ESG指数とは? ESGの解説と事例をご紹介!

ESG投資を行う上で切っても切り離せない、ESG指数についてご説明します。

ESG指数とは? ESGの解説と事例をご紹介!

そもそもESGとは?

そもそもESGとは?

ESGとは「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の頭文字を取った言葉で、企業が取り組むべき課題を示すものです。具体的な内容は、以下のようになっています。

  • 環境:Co2削減、再生可能エネルギーの使用など
  • 社会:ダイバーシティ、地域社会への貢献など
  • 企業統治:適切な情報開示、資本効率への意識など

社会的な需要の高さから、機関投資家を中心にESGを運用に取り入れる投資家が増加しています。世界的に常識となりつつあるESGですが、日本でも2017年にGPIF(世界最大の年金基金)が1兆円規模のESG投資を開始したことを契機とし、ESG投資が拡大しています。

ESGの責任投資原則(PRI)は2006年に国連によって制定されました。機関投資家に対してESG要素の投資行動への組み込み(ESG投資)を要求し、PRIへの署名機関は運用実績を定例報告し、資産の50%以上に本原則を適用できない場合は除名になる内容になっています。
署名機関は年々増加しており、PRIが制定された2006年当時は63機関(日本7機関)に過ぎなかったものの、2020年8月時点では3,332機関(日本85機関)まで広がりました。今後も署名機関は増加していくと見られており、それだけESGは世界的に関心が高いのです。

ESG指数とは

ESG指数とは

ESG投資は社会から求められている投資手法ですが、そもそもどのようなものなのか、整理していきましょう。ESG投資とは、投資先企業のESGの状態を考慮した投資手法です。しかし、言葉にすると簡単ですが、実際に環境や社会の何をどのように考慮すればESG投資と呼べるのでしょうか。

投資家は元来、投資先の企業を分析する際に企業の売上成長率、利益成長率、マーケットシェア、財務の健全性などといったデータを集め、さらにPERやPBRなど専門的な指標に着目して投資先企業の株価の見通しをはじき出してきました。
これらの分析が可能なのは、上場企業に会計基準という統一のルールをもとにして財務データを計算し、さらに公表することが義務付けられているからです。つまり投資家は、比較可能なデータを簡単に入手することができます。

ESG投資の課題

しかし、ESG投資は、2つの意味でスムーズには行きません。まず、そもそもESGの観点から企業を比較するための分析データがESG投資にはないのです。その上、ESG投資を実行するには「環境対応に優れている」「社会への配慮レベルが高い」といった抽象的な話を、なんとか定量的に認識できる状態にしなければなりません。

2つ目の難題は、企業の長期的価値創造に資する重要項目を見定めることです。ESG投資は受託者責任によって、環境社会を考慮した上で従来型の投資と同等以上の投資パフォーマンスを出すことが義務付けられています。そして、投資パフォーマンスを高くするには環境社会に関する情報を闇雲に集め、分析しても意味がありません。その会社の将来的な収益性や競合優位性、成長力などに資するような項目を、各業種もしくは企業ごとに特定した上で、その項目を分析する必要があります。

このように、ESG投資を実際に行うのは意外と難しいのですが、そこで役立つのがESG指数です。ESG指数とは企業を環境・社会・企業統治の観点から評価し、その評価において優れた企業で構成された株価指数のことです。ESG指数はESG投資を行う際に重要視され、評価のポイントは指数により異なります。昨今、多くの企業がESG指数の構成銘柄に選定されるとプレスリリースを発表し、投資家等にアピールしているほど注目されている株価指数です。

ESG指数の例

ESG指数の例

ESG指数には、いくつかの種類がありますが、ここでは代表的に4つ取り上げてご紹介します。

Dow Jones Sustainability World Index(DJSI World)

DJSI Worldは世界的に有名なESG指数です。インデックス開発会社の大手であるS&Pダウジョーンズインデックスは1999年にDJSI Worldを発表し、先進国の大企業を投資対象とするSRIインデックスをリリースしました。2021年度は、世界の企業約3500社の中から322社(うち、日本企業は35社)が選定されました。

MSCI KLD 400ソーシャルインデックス

MSCI KLD 400ソーシャルインデックスは、世界で初めて作られたESG指数です。アメリカに本社のある金融リサーチ会社経営であるKLDが開発しました。上場企業の中から、ESGに配慮しているとKLDが判断した400社だけを抽出した株価指数です。

FTSE Blossom Japan Index

FTSE Blossom Japan Indexは「FTSE Russell」が作成し、ESGに対して優れた対応を行っている日本企業のパフォーマンスを測定したものです。銘柄の組み入れは、国連の持続可能な開発目標(SDGs)を含む既存の国際基準をもとに作成されています。サステナブル投資のファンドや他の金融商品の組成・評価に広く利用されており、選定された企業はそのことを積極的にアピールしているほど、企業にとってメリットの大きいものです。

MSCI日本株女性活躍指数

MSCIジャパンIMIトップ500指数の構成銘柄の中から、女性の活躍推進に優れた企業を選別して構築される株価指数です。時価総額上位700銘柄が対象となっており、MSCIが新たに開発した性別多様性スコアに基づき選定されています。女性の活躍推進に消極的であったり、人権や労働者権利において深刻な不祥事を起こしたりしている企業は、当然ながら対象外となります。

グリーン・ウォッシュに注意

グリーン・ウォッシュに注意

グリーン・ウォッシュとは、実際はESGに取り組んでいないのにESGに取り組んでいるように見せかけることです。企業がブランドイメージ向上のため、見せかけの環境配慮をうたってしまうことが少なくありません。

ESGは世界的な大きなテーマなので、ESGに力を入れている企業は注目を集めやすく、株価にも影響を与えます。そのため、株価を上昇させるためにESGへ積極的に取り組んでいると見せかけている企業が、残念ながら一定数あるので注意が必要です。グリーン・ウォッシュを見抜くためには、IRや外部評価などをしっかり確認して判断材料にしましょう。

まとめ

ESG指数についてご説明しました。ESGは、社会が求めている現代の最重要項目の1つです。ESGに注力している会社に投資することで、社会に大きく貢献できます。しかし、中には見せかけだけのグリーン・ウォッシュ銘柄もありますし、個人でESGに力を入れている企業を見つけるのは難しいかもしれません。そんな時は、ESG指数を利用することで、比較的簡単にESG投資を行うことができるでしょう。

ESG指数には様々な種類があり、それぞれの指数によって選定される企業は異なります。そのため、自分の考えに合ったESG指数を選ぶことが可能です。ここでご説明した内容を参考にESG投資への興味を深め、ESG指数による投資を実践してみてください。

監修者プロフィール

渡辺 智(ワタナベ サトシ)
FP1級、証券アナリスト。

<プロフィール>
大学商学部卒業後は某メガバンクに11年勤務し、リテール営業やプライベートバンカー業務、資産運用コンサルティング(投資信託、保険、債券、外貨預金など)、融資関係業務(アパートローン、中小企業融資)などを経験。銀行在籍中、2度の最優秀営業賞を受賞。銀行在籍時の金融商品販売額は500億円を超え、3000人を超える顧客に金融商品営業を行う。その後、外資系保険会社でコンサルティング営業として従事し、現在は業務経験・知識を活かして金融ライターとして独立。難しい金融をわかりやすく伝えることをモットーに活動中。