STO(デジタル証券)について知りたい!

最近、STO投資が流行っています。STOとは何なのか、本記事で詳しくご説明します。

STO(デジタル証券)について知りたい!

STOとは

STOとは

STO は「Security Token Offering」の略で、デジタル化した有価証券をブロックチェーン上で発行して資金調達する仕組みです。別名、デジタル証券とも呼ばれています。企業が発行したり所有したりする株式や社債、不動産、さらには特許から著作権に至るまで、様々な資産をデジタル化し、ブロックチェーン上で投資対象とするというものです。

ブロックチェーンとは第三者による取引記録の改ざんを防ぐためのシステムで、世界中に存在する仮想通貨のユーザーによって維持されています。取引の記録を収めた台帳を全員で共有・監視しているため、不正ができないシステムです。

取引記録のことを「ブロック」といい、それが「鎖(チェーン)」のように繋がれていることからブロックチェーンと呼ばれます。このブロックチェーンがあるために、STOは資産性を維持しているのです。

STOの特徴

STOの特徴

STOの主な特徴について、ここで2つご説明します。

法的な裏付けがある

デジタル証券は「トークン化有価証券」とも呼ばれ、発行・取引は法的な規制の中で行われています。アメリカやシンガポールなどで盛んに行われていましたが、日本も2020年にようやく法的整備を行い、デジタル証券の取引が始まりました。

STOは、金融商品取引法などの法律に準拠しているので安全性が高いのも特徴の1つです。野村證券やSBI証券などの大手金融機関もSTOに参戦してきており、今後、拡大していくことが予測されます。

ブロックチェーンによって資産性が保持されている

前述のとおり、STOにはブロックチェーンの技術が使われています。仮想通貨の代表格であるビットコインもブロックチェーンの技術が用いられており、安全性が高いことが証明されています。資産性が保持されているのもSTOの特徴といえるでしょう。

STOのメリット

STOのメリット

STOには、主に5つのメリットが挙げられます。ここで、それぞれのメリットについてわかりやすくご説明しましょう。

24時間取引可能

日本株の場合、平日の午前9時から午後3時までの間となっており、11時30分から12時30分までは休憩で取引できません。また、近年急速にトレードする人が増えているFXも、土日は取引ができないのです。仮想通貨など一部の投資商品に関しては、土日を含む24時間で取引が可能となっていますが、ほとんどの投資商品は24時間取引に対応していません。

その点、STOは24時間取引が基本的に可能です。いつでも簡単に投資できるのは、STOの大きなメリットでしょう。

セキュリティが強固

STOでは、ビットコインで有名なブロックチェーンを活用しているため、改ざんが不可能です。ブロックチェーンは相互で監視するシステムであり、過去に一度もデータの改ざんが起こっていません。このように、セキュリティ性が高いのもSTOのメリットの1つです。

即時決済が可能

STOはクライアントサーバーを介さず、すべての端末がP2P(※)で繋がっているため、即時決済が可能です。例えば、株式投資では証券会社を通さなければならないため、決済までに時間がかかります。一方、STOはP2Pでクライアントサーバーを介さずに取引できるため、スピーディーな即時決済が可能です。

(※)P2P:Peer-to-Peerの略称。サーバーを介さずに、端末同士で直接データファイルを共有することができる通信技術、またはソフトウェアのこと。

資産の分割が可能

株式や債券の場合、コストの観点などから資産の分割は難しいのが現状です。しかし、STOを活用すれば、分割所有が可能となります。株式や債券などはもちろん、美術品や著作権など従来なら分割所有が難しかったものも可能になってきました。

また、ブロックチェーンのおかげで二次流通もできるようになっています。そのため、STOの誕生によって様々な資産に投資するハードルがかなり下がりました。

取引手数料が安い

STOは株式取引における証券会社のような仲介業者が必要ないため、取引手数料が非常に安くなっています。

STOのデメリット

STOのデメリット

メリットに対して、STOで考えられる主なデメリットについても確認しておきましょう。

流通市場が整備され切っていない

伝統的な投資商品である株式投資や投資信託などに比べ、STOは、日本では2020年から始まった新しい投資商品になります。法整備はできていますが、流通市場の整備はまだ完璧とはいえません。そのため、どうしても流動性が低くなってしまっています。

暗号通貨ほどのハイリターンは見込めない

ブロックチェーンを利用していることから「暗号資産取引」を思い浮かべる方が多いかもしれません。

しかし、STOはまだまだ歴史が浅く、安全性と透明性を確保する必要があるため審査が厳しく、コストが高い傾向にあります。そのため、ビットコインやイーサリアムのような暗号資産のように、ハイリスク・ハイリターンを狙うのは難しいかもしれません。

STOと他の資金調達方法との違い

STOと他の資金調達方法との違い

STOについて、他の資金調達方法との違いについてご説明します。

STOと銀行借り入れの違い

銀行借り入れは、金融機関の審査や既存取引有無の審査があります。特に、メガバンクなどでは、ある程度の実績がないと借り入れは難しいかもしれません。また、初めて借り入れする企業の場合、提出する書類も多く審査に時間がかかるのが一般的です。

もちろん、STOを使った資金調達の場合も信用は求められます。しかし、必ずしも担保は必要なく、既存取引も関係ありません。スピーディーに資金調達したいなら、非常に便利な方法であるといえるでしょう。

STOと社債の違い

STOと社債はスキームが似ており、発行する社債がセキュリティトークンに置き換わるイメージです。しかし、振替機関と社債原簿の管理において大きな違いがあります。社債発行スキームでは「ほふり(証券保管振替機構)」が振替機関となりますが、STOの場合はブロックチェーンがその役割を担います。

STOとIPOとの違い

IPOは証券取引所の厳格な基準をクリアしており、上場株式は比較的安全といえます。投資家の権利は法的に保護されていますが、企業にとっては上場のハードルは高いでしょう。

一方、STOは上場していなくても資金調達ができます。従来の有価証券の権利、性質を持ったデジタル証券(セキュリティトークン)の発行によって資金調達を行うのです。STOは従来よりも小口化することも可能で、分散型ネットワークであるブロックチェーンによって管理されています。また、IPOは証券取引所が中央集権的な管理となるのも相違点といえるでしょう。

STOとクラウドファンディングの違い

現状の投資型クラウドファンディングは二次流通が難しく、流動性が低くなっています。一方、STOは市場が整備されていないところがあり流動性が低いものの、市場での売買を前提とされています。そのため、将来的に流動性において大きな違いとなる可能性があるでしょう。

STOとICOの違い

ICOとは「Initial Coin Offering」の略で、暗号資産により資金調達することです。STOは金融商品取引法を法的根拠として開示規制が求められ、具体的な資産をセキュリティトークンという形で証券化します。一方、ICOはSTOに比べて規制が緩く、特定の資産の裏付けもありません。投資家にとっては、ICOの方がリスクは大きいといえるでしょう。

STO始めるならLINE証券

STO始めるならLINE証券

LINE証券は2022年からSTOを取り扱っています。2022年6月、第一弾の商品として個人向け公募引受型デジタル債が販売されました。今後、LINE証券ではSTOに力を入れていく方針で、あらゆる資産へ投資ができるようになるでしょう。

また、LINE証券にしかない魅力的な商品も増えていく見込みです。もちろん、少ない金額から投資ができ、ネットで取引完結ができます。新しい投資形態であるSTOに興味があるなら、LINE証券で初めてみると良いでしょう。

まとめ

新たな投資形態の1つである、STOについてご説明しました。STOについては、まだ聞き馴染みのある方は少ないかもしれませんが、今後大きく市場規模が拡大する期待感もあります。

2009年に仮想通貨のビットコインが発売された際、多くの方は懐疑的に見ていたのではないでしょうか。現在、ビットコインなどの仮想通貨は、投資商品の1つとして多くの方に認知されています。STOも今後、主力投資商品の1つになる可能性は十分にあるでしょう。本記事を参考に、STOに興味を持たれたからは実際に投資してみてはいかがでしょうか。

監修者プロフィール

渡辺 智(ワタナベ サトシ)
FP1級、証券アナリスト。

<プロフィール>
大学商学部卒業後は某メガバンクに11年勤務し、リテール営業やプライベートバンカー業務、資産運用コンサルティング(投資信託、保険、債券、外貨預金など)、融資関係業務(アパートローン、中小企業融資)などを経験。銀行在籍中、2度の最優秀営業賞を受賞。銀行在籍時の金融商品販売額は500億円を超え、3000人を超える顧客に金融商品営業を行う。その後、外資系保険会社でコンサルティング営業として従事し、現在は業務経験・知識を活かして金融ライターとして独立。難しい金融を分かりやすく伝えることをモットーに活動中。