投資信託の分配金について詳しく知りたい!仕組みや種類を解説!

一昔前、毎月分配型の投資信託が一大ブームになりました。そこで今回は、投資信託の分配金についてご説明します。

投資信託の分配金について詳しく知りたい!仕組みや種類を解説!

そもそも投資信託の分配金とは

そもそも投資信託の分配金とは

分配金とは、投資信託の運用成果などを保有口数に応じて投資家に還元するものです。投資信託には決算が行われる際に運用して得た利益などを分配金として、投資家の保有口数に応じて支払う仕組みがあります。この分配金は投資信託の純資産から支払われるため、分配金が支払われると、その分だけ投資信託の資産が減少するということになるのです。

また、分配金額は投資環境によって大きく変化する可能性があり、運用成績によっては支払われないこともあります。そのため、分配金はあらかじめ決められた利率によって、事前に受取額が確定している預貯金の利子・利息とは大きく異なります。混同しないように注意しましょう。

分配金額の決定方法

では、分配金額はどのように決定されるのでしょうか。これは、運用会社が投資信託ごとに決められた分配方針に基づいて、分配対象額の範囲内で決定しています。投資信託は株式や債券など様々な資産に投資しており、それらの資産から配当や利子である「インカムゲイン」や、それらの資産の値上がり益である「キャピタルゲイン」を得ることを目指しているものです。そして、これらの利益に過去から繰り越されてきた利益の繰り越し分などを加えたものが、分配対象額となります。

分配金と基準価額はどういった関係にあるのか?

分配金と基準価額はどういった関係にあるのか?

分配金が支払われると、投資信託の基準価額は分配金の分だけ下がります。「基準価額」とは投資信託が現時点でどのくらいの価値があるのかを示したもので、投資信託の値段のことです。投資信託に組み入れられている株式や債券などをすべて時価評価したものに、株式の配当金や債券の利息などの収入を加えたものを純資産総額と言います。この純資産総額を投資信託の総口数で割ったものが「1口当たり価額」、すなわち「基準価額」です。なお、当初1口=1円の投資信託の基準価額は,原則として1万口単位で表示されます。

  • 基準価額の計算式:基準価額= 純資産総額÷口数

分配金は、投資信託の純資産総額から支払われます。そのため、投資信託に組み入れられている株式や債券などの価格変動を考慮しない場合、純資産総額は分配金相当分だけ減少するということです。つまり、「基準価額」も分配金が支払われる決算日には分配金の分だけ下がるということになります。

分配金の種類

分配金の種類

分配金の主な種類について「普通分配金」と「特別分配金」の2つを取り上げ、それぞれご説明しましょう。

普通分配金

普通分配金とは、運用によって得られた利益(=元本を上回った分)を投資家に支払う分配金です。普通分配金は利益から出しているため課税対象になります。

特別分配金

特別分配金は、利益ではなく元本の一部を投資家に「戻す」分配金になるので、課税対象にはなりません。特別分配金の額だけ基準価額(個別元本)は減少しますので、運用資金が減ります。特別分配金は投資家の元本が返ってきただけであり、利益とならないため課税されないのです。特別分配金は、タコ足配当や元本払戻金とも呼ばれています。

投資信託によっては「分配金あり」と「分配金なし」がある

投資信託によっては「分配金あり」と「分配金なし」がある

投資信託によっては、「分配金あり」と「分配金なし」があります。基準価額がどのように推移(どのように上昇あるいは下落)したのかで分配金の影響が異なってくるため、分配金の「ある」「なし」のどちらが良いのかは一概に言えません。ただし、投資信託の基準価額が上昇傾向の場合は、分配金「なし」の投資信託の方が優位ということができます。なぜなら、分配金を支払わないことで資金を投資信託内に留保して運用できるため、運用効率が良くなるからです。

一方、投資信託の基準価額が下落傾向の場合は、分配金「あり」の投資信託の方が優位ということができます。それは、下落前に支払われた分配金の分で、下落の度合いをやや緩和できるためです。

「分配実績なし」と「分配実績あり」の投資信託では、基準価額の推移はどう違う?

「分配実績なし」と「分配実績あり」の投資信託では、基準価額の推移はどう違う?

基準価額は、「分配実績なし」の方が「分配実績あり」よりも高い水準で推移します。分配金は投資信託の純資産から支払われ、分配金が支払われると、その金額相当分だけ基準価額は下がります。そのため、基準価額は「分配実績なし」の投資信託の方が「分配実績あり」よりも高い水準で推移するのです。

投資信託に「割高」「割安」はある?

投資信託の場合は割高・割安を判断するための比較対象が存在ないため、基準価額だけでは「割高」なのか「割安」なのか判断できません。「割高」なのか「割安」なのかは、それを判断する比較対象が必要になります。

上場株式の場合は「割高」「割安」といった判断がよく用いられており、比較対象の例としては、企業の利益や企業が保有する資産といった企業価値が一般的です。今の株価水準がそれら企業価値と比べ、過去の水準や他の企業などと比較して相対的に「割高」なのか、「割安」なのかの判断を行います。

一方で、投資信託の場合は、割高、割安を判断するための比較対象が存在しません。それは投資信託の基準価額が、投資信託に組み入れられているすべての資産を、その時々の市場の値段により評価したものが基準になっているからです。もし投資信託の基準価額の「割高」「割安」を判断するのであれば、投資信託に組み入れられている資産(株式やリート、債券など)1つ1つについて、その資産価値と現在の価格水準がどうなっているのかを比較検討する必要があります。

基準価額の違いについて

基準価額の違いについて

投資対象や運用方法、運用成績など内容が同じ場合でも、その設定タイミングによって投資信託ごとの基準価額は異なります。通常、投資信託は設定日(運用をスタートする日)の基準価額を1万口当たり10,000円とします。そのため、投資対象や運用方法、運用成績など内容が同じ投資信託があったとしても、各投資信託の設定タイミング(運用をスタートした時の環境)によって基準価額が大幅に異なることがあるのです。

基準価額の水準を見比べた場合、同じ内容の投資信託であれば基準価額の高い投資信託の方が運用成績も良く見えたり、同じ購入金額でも購入口数が多くなることから、基準価額が低い投資信託の方が得に見えたりする場合があります。しかし、設定タイミングが違う投資信託を比べても意味がなく、基準価額の水準だけで投資信託の良し悪しや投資の有利・不利を評価することはできません。

基準価額の水準について

基準価額の高い投資信託と低い投資信託は、その水準だけで 割安かどうか判断することはできません。その判断には、基準価額の「上昇率」が大切と考えられます。

「基準価額」とは、投資信託が現時点でどのくらいの価値があるのかを一般に1万口当たりで示したものです。投資信託ごとに「設定日」「運用する投資対象」「分配方針」など多くの条件が違うので、投資信託の基準価額はそれぞれ異なったものになります。そのため、基準価額の水準だけで割安かどうかを判断することはできません。

例えば、基準価額が異なる2つの投資信託で、それぞれの運用する資産が20%上昇したとしましょう。この場合、2つの投資信託の「上昇幅」(基準価額の値上がり額)は異なりますが、「上昇率」はどちらも同じ20%になります。投資信託の投資後の評価金額は、その時の基準価額と保有口数を掛けて算出されるため、基準価額は「絶対値」ではなく「上昇率」が重要ということになります。

分配金の注意点

分配金の注意点

分配金には様々なメリットがある一方で、いくつか注意点もあります。次に、分配金の注意点について、具体的に3つ挙げてご説明しましょう。

分配金がたくさん出ている投資信託が良いの?

分配金の多さで投資信託の良し悪しは測れません。なぜなら、投資した資金(投資元本)の成長が重要と考えられるからです。

毎月分配型投資信託のように、定期的に受け取ることができる「分配金」は大きな魅力とも言えます。一方、分配金の支払いによって投資信託の資産が減少するため、「基準価額」は分配金相当分だけ下がることに注意が必要です。つまり、毎月高い水準の分配金が支払われていても、運用する株式などの資産の価格が変わらなければ、基準価額は毎月支払われる分配金相当分だけ下がっていくことになります。

分配金の多さではなく、「投資信託に投資したお金が最終的に利益を生み出しているかどうか」が重要と考えられるでしょう。そのため分配金の水準だけではなく、「分配金の累計額」に加え「基準価額の値動き」の面も含め、投資した資金(投資元本)が成長している(していく)のかどうか見極めることが大切です。

分配金利回りが高い投資信託が良いの?

分配金額が同じであった場合、直近の基準価額が低いほど分配金利回りが高くなります。そのため、分配金利回りが高い投資信託が、必ずしもパフォーマンスが良い投資信託とは限りません。分配金利回りは、一般的に以下のように求められます。

  • (過去1年間の分配金の累計額)÷(直近の基準価額)×100%

例えば、毎月100円ずつの分配金(1万口当たり)が出ている毎月分配型の投資信託で、直近の基準価額が8,800円であった場合は以下のように計算されます。

  • 1,200円(100円×12ヵ月)÷8,800円×100%=約14%

普通分配金は課税される

特別分配金より普通分配金の方が、利益から出している分だけ良い分配金です。しかし、普通分配金は利益から出している分配金になるので、当然ながら課税されます。課税される分、特別分配金より手元に残る金額は少なくなるので注意しましょう。

まとめ

投資信託の分配金について、詳しくご説明しました。投資信託の分配金は毎月分配型投信に代表されるように、一昔前は一大ブームを巻き起こし、人気の投資信託のほとんどが高い分配金を出す商品だった時期もあります。確かに分配金が出ると、嬉しい気持ちになるでしょう。しかし、この分配金については理解を深めておかないと、投資元本がどんどん減ってしまう可能性もあります。

分配金について理解するためには、基準価額との関係をしっかり理解することが大切です。ここで解説した内容を参考にして、分配金について正しい知識を身につけておきましょう。

監修者プロフィール

渡辺 智(ワタナベ サトシ)
FP1級、証券アナリスト。

<プロフィール>
大学商学部卒業後は某メガバンクに11年勤務し、リテール営業やプライベートバンカー業務、資産運用コンサルティング(投資信託、保険、債券、外貨預金など)、融資関係業務(アパートローン、中小企業融資)などを経験。銀行在籍中、2度の最優秀営業賞を受賞。銀行在籍時の金融商品販売額は500億円を超え、3000人を超える顧客に金融商品営業を行う。その後、外資系保険会社でコンサルティング営業として従事し、現在は業務経験・知識を活かして金融ライターとして独立。難しい金融をわかりやすく伝えることをモットーに活動中。