証券会社とは?


ここでは証券会社が何をしているのか、どのようなものかを詳しく解説します。

証券会社とは?

証券会社とは?

証券会社とは②

証券会社とは、株式や債券など有価証券の売買において、取次ぎや引受けなどを行う金融機関のことを言います。企業が新規事業を始めたり、起業したりする際には資金が必要です。その資金を調達するために銀行から融資を受ける他、株式や債券といった有価証券を発行します。

証券会社は株式や債券といった有価証券の発行者と投資家、あるいは投資家と投資家を結び、経済にお金を血液のように巡らせる仕事を担っているのです。他方、個人投資家にとっては、株式の売買を行うための会社、投資信託を購入する販売会社として関わることが多いでしょう。

代表的な大手証券会社として、対面証券では野村證券や大和証券、SMBC日興証券などがあり、ネット証券ではLINE証券やSBI証券、楽天証券などがあります。ここでは証券会社がどのようなことを行っているのか、対面証券とネット証券のメリット・デメリットについても詳しく見ていきましょう。

対面証券のメリット/デメリット

対面証券のメリット/デメリット

対面証券とは、営業担当者がいて相談できる従来の形の証券会社です。先に例示したように、歴史の長い会社が多くあります。インターネットの普及により、ネット証券が一般的になってきました。しかし「パソコン操作が苦手」「プロのアドバイスを聞きながら銘柄を売買したい」という方も少なくありません。そんな方に向いているのが対面証券です。

対面証券のメリット

対面証券では、わからないことを営業担当者に相談しながら資産運用できます。対面証券の最大のメリットは、「プロのアドバイスを受けながら資産運用ができる」という点です。
どんな金融商品を選べば良いか、自分にはどんな商品が合っているかは、特に、初心者にとってなかなかわかりにくいものです。また、手続きに関してもわからないことも多く、プロに相談しながら購入できることは、迷う時間も少なくメリットと言えるでしょう。
投資において情報は非常に重要ですが、忙しくて情報収集の時間が惜しい人にとってもプロのアドバイスは有益と言えます。

また、営業担当者との対話を通じて伝えた年齢や職業、収入、家族構成、ライフプランなどの情報から、自分にとって最適な金融商品に気づくことができたり、提案してもらえたりすることもあります。

対面証券のデメリット

一方で、対面証券のメリットとして挙げている営業担当者の存在が、反対にデメリットになる可能性もあります。なぜなら、営業担当者は必ずしも投資家にとって最適なアドバイスをしてくれるとは限らないからです。営業担当者が勧める商品が自分の目的やスタンスに合ったものではないケースもあり、対面営業のメリットが失われてしまうこともあります。

また、ネット証券と比較して、対面証券は手数料が高い傾向があります。対面証券は店舗を構えてプロの営業担当者が活動しているため、ネット証券と比較して購入や口座維持に掛かる手数料が高いのが一般的です。長期で投資する、あるいは大金を投資する場合は、わずか1%の手数料の違いでも何十・何百万円という差が開くことがあります。そのため、手数料も考慮しながら商品を選ぶようにしましょう。

ネット証券のメリット/デメリット

ネット証券のメリット/デメリット

ネット証券は店舗を持たず、株などの取引ができます。

ネット証券のメリット

ネット証券には営業担当者がいませんから、対面証券のような人件費などのコストが掛かりません。このため、対面証券よりも手数料が安くなっていることが一般的です。
また、金融商品を比較検討するためのツールが準備され、自分に合った商品を選ぶことも可能です。より有利に資産運用を進めることができるでしょう。手数料を重視し、ツールを使いながら自分で商品を選べる方は、ネット証券を使う方が適していると言えそうです。

なお、ネット証券でもホームページなどで常に投資家にとって重要な新情報を発信していたり、専門家の投資記事などが掲載され、営業担当者が不在でもそれらのコンテンツを参考に銘柄を選定したりと、自身にとって最適な商品は何かを考える材料にできます。
さらに、ネット証券はLINE証券のように100円などごく少額から投資信託を購入することが可能です。1株単位で個別銘柄を購入することもでき、投資を始めるためのハードルは低いと言えます。どちらが自分に合っているかを考え、適した方で投資を始めてみると良いでしょう。

ネット証券のデメリット

ネット証券のデメリットとして挙げられるのは、対面証券のように証券会社の担当者からアドバイスを直接もらうことができないので、株取引初心者でも、自分で投資方法を決めたり考えたりしなければなりません。また、インターネット上での取引になるので、セキュリティ上のリスクがあり、通信環境によっては機会損失のリスクもあります。

証券会社の4つの主業務

証券会社の4つの主業務

証券会社の主な業務として、以下の4つのものがあります。

委託売買業務(ブローカー業務)

投資家から手数料を受け取って、有価証券の売買注文を証券取引所(※)に伝える業務のことを言います。ブローカー業務やブローキングとも呼ばれます。
証券会社の委託売買業務によって、投資家と株式を発行する企業が結ばれることになります。その際に発生する委託売買業務の手数料が、証券会社の大切な収入源となります。

(※)証券取引所
証券取引所とは、上場されている株式を売買する株式市場です。2000年まで日本には、東京、大阪、名古屋、京都、広島、福岡、新潟、札幌と全国に8つの取引所がありました。しかし、2000年以降は広島証券取引所、新潟証券取引所、京都証券取引所が閉所となり、以降は、株式会社の日本取引所グループ(東京証券取引所)と名古屋証券取引所、証券会員制法人の札幌証券取引所と福岡証券取引所の4取引所に集約されています。

自己売買業務(ディーラー業務)

自己売買業務は証券会社自身が投資家となり、為替・株式・債券などの取引を行って利益を出し、証券会社の利益確保と市場の活性化を目指します。ディーラー業務やディーリングとも呼ばれているものです。
メジャーなのは為替ディーラーで、主に銀行や信託銀行で業務を推進しています。終日ディーリングルームにおり、取引時間に合わせ取引画面を見ながら売買することになります。

通常、証券会社は一般の投資家が不利益を被らないよう、自己売買基準を設けています。保有できる証券の限度額を決め、資金投入を行うことで、経営が不安定になったり利害の衝突が起きたりすることを、なるべく防ぐようにしています。

引受業務(アンダーライティング業務)

国や企業などから有価証券を買い取り、投資家に売るのが引受業務です。この時、有価証券の発行元から支払われる引受手数料が収益となります。しかし、買い取った有価証券が売れ残った場合、証券会社が引き取ることになり損失となります。売れ残りのリスクがあるため、特定の証券会社のみしかこの引受業務ができません。有価証券の発行元から支払われる引受手数料が、証券会社の収益となります。

募集・売り出し業務(セリング業務またはディストリビューター業務)

募集・売り出し業務は国や企業などから有価証券を買い取る引受業務とは異なり、有価証券を一時的に預かって投資家に売る業務のことを言います。セリング業務、またはディストリビューター業務とも呼ばれます。有価証券の発行元から支払われる手数料や、引受価格と販売価格の差額が証券会社の収益です。なお、有価証券が売れ残っても企業などから買い取る必要がないため、リスクを負うことはありません。

証券会社は主にこうした業務を行っており、これらすべてを行っている証券会社が総合証券会社と呼ばれるものです。総合証券会社には野村證券や大和証券、SMBC日興証券などの大手証券会社があります。

証券会社と銀行の違い

証券会社と銀行の違い

証券会社と銀行はどちらも金融機関ですが、この2つには「直接金融」と「間接金融」という違いがあります。

直接金融

直接金融とは、資金を必要とする相手に直接お金を出資することを言います。例えば、企業は株式や債券を発行し、それらを投資家に投資してもらうことで資金調達を行います。そして、その企業が利益を出した時には、「配当」などの形で投資家に利益の一部を還元したり、金利を支払ったりします。このような形で、投資家が直接株式や債券に投資してその利益を得ること、またリスクを負うことを直接金融と呼び、証券会社は投資家と発行体である企業との間を仲介している存在となります。

例えば、企業が新規事業を行う際は、債券を発行して資金を集めなくてはいけません。しかし、債券を購入してもらう投資家を、企業自らがすみやかに探し出すのは大変です。そこで、証券会社に投資家を募ってもらい、仲介してもらうことになります。

投資家にとって株式などの直接金融商品は、配当金の利回りは全体的に比較して銀行預金(間接金融)などよりも高めになっており、収益性が高い商品が多くなっています。また、株価の上昇による資産価値の増加を望むことも可能です。自分で好きな企業や、成長してもらいたい企業などを選択できる点もメリットの1つでしょう。

間接金融

一方で、間接金融とは、借入(借金)による資金調達のことを言います。銀行などの金融機関が、集めた預金を元手に企業などに貸し出すことを指します。
銀行は「①元本を保証すること」「②利息を支払うこと」の2点を約束し、預金者からお金を預かります。そして、集めたお金を元手に資金を必要としている企業などに貸し出し、それによって得られた利息を預金者に利息を払うのです。預金者と資金を必要とする企業との間に入り、預金者に代わって投資。銀行は企業などに貸し付けする利息と、預金者に対し支払う利息の差額で利益を得ることになります。

まとめ

まとめ

証券会社とは何なのか、どのような業務を行っているのかなどについてお伝えしました。証券会社という言葉自体は、よく耳にすることがあるでしょう。しかし、実際にどのような仕事を担っている会社なのか、詳しく知る機会は少ないかもしれません。

証券会社は直接金融によって資金を必要としている企業と投資家とを結び、銀行と同様にお金が血液のように世の中を巡り、経済を活性化し社会を豊かにするための一端を担っています。近年ではLINE証券などネット証券も普及しはじめ、ネット証券で手軽に証券口座を開設し、株式投資を始めたり投資信託を購入したりできるようになりました。

また、つみたてNISAなどの普及もあり、以前は投資や証券会社とは無縁だったという方も、ネット証券の登場と昨今の低金利の情勢から証券会社を利用する機会も増えてきています。証券会社とは何をしてくれる会社なのか改めて理解すれば、より上手に活用できるでしょう。

そして、ネット証券と対面証券との違いについて理解することも、投資を行う上ではとても重要です。自身の金融知識はもちろん、パソコンやスマートフォンなどを使えるかどうかなどによって、対面かネットかを選ぶ際の参考にしてください。

投資は老後や進学資金など将来必要になるお金を安定的に増やす他、安定より大きな利益を狙ったり、応援している企業に投資したりするなど活用法が多様です。自身に適した商品を判断するためには「将来のためのお金」と「余剰資金」といった投資する資金の目的を明確にし、投資スタンスを決めて商品を選ぶことが必要です。

証券会社のホームページには、ライフプランから投資を考えるための記事が掲載されていることも少なくありません。対面証券であれば営業担当者がファイナンシャルプランナーの資格を持ち、ライフプランから最適な商品を提案してくれる場合もあるでしょう。ここで解説した内容を参考にしつつ、そうした証券会社からの提供情報・サービスをうまく活用して、投資に取り組んでみてください。

監修者プロフィール

小川 洋平(オガワ ヨウヘイ)
日本FP協会認定 CFP®、合同会社clientsbenefit 代表、FP相談ねっと認定FP、SG中越代表

<プロフィール>
25歳でお金の知識・営業経験ゼロから保険営業の世界に飛び込み6年半従事。2年目に将来の資産形成のため金融知識が必要なことに気が付き、FPの勉強を始めて金融・経済の知識を学ぶ。その後、保険に限らずあらゆるお金の面でクライアントにとってベストな提案をしたいという想いで、商品販売ではなく相談業務を開始。2013年より資産形成の考え方に関するセミナーを自主開催。その他、大手金融機関からの委託により実施。現在は小規模事業者の年金や資産運用のサポートを中心に相談・経営支援の業務に携わり、確定拠出年金など起業家の将来の資産形成と経営のサポートを行っている。投資信託や資産形成の分野を得意としている。