ナンピン買いってなに?

ナンピン買いは、株式投資の代表的な投資手法です。今回は、ナンピン買いについてご説明します。

ナンピン買いってなに?

ナンピン買いとは

ナンピン買いとは

ナンピン買いとは株価が買った値段より下がってしまった場合、その株を買い増しして平均単価を引き下げる方法です。言葉だけだと少し分かりづらいので、具体例を出してご説明しましょう。

例えば、株価が1,000円の時に100株購入したとすると、1,000円×100=10万円になります。その後に株価が下がってしまい、500円まで下がったとしましょう。そうすると評価額は500円×100=5万円になり、5万円の含み損を抱えていることになります。そして、このタイミングで200株購入すると500円×200=10万円です。

この時点では300株保有しており、評価額は15万円となります。50,000円の含み損を抱えている状況ですが、株価が安い時に追加で購入したので、株価が1,000円まで戻らなくても含み損が埋まります。

分かりやすく言うと、20万円÷300株=667円となり、株価が1,000円に戻らなくても667円に戻った場合には含み損が埋まり、さらに667円を超えてからは含み益が出ます。このようにナンピン買いは、その後に株価が上昇してくれれば非常に大きな効果があります。

ナンピン買いのメリット

ナンピン買いのメリット

まずはナンピン買いについて、主な3つのメリットをご紹介します。

銘柄の平均購入単価を下げることができる

ナンピン買いは、株価が下がった時に買い増しする手法です。そのため、ナンピン買いを行うと平均購入単価を下げることができます。平均購入単価が下がれば利益が出やすくなりますので、大きなメリットと言えるでしょう。

また、最近流行っている積立投資も、ある意味でナンピン買いの効果があります。積立投資は毎月や毎週など一定のタイミングで一定金額を購入する、株価が高い時も安い時も購入する手法です。株価が低い時に購入すれば平均購入単価は下がりますので、長く続ければ続けるほど平均購入単価は安定する傾向にあります。また、様々な資産に分散して投資を行えば、より価格を安定させることができるでしょう。

含み損を早く解消できる可能性がある

ナンピン買いがうまくいけば、前述の事例のように含み損を早く解消できる可能性があります。当初購入した株価まで株価が戻らなくても、含み損が解消できる可能性があるのはナンピン買いを行う大きなメリットです。逆に株価がさらに下がってしまうと、投資金額が大きくなっているため含み損も広がってしまう可能性があります。この点には注意が必要です。

買い増した株が値上がりすれば利益も大きくなる

ナンピン買いをすることによって、投資金額が大きくなりますので、株価が上昇すれば、当初の投資金額よりも大きいので利益も大きくなります。さらに、底値で買うことができれば、株価が大きく上昇した際、利益を大きく狙えるでしょう。

含み損が出ている場合は、含み損を早く解消できる可能性があります。大きな利益につながる可能性があるのは、ナンピン買いの最大のメリットと言えるでしょう。

ナンピン買いのデメリットと対策

ナンピン買いのデメリットと対策

ナンピン買いには様々なメリットがありますが、デメリットもあります。
ナンピン買いはやりすぎてしまうと大きな損失につながる可能性があります。あらかじめしっかり対策しておく必要もあるでしょう。ここでは、ナンピン買いのデメリットと対策について分かりやすくご説明します。

買い増した株が値上がりせずに損失が大きくなる可能性がある

まずナンピン買いのデメリットに挙げられるのが、買い増した株が値上がりせずに損失が大きくなる可能性があることです。タイミングよく買い増しができ、その後に反転してくれれば、含み損の解消や利益を伸ばすのに役に立ちます。しかし、逆にタイミングが悪くナンピン買いをしてしまい、その後さらに株価が下落してしまうと含み損もより大きくなってしまうのです。株価が下落するスピードは上昇するスピードよりも一般的に早いケースが多いので、ナンピン買いを行う際は注意してください。

こうしたデメリットに対し、ナンピン買いの対策として有効な方法を3つご紹介します。

中長期での投資を計画する

短期で大きな利益が取れればうれしいですが、実際のところ、短期で利益が取れるほど投資は甘くありません。購入した瞬間に株価が下落することもよくあるので、投資で利益を出すためには中長期で考えるようにしましょう。仮に多少含み損を抱えることになっても、中長期での投資を考えていれば、動揺せずそのまま持ち続けることができるでしょう。
また、すぐに損失を取り戻す必要もないので、安易にナンピン買いするのも減るかもしれません。中長期で投資を計画することにより、ナンピン買いを抑えられますのでおすすめです。

なんとなく上がりそうなど、理由のないナンピン買いはしない

ナンピン買いをする人に多いのが、1日などの短期で大きく下落した時にナンピン買いをするパターンです。大きく株価が下落した後にすぐに反発すれば、短期で利益を上げられます。実際のところ、そううまくいくものではありません。1日で大きく下落した時に、ナンピン買いしたくなる気持ちは分かりますが、根拠のないナンピン買いはやめておきましょう。

下落した理由をしっかり分析し、今後上昇する見込みがあればナンピン買いをするのは有効です。一方、ただ単純に大きく下落したからといってナンピン買いをしてしまうと、さらに大きく下落する可能性があります。

含み損が大きくなったら損切りをする

ナンピン買いをする際は、あらかじめ損切りするタイミングを決めておくことも重要になります。なぜなら適切な損切りができないと、どんどん損失が大きくなってしまう可能性があるからです。

エントリーのタイミングはもちろん、株式投資では損切りや利益確定も非常に難しいものと言えます。その理由は、人間の本能に逆らった行動になるからです。利益確定はすぐしたくなりがちで、損切りはなかなか行うことができません。
投資の原則は「利益を大きく伸ばし、損失を最小限に食い止めること」です。人間の本能に沿って行動してしまうと、まったく逆の方向になってしまいますので注意が必要です。特に、損切りについては、自分の意思だけで行うのはとても難しいでしょう。損切りしなければならない局面になった時に備えて、あらかじめ損切りのタイミングを決めておくことが大切です。

それでもなかなか損切りができない方は、家族など他人の力を借りて損切りをするようにしてください。損切りについてはナンピン買いの場合、タイミングを誤るとすぐに大きな損失になってしまう可能性があります。

ナンピン買いを行う回数をあらかじめ決めておく

資金に余裕があると、つい何度もナンピン買いをしたくなってしまうものです。しかし、ナンピン買いは、100%成功する投資手法とは限りません。大きな資金で頻繁にナンピン買いを行ってしまうと、株価が反転しない場合に大きな損失を被ってしまいます。また、株価が戻らないと多額の損切り、もしくは長い間にわたり塩漬けすることになってしまうでしょう。こうしたことから、ナンピン買いの金額や回数はあらかじめ決めておくようにしましょう。

ナンピン買いは日経平均株価などの株価指数と相性が良い

ナンピン買いは日経平均株価などの株価指数と相性が良い

個別株でのナンピン買いも決して悪くはありませんが、ナンピン買いと相性が良いと言われているのは日経平均株価やNYダウ、S&P500などの株価指数です。これらの株価指数は、中長期で見ると基本的に右肩上がりで上昇しているので、ナンピン買いは高い効果が期待できます。特に、NYダウやS&P500などの米国株は日本株よりも上昇率が高いので、ナンピン買いは効果的と言えるでしょう。

ただし、最近人気のあるレバレッジが効いた投資信託やETFで、ナンピン買いを行うのは控えましょう。レバレッジが効いている投資信託やETFでナンピン買いをしてしまうと、大きく下落した場合、元の株価まで戻っても投資金額が戻らなくなってしまいます。

例えば、基準価額が10,000円の時にナンピン買いしたとしましょう。その後、投資している株価指数が1%下落した場合、レバレッジが4倍効いている投資信託なら基準価格は4%下落します。
この時点の基準価格は1万円×4%=400円なので9,600円です。そして9,600円の基準価格の時に投資している株価指数が1%上昇した場合、レバレッジが4倍効いているので基準価額は4%上昇します。
しかし、基準価格が9,600円まで下がっているので、9,600円×104%=9,984円と当初投資した10,000円まで戻らないのです。

あくまで株価指数にナンピン買いをする場合は、レバレッジが効いていないもので行うのがおすすめです。下落が続くと、その後に上昇してもより戻りにくくなってしまいますので、レバレッジが効いている投資信託には注意しましょう。

まとめ

ナンピン買いについてご説明しました。ナンピン買いは、うまく行えばとても有効な投資手法の1つです。一方で、損失を広げてしまう可能性もある点には注意が必要です。ナンピン買いを行うのであれば、事前にルールをしっかり決めておくと良いでしょう。ここで解説した内容からナンピン買いについて理解を深め、ご自身の投資に役立ててください。

監修者プロフィール

渡辺 智(ワタナベ サトシ)
FP1級、証券アナリスト。

<プロフィール>
大学商学部卒業後は某メガバンクに11年勤務し、リテール営業やプライベートバンカー業務、資産運用コンサルティング(投資信託、保険、債券、外貨預金など)、融資関係業務(アパートローン、中小企業融資)などを経験。銀行在籍中、2度の最優秀営業賞を受賞。銀行在籍時の金融商品販売額は500億円を超え、3000人を超える顧客に金融商品営業を行う。その後、外資系保険会社でコンサルティング営業として従事し、現在は業務経験・知識を活かして金融ライターとして独立。難しい金融を分かりやすく伝えることをモットーに活動中。