時価総額とは?

時価総額とは株式投資において、企業規模を表すのに重要な言葉。その意味や投資での考え方などを詳しく解説します。

時価総額とは?

時価総額とは

時価総額とは

企業の価値を評価する際の指標

時価総額とは、企業の価値を評価する際の指標です。時価総額が大きいということは業績だけではなく、将来の成長に対する期待も大きいことを意味します。時価総額は、企業尺度や企業の実力の一面にしか過ぎません。しかし、市場の期待値を反映した尺度の1つであり、一般には企業の利益や資産が大きいほど時価総額も高くなります。

会社を丸ごと買うのに必要な金額

また、時価総額には「会社を丸ごと買うのに必要な金額」を表している側面もあります。なぜ、会社を丸ごと買うのに必要な金額なのか、理由は以下の通り時価総額の計算式にあります。

【計算式】株価×発行済株式数=時価総額

このように、時価総額は株価と発行済株式数を乗じた数値です。時価総額分を支払うことでその会社の株式を全て取得することができる、つまり丸ごと買い取ることができるということを意味します。そのため、会社の価値そのものと言うことができるでしょう。

例えば、トヨタ自動車(証券コード:7203)の時価総額は約32兆円(2021年9月17日現在)、社員の平均年収がもっとも高いと有名なキーエンス(証券コード:6861)は約17兆円(2021年9月17日現在)です。これらの会社を丸ごと買い取るには、これだけの巨額の金額が必要ということになります。なお、現在世界をけん引する大企業であるアップルやマイクロソフトの時価総額は日本円に換算して200兆円を超える巨大な規模です。

このように、時価総額は企業の規模を表したり、経営状態を比較したりするのに使用される数値です。業績は株価に反映されるため、株価が下がることで時価総額が下がります。時価総額が下がることは、株価の下落、業績が低迷した結果である可能性も考えられます。時価総額の変化が株価や経営状態の変化を表す場合もあるのです。

時価総額が大きいほど会社全体の価値が高い

日本で代表的な株価指数であるTOPIXは東証一部に上場する企業の時価総額を表しており、計算式は以下の通りです。

【計算式】TOPIX=(算出時の指数用時価総額÷基準時価総額(1968年の時価総額))×100

浮動株の誤差を修正した東証一部上場企業の時価総額の合計を、TOPIXがスタートした1968年の時価総額で除した数値に100を乗じたものです。TOPIXに連動する成果を目指すインデックス型の投資信託がありますが、この投資信託の値動きは東証一部上場企業の時価総額を反映する金融商品と言えるでしょう。

株価は企業の業績や景気などの要因により、そのポテンシャルに対して過大にも過小にも評価される場合があります。そのため、それに連動する時価総額は、必ずしも企業の価値を正確に表すというものではありません。

世界の企業の時価総額のランキング

なお、現在世界の企業の時価総額のランキングには、GAFAMに代表される米国のIT系企業が名を連ねており、米国企業がいかに世界経済に大きな影響を与えているかがわかります。
平成元年には、世界の企業の時価総額ランキング上位に日本企業が多数ランクインし、日本企業が世界経済に大きな影響を与えていた時代もありました。ただ、その頃の上位銘柄の時価総額と比較すると、現在の上位銘柄の時価総額はケタが1つ違っています。この30年ほどで、日本企業と米国企業で成長度合いにどれほど大きな差があったのかが、この時価総額からわかるでしょう。

また、中国企業もいくつか上位にランクインしていることから、中国企業の成長に対しても日本企業が追い付いていないことがわかります。時価総額が企業の価値を表すものであるならば、日本人としては残念なところかもしれません。
日本から世界経済をけん引する企業が登場し、世界の時価総額上位にランキングされ、再び日本経済が活気を取り戻せることを願いたいものです。

時価総額が変動する要因

時価総額が変動する要因

時価総額が変動する要因は、株価の変動にあり、株価の変動は下記の4つの点が考えられます。

利益の変化

株式は、会社の利益の一部を株主に還元されるもので、会社の利益に大きく左右されます。一般的に利益が大きければ株価が上がり、利益が小さければ株価は下がる傾向にあるでしょう。

純資産の変化

純資産は、資産から負債を差し引いた差額であり、会社の安定性を表します。純資産が大きいほど、負債に対し資産が多いことを表し、経営が安定していると言えるでしょう。そのため、株主にとっては投資する安心材料となり、株価が上がりやすくなります。

投資家の期待の変化

株価を大きく左右する要因として、投資家の期待の変化があります。
例えば、大ヒットが予想される新商品や新たな技術が開発されるといったニュースがあれば、その企業の大きな利益になることが予測されるため株価が上がるでしょう。
反対に、不祥事があったり、その企業にとってマイナスなニュースが流れたりすると、株価が下がりやすくなります。このように、ニュースによっても株価は変動することがあり、その結果として時価総額に影響を及ぼすのです。

発行株数の変化

時価総額が変動する要因として、発行済株式総数の変化が挙げられるでしょう。時価総額は株価×発行済株式数で計算されますので、株式数が変化することで時価総額も変動します。新株発行で発行済株式数が増えれば時価総額は上がる要因となり、反対に自社株買いなどにより減る場合には時価総額は下がる要因となるのです。

新株発行の際には株価が下落する傾向にあります。また、自社株買いの場合には株価が上がりやすいため、発行株式数が変化することで時価総額が変動しても、企業としての価値そのものが変化していなければ元の水準に戻る傾向にあるでしょう。

時価総額の投資への使い方

時価総額の投資への使い方

時価総額が多ければ、信頼性が高い企業とみなされやすくなります。株価が高く発行済株式数が多いということは、多くの投資家からその価値が認められている企業ということになるのです。必ずしも時価総額がその企業の価値を正しく反映しているわけではありませんが、企業の価値を表す指標としては大きな意味があります。

また、時価総額の小さな会社は企業買収の対象になりやすいです。時価総額が大きければその分だけ買収するのには大きなお金が必要となり、買収されにくくなります。企業の経営権を得るには、その企業の株式の過半数を取得することが必要です。
例えば、トヨタ自動車のような企業の経営権を得ようとすれば約16兆円も必要になり、これは非現実的な数字と言えるでしょう。

買収に必要な金額が、時価総額100億円程度ならば十分に可能性があり、実際にこの規模の時価総額の会社が、公開買付などにより買収される事例があります。買収された企業の株式は完全子会社化されて非上場株となる可能性もあり、売却せざるを得ない場合もあるでしょう。

時価総額は企業の信頼性を表す指標

時価総額の大きな企業に比べ、時価総額が小さい企業は利益や純資産が小さく企業規模が小さい傾向にあります。また、時価総額が高い方が資金調達にも有利で、時価総額が低いと資金調達も行いにくいことから、倒産リスクが高いとも言えるのです。
このように、時価総額は企業の信頼性を表す指標にもなります。また、時価総額は発行済株式数と株価で簡単に計算できます。そのため、その企業の業界内のシェアを把握、国際間での規模を比較するための指標としても使うことが可能です。

時価総額が高い企業は総じて経営が安定し、株価の変動も少ない傾向にあります。これに対し、時価総額が小さい企業は経営が不安定で、倒産リスクも高いという点はデメリットと言えるでしょう。しかしその反面、ヒット商品を開発したことなどをきっかけにして株価が急上昇する場合もあり、大きな利益を狙いやすいというメリットもあります。複数の銘柄に分散投資するなどリスク低減の対策を講じた上で、時価総額は低いが今後成長が期待されるような銘柄を選び投資してみても良いでしょう。

正しい企業価値を把握することが大事

なお、新株発行や優先株の影響には注意が必要です。株式を発行することで時価総額が変動している場合もあり、また、優先株を発行している場合は、普通株に優先株の分も加えて時価総額を計算しないと、正しい価値がわかりません。
優先株など普通株以外の株式の情報については、有価証券報告書で確認することができます。あらかじめ、正しい企業価値を把握するためにも確認しておきましょう。

TOPIXの計算式については前述の通りですが、TOPIXの価格は東証一部上場企業全体の時価総額を表します。日経平均株価が東証一部上場企業の銘柄の中の代表的な225銘柄の平均値であるのに対し、TOPIXは全体の時価総額を表したものです。そのため、日経平均株価は株価の高い銘柄(値がさ株)の影響を受けやすい特徴がありますが、TOPIXはより相場全体の値動きを表していると言えます。

まとめ

まとめ

時価総額とはどういう意味なのか、計算方法や投資への活用法などについて詳しく解説しました。時価総額とは、その企業の価値そのものを表します。時価総額を用いることで、企業の規模や安全性などを比較することが可能です。また、その業種においてシェアはどちらの企業が大きいのか、あるいは国際的な比較にも用いることができます。

株価は、必ずしもその企業の価値を表しているわけではありません。これと同様、時価総額もまた、その企業の価値そのものとは言えませんが、投資において重要な指標であることは間違いないでしょう。
そして、投資初心者にとってもっとも身近なのは、TOPIXの値動きが東証一部上場企業の時価総額によって変動するということです。TOPIXに連動した投資信託は初心者が選びやすいものであり、将来の資産形成に適した商品の1つでもあります。

同じ日本株式に投資する投資信託で、日経225とTOPIXのどちらを選ぶかで迷うこともあるでしょう。これらの2つの指標は、同様の値動きをしてきたものです。しかし、どちらがどのような理由で価格が変動するのか、その理由を理解するためにも時価総額の意味を理解しておくと良いでしょう。

時価総額の意味を理解すれば、投資の判断はもちろん、経済ニュースを読み解くのにも役に立つはずです。将来の資産形成や個別銘柄の選定、あるいは経済ニュースの見方を知り視野を広く持つために、ここで取り上げた内容を参考にしてください。

監修者プロフィール:

小川 洋平(オガワ ヨウヘイ)
日本FP協会認定 CFP®、合同会社clientsbenefit 代表、FP相談ねっと認定FP、SG中越代表

<プロフィール>
25歳でお金の知識・営業経験ゼロから保険営業の世界に飛び込み6年半従事。2年目に将来の資産形成のため金融知識が必要なことに気が付き、FPの勉強を始めて金融・経済の知識を学ぶ。その後、保険に限らずあらゆるお金の面でクライアントにとってベストな提案をしたいという想いで、商品販売ではなく相談業務を開始。2013年より資産形成の考え方に関するセミナーを自主開催。その他、大手金融機関からの委託により実施。現在は小規模事業者の年金や資産運用のサポートを中心に相談・経営支援の業務に携わり、確定拠出年金など起業家の将来の資産形成と経営のサポートを行っている。投資信託や資産形成の分野を得意としている。