投資信託の利回りとは?

投資や資産運用ではよく登場する「利回り」という言葉について、その意味や投資信託における計算方法などを解説します。

投資信託の利回りとは?

そもそも投資信託とは?

そもそも投資信託とは?

投資信託とは投資家から集めたお金を1つの大きな資金としてまとめ、運用の専門家が株式や債券、不動産等に投資・運用する金融商品のことです。自分で複数の個別銘柄を選定・投資するには膨大な時間と労力が掛かり、ある程度まとまった資金も必要になります。

しかし、投資信託を購入することで、ごく少額から複数の銘柄の株式や債券、不動産等に投資が可能です。最近では、100円から投資信託を購入することもできるようになりました。たった100円でも何十、何百という複数の銘柄に投資することができ、株式のみでなく債券や不動産にも投資できます。

投資信託は、基本的にいつでも自由に売買することが可能です。特に不動産に投資する投資信託のREITは、現物の不動産であればそう簡単に売買できないものですが、市場でいつでも取引でき、現金化することもできるため流動性の高さは大きなメリットと言えるでしょう。また、金や原油、小麦等の商品に投資する投資信託もあり、国内外の多様な資産に分散投資することができます。

投資信託の利回りとは?

利回りとは、投資した金額に対する収益の割合のことを言います。投資信託の場合は、投資信託の売却の他に分配金も収益に含めて計算します。分配金は、正確には「収益分配金」と言います。

投資信託には、毎月または定期的に分配金を出す投資信託(分配型)と、分配金を出さない投資信託(無分配型)があります。
そして、分配金を出す投資信託(分配型)には次の2つがあります。
(1) 毎年・毎月または数カ月ごとに収益分配を行う「分配金支払型」の投資信託
(2) 収益分配はするが、その分配金を自動的に同じ投資信託に再投資していく「分配金再投資型」の投資信託

一般的に投資信託の利回りは売却益と分配金を合計して1年間の利回りを算出します。これは「平均リターン」とも呼ばれます。

投資信託の利回りの計算式

投資信託の利回りの計算式

利回りは以下の計算式で求められます。
利回り(%)=収益(売却益+分配金)÷運用年数÷投資金額×100

投資信託の収益は
「売却益+分配金」 で計算します。

例えば、100万円で購入した投資信託を5年間運用し、売却した価格が120万円・分配金が20万円だった場合なら以下の通りです。
{(120万円-100万円)+20万円}÷5年÷100万円=8%

ただし、実際には信託報酬等のコストが引かれるため、実際のリターンは小さくなります。また、分配金が再投資されるタイプの投資信託は途中で受け取らずに再投資されます。

投資信託の利回りの平均

投資信託の利回りの平均は、投資信託の種類により傾向が異なります。国内債券型には1%未満のものもあり利回りは低めです。これに対して外国株式型には10%のファンドもあり、特に、S&P500やNASDAQなどに連動するインデックスファンドであっても高いリターンのものもあります。

このように、投資先によってリターンは大きく異なりますが、単にリターンのみで選ばないように注意しましょう。一般的に、利回りが高いとリスクも高くなります。リスクが高ければ、それだけ元本割れする可能性も高いことになります。利回りのみでなくリスクとのバランスを考えることが重要です。それぞれの資産をご自身に合ったリスクとリターンに合うよう組み合わせることもできますので、よく投資先を選び配分を調整しましょう。

利回りと混同されやすい用語

利回りと混同されやすい用語

利率

利回りは「売却益や利息、分配金などを含めた総合的な収益の割合」であるのに対して、利率は預金や債券の「利息のみの割合」で計算されます。特に混同されがちなので、注意が必要です。

騰落率(とうらくりつ)

投資信託の基準価額が一定期間にどのくらい値上がり・値下がりしたかを変動率(変化率)で表したものです。利回りはその騰落率と分配金を合わせて、一定期間のプラスとマイナスを平均したものです。そのため、騰落率とは異なります。株式のようにリスクの大きな投資先は、1年あたりの騰落率が50%程度になることもあります。大きく値上がりする際には、単年で見ると大きな利回りに見えることがあるでしょう。
しかし、それが毎年続くというものではありません。大きく上がるということは反対に大きく下がることもあるということです。ですから、平均でどの程度のリターンになるのかを考える必要があります。

パフォーマンス

投資信託の運用の指標であるベンチマークと比較して、「パフォーマンスが良い=ベンチマークより利回りが良い(高い)」「パフォーマンスが悪い=ベンチマークより利回りが悪い(低い)」という形で使われるのが一般的です。
例えば、日経平均株価を上回る成果を目指すアクティブファンドを評価する場合には、日経平均株価に対して利回りがどの程度高かったかを評価します。アクティブファンドを選ぶ際には、これらのパフォーマンスの評価が重要となります。また、インデックスファンドの場合はどれだけベンチマークを上回ったかよりも、ベンチマークとの誤差がどれだけ少ないかでパフォーマンスを評価します。

投資信託の選び方のコツ

投資信託の選び方のコツ

利回りだけで判断しない

投資信託を選ぶコツは利回りだけで判断せず、騰落率やパフォーマンスも踏まえることが重要です。一般的に、利回りが高くなればリスクも高くなります。そのため、どの程度のリスクまで自分が許容できるかを考えた上で、それに合ったリスクとリターンのバランスを調整していくことが重要です。

リスクとリターンは国内外の株式や債券、その他REIT等を組み合わせ、その配分の割合を調整することによって自分で調整することができます。また、株式と債券といった逆の値動きになりやすい資産を組み合わせることで、リスクを低減しながらもリターンを得ることも可能です。
自分で株式投資信託と債券投資信託、REITなどを選択して組み合わせることもできますし、バランス型投資信託を購入することによって株式や債券など複数の資産へ分散投資もできます。そのため、自分が許容できるリスクと求めるリターンのバランスに合った配分(ポートフォリオと言う)を決め、それから具体的な商品を選んでいくと良いでしょう。

手数料も考慮

投資信託を購入する際は、手数料などの費用も考慮することが重要です。手数料によって将来的な投資の成果が数十万円、数百万円も異なることさえあります。投資信託には購入時に掛かる手数料、保有している期間に発生する信託報酬、売却時に発生する信託財産留保額があります。実際の利回りを計算する際には、これらのコストを差し引いた上で、どの程度のリターンを得られたかを考えることが重要です。

アクティブファンドの中には、ベンチマークを大きく上回るパフォーマンスの商品もあります。優れたアクティブファンドを探すのも良いですが、商品選びで迷いやすい初心者のうちは、比較的手数料の安いインデックスファンドを選んでみても良いでしょう。また、バランス型ファンドは個別のインデックスファンドを選ぶ場合に比べ、手数料が高めに設定されていることが少なくありません。自分で資産を組み合わせずとも資産配分を自動調整してくれる機能もあるため、手数料によって検討してみてください。

税金が影響することを考える

投資で得られた利益(売却益、分配金)には税金が発生し、自動的に課税される口座を選択すると20.315%の税金が利益から引かれます(税率によっては他の所得と合算し確定申告した方が良い場合もある)。つまり、リターンが税金の分だけ小さくなることになり、例を挙げるなら、利益が100万円出ていれば20%を差し引いた80万円が利益ということになります。このように、投資信託の実質的な利回りには税金が大きく影響するのです。

NISAやつみたてNISAを利用すれば、利益に対して税金が掛からず積み立てすることができます。そのため、実質的な利回りを高めるためには、できるだけ税制が有利な制度を使っていくことが望ましいと言えるでしょう。また、iDeCoや企業型確定拠出年金でもつみたてNISA同様に運用益が非課税になりますので、積極的に活用を検討することでより実質的な利回りを高めることができます。

目的に合った商品を選ぶ

目的に合った商品を選ぶ

投資信託を選ぶ上で重要なのが、何のためにお金を運用するかということです。将来使う目的のある資金を運用する場合、長期分散投資の基本に沿って運用しましょう。1年・2年といった短期間ではなく10年以上など長期的な期間で、複数の業種や国、資産に分散することが重要です。

運用期間が短い場合には、リターンは小さくても相場が下落した際に影響の少ないリスクの小さな、主に債券を中心とした配分で運用することで損失を抑えながら利益を得ることができます。反対に、運用期間が長くとれる場合には株式を中心に配分し、積極的にリスクをとってリターンを狙える運用をしても良いでしょう。この他、価格の変動にどの程度許容できるか、性格的な面や投資信託の他の預金資産などをどの程度保有しているかによって積極的な配分にするか、安定的な配分にするかを決めていくようにします。

また、仮に大きく減ってしまっても問題のない程度の金額であれば、1つの成長分野の業種に絞って投資してみるのも良いでしょう。1つの業種に投資することは、その業種が全体的に成長していれば大きなリターンを得られる期待があります。ただし、不調な場合などに大きく値下がりしやすい特徴がある点に注意してください。
近年は、ITやハイテク関連の業種が大きく成長してきました。しかし、それがこれから先も継続するかは不確実ですし、何かの出来事をきっかけに大きく大暴落する可能性もあります。そのため、将来の資産運用や資産形成に活用する際には、仮に大きく価格が下がっても問題ない程度に抑えておくことが重要です。

このように、何のためのお金なのか使い道を決め、それに合わせた資産配分を設定することが商品を選ぶ際のポイントとなります。投資信託の商品を選ぶ際、あまりに商品ラインアップが多く、何を買えば良いかを迷う方も多いことでしょう。ですが、このように考えることである程度は選ぶべき商品を絞れます。

つみたてNISAやiDeCoを始めたいという際も、ここで解説したように考えてみてください。資産配分を過去のインデックスの実績からリスク・リターンを計算できるツールが提供されている場合もありますので、それらも参考にすると良いでしょう。

このように、自分に合ったリスク・リターンから資産配分を決め、予想される利回りからどの程度自分の資産が成長してくれるかを予想することもできます。

まとめ

まとめ

投資信託の利回りについて、計算方法や留意点、商品の選び方について解説しました。投資信託を選ぶ際、また投資を行う際に「利回り」という言葉を正確に理解しておくことは、投資信託の商品や投資対象を選ぶ際に重要です。「金利」や「利率」など紛らわしい言葉も登場しますので、意味と違いを理解しておきましょう。

また、単に利回りだけでなく手数料や税金も意識しながら商品を選ぶと、より実質的な利回りも大きくすることができます。手数料や税金を差し引くと、実際の利回りは単純な投資信託の成果よりも小さくなりますので注意してください。
そして、手数料と税金をできるだけ節約しながら運用することで実質的な利回りも高まります。そのため、NISAやつみたてNISA、iDeCoなどの有利な制度も活用することも良いでしょう。目的に合わせて高いリターンを実現するために、ここでお伝えした内容を参考にしてみてください。

監修者プロフィール

小川 洋平(オガワ ヨウヘイ

日本FP協会認定 CFP®、合同会社clientsbenefit 代表、FP相談ねっと認定FP、SG中越代表
<プロフィール>
25歳でお金の知識・営業経験ゼロから保険営業の世界に飛び込み6年半従事。2年目に将来の資産形成のため金融知識が必要なことに気が付き、FPの勉強を始めて金融・経済の知識を学ぶ。その後、保険に限らずあらゆるお金の面でクライアントにとってベストな提案をしたいという想いで、商品販売ではなく相談業務を開始。2013年より資産形成の考え方に関するセミナーを自主開催。その他、大手金融機関からの委託により実施。現在は小規模事業者の年金や資産運用のサポートを中心に相談・経営支援の業務に携わり、確定拠出年金など起業家の将来の資産形成と経営のサポートを行っている。投資信託や資産形成の分野を得意としている。