積立投資って何?

定額を投資し続ける「積立投資」のメリット・デメリット、積立投資をする上で意識しておきたいことを説明します。

積立投資って何?

積立投資とは?

毎月決まった金額で投資信託や株式等の金融商品を購入し続けるなど、積立感覚で行う投資を「積立投資」と言います。投資というと売買を自分で注文し、値動きをチェックしながら売買のタイミングを狙っているようなイメージをお持ちの方も多いでしょう。
しかし積立投資は、毎月自動で一つの商品を購入設定できます。その都度、自分で売買の注文をする必要がなく、一度注文をすれば毎月自動的にお金を積み立てながら投資することができます。長期の資産形成に適した方法と言えるでしょう。
また、買うタイミングを分散することで高値買いを防ぎ、購入単価を平均化することも可能です。現在注目されているiDeCoやつみたてNISAなどの制度もこの積立投資を活用しています。

積立投資のメリット

積立投資のメリット

少額から始めやすい

積立投資のメリットとして、毎月少額から始められる点が挙げられます。まとまった資金がなくても、毎月少しずつ貯蓄しながら自分の将来の資金を作ることが可能です。
100円からでも毎月投資信託を購入できる会社もあります。投資が怖いという人でもまずは少額から始めてみることで、実際の値動きを見ながら投資に慣れていくことができます。

長期間における積立投資により複利の効果が得られる

投資信託は通常分配金が再投資されるため、複利の効果を得ることが可能です。複利効果は雪の上で雪玉を転がすのと同じように、長期になればなるほどその効果は大きくなります。
つまり、長期間積立投資を行うことでその効果が大きくなり、より大きなリターンが期待できるのです。また、相場が下落した際にも、投資元本を下回る可能性が低くなります。この複利の効果は、資産形成が有利になる理由の一つです。

投資先を分散することでリスクを低減

投資信託で積立投資を行うことで、複数の投資先に自動的に分散投資を行うことができます。そのため、投資のリスクを低減することが可能となります。個別で株式を買って分散投資しようとすると、まとまったお金が必要になりますが、投資信託を利用すれば、毎月少額から積み立てしつつ、世界中の国や会社に投資をすることが可能です。前記の通り、毎月100円から投資信託を購入できる会社もあり、少額からでもリスクを分散しながら投資を行えます。

価格を気にせずに投資できる

投資は安いときに購入し、高いときに売るというのが利益を出すための基本です。しかし、買い時を見極めるのは、投資のプロでも判断を誤ることが多く難しいです。価格を気にしていると、投資するタイミングを逃してしまうかもしれません。

特に初心者であれば、まとまった大きな資金を投資することに抵抗を持っている人も多いでしょう。相場が上昇している際にトレンドに乗って投資したつもりが、そこから下落して高値買いをしてしまい、損失になってしまう可能性もあります。初心者はいつ投資すべきか迷っているうちにタイミングを逃してしまうということが多く、投資においてはそれが問題になります。毎月一定額ずつ積立投資を行うことで、こういった高値買いを回避し、購入単価を平均化できることは大きなメリットと言えるでしょう。

また、短期での売買の利益を目的とするのではなく、長期での積み立てとなれば日々の価格の変動などはあまり気にしなくて済みます。自動で積み立てされるため、自分でタイミングをはかる必要もなく、頻繁に値動きをチェックしたりする必要もありません。

ドルコスト平均法を使える

ドルコスト平均法とは毎月一定額ずつ、価格が高いときも安いときも投資商品を買い続ける投資法です。積立投資はこのドルコスト平均法を使った投資法そのもので、価格を気にせずに買い続けられるというメリットがあります。これによって購入単価を平均化して高値買いを防ぎ、また、相場が下落する局面であっても資産を増やすことが可能です。

例えば下記のような値動きをする株式に、毎月10万円ずつ投資をしたとしましょう。

  • 1か月目:1株1万円
  • 2か月目:1株8,000円
  • 3か月目:1株5,000円
  • 4か月目:1株4,000円
  • 5か月目:1株2,000円
  • 6か月目:1株4,000円
  • 7か月目:1株5,000円
  • 8か月目:1株2,000円
  • 9か月目:1株4,000円
  • 10か月目:1株5,000円

このように買い始めた1か月目から株価が半分になった場合、この株式を毎月10万円ずつ購入して10か月後に売却していたら、投資した総額100万円は10か月後にいくらになっているでしょうか? 価格のみしか見ないと株価が半分になっていますので、大きく損失が出ているように思うかもしれません。しかし、この相場に積立投資をしていると、実はプラスになっているのです。ここで、注目していただきたいのが購入した量です。

  • 1か月目:10万円÷1万円=10株
  • 2か月目:10万円÷8,000円=12.5株
  • 3か月目:10万円÷5,000円=20株
  • 4か月目:10万円÷4,000円=25株
  • 5か月目:10万円÷2,000円=50株
  • 6か月目:10万円÷4,000円=25株
  • 7か月目:10万円÷5,000円=20株
  • 8か月目:10万円÷2,000円=50株
  • 9か月目:10万円÷4,000円=25株
  • 10か月目:10万円÷5,000円=20株

購入株数は合計257.5株。購入株数257.5株を売却時の価格1株5,000円で売却すると、128万7,500円となります。株価は買い始めたときより半分になっているのに、投資した100万円に対し28万7,500円のプラスになっているという結果になるわけです。では、なぜこのようなことが起きているか。それは、価格が大きく下がった際に購入株数が増えているので、平均購入単価を下げることができるためです。

100万円の投資に対し、購入できた株式数は257.5株となっています。そのため、平均購入単価は3,883円となります。売却時の相場がもっとも下がった2,000円のときから5,000円に回復。買い始めたときより価格が半分になっても、平均購入単価を上回っているため利益を出すことができたのです。このように下落する相場であっても利益を出せるのが、ドルコスト平均法のメリットとなります。

積立投資のデメリット

積立投資のデメリット

元本保証の商品はない

積立投資は長期・分散と組み合わせることで、投資のリスクを味方につけることができます。分散投資しながらリスクを抑え、日本だけでなく世界経済全体の成長を取り込んで資産を増やすことができる方法です。ただし、その名の通り投資ですので、当然ながら元本の変動があり損失が発生することもあります。
価格の変動を抑えることは、債券と株式等異なる値動きの資産を組み合わせることで可能です。ただし、元本保証の商品はありません。そのため、1~2年など比較的短期で使う予定のあるお金を投資すると、大きく減らしてしまう可能性もあるので避けた方が無難でしょう。

短期で大きな利益は上げにくい

投資の基本は、安いときに買って高いときに売ること。しかし、積立投資は高いときも安いときも一定額ずつ、ずっと買い続けるという手法です。高値買いを防ぐことができる一方、大きく下がったときにまとめて買うこともできないため、一括投資に比べて利益は上げにくくなります。

上がり相場でも損失が出る可能性がある

下がり相場でも、売却時の価格が平均購入単価を上回っていれば利益が出るのがドルコスト平均法のメリットでした。その反面、上がり相場では平均購入単価が高くなるため、相場が下落した際に平均購入単価を超えて損失が発生する可能性があります。

一括投資であれば一時的に相場が下落しても売却時の価格が購入時の価格を上回っていれば損失は発生しません。しかしドルコスト平均法では、買い始めたタイミングよりも価格が上がっていたとしても損失が発生する可能性があるという弱点もあります。

そのため、上がり相場では一時的に相場が下落している際の売却には注意が必要です。ドルコスト平均法を用いているからといって、「損をしないというわけではない」という点は、あらかじめ頭に入れておきましょう。

積立投資のコツ

積立投資のコツ

積立投資をうまく活用するコツは、人生設計を行い、積み立てるお金の目標を考えること。そして、無理のない範囲で長期的な資産形成・運用のために活用することです。何のために、いくら、いつまでにお金を準備したいのか。これらをライフプランから考え、大体10年以上を目安に長期かつ無理のない範囲で行うことが大切になります。

積立投資は、短期だとあまり恩恵を受けにくい投資法です。長期の資産形成に適した投資法のため、長い目で見た人生の資金計画に合わせて活用すると良いでしょう。また、積立投資は購入単価を平均化することで高値買いを防げますが、相場の下落したタイミングに売却すると、平均購入単価よりも低い価格で売却することになり損失になります。

無理な金額で積立投資を行っていると、途中で投資していたお金を引き出さなければならないなど、下がったタイミングで売却せざるを得ない事態が起きかねません。
そのため、下がったタイミングで売却しないで済むようにしましょう。相場の回復を待つことができる、また、価格が下がっている際にも買い付けを続けられるように、毎月の投資額は家計に余裕を持てる範囲で決めるようにしましょう。

長期間継続することが大切

長期間継続することが大切

平均購入単価より相場が下落した際に売却すると、積立投資も損失が発生してしまいます。もし相場が平均購入単価を下回っている際でも、長い目で見れば回復する可能性はあるでしょう。日経平均株価や先進国の株式市場の指標であるMSCIコクサイなどは、長期的には経済成長に連動する性質を持ち、世界経済の成長を取り込んで価格が上がることも期待できます。そのため、短期的ではなく、長期で考えていただくことが大切です。

また、長期間継続することで複利の効果を得ることもできます。また、大きく相場が下落したときにも元本を下回る可能性が低くなります。複利の効果で長期的に大きな利益を上げる、あるいは損失が発生する可能性を下げるためにも、長期間で投資を継続することが大切です。

iDeCo、つみたてNISA

iDeCo、つみたてNISA

昨今の超低金利時代において、長期の資産形成を預金や保険商品ではなく、積立投資を用いて行う方は少なくありません。ここでご紹介したように、積立投資はライフプランにおける将来の資金を作るための手段として大変有効な投資法です。
結果的に20年・30年で、預金や保険商品など元本確保タイプの商品では到底実現できない利回りを実現することもできるでしょう。そして、積立投資を用いた将来の資産形成のためのお得な制度として、昨今話題になっているiDeCoやつみたてNISAが挙げられます。

[iDeCo]
iDeCoを用いた老後の資産形成には、掛金が全額所得控除になることで所得税や住民税が安くなるという税金のメリットがあります。また、運用で得た利益は非課税になり、税金面で有利な積立投資を行うことが可能です。

[つみたてNISA]
つみたてNISAはiDeCoのような掛金の所得控除の効果はありませんが、最長で20年間運用益が非課税となり、iDeCoとは異なり途中で売却し引き出すこともできます。人生設計におけるお金の目的に合わせて、こうした制度の活用も検討すると良いでしょう。

金融庁はNISAの特設サイト内で、積立投資を活用した長期資産形成を推奨しています。生命保険会社でも変額保険という積立投資を利用し、将来の資金を作る保険商品を販売し始める会社が増加しており、まさに、積立投資が注目されている証拠と言えるでしょう。
2022年からは、高校の家庭科でも投資の授業が取り入れられるようになります。今までは一部の知識のある人だけが実践していた積立投資ですが、これからは当たり前のように誰もが知っている時代が訪れるのかもしれません。

まとめ

まとめ

投資で利益を狙うには安いときに買い、高いときに売ることが原則です。しかし積立投資は、そういった短期的な利益を狙いたい場合にあまり向かない方法のため、否定的な見方も少なくありません。また、下がり相場でも利益が出ることがある反面、上がり相場でも損失が出る可能性もあります。積立投資だから損しにくいというわけではないのです。

しかし、積立投資を用いて国際分散投資を過去20年・30年という長期間で実践し、大きな利益を上げている人がいることも事実です。老後の資金やお子さんの進学資金、退職金の運用など、長期・分散・積立投資の基本を守りながら将来のお金を作ったり、退職金などまとまったお金を運用したりする手段の一つとして有効と言えるでしょう。

今は毎月100円など少額から積立投資をスタートできます。投資が怖いという方は、まず少額から始めてみるのも方法の一つです。価格の変動に慣れてから、将来の資産形成、資産運用のために積立投資の活用を検討してみてはいかがでしょうか。

著者プロフィール 監修者プロフィール

小川 洋平
日本FP協会認定 CFP®、合同会社clientsbenefit 代表、FP相談ねっと認定FP、SG中越代表

<プロフィール>
25歳でお金の知識・営業経験ゼロから保険営業の世界に飛び込み6年半従事。2年目に将来の資産形成のため金融知識が必要なことに気が付き、FPの勉強を始めて金融・経済の知識を学ぶ。その後、保険に限らずあらゆるお金の面でクライアントにとってベストな提案をしたいという想いで、商品販売ではなく相談業務を開始。2013年より資産形成の考え方に関するセミナーを自主開催。その他、大手金融機関からの委託により実施。現在は小規模事業者の年金や資産運用のサポートを中心に相談・経営支援の業務に携わり、確定拠出年金など起業家の将来の資産形成と経営のサポートを行っている。