FXは長期保有と短期保有どちらがいいの?

FXには長期保有と短期保有の取引のスタイルがあります。ここで、それぞれの特徴やメリット&デメリットを詳しく解説します。

FXは長期保有と短期保有どちらがいいの?

FXで長期保有とは

FXで長期保有とは

FXの長期保有とは、一般的に保有している通貨を決済せず、数週間~数年単位で保有し続けることを言います。FXと言うと一分一秒を争う、パソコンの画面から目が離せないような取引をイメージする方もいらっしゃるかもしれません。

実際、FXのトレードの仕方は人それぞれで異なり、比較的長期での利益を狙いトレードすることもできます。長期保有の場合、細かく利益を積み重ねていく短期的な取引に対し、大きな為替相場の流れに乗るので狙う利幅も大きくなりやすく、反対に損失も大きくなりやすいのが特徴です。

また、一度エントリーすると保有している期間が長いため、頻繁にトレードする必要がありません。忙しい人や初心者にも取り組みやすいトレードスタイルで、ポジショントレードやスイングトレードとも呼ばれています。
トレードの手法とそれぞれの特徴について下記の表に記します。

トレードの手法とそれぞれの特徴

ポジショントレードは長期に保有するのが原則になるので、スワップポイントにより利益を狙っていくこともできます。スワップポイントは通貨の金利差によって日々変動し、「低金利通貨売り+高金利通貨買い」のポジションを持っている場合には、その金利差から発生するスワップポイントを得ることができます。さらに最終的に売買した際には為替差益による収益も得られます。

一方、「低金利通貨買い+高金利通貨売り」のポジションを持っていると、スワップポイントを支払わなければならないこともあり、金利差のプラスマイナスが逆転した場合はスワップポイントの支払いと受け取りが入れ替わることもあります。

長期保有においては、これらスワップポイントを意識することも重要になります。また、短期の相場よりも為替相場の大きな潮流を読むことが必要になり、保有する通貨ペアに関連する出来事など、為替に影響を与えそうな要因に注目することも大切です。

FXの長期保有のメリット・デメリット

FXの長期保有のメリット・デメリット

メリット

長期保有には主に下記のようなメリットが挙げられます。

・スワップポイントを定期的に受け取れる
「低金利通貨売り+高金利通貨買い」のポジションを持っている場合には、その金利差から発生するスワップポイントを得ることができます(一方で、支払わなければならない場合もあります)。長期保有の場合、このスワップポイントを積み重ねておくことも意識しておくべきポイントです。

外貨預金しているように低金利な日本円の預金ではなく、日本円と比べ金利の高い米ドルで預金し金利で利益を得て、為替のタイミングを見て円に払い戻すというようなイメージになります。FXは差金決済ですので、外貨預金と異なり実際にドルで保有しているわけではありません。しかし、利益のみを目的とするならこのような使い方もできます。

・取引コストが低い
FXは取引するたびに「スプレッド」と呼ばれる手数料が引かれます。そのため、短期的にトレードをするよりも、長期的にトレードを行っている方がスプレッドの負担が少なく済みます。

・FXに時間を割かなくて良い
長期取引は大きな為替の流れを見ていれば良いので、小刻みな値動きはあまり気にする必要はありません。そのため、仕事や家事で普段あまり頻繁に取引に時間を割けないという方でも、手軽に始めることができます。

・時間が経つことにより通貨の変動が大きくなり、大きな利益を狙える
小刻みに利益を積み重ねていく短期取引に対し、大きな為替の動きを見ることになります。そのため、1回の取引で大きな利益を狙うことが可能です(反面、損失も大きくなりやすいです)。

デメリット

一方で、下記のようなデメリットも挙げられます。

・塩漬けになる可能性がある
ポジションとは逆方向に為替レートが大きく動いた場合には、大きな評価損を抱えたまま決済できないままになってしまう「塩漬け」と呼ばれる状態になる可能性があります。損切りのタイミングを事前に決めておき、損失が必要以上に膨れ上がらないように対策しておきましょう。

・ロスカットになる可能性がある
長期保有では短期保有に比べ、為替相場も大きく動きます。このことから、少ない資金でレバレッジを掛けた場合にはロスカットになりやすく、損失が発生した状態で強制的に決済されてしまいやすいでしょう。

ロスカットとは、取引に損失が発生した場合、それ以上の損失を防ぐため自動的に損切が行われる仕組みのことを言います。

ロスカットされなければ予想していた方向に相場が反転し、利益を狙えた場合であってもロスカットは強制的になされます。そのため、長期取引においては証拠金を多めに入れておくと良いでしょう。
反対に、一定のポイントを下回った時には損切したい場合には、そのポイントに合わせてロスカットが行われるよう、あらかじめレバレッジを設定(証拠金を少な目に)しておいても良いでしょう。

・スワップポイントを支払う可能性がある(反面、受け取れる可能性もある)
「低金利通貨買い+高金利通貨売り」のポジションを持っている場合には、スワップポイントを支払わなければいけません。支払うスワップポイントの分、為替差益が必要になります。

FXの短期保有とは

長期保有に対し、短期保有とは一般的に数秒~1日単位で売買を繰り返し、細かく利益を積み上げていく手法です。デイトレードやスキャルピングなどが短期保有にあたります。トレード回数が多く、小さな変動幅で収益を狙っていく点が特徴です。スワップポイントではなく、売買差益による収益をメインとしてい

ます。長期保有よりも変動が少なく、ファンダメンタルズより相場のパターンから値動きを予想するテクニカル分析の要素が重要になってきます。

FXの短期売買のメリット・デメリット

FXの短期売買のメリット・デメリット

短期売買のメリットやデメリットについて解説します。

メリット

・細かい利益の積み重ねができる
短期売買はトレード回数が多いため、資金を長期間寝かすことなく小さな利益を積み重ねていけます。その結果、長期保有以上に大きな利益を得られる可能性もあるでしょう。相場は上昇と下落を繰り返しながら大きなトレンドを形成しています。長期的には上昇、下降のどちらかに向かっているとしても、その間の細かい上昇・細かい下落を狙って利益を狙いたいという場合には短期売買の方が向いていると言えます。

・塩漬けになりにくい
小さな値動きを狙っていくため、予想とは逆の方向に大きな動きになった場合に、損失を抱えたまま決済できずにいるといったことは起きにくいでしょう。そのため、塩漬けになりにくくなります。

・資金効率が良い
長期取引では予想とは逆方向に、大きな相場の動きが発生した場合にロスカットが起きやすくなってしまいます。一方で、短期取引は長期に比べて値動きが小さく、ロスカットが起きにくいというメリットもあります。そのため、長期保有の場合よりも高いレバレッジを掛けられます。FXでは最大25倍までレバレッジを効かせられるので、少ない資金でも自分の持っている資金以上の力で取引が可能です。
ただし、相場が思惑と逆に動いた場合の損失も大きくなります。予想に反して相場が逆方向に大きく動いた際、ロスカットが起きてしまうこともありますので十分な注意が必要です。

デメリット

・取引回数が多くなり取引コストが掛かる
FXは取引のたびに手数料(スプレッド)が発生します。そのため、取引回数が多いとスプレッドの負担が大きくなり、その点はデメリットの1つです。会社によってスプレッドは異なるため、スプレッドの負担が小さい会社を選ぶ方が良いでしょう。

・FX取引に時間を取られる
短期取引は価格の上下を細目にチェックし、決済して小さな利益を積み重ねていくことが必要です。また、長期保有であればスマートフォンのアプリでも手軽にできますが、短期の取引になると複数のモニターを設置した方が望ましい場合もあり、設備にお金が掛かることもあります。

・スワップポイントは得られない
日をまたがない短期売買では、スワップポイントを得ることができません。基本的には為替差益を狙った取引となるため、各通貨の金利差は考慮する必要はありません。

FXの長期保有、短期売買に向いているのはどんな人?

FXの長期保有、短期売買に向いているのはどんな人?

長期保有と短期保有の特徴や、メリット、デメリットを解説してきました。それぞれ、どのような人に向いた方法なのか見ていきましょう。

長期保有に向いている人

長期取引は、仕事や家事など毎日忙しく集中してトレードを行う時間が取れない、毎日忙しい人に向いています。長期保有では短期保有のように、小さな相場の変動で小さな利益を積み重ねていく必要がありません。大きな流れの中で利益を狙うことになりますので、仕事の合間などに相場を見て決済することで利益を得ることが可能です。また、小額から手軽に始めてみたいという初心者でもファンダメンタルズを読み、長期的に相場の変動を予測できる方にも向いています。

短期売買に向いている人

短い取引で利益を得られるので集中して取引ができ、小さな取引ができる人に向いています。また、テクニカル分析が重要になるため、ファンダメンタルズ分析のように幅広く、相場に複雑に影響する知識を必要としていません。そのため、金融・経済の知識がなくても利益を狙っていくことができます。

プロの為替ディーラーでも、パターンから相場を読んで短期取引で利益を出すことが得意な人と、ファンダメンタルズから長期的なトレンドを読み利益を出すことが得意な人に分かれます。また、それぞれ一長一短あるため、どちらが有利であるかは分かりません。その人の生活スタイルや性格、知識などにより各特徴に合った取引がありますので、ご自身に合ったスタイルで取引を行いましょう。

まとめ

まとめ

FXの長期保有と短期保有の特徴や違い、メリットやデメリットなどについて解説しました。FXと言っても保有する期間によってもトレードの仕方が異なり、短期、長期でそれぞれ特徴があります。その特徴は生活スタイルやその人の性格、知識などによっても変わってきますので、その人にあった取引方法を選んでいくと良いでしょう。

また、長期保有の場合は外貨預金のようにスワップポイントを積み重ね、為替差益と合わせリターンを狙うのも1つの使い方です。
ただし、高金利通貨は低金利通貨と比較して通貨安になりやすい傾向にあります。スワップポイントは高くても大きな為替差損が発生してしまう可能性もあるため、スワップポイントを目的とする場合には安定しているアメリカなど、先進国の通貨ペアを保有することが望ましいでしょう。初心者の方でも小額から始め、長期保有・短期保有の両方を試したうえで、自分に合った取引のスタイルを見つけていくと良いかもしれません。

監修者プロフィール

小川 洋平(オガワ ヨウヘイ)
日本FP協会認定 CFP®、合同会社clientsbenefit 代表、FP相談ねっと認定FP、SG中越代表

<プロフィール>
25歳でお金の知識・営業経験ゼロから保険営業の世界に飛び込み6年半従事。2年目に将来の資産形成のため金融知識が必要なことに気が付き、FPの勉強を始めて金融・経済の知識を学ぶ。その後、保険に限らずあらゆるお金の面でクライアントにとってベストな提案をしたいという想いで、商品販売ではなく相談業務を開始。2013年より資産形成の考え方に関するセミナーを自主開催。その他、大手金融機関からの委託により実施。現在は小規模事業者の年金や資産運用のサポートを中心に相談・経営支援の業務に携わり、確定拠出年金など起業家の将来の資産形成と経営のサポートを行っている。投資信託や資産形成の分野を得意としている。