などが投資対象であることは一般的にも知られていることでしょう。しかし、原油や農産物、畜産物なども投資対象になり得ることは、これまでご存じなかった方も多いかもしれません。

コモディティは将来の資産形成、資産運用のポートフォリオの一部として組み入れることもできますし、商品CFDで差額の利益を狙っていくこともできます。物価上昇に強い性質があるため、長期の資産運用においてもインフレに対策するための方法の1つとしても検討する価値はあるでしょう。

同様に、企業が原油や原材料などの仕入れ価格の高騰に対策するための手法として、コモディティ投資を活用することもあります。昨今では新型コロナウイルスの影響による経済的なダメージを受けた個人や企業に対する支援策として、世界各国で大規模な財政出動が行われました。その中で、主要国は軒並みゼロ金利政策を取りました。

先進国の国債金利が低くなっていたことで債券投資ではなく、コモディティ(特に金)に投資する投資家が増えたためにコモディティ価格が上昇しています。多様な使い方ができるコモディティをよく理解し、ご自身の資産の目的に合わせて活用してみてください。

監修者プロフィール

小川 洋平(オガワ ヨウヘイ)
日本FP協会認定 CFP®、合同会社clientsbenefit 代表、FP相談ねっと認定FP、SG中越代表

<プロフィール>
25歳でお金の知識・営業経験ゼロから保険営業の世界に飛び込み6年半従事。2年目に将来の資産形成のため金融知識が必要なことに気が付き、FPの勉強を始めて金融・経済の知識を学ぶ。その後、保険に限らずあらゆるお金の面でクライアントにとってベストな提案をしたいという想いで、商品販売ではなく相談業務を開始。2013年より資産形成の考え方に関するセミナーを自主開催。その他、大手金融機関からの委託により実施。現在は小規模事業者の年金や資産運用のサポートを中心に相談・経営支援の業務に携わり、確定拠出年金など起業家の将来の資産形成と経営のサポートを行っている。投資信託や資産形成の分野を得意としている。