オプション取引とは

一定期間にわたり投資を行っていると聞く機会が増えるであろう「オプション取引」とはどういうものなのか詳しく解説します。

オプション取引とは

オプション取引って何?

オプション取引って何?

オプションとは「権利」を示します。
オプション取引とは、将来の決められた日にちに決められた価格で取引をする権利を売買する取引のこと。わかりやすくお米を取り扱っている商店を例に使って、オプション取引についてご説明しましょう。

ある商店では、今なら1キログラムあたり1,000円で米を購入できます。しかし、1年後の値段がどうなるかはわかりません。豊作になって価格が下がればそのときの時価で買いたいので、今は米の値段が1年後にいくらになろうとも、とりあえず1,000円で買える権利だけを確保したい。オプション取引は、そんなときに非常に便利です。

米の買い手は米の売り手に手数料を払えば、1年後に米の時価がいくらになっていても1,000円で買う権利を得られます。このような取引がオプション取引です。もし1年後に米の値段が1,000円より高い場合は、オプションを行使することで時価を問わず1,000円で米を購入することが可能。
逆に、1年後の米の時価が1,000円よりも安い場合は、オプションを放棄することもできます。しかし売り手にとって、ただ権利のみを与えることには何のメリットもありません。そのため、オプション取引を行うには手数料が必要になるのです。

オプションのイメージ

また、買い手だけでなく売り手がオプション取引をする場合もあります。
先程の米の取引の例でご説明すると、現在1キログラムあたりの米の価格は1,000円ですが、1年後いくらで売れるかは誰にもわかりません。そこで米の売り手が、1年後も1,000円で米を売るオプション取引を買い手と行ったとします。この場合、1年後の米の価格が1,000円以下の場合はオプションを行使し、1,000円で米を売ることが可能。逆に、1年後の米の価格が1,000円以上の場合はオプションを行使し、時価で米を売ることができます。

もちろん、売り手がオプション取引を行う際も、同様に買い手へ手数料を払う必要があります。これは手数料がなければ、買い手にとってリスクしかない取引になるからです。つまりオプションとは、あらかじめ決められた期日(満期日)にあらかじめ決められた価格(権利行使価格)で原資産を買いつける権利、あるいは売り付ける権利のこと。そしてオプション取引とは、この権利の取引のことを指します。

なお、買う権利のことを「コールオプション」。そして、売る権利のことを「プットオプション」と呼びますので、しっかり覚えておきましょう。
オプションの買い手は権利を得る対価として、売り手に対してプレミアム(手数料)と呼ばれるオプション料を支払います。そして、売り手はプレミアムを受け取る代わりに、権利行使に応じる義務があります。

先物取引とは?

オプション取引を理解するためには、先物取引についてしっかり理解することが必要です。この先物取引は、株式投資や投資信託に比べると投資上級者向けの投資商品と言えるでしょう。しかし投資信託の中にも、先物取引を使って投資しているものもあります。そのため、先物取引についてしっかり理解しておくことは、資産運用を行ううえで非常に大切です。先物取引についても、先程と同じく米の取引の例でご説明しましょう。

例えば米の将来の価格について、半年後に米100キログラムを1キログラムあたり1,000円で売買する契約を4月1日に行ったとします。契約する段階で米は収穫前のためまだ実物はなく、実際の売買代金の受け渡しもこの時点では発生しません。

この取引のポイントは、例えば米を買う側は「米の値段が半年後には上昇する」という見通しを持ち、反対に米を売る側は「米の値段が半年後には下落する」との見通しを持つといったように、将来の見通しが異なる2者間の契約であること。米を買う側は、価格が上がれば利益を得ることができます。そして反対に米を売る側は、価格が下がれば利益を得ることができるわけです。つまり、取引当事者間で相場見通しが異ならない限り、この取引は成立しません。この取引のことを先物取引と呼びます。

先物取引とは?

また先物取引は、必ずしも期日に現物決済することが決められているわけではありません。期日前に反対売買をして決済することもできます。少しわかりにくくなってきたので、先程の米の例に戻しましょう。

台風の影響で不作になるとの観測が広がり、8月15日に米の先物の価格が1キログラムあたり1,500円になったとします。この時点で決済すれば米の買い手側は1キログラムあたり500円の儲けとなりますので、この時点で米の買い手側は、転売することにより利益を確定することが可能です。
つまり先物取引とは、ある商品(米)のある特定の数量(100キログラム)について、将来の特定の時点を期日(10月1日)として、あらかじめ定める価格(1,000円)で売買することを契約する取引のことを指します。また、期日前にその時点で定める価格で反対売買(売り契約の場合は買い戻し、買い契約の場合は転売)することにより、利益を確定させることも可能です。

オプション取引の用語集

オプション取引の用語集

オプション取引には、関連するさまざまな専門用語があります。ここではオプション取引で必要になる用語を厳選して取り上げ解説しましたので、ぜひ参考にしてください。

・SQ(エスキュー)
特別清算指数の略称。オプション権利行使される際に適用される原資産価格を示します。

・プレミアム(オプション料)
権利獲得のためにオプションの買い手が売り手に払う権利料。

・原資産価格
オプションの対象商品の価格。

・権利行使期間
オプションを権利行使できる期間。

・権利行使価格
原資産に対しオプションの権利行使をする際に決められている売買価格。

・権利放棄
権利行使されることなく期日が過ぎ、オプションの価値がなくなること。

・コールオプション
原資産を買う権利のこと。コールオプションの買い手は権利行使価格で原資産を買う権利を持ちますが、必ず行使をしなければいけない義務はありません。一方、コールオプションの売り手には買い手の権利行使に応じて原資産を引き渡す義務がありますので、放棄することはできません。

・差金決済
差金決済とは、現物の受渡しをせずに反対売買による差額の授受で決済を行うことです。

・デリバティブ
金融派生商品のこと。実際の物自体を取引するのではなく将来の価格変動を利用し、そこから派生した商品です。代表的なデリバティブには、オプション取引や先物取引などが挙げられます。

・プットオプション
原資産を売る権利のこと。プットオプションの買い手は権利行使価格で原資産を売る権利を持ちますが、必ず行使しなければいけない義務はありません。一方、プットオプションの売り手には買い手の権利行使に応じて原資産を引き取る義務があり、放棄することはできません。

・プレミアム
オプション取引を行う際の手数料のこと。コールオプションの買い手やプットオプションの買い手は、プレミアムを売り手に払う必要があります。

・ボラティリティ
価格の変動性を数値で表したもの。オプション取引のプレミアムを決める要因の一つがボラティリティです。一般的、にボラティリティが高ければ高いほどプレミアムは高くなります。

・満期日
オプションの期限が切れる期日のこと。満期日が過ぎると権利行使は行えなくなり、オプションの価値はなくなります。

オプション取引の権利の種類

オプション取引の権利の種類

オプション取引の権利には、いくつかの種類があります。詳しく特徴や違いを確認しておきましょう。

コールオプション:原資産を買う権利

コールオプション:原資産を買う権利

コールオプションとは原資産を買う権利のこと。コールオプションの買い手は権利行使価格で原資産を買う権利を持ちますが、必ず行使しなければいけない義務はありません。一方、コールオプションの売り手には、買い手の権利行使に応じて原資産を引き渡す義務があります。そのため、放棄することはできません。

例えばA社株券を1,000円で買う権利を、50円のプレミアムで売買するとしましょう。コールオプションの買い手はA社株価が1,000円以上になると、権利を行使して1,000円以下になれば権利放棄します。A社株価が1,000円以上になってコールオプションを行使した場合、コールオプションの買い手は株価が上がるほど利益が出ることになり、理論上の利益は無限大です。一方、コールオプションの売り手は、どんなに株価が上がっても1,000円で株式を売却しなければなりません。つまり株価が上がるほど損失は広がり、理論上の損失は無限大になります。

A社の株価が1,000円以下になった場合、コールオプションの買い手は権利を行使しても損するだけになりますので、権利を放棄します。このケースでは、プレミアムの50円が損失です。一方でコールオプションの売り手は、プレミアムの50円が利益になります。

プットオプション:原資産を売る権利

プットオプションとは原資産を売る権利のこと。プットオプションの買い手は権利行使価格で原資産を売る権利を持ちますが、必ず行使しなければいけない義務はありません。一方、プットオプションの売り手には買い手の権利行使に応じて原資産を引き取る義務があり、放棄することはできません。

例えば、B社株券を1,000円で売る権利を50円のプレミアムで売買するとしましょう。プットオプションの買い手はB社株価が1,000円以上に上がると権利放棄し、1,000円以下に下がると権利行使することになります。B社株価が1,000円以下になってプットオプションを行使した場合、プットオプションの買い手は株価が下がるほど利益が出ることになり、理論上の利益は無限大です。一方、プットオプションの売り手は、どんなに株価が下がっても1000円で株式を買わなければなりません。株価が下がるほど損失は広がります。

B社の株価が1,000円以下になった場合、プットオプションの買い手は権利を行使しても損するだけになるため、権利を放棄します。このケースの場合、プレミアムの50円が損失です。一方、プットオプションの売り手はプレミアムの50円が利益になります。

プットオプション:原資産を売る権利

このように、コールオプションとプットオプションそれぞれに対して売りと買いがあるため、4種類のオプション取引(コールの買い、コールの売り、プットの買い、プットの売り) があります。なお、オプションの損益は以下のような関係です。

◎買い手
利益:投資した資産の動き次第で無限大の利益
損失:当初受け取った手数料(プレミアム)のみ

◎売り手
利益:当初受け取った手数料(プレミアム)のみ
損失:投資した資産の動き次第で無限大の損失

オプション取引を行う際の手数料であるプレミアムは、ボラティリティなどによって決定されます。そのため、買い手と売り手どちらが不利というわけではありません。ただし、オプション取引の売り手は損失が無限大に広がるリスクがあることは、しっかり覚えておきましょう。

まとめ

まとめ

オプション取引は、一見難しそうに感じるかもしれません。しかし整理して考えると、理解しがたいものではないでしょう。また、投資信託の中にもオプション取引を使っている商品は少なくありません。金融商品をしっかり理解するうえで、オプション取引の知識はとても重要です。ここで解説した内容を参考に、オプション取引について理解を深めておいてください。

監修者プロフィール

渡辺 智(ワタナベ サトシ)
FP1級、証券アナリスト。

<プロフィール>
大学商学部卒業後は某メガバンクに11年勤務し、リテール営業やプライベートバンカー業務、資産運用コンサルティング(投資信託、保険、債券、外貨預金など)、融資関係業務(アパートローン、中小企業融資)などを経験。銀行在籍中、2度の最優秀営業賞を受賞。銀行在籍時の金融商品販売額は500億円を超え、3000人を超える顧客に金融商品営業を行う。その後、外資系保険会社でコンサルティング営業として従事し、現在は業務経験・知識を活かして金融ライターとして独立。難しい金融をわかりやすく伝えことをモットーに活動中。