インフレ(インフレーション)とはなに?

インフレという言葉について、詳しく意味を理解していない方もいらっしゃるでしょう。本記事では、インフレについてご説明します。

インフレ(インフレーション)とはなに?

インフレ(インフレーション)とは

インフレ(インフレーション)とは

インフレーションとは、世の中の全体的な財・サービスを代表する価格指数(物価)が継続して上昇する状態を指します。英語表記は「Inflation」で、インフレと略されることが多いです。

一般的には需要が供給を上回る、あるいは賃金や原材料費が高騰するなどの原因により起こるとされています。景気回復にともなって消費活動が活発化し、モノがよく売れることから企業の生産活動が活発となって従業員の給与も上がるというように、社会が安定している状態での物価上昇は経済の成長を促します。

ただ、物価上昇にともないお金の価値が下がる一方で、すべての財・サービスは同率に価格上昇するわけではありません。そのため、給与の上昇が物価の上昇に追いつかず、購買力の低下を促すことにもなります。

また、短期間で物価が数倍にも高騰するような過度なインフレーションは貨幣価値の低下をもたらすだけでなく、所得・資産の再分配にも弊害を招く可能性もあります。このようなハイパーインフレーションは、歴史的にも世界経済に深刻な打撃を与えてきました。

インフレーションの水準を適正に管理することは、経済政策金融政策運用上の大きなテーマの1つです。インフレと反対の言葉にデフレーションがあり、デフレーションは物価が継続して下落する状態のことで、一般的に省略して「デフレ」と呼ばれます。
主な原因としては、モノやサービスの需要と供給のバランスが崩れ、需要が供給を下回ることによる物価下落が挙げられます。

また、インフレーションと似た言葉にスタグフレーションという言葉もあります。スタグフレーションとは、景気が停滞しているにもかかわらずインフレーションが続くことです。 不況(Stagnation)とインフレーション(Inflation) の合成語になります。

通常、景気が停滞すると 消費者の需要が落ち込み、物価は落ち着くといわれています。しかし、1970年代の第一次石油ショック後、主要先進国にて金融引き締め政策を取った際、景気が沈静化しても、物価の状況には変化が生じないケースが見られました。スタグフレーションは、経済低迷の深刻な状況だといえます。

インフレのメリット

インフレのメリット

インフレには、主に以下のような3つのメリットが挙げられます。

消費が増え企業の売り上げが上昇

インフレになると、物価が上がるとともに賃金も上がるのが一般的です。賃金が増えると消費に回す人が多くなり、企業の売り上げが上昇します。企業の売り上げが上昇すると賃金はさらに増え、そこから消費へお金が回り、企業の売り上げがもっと良くなるという好循環が生まれます。インフレになると、景気が良くなるのは大きなメリットです。

賃金の上昇

インフレはモノやサービスの需要が大きく、供給を上回ると発生します。モノやサービスの価格がどんどん上がっていくことが想定されるため、消費者は早く購入するようになり、 企業の売り上げが上がります。

企業の売り上げが上がると賃金にも還元されるので、賃金の上昇が期待できるのが一般的です。ただし、賃金が上がっても物価の上昇率の方が高いと、実質目減りしてしまうので注意してください。

円安になり、輸出業が好調になる

インフレになると円の価値が低くなるので、円安になりやすくなります。円安になると輸出業の利益は大きくなります。なぜなら、1,000ドルの売り上げがあった場合、1ドル100円だと10万円で、130円だと13万円になるからです。

このように輸出業の場合、円安になった方が利益は大きくなります。日本は自動車産業など輸出産業が中心なので円安になることで、日本全体の景気が良くなる期待もあります。

インフレのデメリット

インフレには以下のようなデメリットもあります。

輸入企業が厳しくなる

輸出企業にとって円安は追い風ですが、輸入企業にとっては業績悪化の要因となります。なぜなら、1,000ドルの商品を購入する場合に1ドル100円なら10万円の支払いですみますが、1ドル130円では13万円の支払いが必要になるからです。円安になると輸入企業の業績は圧迫されてしまい、経営は厳しくなってしまいます。

海外旅行費用が高くなる

インフレになると海外旅行費用が高くなります。例えば、1ドル1,000円の時は1,000ドルを10万円で換えられますが、1ドル130円の場合は13万円が必要になるからです。よく海外旅行する方にとっては、大きなデメリットになるでしょう。

代表的な2つのインフレ事例

代表的な2つのインフレ事例

インフレについて、代表的な2つの事例を見ていきましょう。

ジンバブエのインフレ

2008年11月、アフリカ大陸のジンバブエでは、前月比796億%というすさまじいインフレ率を記録しました。これは、もはや通貨としての価値はない状況です。ここまでのハイパーインフレが起きてしまった理由はさまざまですが、ジンバブエ政府の政策に問題があったというのが主な理由になります。

日本の戦後

太平洋戦争に負けた日本は、多額の借金や生産力の低下からハイパーインフレが起きました。 1934年から1936年の消費者物価指数を1だとすると、1954年は301.8です。約18年間で物価が約300倍となったのです。

このように、過去に多くの国がインフレを経験しています。世界中の国は行き過ぎたインフレの恐ろしさをよく知っているので、インフレ対策には神経をとがらせているのです。

インフレが投資に与える影響

インフレが投資に与える影響

インフレは投資にも影響を与えます。インフレになると物価が上がるため、相対的にお金の価値が下がります。つまり、預金で持っていると、実質的に資産価値が目減りしてしまうことになるのです。

お金以外の資産に投資することで価値の目減りに対抗できますので、資産運用について検討すべきでしょう。ここで、代表的な金融資産がインフレにどのように対応できるかについてご説明します。

株式

インフレ時には企業活動が活発になるので、株価が上昇します。貨幣価値は下がっても株価は上がるので、物価上昇から資産を守ることが可能です。

外貨

インフレ時は円安となるため、日ごろから外貨を保有しておいて円安局面で円に換えれば、物価上昇から資産を守れます。なぜなら、円高の時に外貨を保有しておき、円安になった時に円に戻せば、円資産が増えるからです。

現物資産

金やプラチナなど希少性の高い現物に投資することで、物価上昇から資産を守れます。なぜなら、インフレになると金やプラチナなど、希少性の高い現物の価格が上昇する傾向にあるからです。

インフレがFXに与える影響

インフレがFXに与える影響

インフレは、株式や債券だけではなくFXにも影響を与えます。なぜなら、インフレになると円安ドル高になるからです。円安ドル高になるだけではなく、ユーロやポンドなど米ドル以外の通貨に対しても円の価値は下がります。そのため、インフレが起こった場合はロングポジションを保有しておくのがよいでしょう。

ただし、いくらインフレになったからといって、ずっと円安になるとは限りません。一時的に大きな円高になる可能性もあります。そのような場合に備えて、証拠金には余裕を持たせて取引するようにしましょう。

また、定期的に購入することで、購入単価を安定させることができるFX積立を利用するのもおすすめです。FX積立を利用すれば、一時的に円高になったとしても、円高になった時も購入することができます。
また、一般的にFX積立は少ない金額で始めることが多いので、証拠金に余裕を持たせられます。結果として、ロスカットに引っかかりにくくなるでしょう。FXを利用すれば、中長期的に外貨を保有しインフレに備えることができます。

インフレに対応する資産運用方法は?

インフレに対応する資産運用方法は?

インフレに対応するためには、現金だけを保有しておくのは危険でしょう。なぜなら物価が上がり、お金の価値が目減りしてしまうからです。インフレに備えて、株式や外貨などインフレになると上昇する資産を持っておくことをおすすめします。

もちろん、すべての資産を株式や外貨などにするのは得策ではありません。なぜなら、株式や外貨などは下落することもあるからです。生活に支障のない一定の金額は現金で持っておくべきですが、その他の余裕資産に関しては資産運用を検討するのが良いでしょう。

また、インフレに対応する程度の運用であれば、高いリスクを取る必要もありません。値動きの激しい銘柄や、新興国通貨などに投資するのは控えましょう。あくまで、インフレについていけるくらいの安定的な運用を行うのがおすすめです。

安定的な運用をする際は必ず余裕資金で行い、様々な金融商品に分散して投資するようにしましょう。余裕資金で投資を行えば、仮に大きく下落したとしても上昇するまで我慢して保有できます。また、様々な金融資産に分散投資をすれば、1つの金融資産が下がっても他の金融商品が補ってくれるでしょう。

資産運用と聞くと、値動きが激しい投資を想像する方がいるかもしれません。しかし、インフレへ対応するための投資に関しては、高いリスクを取る必要はありませんので覚えておいてください。

まとめ

インフレーションについて詳しくご説明しました。インフレはいつの時代も起きています。また、インフレになると、その国は大きなパニック状態になるので対策が必要です。個人単位で考えてもインフレになればお金の価値が減ってしまいますので、対策は欠かせないでしょう。そのためには、現金だけではなく、株式や外貨などの資産運用を行うことも求められます。ただし、資産運用を行う際は過度なリスクを取ることなく、余裕資金で行うようにしてください。

監修者プロフィール

渡辺 智(ワタナベ サトシ)
FP1級、証券アナリスト。

<プロフィール>
大学商学部卒業後は某メガバンクに11年勤務し、リテール営業やプライベートバンカー業務、資産運用コンサルティング(投資信託、保険、債券、外貨預金など)、融資関係業務(アパートローン、中小企業融資)などを経験。銀行在籍中、2度の最優秀営業賞を受賞。銀行在籍時の金融商品販売額は500億円を超え、3000人を超える顧客に金融商品営業を行う。その後、外資系保険会社でコンサルティング営業として従事し、現在は業務経験・知識を活かして金融ライターとして独立。難しい金融を分かりやすく伝えることをモットーに活動中。