株価とは?

株式投資で利益を出すために非常に重要なのが株価です。今回は、株価について詳しくご説明します。

株価とは?

株価とは?

株価とは?

株価とは、各企業が発行している株式1株当たりの値段のことを言います。企業の資産規模や発行株数によって株価に差があり、株式投資で利益を出すためには、株価についてしっかり把握することが非常に重要です。現在の株価が割安なのか割高なのか分からないと、株式投資で利益を出すのは難しくなります。

株価の決まり方

証券取引所が開いている間、株価は目まぐるしく動くのが一般的です。当たり前のように使っている株価ですが、株価は一体どのように決まっているのでしょうか。

株価は証券取引所での需要と供給によって変わり、需要が高いと株価は上昇し、供給に比べ需要が少ないと株価は下落するのが通常です。つまり、買いたいと思っている人が多い株式の株価は上昇し、逆に売りたいと思っている人が多い株式の株価は下落します。

また、多くの方が見ている市場における株価は、最後に売買が成立した時点の価格を表したものになります。売買が成立するためには、売り手と買い手の売買金額と数量が一致することが条件です。証券取引所では、膨大な「買い注文」と「売り注文」の中から合うものをマッチングしています。

買い注文と売り注文を一覧表にしたものが、株式投資における「板」と呼ばれるものです。板には、価格ごとに買い注文と売り注文がどれだけあるのかを表示されますので、一目で買い注文と売り注文の状況を見られます。株式投資で利益を出すためには、現在の株価を把握し、板の見方をしっかり理解するのはとても大切です。

株価と時価総額の関係性

時価総額とはその企業の規模を示すものであり、「株価×発行済株式数」で計算されます。株価と時価総額はどちらも企業の状態を判断するのに役立ちますが、企業分析には時価総額が効果的です。なぜなら、株価は株式分割/併合や発行済み株数の差があり、企業の全体像がつかみづらいためです。

株価が変動する要因

株価が変動する要因

株価は様々な要因で変動します。ここでは、株価が変動する主な要因について、大きく「市場要因」と「個別要因」に分けて解説します。

「市場要因」と「個別要因」

市場要因

株価が変動する要因の1つは、市場要因です。市場要因とは、マーケット全体に影響する要因のことで、市場要因を細かく見ていくと下記のように様々な要素がありますので、しっかり理解するようにしましょう。

  • 国際情勢
    株価は、国際情勢によって大きく値動きします。分かりやすい例に挙げられるのが地政学リスクです。例えば、ある国がミサイルを発射すると世界情勢に不安が広がったり、また、米中貿易摩擦など国際的に大きな問題が起きたりすると、株価は大きく乱高下する傾向にありますから、常に確認するようにしましょう。
  • 国内情勢
    株価は国内情勢でも大きく左右されます。国内情勢で分かりやすい例として挙げられるのは、政治でしょう。例えば、政権交代が起きて新たな総理大臣が就任すると、株価は大きく乱高下する傾向にあります。記憶に新しいのは2012年に起きた政権交代でしょう。民主党から自民党に政権が変わり、その後に株価は大きく上昇しました。

    また、最近では2021年に第100代総理大臣として岸田文雄氏が就任しましたが、この時、日経平均株価は12年ぶりに8営業日連続で下落したのは記憶に新しいところです。
    政治情勢だけではなく、国内企業の決算や業績などによっても株価は大きく左右されます。海外情勢だけではなく国内情勢についても、しっかり把握しておくことが大切です。
  • 災害
    災害が起きると株価は大きく乱高下します。2011年3月11日に発生した東日本大震災では、震災発生時の午後2時46分までは、日経平均株価は80円安程度で推移していました。しかし、終値は前日比179円安の1万254円と約1ヵ月半ぶりの水準で取引を終えたのです。
    そして、日本企業の業績に多くの人が悲観的に思い、翌週14日(月)は寄り付きから売り注文が殺到しました。終値は前週末比633円安の9,620円と、1万円の大台を割り込んだのです。このように、災害が起きると株価は大きく変動する傾向にあります。
  • 金利や景気の変化
    金利や景気が変化すると株価は動く傾向にあります。例えば、2021年の前半までアメリカ株は順調に上昇してきましたが、徐々に乱高下が激しくなりました。原因は様々ですが、アメリカの長期金利が上昇傾向にあったのは、株価が乱高下した大きな原因の1つと言えるでしょう。金利が上がると、企業は資金の調達に多くのコストを支払うことになります。そのため、一般的に株価は下がりやすくなるのです。また、当然ながら景気が良いと株価は上昇しやすく、景気が悪くなると株価は下落しやすくなります。
  • 外国為替や海外市場の影響
    株価は為替や海外市場にも多大な影響を受けます。一般的に為替が円高になると、株価は下落しやすいものです。また海外市場、特にアメリカ市場の株価が前日下がると、日本株は下落しやすい傾向が見られます。このように、為替や海外マーケットの影響も多大に受けるので、株式取引を行う際は、海外マーケットの動向をしっかり確認しましょう。
  • 該当する業界の変動
    株価は該当する業界の動向の影響も受けます。直接投資を検討している企業に関係なくても、業界全体の動きは、これから投資を検討している企業にも影響する可能性があるためです。また、国内の業界だけではなく海外の業界の影響も受けるので、投資する企業が属している業界の動向については十分に把握しておきましょう。

個別要因

株価は全体の市場要因だけではなく、個別要因でも大きく上下動します。

  • 業績の変化
    業績の変化によって株価は大きく上下動します。特に市場予想より大きく乖離(かいり)した場合、株価は乱高下しやすくなります。また、業績が良くても市場予想に届かない場合、株価は大きく下落する傾向にあります。どちらも注意が必要です。
  • 外国投資家の影響
    日本の株価市場において外国投資家の影響は非常に大きいものです。外国投資家は大きなお金を動かすビッグプレイヤーも多いため、外国投資家の影響を日本株は受けやすいです。

株価が割高か割安かを判断するためには

株価が割高か割安かを判断するためには

株価が割高か割安かを判断するための方法は2つあり、1つは株価チャートを見ること(テクニカル分析)です。これによって、視覚的に現在の株価が高いか安いかが分かります。特に5年や10年など長いチャートを見ると、現在の株価がどのような状況か一目瞭然で判断することが可能です。

もう1つは、ファンダメンタルズ分析です。株価はチャートだけでなく、企業の財務状況から今後の値動きを予想することもできます。この分析方法が、ファンダメンタルズ分析と呼ばれるものです。

まずは、テクニカル分析から説明していきましょう。

株価チャートを見る(テクニカル分析)

株価チャートは基本的に、「ローソク足」「出来高の棒グラフ」「移動平均線」という3つのパーツからできています。株式投資の初心者とって、こうした用語の理解はハードルが高く感じるかもしれません。しかし、理解すれば簡単なので確認していきましょう。

ローソク足

ローソク足は、株価の値動きを示したものです。ろうそくのような形をしていて、長方形の本体部分とヒゲのような上下の線から成り立っています。上ヒゲは高値を示し、下ヒゲは安値を示しているものです。本体部分は赤と青がありますが、赤のローソク足は始値より終値が高かった時に現れます。青のローソク足が現れるのは、今日のローソク足の逆で始値が終値より高かった時です。視覚的に株価がどうなったのか、非常に分かりやすい指標です。

ローソク足には、ろうそく1本で1日の値動きを示す「日足(ひあし)」、1週間で動きを示す「週足(しゅうあし)」、1ヵ月の値動きを示す「月足(つきあし)」などがあります。大きな流れを知りたい時は週足や月足など期間が長いローソク足を使い、細かい値動きを知りたい時は日足を見るようにしましょう。

出来高の棒グラフ

出来高の棒グラフとは、チャートの下の方にある棒グラフのことです。出来高棒グラフは売買金額を示すもので、売買金額が高くなると棒グラフも高くなります。その株の人気状況を知るために、出来高棒グラフは便利なツールと言えるでしょう。売買が活発な株の場合、流動性が高いので買い付けがしやすいことなどのメリットがあります。

移動平均線

移動平均線とは、一定期間の株価の平均値を計算してグラフ化したものです。短期的な値動きをならして、株価の大まかなトレンドを知るのに役に立つ指標です。移動平均線が上向きであれば上昇トレンド、下向きであれば下降トレンドと判断できます。

以上の3つが、株価チャートの基本的な項目になります。この株価チャートに様々なテクニカル指標を使うことで、株価の値動きを予想するテクニカル分析を行うことが可能です。

テクニカル分析のメリット

テクニカル分析のメリット

テクニカル分析のメリットには、主に次の3つが挙げられます。

1.短期の値動きを予想できる
テクニカル分析は過去のチャートの値動きから将来のチャートの値動きを予想するもので、分析の精度が高いことが特徴の1つです。また、チャートは常に動いているため、短期の値動きも予想することができます。なお、後ほどご紹介するファンダメンタルズ分析の場合は、短期の値動きを予想することはできません。デイトレーダーなど短期で利益を上げたい方にとっては、非常にメリットが大きいでしょう。

2.経済の知識が薄くても利用できる
株式投資と聞くと、専門的な経済や金融の知識がなければ勝つことができないと思われ方がいるかもしれません。確かに経済や金融の知識は、あるに越したことはないでしょう。しかしテクニカル分析の場合、チャートの見方やテクニカル指標の使い方さえ理解できれば、経済の知識が薄くても行うことができます。そうした専門知識がなくても株価の値動きを予想できるのは、テクニカル分析の大きなメリットと言えるでしょう。

3.視覚的に株価の動きを把握しやすい
テクニカル分析はチャートを使って株価の値動きを予想します。そのため、視覚的に把握しやすいのもメリットと言えるでしょう。株価の上がり下がりが一目瞭然で分かるため、株の売買を素早く判断できます。

テクニカル分析のデメリット

テクニカル分析のデメリット

先に挙げたメリットに対し、テクニカル分析には次のようなデメリットもあります。

1.分析通り株価が動くとは限らない
テクニカル分析は精度が高い分析方法です。ただし株価は、百発百中で分析の通りに動くものではありません。時には、まったく逆の方向に動くこともあるでしょう。そのため、過度にテクニカル分析に頼るのは避けてください。

2.テクニカル指標を使いこなすまでに時間がかかる
テクニカル指標には、MACDやRSIなど様々な種類があります。株式投資の初心者には聞きなじみのない言葉も多く、テクニカル指標に慣れるまで時間がかかるかもしれません。しかし、一度覚えればずっと使えるものなので、勉強する価値は十分にあります。

企業の財務状況から判断する(ファンダメンタルズ分析)

企業の財務状況から判断する(ファンダメンタルズ分析)

株価はチャートだけでなく、企業の財務状況から今後の値動きを予想することもできます。この分析方法が、ファンダメンタルズ分析と呼ばれるものです。ファンダメンタルズ分析は、短期の株価を読むのには適していません。しかし、中長期で株価を判断するのに非常に役に立つものです。ここではファンダメンタルズ分析について、代表的なやり方についてご説明します。

PER(株価収益率)

PERは株価収益率のことであり、以下の式で計算することができます。

株価÷1株当たり純利益

この数値は、今の株価が今の1株利益の何年分かというもの。この数字が大きいほど、現在の株価は現在の1株利益の何倍も大きい水準にあるため、一般的に株価は割高とみなされているのです。なお、PERは15倍を超えると割高と言われています。

PBR(株価純資産倍率)

PBRは株価純資産倍率のことです。以下の式で計算することができます。

株価÷1株当たり純資産

純資産は会社の資産から負債を引いた残りです。PBRを分かりやすく説明すると、今の時点で会社を解散した時に、どれくらいのお金が残るかを表すものです。PBRが高いほど、株価が解散価値を上回る人気・期待を集めているとして割高とみなされるのです。なお、一般的にPBRは、1倍を超えると割高とみなされます。

このように、企業の財務状態に注目して分析する方法がファンダメンタルズ分析です。

ファンダメンタルズ分析のメリット

ファンダメンタルズ分析のメリット

ファンダメンタルズ分析の主なメリットについて、ここで2つ取り上げて解説します。

1.中長期の株価予想の精度が高い
ファンダメンタルズ分析は、企業の財務状況から株価を分析するものです。そのため、中長期の株価予想ではとても高い精度となります。中長期で株式投資を行いたいのであれば、ファンダメンタルズ分析は必須と言って良いでしょう。

2.瞬間的な判断力を必要としない
ファンダメンタルズ分析は、短期で株式を売買するものではありません。テクニカル分析のように瞬間的な判断力は必要とせず、じっくり考えて投資できることはメリットと言えます。

ファンダメンタルズ分析のデメリット

ファンダメンタルズ分析のデメリット

ファンダメンタルズ分析にはデメリットもあります。ここでは2つについて解説しますので、メリットと共に覚えておきましょう。

1.財務状況を読む能力が必要になる
ファンダメンタルズ分析をするには、企業の財務状況を読む能力が必要です。財務状況をしっかり把握するためにある程度の知識が必要になりますので、活用できるまで時間がかかります。テクニカル分析のように視覚的に把握できるものでない点は、デメリットとなる方もいるでしょう。

2.短期の売買には向かない
ファンダメンタルズ分析は中長期の株価を予想するもののため、デイトレードのような短期の売買には向きません。デイトレードやスキャルピングなどで利益を出したい方が活用できない点は、デメリットの1つと言えます。

まとめ

まとめ

株価について詳しくご説明しました。当たり前のようによく耳にする株価ですが、理解を深めることで株式投資での勝率を上げられます。株価が割安か割高なのかを把握するためには、ある程度の経験と知識が必要です。ここでご紹介したテクニカル分析やファンダメンタルズ分析を、ぜひ有効に活用してみてください。

監修者プロフィール

渡辺 智(ワタナベ サトシ)
FP1級、証券アナリスト。

<プロフィール>
大学商学部卒業後は某メガバンクに11年勤務し、リテール営業やプライベートバンカー業務、資産運用コンサルティング(投資信託、保険、債券、外貨預金など)、融資関係業務(アパートローン、中小企業融資)などを経験。銀行在籍中、2度の最優秀営業賞を受賞。銀行在籍時の金融商品販売額は500億円を超え、3000人を超える顧客に金融商品営業を行う。その後、外資系保険会社でコンサルティング営業として従事し、現在は業務経験・知識を活かして金融ライターとして独立。難しい金融をわかりやすく伝えることをモットーに活動中。