配当性向とは

2021年9月15日

 

配当はキャピタルゲインに並ぶ株式投資の収益源。ここでは、配当の高低を図る指標の1つ「配当性向」についてご説明します。

配当性向とは

配当性向とは、当期純利益に占める年間の配当金の割合を示す指標です。つまり、配当性向が高い会社は、株主に多くの利益を還元しているということになります。

株式投資の最大の醍醐味は、キャピタルゲイン(譲渡益)と思われている方が多いかもしれません。しかし、安定的な利益が期待できる配当に注目した投資は、近年注目されつつあります。その理由はさまざまですが、経済的自立をして早期退職をするFIREという生き方に注目が集まっていることは、大きな要因の1つでしょう。FIREを実行するためには、投資によって毎月の生活費を安定的に稼ぐことが求められます。

 

もちろん、値上がり益でも生活費を稼ぐことが可能です。しかし毎月、安定的に値上がり益を出すのは非常に難しいでしょう。一方、配当であれば安定的な収益が期待できるため、生活費を稼ぐ観点から考えると計算しやすくなります。

 

日本企業は配当金を毎年同じ金額にする傾向が強いため、利益が出ているときは配当性向が低く、出ていないときは高くなりやすいのが特徴です。日本企業も以前に比べ、高い配当を出す企業が増えてきました。以下、配当性向が高い企業についてまとめましたので、参考にしてください。

配当性向の計算式

配当性向は簡単に計算することができます。計算式は2つあります。

 

・配当性向(%)=配当金支払総額÷当期純利益×100

・配当性向(%)=1株当たり配当金÷1株当たり純利益(EPS)×100

 

例えば、配当金支払総額が30円で当期純利益が1,000円の会社の場合は、以下のような計算式で配当性向の計算ができます。

 

・30÷1,000×100=3

 

つまりこのケースでは、配当性向が3%です。また、1株当たり配当金が3円で1株当たり純利益(EPS)が100円の場合、以下のような計算式でも配当性向が計算できます。

 

・3÷100×100=3

 

この会社の配当性向も3%です。このように配当性向は簡単に計算できますし、インターネットで調べれば企業の配当性向について調べられます。気になる企業があれば、配当性向について確認してみましょう。

 

配当性向が高い会社は株主に多くの利益を還元しているといえますが、1つ注意点があります。それは、あくまで配当性向が配当に対する会社の姿勢であるということです。配当性向の高低は、実際の配当金の額ではありません。例えば、以下の場合は、配当性向の低いA社の方が配当金は大きくなります。

 

・A社:利益5,000万円×配当性向20%=配当金支払総額1,000万円

・B社:利益3,000万円×配当性向30%=配当金支払総額900万円

 

この点については、十分に注意しておいてください。

配当性向の見方

続いて、投資するうえで重要な配当性向の見方についてご説明します。そもそも配当性向の高低は、何を意味するのでしょうか。配当性向が低いということは、一般的利益を内部留保に回している、もしくは投資に回しているということです。逆に配当性向が高いということは、投資家に配当という形で利益を還元している企業といえるでしょう。

 

一般的に、成長企業は利益を投資に回して企業価値を上げることを期待されるので、配当性向は低くなる傾向があります。そのため、成長企業の配当は低くなりがちです。しかしその分だけ、企業価値が高まれば株価が上がるので、キャピタルゲインが期待できます。

一方で、成熟企業は投資をそれほど必要としません。そのため、高い配当性向を期待されやすく、成熟企業の配当性向の目安は20~30%程度とされています。このように、成長企業と成熟企業で配当性向に異なる傾向があることも、あらかじめ理解しておきましょう

 

成長企業の多くが上場している東証マザーズと、多くの成熟企業が上場している東証一部上場企業で、配当性向が高い企業をランキングにしてみました。

このように成長企業と成熟企業では、配当性向に大きな違いがあるのがわかるでしょう。

配当が高い企業に投資するメリット

配当が高い企業への投資は、主に3つのメリットが挙げられます。それぞれ詳しく解説しますので、確認しておいてください。

 

安定的な収益が期待できる

インカムゲインはキャピタルゲインに比べて、一度に入ってくるお金は多くありません。一方で、安定的な収益が期待できます。また、キャピタルゲインを狙うためには毎日株価をチェックしたり、テクニカル分析等を行ったりすることが必要です。

これに対してインカムゲインの場合、一度購入すれば、後は定期的に配当が入ってきますので、逐一株価をチェックしなくて済むでしょう。もちろん、ずっとほったらかしにするのは危険です。しかし、キャピタルゲイン狙いの投資に比べて、精神的に楽な投資ができるのではないでしょうか。

 

定期的に収入が入ってくる

日本企業の場合、多くの企業では年に2回配当が入ってきます。そしてアメリカ株であれば、年に4回配当が入ってくることが多いでしょう。さらにアメリカ株の場合は、毎年配当が出る企業も少なくありません。もちろん一度に入ってくる利益は少ないですが、定期的に収入が入ってくることは、インカムゲイン狙いの投資における大きなメリットでしょう。

 

長期投資に向いている

インカムゲインは、長期で保有するほど積み上がっていく利益です。投資の基本は長期投資であるといわれているので、インカムゲイン狙いの投資はその原則に合っている投資手法なのです。自然と長期投資するようになるのは、配当が高い企業を対象としたインカムゲイン狙いの投資の大きなメリットでしょう。

配当の高い企業へ投資するインカムゲイン狙いの注意点

配当が高い企業に投資し、インカムゲインを狙う場合にも注意点はあります。ここでは、主に3つの注意点を解説しますので、あらかじめ理解しておきましょう。

 

元本保証ではない

インカムゲイン狙いの投資は、キャピタルゲイン狙いの投資に比べて安定しています。しかし、決して元本保証ではありません。当然ながら、購入した株式の株価が大きく下落するケースもあります。

 

また、インカムゲインを狙った投資では逐一株価をチェックする必要はないものの、あまりに長く放置すれば大きな株価の下落にも気づきません。その結果、損失が出てしまう可能性が考えられます。それほど細かく株価をチェックする必要はありませんが、インカムゲイン狙いでもある程度の確認は必要です。

 

一度に受け取れる利益が少ない

インカムゲイン狙いの投資は、安定的な収益が期待できます。しかし一方で、一度に受け取れる利益は少ない点に注意してください。また、キャピタルゲイン狙いの投資の代表格であるテンバガーのように、1年間など短期間で大きな利益を得られるケースはほぼありません。短期的に利益を得たいという方にとっては、大きなデメリットとなります。インカムゲイン狙いの投資は、あくまでコツコツと利益を積み重ねていく投資です。

 

大きなキャピタルゲインが狙えないケースが多い

先に取り上げた、東証マザーズと東京証券取引所1部に上場している企業の配当性向が高い企業のランキング。これを見ると東証1部上場企業の配当性向が高く、東証マザーズに上場している企業の配当性向は低い傾向にあることがわかります。つまり、配当性向が高い企業の多くは成熟企業であるケースが多く、大きなキャピタルゲインが狙えない場合が多いのです。対してキャピタルゲインの狙える成長企業は、その多くで配当性向が低い傾向にある点に注意してください。

まとめ

ここでは、配当性向について詳しくご説明しました。配当性向は企業の配当に対する考え方について、簡単に知ることができる指標です。近年、配当に注目した投資が流行っています。また、以前まで日本企業は配当が少ない傾向にありましたが、最近は配当を多くする企業が増えてきました。配当の高い安定した企業に投資できれば、長期間安定的に配当を受け取れます。

 

キャピタルゲインに比べると、配当は決して大きなものではありません。しかし、安定して定期的に配当が出る傾向にあるため、例えば、生活費の一部を補うといったことは可能です。長期的な資産運用に向けた投資なら、ここで取り上げた内容を参考に、配当の高い企業に対するインカムゲイン狙いの投資を考えてみてはいかがでしょうか。

監修者プロフィール:

渡辺 智(ワタナベ サトシ)
FP1級、証券アナリスト。
<プロフィール>
大学商学部卒業後は某メガバンクに11年勤務し、リテール営業やプライベートバンカー業務、資産運用コンサルティング(投資信託、保険、債券、外貨預金など)、融資関係業務(アパートローン、中小企業融資)などを経験。銀行在籍中、2度の最優秀営業賞を受賞。銀行在籍時の金融商品販売額は500億円を超え、3000人を超える顧客に金融商品営業を行う。その後、外資系保険会社でコンサルティング営業として従事し、現在は業務経験・知識を活かして金融ライターとして独立。難しい金融をわかりやすく伝えことをモットーに活動中。