カーボンニュートラルと半導体製造装置(野村アナリストの業界展望)

 

2021年6月2日

 

6/1 20:30 FINTOS!編集部

世界的に加速する脱炭素社会構築

 新型コロナで傷んだ経済を脱炭素社会に向けた投資によって立て直す「グリーンリカバリー」と呼ぶ経済政策が、欧州から世界に広がっている。

 

 欧州委員会は7,500億ユーロの復興基金を設置し、その大半を再生エネルギーや電気自動車に振り向ける。

 

 日本政府は「2050年カーボンニュートラル(CN)宣言」に続いて、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を発表、米国はバイデン大統領就任に伴ってパリ協定復帰及び50年CN 達成目標とグリーン投資案を発表した。

 

 経済産業省は、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」の中で、高い成長が期待される産業(14分野)を設定した。

 うち「半導体・情報通信産業」を中心に「洋上風力産業」と「自動車・蓄電池産業」の3つの分野に跨るのが、データセンターの低消費電力化である。

 

 経済産業省は、経済安全保障上の観点やサービス産業の競争力向上の観点から、データセンターの国内立地が望ましいとする一方で、大規模データセンターが、人口数十万人の中規模都市並の電力を消費することから、データセンターの省エネ化を重要課題の一つとして掲げている。

 

 野村の試算では、30年までに国内のデータセンターの消費電力は、国内への誘致が順調に進めば、日本の総発電量の15~20%に達する見込みである。

 

 世界全体でみても同様に、データセンターが世界の電力需給を圧迫する状況となり、データセンターの消費電力低減は喫緊の課題であるとともに、省エネ化によってCN に大きな貢献ができる領域でもある。

 

 野村では、データセンターの記録媒体をハードディスクドライブ(HDD)からフラッシュメモリで構築されたSSDに置き換えることは必須と考えている。

 

 SSD はHDD に対して高価格だが高速、省電力という特徴がある。省電力型のSSDの消費電力はHDD の6%に過ぎない。

 

 既にオンラインゲーム用などの、リアルタイムで大量のデータ処理が求められる高速のオンラインサーバーは、新設の場合、記録媒体はほぼSSD になっている。

SSD とパワー半導体に恩恵

 野村では、中長期的には、CN 達成のために、高速処理を必要としないニアラインサーバーにおいても、記録媒体のSSDへの置き換えが進むと期待している。

 

 20年のニアラインサーバー向けHDD の記憶容量は、SSDを含むフラッシュメモリの記憶容量の約1.3倍だった。

 

 フラッシュメモリ市場は、ニアライン需要を取り込めれば、2倍を上回る規模に成長、巨大な製造能力が必要となり、半導体製造装置市場にも大きな恩恵があろう。

 

 フラッシュメモリ用製造ラインの設備投資に占めるエッチング装置の割合は約50%と、他の半導体デバイスの10%台前半に比べて大幅に高く、エッチング装置で日本トップ、世界シェア2位の東京エレクトロンが大きな恩恵を受けよう。

 

 フラッシュメモリの組立・加工工程では、ウェーハの薄化装置でディスコと東京精密が、検査装置でアドバンテストと東京精密の売上が押し上げられよう。

 

 検査装置と接続して使用されるテスト治具のプローブカードでは、韓国のメモリメーカーは地場のものを採用しているため、韓国メーカーが投資しても、日本の装置メーカーへの恩恵はほとんどない。日米のフラッシュメモリメーカーが積極的な増産投資を行えば、日本マイクロニクス、日本電子材料の業績にポジティブである

 

 しかし、野村の最近の調査では、大規模なデータセンターを運営しているGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)で、目下、コスト高となるSSDを積極的にニアラインサーバーのストレージに導入しようという企業はなかった。

 一方、再生可能エネルギー(再エネ)化の点ではアップルとグーグル、フェイスブックは自社の事業活動で使用する電力で100%を達成した。

 

 アマゾンは24年までに再エネ化比率を80%、30年(早ければ25年)までに100%に引き上げる計画である。

 

 今後は、各社とも取扱データ量の指数関数的な増加で再エネの導入がさらに拡大しよう。

 

 欧米においては、再エネは既に火力発電所などで発電した電力よりも低コストになっており、企業側でも太陽光や洋上風力で発電した電力の大量導入には抵抗はない。

 

 太陽光などの再エネの発電プラントで発電した電力を系統電源に乗せるために変換するには、大量のパワー半導体が必要になる。パワー半導体用製造装置ではディスコの売上が大きい。

 

(和田木 哲哉)

 

※野村週報2021年5月31日号「産業界」より

提供元:野村證券 / FINTOS!作成資料

この記事は「FINTOS!」で2021年6月1日に公開されたものです。

元記事:カーボンニュートラルと半導体製造装置(野村アナリストの業界展望)

 

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