株主優待について詳しく知りたい

株式投資のメリットの一つ株主優待にはどのようなものがあり、優待を受けるにはどうすればいいのか、詳しく解説します。

株主優待について詳しく知りたい

株主優待とは?

企業が自社の株を購入し、保有している株主に配当金とは別に自社商品やサービスなどを贈る制度のことを「株主優待」と呼びます。株式投資の利益は、購入時より値上がりしたタイミングで売却して得られる売却益や配当金だけではありません。株主優待といったリターンも、株主が得ることができる権利の一つです。

企業は投資家にサービスや商品を知ってもらうこと、または株主優待があることで投資家に自社の株式を長期的に保有してもらうことを目的として、株主優待を導入しています。この株主優待は各社によって異なります。
金券を配る会社もあれば、自社の商品やサービスの提供、その他独自の優待を提供している会社などさまざまです。また、優待は配当金と同じように株式の売買益ではなく、保有していることで得られる安定的な収益となることから注目を集めています。

株主優待の内容は株式の保有株数によっても異なります。保有数が多いほどより充実した優待を受けられる企業も少なくありません。
また、株主優待には各社で特徴があります。自分がよく使う商品を優待としてプレゼントしている会社を選ぶなどすれば、売却益や配当金等の利益とは別のメリットを得ることができるでしょう。

どんな株主優待があるの?

どんな株主優待があるの?

株主優待の種類は多様です。航空会社の株式を保有していれば航空券が、鉄道会社ならば鉄道乗車券を受け取ることができるなど、各社によって色々な内容で提供されています。

例えば、ホテル等に投資をしている場合、宿泊券や食事券などが送られてくるケースもあり、旅行やちょっとした贅沢のために使うことができるでしょう。食品メーカーや化粧品会社に投資している場合は、メーカーの自社製品が送られてくるケースもあります。飲食店やファストフード店を経営する企業に投資している場合は、店舗で使える商品券やクーポン券がもらえる可能性もあります。
その業種によってさまざまな優待を受けることができるので、自身の生活スタイルや趣味などに合わせて投資する企業を選ぶのも良いでしょう。中には、商品等ではなく、工場見学やプロスポーツの観戦チケット、自社イベントの招待など、少し変わった優待を用意する企業もあります。

このように、株主優待で受けられるメリットは多様です。売却益や配当金のみでなく、こういった株主優待を投資の判断材料にするのも、株式投資の楽しみの一つと言えるでしょう。

株主優待をもらうためには

株主優待をもらうためには

株主優待を受け取るためには各企業の定める必要株数の保有が必要

株主優待を受けるには、各企業の定める一定数以上の株数の保有が必要です。必要株数に満たない株数の保有者は、株主優待を受け取ることができません。株主優待を受けたいなら、必要な株数を確認して購入しましょう。なお、株主優待に必要な株数を保有していなくても、配当金を受けることはできます。

権利付き最終日までに株を購入し、権利確定日に株を保有していること

株主優待を受けるためには権利確定日に株式を保有し、株主名簿に株主として名前が載っていることが必要です。中には株主優待を受けるために、保有している期間が必要になる場合もあります。確実に押さえておかなければならない条件は、株式を権利確定日に保有していることです。

注意が必要なのは、この権利確定日の2営業日前の権利付き最終日までに株を購入していないと、株主名簿に名前を載せることができないという点。権利確定日に保有しているためには、権利付き最終日までに株を購入することが必要です。覚えておきましょう。

必要保有年数が定められているケースもある

株主の権利を得るためには、権利確定日に株主名簿に名前が載っていることが条件となります。ただし、株主優待に関しては必要保有年数が定められているケースも少なくありません。

例えば必要保有年数が1年以上となっている株式では、株主優待を受けたいと権利付き最終日までに株式を購入して権利確定日に保有していても、保有期間が必要保有年数に達していなかったために優待が受けられないということがあります。
株主優待を受けたくて株式を購入したのに、購入した後に株主優待を受けられないことに気が付く…。実はこうしたケースが少なくありません。必要保有期間の定めについても、購入前に必ず確認しておきましょう。

また、保有期間が長期になると優待が優遇され、グレードアップする優待制度を導入する企業も増えています。企業側にとっては、自社の株式を長期で保有してもらうことができるメリットがあるためです。株主優待を受けるために必要な保有期間、また保有期間が何年以上で株主優待がどの程度優遇されるのかを確認して投資することが大切です。

株主優待の注意点

株主優待の注意点

株主優待だけにとらわれず、企業自体の株価や財務状況にも気を付ける

株主優待は株式投資を行う醍醐味(だいごみ)の一つです。例えば自分の好きな会社や自分が愛用している商品を、優待として受け取れるのは大きなメリットと言えるでしょう。しかし、株主優待が目的だったとしても、企業の業績や将来性はチェックしておく必要があります。

株主優待を目的に投資しても、それはこれから先も約束されているものではありません。今後その企業の業績が悪化した場合等には、株主優待が廃止されたり見直しがされたりすることがあります。株主優待を目的として投資したのに、それが受け取れなくなってしまう事態も考えられますから、業績や将来性を確認することが必要なのです。

企業の業績は、上場企業であればその会社のホームページ内で、株主・投資家向けに公表されている財務諸表や業績に対する見解や今後の方針などで確認することができます。これだけで、会社の将来性を予測することは難しいかもしれません。しかし、その会社がどのような財務状況なのか、会社の経営状態等をある程度確認することはできます。

また、株価が割高な時に購入し、購入後に大きく下落して売却損が発生する可能性もあります。せっかく株主優待を受け取っても売却時の損失が大きくなれば、株主優待のメリットをはるかに上回る損失になってしまうことも考えられるでしょう。そのため、魅力的な株主優待を持続できるだけの業績なのか、財務状況をチェックしたり、株価が割高ではないかをチェックしたりしておきましょう。

PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)といった財務指標から、株価が割安か割高かを判断することができます。PERとは株価を一株当たりの純利益で割った数値のことで、その会社の利益に対しての株価が、割高か割安かを判断する指標となるものです。一般的にPERの平均は15倍程度と言われており、PERが15倍よりも低ければ割安、高ければ割高ということになります。

また、PBRは株価を一株当たりの純資産で割った数値で、PERと同じく株価が割安か割高かを判断する指標の一つです。一般的にPBRが1倍未満ならば割安、1以上であれば割高と言われています。これらの情報を元に、株主優待のみでなく財務状況や株価が割高であるか割安であるか等、総合的に判断して投資先を選択しましょう。

権利付き最終日の確認

株主優待を受けるには配当金や株主総会議決権を得ることと同じく、権利日に株主名簿に名前が載っていなくてはいけません。そのためには、権利確定日の2日前の権利付き最終日までに購入している必要があります。株主優待を受けるために一定の保有期間を求められる場合もありますが、まずは権利付き最終日までに株式を保有していることが前提です。権利付き最終日までに株式を購入していないと株主優待を受けることができないため、いつまでに買う必要があるのか必ず確認しましょう。

必要株数、必要保有年数の確認

株主優待を受けるには一定以上の株数を保有していることが必要であり、企業によってその数は異なります。また、企業によっては一定の年数以上保有していることが、株主優待を受けるために必要な場合もあるでしょう。何株以上の保有が必要なのか、また、保有年数は何年以上が必要になるのかを事前に確認しておきましょう。

権利確定日に向け株価が上昇し、権利落ち日以降株価が下がる傾向がある

権利確定日前には株価が上がり、権利落ち日以降には株価が下がる傾向があります。その理由は、権利確定日に保有すると株主優待や配当金が発生するため。反対に、権利が確定する権利付き最終日の翌営業日の権利落ち日以降は、株主優待や配当金が支払われた後になるため株価が下落する傾向があります。この株価が変動する傾向を利用して、株式を売買することも投資戦略の一つです。

株価が下がったタイミングで買うことで、その期の株主優待や配当金を受け取ることはできません。しかし、割安な価格で株式を買うことができます。長期保有することで株主優待も配当金も受けることができるため、その権利を割安で買うことができるということです。また、権利付き最終日前の株価が上がったタイミングで売却することで、売却益を得ることもできます。

株価の下落リスクを抑えながら株主優待を受けるには

株価の下落リスクを抑えながら株主優待を受けるには

配当金や株主優待を受けられることは、株式投資の大きなメリットです。しかし個別銘柄に投資をすれば、その会社の業績が悪化した際など、大幅に株価が下落する可能性もあります。こういった個別銘柄のリスクを低減するには、分散投資が有効です。
ただし、個別銘柄を複数購入するには大きな資金が必要になります。投資信託を用いれば少額から分散投資が可能ですが、投資信託を保有していても株主優待を受けることはできません。

そこで、リスクヘッジが可能な戦略を紹介します。それは、株式を購入すると同時に、信用取引を利用し同じ株式の信用売りを行うこと。信用売りとは、証拠金を元に証券会社から株式を借りてそれを売却し、将来株式を買い戻し証券会社に返すという取引です。将来の株価下落を予測し、今高いうちに株式を借りてそれを売りに出し、将来株価が下がった時に買い戻しその差額で利益を得ます。
信用取引というとハイリスク・ハイリターンな投資で、初心者には向かないというイメージがあるかもしれません。しかし、これを組み合わせることで、株価が予想に反して大幅に下落してしまった場合のリスクを低減することができるのです。

リスクヘッジが可能な戦略

信用売りの特徴は、将来株価が下がった時に利益が出て、反対に株価が上がった時には損失になること。株式を保有することで大幅な損失が発生する可能性がありますが、信用売りを組み合わせることで、株価が下落して損失が発生した場合には信用売りで発生する利益と相殺されます。
そのため、もし投資先の企業が倒産しても、損失を限定し大損する可能性を避けることが可能。これによって、個別銘柄に投資してもリスクを限定しながら、配当金や株主優待を受けることができます。

ただし、株式に投資する金額以外に、信用売りのための証拠金が必要となります。また、株価が上がった場合、信用売りで損失が発生するため、相殺されて損失が限定される反面、利益も小さくなります。このほか、信用売りで必要な株式を借りる品貸料も発生するため、証拠金の分元手が必要になり、品貸料等のコストも掛かるというデメリットもある点に注意しておきましょう。

投資額に対する信用売りの金額で、どの程度までリスクを低減するか設定することが可能です。ただし、リスクをゼロに近づければ、より大きな証拠金が必要となり品貸料も大きくなります。そのため、もし損失が発生してしまっても、どの程度までならば許容できるのかという範囲を決めて、リスクヘッジしてみるのも方法の一つです。

まとめ

まとめ

株式投資の醍醐味(だいごみ)の一つである株主優待について、受け取るための方法や注意点、株主優待に関連した株価の変動や株式投資のリスクの低減方法などを解説しました。

株主優待で自分が好きな物やよく使うものをもらったり、レジャーを楽しんだりできるのは、売却益や配当金などの利益以外に得られる大きなメリットでしょう。また、自分が好きな物だとその業種の市場動向にも興味を持てるため、会社の将来性を見るためには全く興味のない会社に投資をするよりも有利です。
自分が好きな会社や好きな商品を作っている会社なら、財務諸表ではわからない会社の商品の良さや魅力、どんな客層に好まれるかといった定性的な情報もわかり、投資には有利となるでしょう。そして、それがきっかけで投資や経済のニュースに興味を持つことも期待できます。株主優待を受けるための注意点をよく確認しながら、売却益や配当金だけでなく、株主優待も株式投資を選ぶ材料にしてみてはいかがでしょうか。

また、個別銘柄のリスクを抑え、大きな損失が発生する可能性を排除しながら株主優待や配当金を受け取ることができる信用売りの活用についてもお伝えしました。信用売りではローリスク、ローリターンで配当金や株主優待を受け取るという楽しみ方もできます。損失の可能性を限定し、安心して投資を楽しみたいのであれば、活用してみるのも良いかもしれません。

監修者プロフィール

小川 洋平
日本FP協会認定 CFP®、合同会社clientsbenefit 代表、FP相談ねっと認定FP、SG中越代表

<プロフィール>
25歳でお金の知識・営業経験ゼロから保険営業の世界に飛び込み6年半従事。2年目に将来の資産形成のため金融知識が必要なことに気が付き、FPの勉強を始めて金融・経済の知識を学ぶ。その後、保険に限らずあらゆるお金の面でクライアントにとってベストな提案をしたいという想いで、商品販売ではなく相談業務を開始。2013年より資産形成の考え方に関するセミナーを自主開催。その他、大手金融機関からの委託により実施。現在は小規模事業者の年金や資産運用のサポートを中心に相談・経営支援の業務に携わり、確定拠出年金など起業家の将来の資産形成と経営のサポートを行っている。