ユニコーン企業とは?

ユニコーン企業とは、企業価値は高いが上場していない新興企業のことを言います。日本と世界のユニコーン企業の違いなどを交えて詳しく解説します。

ユニコーン企業とは?

ユニコーン企業とは

ユニコーン企業とは、以下の条件を満たす企業のことを言います。

  • 評価額が10億ドル以上
  • 設立10年以内
  • 非上場
  • テクノロジー関連企業

非上場で設立からの年数も短く、このように大きな規模の企業に成長することは稀なことから、ギリシャ神話に登場する珍しい一角獣ユニコーンに例え、「ユニコーン企業」と呼ばれています。ベンチャーキャピタルから巨額の利益をもたらす可能性のある企業として、「ユニコーン企業」は注目されています。

デカコーン企業・ヘクトコーン企業

ユニコーン企業のように、未上場で企業価値が大きな企業として、デカコーン企業(企業価値100億ドル以上)やヘクトコーン企業(企業価値1,000億ドル以上)という名称もあります。

ユニコーン企業は、評価額が10億ドル超の大型未上場企業のことですが、デカコーン企業は10倍の100億ドルの企業規模になります。デカコーン企業の「デカ」とは10倍を意味する言葉であり、インターネット関連のスタートアップ企業が多く含まれます。

そして、ヘクトコーン企業とは、その中で企業評価額が1000億ドルを突破した企業のことを言います。ヘクトコーン企業の「ヘクト」は、「100倍」を意味する言葉です。ユニコーン企業そのものが稀なものですが、ヘクトコーン企業はさらに稀なものと言えるでしょう。

このように、企業の評価額は巨大でありながら上場されていない企業がユニコーン企業と呼ばれています。例えば、現在では上場して世界を代表する企業となっているFacebook社やTwitter社も、かつてはユニコーン企業の1つに数えられていました。

成長した企業はユニコーン企業とは呼ばれない

また、ユニコーン企業は若い企業に対してだけ使われる言葉のため、十分に成長した企業はユニコーン企業とは呼ばれません。一般的に、企業は上場することが企業としてのステータスとなり、信用度アップにつながり、資金調達も行いやすくなります。

しかし、投資家は企業を短期的な業績で判断して売買を繰り返すことも多いので、株主を意識した経営を行わなければなりません。そのため、中長期的な成長戦略が練りにくいというデメリットがあります。短期的な業績のためより、長期的な利益のために投資すべきタイミングもあるでしょう。しかし、株主を意識した経営を行うことで思い切った投資や経営ができず、成長速度が鈍化して新たな投資が限られる場合もあります。

スタートアップ企業には「新たなビジネスモデルをつくって市場を開拓したい」と考える起業家が多いでしょう。ビジネスモデルや考え方に賛同してくれるベンチャーキャピタルや大企業から出資してもらう非上場をあえて選ぶことで、株主を意識せず自由な経営を行えるメリットがあります。

世界のユニコーン企業

世界のユニコーン企業

世界的に見ると、ユニコーン企業はアメリカ・中国に多く、2カ国だけでユニコーン企業全体の約8割を占めていると言われています。また、近年ではシンガポールやインドネシア、インドなどでも次々に誕生している状況です。

ユニコーン企業が増えた理由

ユニコーン企業が近年増えた理由として、以下の理由が挙げられるでしょう。

1.投資ファンドやベンチャーキャピタルなど資金調達が多様化した
事業拡大のためには資金調達は必要不可欠で、株式を上場することは代表的な手段です。しかし、投資ファンドやベンチャーキャピタルなど資金調達の手段が多様化したことにより、上場せず資金調達が可能になりました。

2.大手がスタートアップ企業を買収するケースが増加している
大手企業がスタートアップ企業を買収するケースがあります。スタートアップ企業の技術やビジネスモデルに着目した大手企業が、豊富な資金力を用いてスタートアップ企業に投資します。その結果として急成長する可能性も高まったことが、ユニコーン企業が増えている理由に影響しています。

世界の代表的なユニコーン企業

このように、ベンチャーキャピタルによる投資や大企業による買収などが増え、上場することは、資金調達のための手段の1つになりました。世界の代表的なユニコーン企業としては、以下などが挙げられます。

□アメリカのユニコーン企業

  • 決済サービスを提供する「Stripe」
  • 航空宇宙メーカーの「SpaceX」
  • 食料品などの宅配サービスを提供する「instacart」
  • ロボットソフトウェアによる業務代行「UiPath」
  • ヒートガンなどのメーカーの「Wayho」 など

□中国のユニコーン企業

  • TikTokなどの有名な動画プラットフォームを運営する「Bytedance」
  • オンライン歯医者サービスの「Didi Chuxing」
  • TikTokと同様に中国で人気の動画プラットフォームの「Kuaishou」 など

日本のユニコーン企業

日本のユニコーン企業

欧米や中国に比べると日本のユニコーン企業はとても少なく、経済規模から考えても相対的に少ないと言えるでしょう。日本では、以下のような企業がユニコーン企業に当たります。

  • ディープラーニングといったAIのテクノロジーで注目される「Preferred Networks」
  • 最先端のクリーンエネルギーの開発を行う「クリーンプラネット」
  • 石灰石を原材料とした再利用可能な新素材の「LIMEX」を開発する「TBM」 など

いずれも、時代のニーズに合った最先端のテクノロジーを持ち期待される企業です。さらなる利便性や生産性向上だけでなく、環境問題の解消に貢献する技術など、注目すべき企業が存在します。昨今、日本においてもユニコーン企業は増加の傾向にありますが、世界的にはまだまだ少数です。

日本にユニコーン企業が少ない理由

では、なぜ日本にユニコーン企業が少ないのでしょうか。

1.ベンチャーキャピタルが発達していない
その理由として、まずベンチャーキャピタルが発達していないことが挙げられます。若い企業が成長してユニコーンになるには、ベンチャーキャピタルなどからの大規模な資金調達が欠かせません。しかし、日本ではベンチャーキャピタルが少なく、事業を拡大するための資金調達の手段として新規株式公開(IPO)での調達に頼らざるを得ません。そのため、十分成長しないうちに上場することなどが、ユニコーン企業が少ない一因となっています。

2.投資額も世界的に見て少ない
また、投資額も世界的に見て少なく、2016年のベンチャーキャピタル投資額を日米で比較すると、日本の投資額はアメリカに対し80分の1だったとされています(一般社団法人 日本ベンチャーキャピタル協会 第四次産業革命に向けたリスクマネー供給に関する研究会より)。

3.起業する人の総数自体が少ない
また、起業する人の総数自体が少なく、開業率の国際比較ではアメリカ、イギリスでは10%程度で推移していますが、日本は5%以下であり、他の先進国と比較し低い水準となっていることも大きな要因として考えられるでしょう(経済産業省 2017年 中小企業白書 起業の実態の国際比較より)。そもそも、ベンチャー企業自体が少ないことが理由となっています。

政府の成長戦略「未来投資戦略2018」

世界第三位の経済規模を誇る経済大国でありながら、ベンチャー投資が少ないという事実は少し残念なことかもしれません。なお、ベンチャー企業への投資が少ない日本ですが、ユニコーン企業に投資を行っている大企業の世界第二位は日本のソフトバンクグループです。ただしその投資先は、主にアメリカや中国の企業となっています。

また、政府も成長戦略の一環としてユニコーン企業を2023年までに20社創出することを目標とし、「未来投資戦略2018」に掲げています。世界でユニコーン企業の増加ペースが速まっている中、世界に後れをとった日本がこれからユニコーン企業を増やしていくためには、ベンチャー投資の拡大に掛かっていると言えるでしょう。

政府の目論見通り、今後国内でユニコーン企業が増えていけば、いずれ上場する可能性のある企業が増えていくことも予想できます。これらユニコーン企業の動向に注目し、また、どの会社がどのような独自の技術やビジネスモデルを持っているのかを知ること。
その上で将来的に上場することがあれば、投資家にとって大きな利益を得られるチャンスが増えていくのかもしれません。単に利益を得るかどうかだけでなく、これらの将来に期待が持てる企業を見つけ、その動向や成長を観察していくのも面白味の1つでしょう。

投資家の立場でユニコーン企業をどのように考えるか

投資家の立場でユニコーン企業をどのように考えるか

ユニコーン企業は上場していません。そのため、株式を購入するには株主との間で直接売買するか、それらに投資するファンドを見つけるなどの手段しかないのです。
しかし、現時点では非上場企業であっても、将来的に上場する可能性はあります。ここまでご紹介したように、ユニコーン企業の多くは従来の商品やサービスとは異なる、時代のニーズに合った最先端の技術を用いた商品やサービスを提供しているものです。そのため、将来的に大きく成長する可能性も期待でき、上場した際には株価の上昇も期待できるでしょう。

FacebookやTwitterがユニコーン企業から上場企業になったように、将来的にそのタイミングが訪れることは十分に考えられます。そういった企業が持つ技術力や市場のニーズ、ポテンシャルに注目し、上場のタイミングで投資することで、将来的に大きな利益が期待することもできるでしょう。

例えば、Twitterが2013年に上場した際は、たった1日で株価が1.5倍以上に上昇したという事実もあります。このように、株価の急激な上昇を狙うこともできますので、どのような企業がユニコーン企業と呼ばれ、今後上場する可能性があるかどうかなどを注目してみると良いでしょう。ただし急激に上昇する反面、その後の売りで急降下する場合があったり、乱高下する可能性もあったりする点には注意も必要です。

まとめ

まとめ

ユニコーン企業とはどのようなものか、日本と世界ではどのような企業があるのか、そして、投資家の立場からどのようなことに注目すれば良いかを解説しました。

ユニコーン企業と呼ばれる企業には、TikTokやStripeなどの身近な企業も含まれます。また、ユニコーン企業が少ないと言われる日本でも、最先端の技術を持つPreferred Networks、グリーンプラネット、TBMといった注目すべき企業が少なくありません。
こういった技術を持つ企業に投資すれば、社会問題の解決やさらなる便利さを与えてくれることで社会に大きく貢献し、日本経済をけん引する大企業に成長してくれる可能性もあります。かつてはユニコーン企業だったFacebookが世界を代表する大企業の1つとなったように、世界を代表する企業を日本から輩出する可能性もあるでしょう。

しかし、上場することのデメリットにも挙げた通り、会社の短期的な業績で相場が変動するため、株主を気にした経営を行わなければなりません。こういった技術開発や新規事業の参入などにも慎重にならざるを得ないこともあり、それではこれらの成長速度が鈍化してしまうこともあります。
そのため、ベンチャーキャピタルや大手企業からの投資で資金を集め、非上場のままで会社を成長させることが必要な場合もあるのです。
政府の成長戦略にユニコーン企業を増やすことが目標として掲げられているように、日本経済の成長のために重要な存在であるとも言えるでしょう。

本来、株式投資とはこういった資金を必要とする将来を期待できる企業に対しお金を出し、利益の一部を返してもらうというもの。投資の本来のあるべき姿に回帰し、海外に倣い国内でのベンチャー投資が増えることを期待したいものです。

監修者プロフィール:

小川 洋平(オガワ ヨウヘイ)
日本FP協会認定 CFP®、合同会社clientsbenefit 代表、FP相談ねっと認定FP、SG中越代表

<プロフィール>
25歳でお金の知識・営業経験ゼロから保険営業の世界に飛び込み6年半従事。2年目に将来の資産形成のため金融知識が必要なことに気が付き、FPの勉強を始めて金融・経済の知識を学ぶ。その後、保険に限らずあらゆるお金の面でクライアントにとってベストな提案をしたいという想いで、商品販売ではなく相談業務を開始。2013年より資産形成の考え方に関するセミナーを自主開催。その他、大手金融機関からの委託により実施。現在は小規模事業者の年金や資産運用のサポートを中心に相談・経営支援の業務に携わり、確定拠出年金など起業家の将来の資産形成と経営のサポートを行っている。投資信託や資産形成の分野を得意としている。