レーティングとは?

株式投資の銘柄分析で重要となるレーティングについて、見方や注意点などを詳しくご説明します。

レーティングとは?

レーティングとは

レーティングとは

レーティングとは、企業リサーチに基づきアナリストが下す個別銘柄の投資判断のことを言い、一定期間における銘柄の騰落予想を示したものです。レーティングは証券会社や研究機関などが発表していますが、「Buy>Neutral>Reduce」「1>2>3>4>5」など段階数や表現はそれぞれ異なります。主要証券会社のレーティングの表記について、以下にまとめましたので参考にしてください。

レーティングの表記

また、表記以外に、証券会社や調査会社によって最上位レートの定義も異なります。例えば、「今後6カ月以内に株価が10%以上上昇する」、「今後12カ月間にTOPIX(東証株価指数)を15%以上上回る」など多様なため、投資判断の参考にする上で注意が必要です。
3大証券と呼ばれる「野村證券」、「大和証券」、「SMBC日興証券」のレーティングの定義について、以下にまとめましたので参考にしてください。

野村証券
大和証券
SMBC日興証券

このように、各証券会社や調査会社によって分析方法や定義が異なるため、複数社のレーティングを確認するのがベターと言われています。

レーティングモニターとは

また、レーティングを正しく利用するためには、レーティングモニターについてもしっかり理解することが必要です。レーティングモニターとは、信用格付け会社である格付投資情報センター (R&I) が格付けに影響を与える可能性のある事象が発生した際、臨時に格付けの見直しを実施していることを示すものです。見直し中は符号に括弧( )をつけて表示します。

また、「格上げ方向」「格下げ方向」「方向は未定」の方向性の示唆を併せて行うのが一般的です。同様の意味を持つ言葉として米S&Pの「クレジット・ ウオッチ」などがあり、レーティングを正しく使いこなすためには、レーティングモニターについてもしっかり理解する必要があります。

レーティングの見方

レーティングの見方

レーティングの定義を理解できても、実践的なレーティングの見方についてわからなければ株式投資に活用できません。そこで、レーティングの見方についてわかりやすくご説明しましょう。レーティングの分析方法は大きく2つの要素があります。

事業リスク

事業リスクとは、業界や事業の将来性・キャッシュフロー状態、資産価値の予測などから分析されるものです。事業を運営する目的は利益を出すことですが、必ずしも利益を出せるとは限りません。さまざまな不測の事態が起こり、時には損失を出してしまうこともあるでしょう。事業リスクを適切に判断できれば、今後その銘柄が上昇するかどうかを判断するのに役立ちます。

もちろん、事業リスクをゼロにすることはできません。そのため、いかにリスクマネジメントができているかという点が重視されるのが一般的です。事業リスクの判断基準はアナリストによってかなり差が出るため、1人だけでなく多くのアナリストの分析について確認することが重要になります。

財務リスク

財務リスクとは、主に賃借対照表や損益計算書などの財務諸表から判断されるもので、資産と負債のアンバランスや、収支のアンバランスなどのリスクを意味します。例えば、事業の収益率の悪化による、配当原資や株主資本の減少や、元利払いの可能性の減少などのリスクが挙げられます。

財務リスクの中で特に見られるのが、借入金に対する返済能力と将来的に大きな損失を被った場合に倒産する可能性の2点です。そして、この2点を判断するのによく使われるのが自己資本比率です。

自己資本比率とは、財務的な安定性を測る指標です。事業資金の調達方法として他人資本である負債の割合が多いと、市中金利の上昇により外部に支払う利息が増加するため、自己資本比率が高い方が財務安定性に優れているとされています。
自己資本比率は金融機関を除く一般的企業の場合、40%を超えているとひとまず安心だと言われていますので、これを1つの目安にしましょう。自己資本比率に関してはインターネットで簡単に見られますので、ご自身で確認することも可能です。

もちろん、アナリストの分析は自己資本比率だけではなく、さまざまな要素を分析しています。そのため、その分析結果は個別銘柄を選定する際の役に立つでしょう。また、財務リスクについても分析のもととなる財務諸表は共通ですが、アナリストの見方によって異なる見解が出ることがよくあります。財務リスクについても、多くのアナリストの意見を参考にしてください。

なお、財務リスクは4つに分けられます。以下にそれぞれ記載しますので、こちらも参考に覚えておいてください。

  • 資金調達リスク:貸借対照表の資本に対する負債の比率上昇によるリスク
  • 与信リスク:取引先の倒産により本来受け取るべき代金を回収できないリスク
  • 流動性リスク:売買が少なくなるなどの理由で保有資産が売れなくなるリスク
  • 価格変動リスク:投資した資産の価値が、価格変動によって上下するリスク

レーティングの注意点

レーティングの注意点

レーティングはプロのアナリストの意見として参考になるものですが、いくつか注意点もあります。主に4つの注意点について詳しくご説明しますので、銘柄選定の参考にしてください。

プロの分析による資料ではあるが確実ではない

レーティングはプロの証券アナリストが出しているものですが、必ずしも当たるわけではありません。いくら評判の良いアナリストであっても、外すことはあります。プロの意見と聞くと、確実に当たるかのように考えてしまう人は多いかもしれません。ただし、決して100%当たるものではないことは、レーティングを利用する際に注意してください。

レーティングは株価へ影響を与える

証券業界の中には、的中率が高い注目のアナリストが業界ごとに存在します。注目アナリストのレーティングは多くの機関投資家や個人投資家が注目しているため、レーティング発表のタイミングで株価に変動がある可能性があるでしょう。
こうした注目アナリストの発表について、以前は証券会社に問い合わせすることが一般的でした。しかし、今ではインターネットで簡単に調べられますし、SNSで検索すればいち早く情報をキャッチできる可能性があります。
レーティングに限らず、株式投資などの投資で勝つには情報をいち早くつかむことが非常に重要です。情報源については、たくさんあるほど有利になるでしょう。インターネットも活用しつつ、複数の情報源を持っておいてください。

レーティングの情報は市場に織り込まれている場合もある

レーティング情報をきっかけにして、株価が動くことがあります。しかし多くのケースでは、レーティング情報が公表される前から株価には織り込まれているものです。
織り込み済みとは、投資の世界ではよく使われる言葉です。経済指標などが発表される前に数値が予想されていることがほとんどなので、実際に経済指標が発表されても、予想と大きな乖離(かいり)がなければ、ほぼ株価や為替は動きません。
つまり、レーティング情報が発表される前に、ある程度株価にはレーティング情報が織り込まれていると考えた方が良いのです。そもそも株価がレーティング情報で動くことは少なく、決算内容や突発的な事象が起きた時に大きく動く傾向にあります。

レーティング評価は途中で変わることもある

レーティング情報は、一度出したら評価を変えてはいけないということはありません。つまり情勢が変われば、いくらでもレーティング評価も変わるのです。
特に有名なアナリストがレーティング評価を変えると、大きく株価が動く可能性がありますので注意が必要です。例えば、有名なアナリストが「中立」から「強気」に変えると、大きく株価が上昇するといったケースです。レーティング情報はこまめに変わるものと考え、常に情報をチェックするようにしましょう。

まとめ

株式投資の参考になるレーティングについてご説明しました。レーティング情報をうまく活用すれば、株式投資の勝率を上げるのに役に立つでしょう。もちろん、レーティング情報は百発百中で正しいものではありません。あくまで参考であり、外れることもあることはしっかり覚えておいてください。とはいえ、何の情報もなく株式投資を行うのに比べれば、自信を持って銘柄を選ぶために役立つでしょう。

株式投資で勝つためには、さまざまな知識や情報が必要です。その1つとして、ぜひレーティングについてもチェックしてみてはいかがでしょうか。ここで解説した内容でレーティングに関する理解を深め、株式投資の勝率を上げるのに役に立ててください。

監修者プロフィール:

渡辺 智(ワタナベ サトシ)
FP1級、証券アナリスト。

<プロフィール>
大学商学部卒業後は某メガバンクに11年勤務し、リテール営業やプライベートバンカー業務、資産運用コンサルティング(投資信託、保険、債券、外貨預金など)、融資関係業務(アパートローン、中小企業融資)などを経験。銀行在籍中、2度の最優秀営業賞を受賞。銀行在籍時の金融商品販売額は500億円を超え、3000人を超える顧客に金融商品営業を行う。その後、外資系保険会社でコンサルティング営業として従事し、現在は業務経験・知識を活かして金融ライターとして独立。難しい金融をわかりやすく伝えことをモットーに活動中。