信託報酬ってなに?

いくつか種類のある投資信託の手数料から、長期保有するほど重要になる信託報酬についてご説明します。

信託報酬ってなに?

信託報酬とは

信託報酬とは

信託報酬とは投資信託を保有している間、投資信託の管理・運用経費として支払う費用のことです。投資信託の種類によって金額は異なります。

信託報酬は販売会社(銀行や証券会社)と運用会社(実際に運用をする機関)、管理会社(信託銀行など)がそれぞれ業務の報酬として受け取るものです。純資産総額に対する年率で表示されますが、日割り計算で日々引かれており、基準価額は信託報酬が引かれた後の価格です。基準価額はすでに信託報酬が引かれているため、信託報酬は目に見えにくい手数料と言われています。

投資信託には信託報酬以外にも、販売手数料と信託財産留保額という手数料がかかります。それぞれの手数料についてご説明しますので、投資信託を購入する際の参考にしてください。

販売手数料

販売手数料とは投資信託を購入する際にかかる手数料で、金額はファンドによって異なります。投資信託には販売時手数料のかからないノーロード型の投資信託も多く、つみたてNISAに採用されている投資信託はすべてノーロード型です。

信託報酬と違い、販売手数料は投資信託を購入する際に1回しか発生しません。しかし、手数料が高いほど運用成績を圧迫することになるので、信託報酬だけでなく販売手数料にもこだわりましょう。

一般的に店舗を構える証券会社や銀行など、対面型の金融機関は販売手数料が高い傾向にあります。一方、店舗のないネット証券は販売手数料が低いことが多いでしょう。同じ投資信託でも、金融機関によって販売手数料が異なりますので注意が必要です。

信託財産留保額

信託財産留保額とは、投資信託を解約する際にかかる手数料です。ただし、信託財産留保額についてはかからないものも少なくありません。信託財産留保額がかかる投資信託は、大体0.1%~0.5%程度になります。

投資信託の商品によって金額が変わる理由

投資信託の商品によって金額が変わる理由

投資信託の信託報酬は、投資信託の商品によって金額が変わります。なぜなら、ファンドによってかかる運用コストが異なるからです。投資信託は、主にアクティブファンドとインデックスファンドに分かれます。

アクティブファンド

アクティブファンドとは、運用のプロフェッショナルであるファンドマネージャーなどが、日経平均株価やNYダウなどのベンチマークよりも高い運用実績を目指すファンドです。組み入れる株式や債券などをファンドマネージャーが調査するため、その分だけコストが高くなります。

インデックスファンド

インデックスファンドとは、日経平均株価やNYダウなどの指数に連動するのを目指す投資信託です。日経平均株価やNYダウなどと同じ投資をするだけなので、調査費用などが必要なくコストが安くなります。

つまり、アクティブファンドの信託報酬が高い傾向にあり、インデックスファンドの信託報酬は低い傾向にあるのです。理由は前述の通りですが、アクティブファンドは「アクティブ運用」をしており、インデックスファンドは「パッシブ運用」しています。それぞれの運用方法の特徴をまとめましたので、参考にしてください。

信託報酬の計算方法

信託報酬の計算方法

信託報酬は以下の方法で計算できます。

購入金額×○○%(信託報酬)×1.1(消費税)÷365(日割り計算)

例えば、購入金額が100万円で税引き前の信託報酬が0.5%の場合、1日あたりにかかる信託報酬の負担は以下の通りです。

・100万円×0.5%×1.1÷365=15円

このケースでは年間5,500円の信託報酬がかかり、毎日約15円の信託報酬がかかります。

日本には約5,000を超える投資信託がありますが、信託報酬の平均は投資信託協会によると2016年12月末現在で1.12%(税抜き)でした。平均すると1.12%ですが、中には2%を超える信託報酬がかかる投資信託もあります。信託報酬は投資信託によって大きく異なるので、しっかり確認する必要があります。

信託報酬が低い投資信託を簡単に選ぶ方法が1つあります。それは、つみたてNISAに採用されている投資信託を選ぶことです。つみたてNISAのファンドは、ファンドの種類によって以下のように信託報酬の上限が決まっています。

・国内インデックスファンド:年0.5%以下
・国内アクティブファンド:年1.0%以下

このように、つみたてNISAで利用できる投資信託の信託報酬は非常に低い傾向にあります。

信託報酬の確認方法

信託報酬の確認方法
看板はイメージです。(架空)

信託報酬は投資信託の説明書である目論見書、あるいは投資信託を販売している銀行や証券会社のホームページで確認できます。信託報酬は毎日引かれるもので、基準価額は信託報酬が引かれた後の価額です。引かれた後の価額を見るのが一般的なので、目に見えづらい手数料と言えるでしょう。

しかし、信託報酬は確実に引かれていますし、長期投資するほど信託報酬の影響は大きくなります。必ず確認しておきましょう。

■信託報酬が高いファンドは避けるべき?

信託報酬は運用成果に直接響くため、できるだけ低いファンドを選ぶべきだと考えている方もいるでしょう。結論として、インデックスファンドとアクティブファンドでは運用方針が異なるため、それぞれの特徴を理解することが必要です。

■インデックスファンド

・特定の株価数値などに連動するように運用
・大きな価格変動は起きにくい
・銘柄入れ替えが機械的であり、コストを抑えやすい

■アクティブファンド

・運用会社が独自に投資方法を決め、指数を上回る成果を目指して積極的に運用
・価格変動が起きやすい
・専門家が調査や銘柄入れ替えをするためコストがかかる

信託報酬が大きくなるほど投資家にとっては実質的な利益が減るため、コストを抑えた方が良いでしょう。しかし、運用方針の違いから、一概に託報酬が低いだけで選ぶのは注意が必要です。

ただし、同じインデックスを参照したパッシブファンドの場合、中身がほぼ同じなため信託報酬が低いファンドを選ぶのが合理的と言えるでしょう。いずれにしても、信託報酬の多寡のみで運用成果の優劣が決まるわけではありません。相場環境や資金の性質などに合わせて、適宜ファンドを選択していく必要があります。

投資初心者が投資信託の手数料を抑える方法

投資初心者が投資信託の手数料を抑える方法

投資信託のコストを低くできれば、その分だけ余計なコストがかかりません。そのため、効率的な運用が可能です。しかし、投資初心者が手数料の低い商品を見つけるのは難しいかもしれません。
ここでは、投資初心者でも簡単に手数料の低いファンドを見つけるコツを3つご紹介します(ただし、信託報酬が低いファンドが運用実績の良いファンドとは限りませんので注意が必要です)。

信託報酬の安いインデックスファンドを選ぶ

一般的に、インデックスファンドはアクティブファンドよりも信託報酬が安くなります。なぜならアクティブファンドは、銘柄選定をする際に調査費などの手数料がかかるからです。
一方、インデックスファンドは日経平均株価やNYダウに連動する運用を機械的に行えます。その分だけ信託報酬も低くなりますので、信託報酬が低いファンドで運用したいならインデックスファンドを選びましょう。

販売手数料無料の商品を選ぶ

販売手数料にこだわることも重要です。信託報酬や信託財産留保額はどの販売金融機関で購入しても同じですが、販売手数料は販売金融機関によって異なります。同じファンドでもA銀行では3%、B証券会社では0%ということもあるのです。
一般的に対面型の金融機関では販売手数料が高く、ネット証券は販売手数料が安い傾向にあります。投資信託を購入する際は、販売手数料についてしっかり確認しましょう。

信託財産留保額なしの商品を選ぶ

信託財産留保額がかかる投資信託は多くありませんが、同じような運用をしている商品でも信託財産留保額の有無が異なります。例えば、日経平均株価に連動するインデックスファンドの中にも、信託財産留保額がかかるものとかからないものがあるのです。そのため、信託財産留保額についてもしっかり確認するようにしましょう。

まとめ

信託報酬は、投資信託を保有している間にかかるランニングコストです。その金額はファンドによって信託報酬は異なり、信託報酬が低いほど余計な運用コストをかけずに運用できます。ただし、信託報酬が低いからといって「良いファンド」と考えるのは危険です。なぜなら、インデックスファンドとアクティブファンドでは運用方針が全く異なり、信託報酬だけでファンドの善し悪しは判断できないからです。ここで解説した内容を参考に、信託報酬について理解を深めるようにしましょう。

監修者プロフィール

渡辺 智(ワタナベ サトシ)
FP1級、証券アナリスト。

<プロフィール>
大学商学部卒業後は某メガバンクに11年勤務し、リテール営業やプライベートバンカー業務、資産運用コンサルティング(投資信託、保険、債券、外貨預金など)、融資関係業務(アパートローン、中小企業融資)などを経験。銀行在籍中、2度の最優秀営業賞を受賞。銀行在籍時の金融商品販売額は500億円を超え、3000人を超える顧客に金融商品営業を行う。その後、外資系保険会社でコンサルティング営業として従事し、現在は業務経験・知識を活かして金融ライターとして独立。難しい金融を分かりやすく伝えることをモットーに活動中。