ブルベアって何?

投資で登場する「ブルベア」とはどのような商品なのか、活用法やメリット・デメリットなどについて詳しく解説します。

ブルベアって何?

ブルベアとは?

ブルベアとは?

ブルベアは、相場の強気・弱気を示して使われます。

ブル:
上向きの相場が牛の角を下から上へ突き上げて攻撃する姿を連想させることから、強気の相場や上昇相場を意味する言葉です。

ベア:
下向きの相場は熊が爪を上から下へ振り下ろして攻撃することを連想させることから、弱気の相場や下落相場を意味しています。

「ブル型」「ベア型」という言葉が投資信託の商品名に使われ、2倍、3倍、4.3倍など、対象となる指標の何倍の値動きを目指すのかが記載されています。

ブルベアファンドとは?

ブルベアファンドとは?

一般的にブルベアファンドとは、先物・オプション取引等を利用し、指数の動きに対して同じ方向(ブル型ファンド)、または逆の方向(ベア型ファンド)への連動を目指す運用を行うファンドのことを言います。

例えば、「日本株4.3倍ブル」という商品名の投資信託であれば、日経225やTOPIXなどのベンチマークの値動きの4.3倍の値動きになることを意味します。これは、上昇が見込まれる相場において、さらなる利益を得たい場合に先物・オプション取引などを利用して、レバレッジを効かせます。そして、その値動きを増幅させ、より高いリターンを狙います。

一方、「日本株3倍ベア」という商品名の投資信託であれば、下落相場において、その下落幅を3倍に増幅させ、相場の下落を利益に変えることができる商品ということになります。ベア型の商品は、主に下落が見込まれる相場でも利益を得るために活用され、信用取引の「空売り」と同様の効果が得られます。

ブルベアファンドとは、「ブル型ファンド」と「ベア型ファンド」の2種類の総称のことを言います。日本株だけでなく米国株や先進国株の指標、新興国株など、様々な種類のブルベアファンドがあります。

ブルベアファンドのメリット

ブルベアファンドのメリット

ブルベアファンドのメリットとデメリットについても理解しておきましょう。まずは、メリットから紹介します。

相場の上昇・下落を利用して、大きな利益を狙える

ブルベアファンドのメリットの1つに、相場の上昇・下落を利用して、大きな利益を狙える可能性があることが挙げられます。相場の値動きを2倍、3倍と大きく増幅することができるため、上昇が見込める相場ではブル型ファンドを利用することでより多くの利益を手に入れることが可能となります。

反対に下落が予想される相場でも、ベア型を利用して値下がりの2倍、3倍といった利益を得ることができます。その場合には、日本株のブル型のファンドを購入することで、株価の上昇幅を2倍、3倍と増幅することができ、さらなる利益を得られるでしょう。

仮に相場が5%上昇した場合、2倍のブル型ならば10%の利益を得ることができ、3倍ならば15%の利益を得ることができます。反対に、下落相場ではなかなか利益を得ることは難しいものですが、ベア型ファンドを利用することで下落相場でも利益を得ることが可能です。

また、政府が景気抑制の政策を発表した場合には、株価が下落しやすい局面になります。5%値下がりすれば2倍のベア型なら10%の利益、3倍であれば15%の利益を得ることが可能となります(ただし、投資の成果が基準価額の値動きに対してレバレッジの倍率とイコールになるのは前日と比較した場合のみになります)。
もしも、1年投資した場合に株価指数が10%上昇していたとして、3倍のブル型ファンドの投資成果は30%上昇しているというわけではありません。

例えば、下記のような株価指数の値動きと、レバレッジ2倍のブル型ファンドに投資した場合の値動きを比較してみましょう。基準日が100とした場合、株価指数とブル型ファンドの基準価額は下記のようになります。

相場の上昇・下落を利用して、大きな利益を狙える

このように日々変動していると、レバレッジの効果は単に株価指数に対しての値動きの倍率分が値上がり、値下がりするわけではありません。そのため、1年後に株価指数が10%上昇していたとしても、レバレッジの倍率分だけブル型ファンドが上昇しているというわけではありません。この点は注意が必要と言えるでしょう。

投資信託は、長期保有で複利効果を活かして利益を得るのに適している商品です。ただし、ブルベアファンドは上昇が期待できる相場、下落が予想される相場など、比較的短期な取引で活躍します。
なお、上昇・下落のどちらでも予想に反した値動きになった場合には、損失も2倍・3倍と大きくなることもあるため、レバレッジのデメリットをよく理解した上で投資を行いましょう。

リスクヘッジ目的での活用も可能

また、ベア型ファンドは利益を狙う場合のみでなく、リスクヘッジ目的での活用も可能です。日経225やTOPIXといった日本株の投資信託を保有していて、一時的に大きな価格の下落を避けたい場合なども、ベア型ファンドを買うことで下落を抑えられることがあります。

日本株の相場が下落した際、日本株のベア型ファンドは真逆の値動きをしますので、相場の下落のリスクを抑えることができます。信用取引でも同様の目的で「空売り」を使うことがありますが、投資信託でもベア型ファンドと組み合わせることでリスクを抑えることができます。

ETFのブルベアファンドは短期的な価格の上昇・下落を利用した取引が可能

また、ETFのブルベアファンドも存在します。ETFとは常に変動する日経平均株価などの市場価格へ、リアルタイムに投資できる上場株式のような取引が可能な上場投資信託です。投資信託の基準価格はその日の申し込みが終わってから決定しますので、自分が取引したい価格と乖離(かいり)が発生します。
しかし、ETFは上場株式のようにリアルタイムに投資することが可能です。ETFのブルベアファンドはETFと同様、リアルタイムな値動きをさらに増幅して、短期的な価格の上昇・下落を利用した取引ができます。

追加証拠金は発生しない

信用取引でもレバレッジを効かせた取引が可能ですが、信用取引では損失が一定のラインを下回ると追加証拠金が必要となります。元本以上の損失が発生する可能性がありますが、ブルベアファンドなら追加証拠金は発生しません。そのため、損失は元本の範囲までに限定されるので、元本以上に損失が発生しないこともメリットと言えるでしょう。

ブルベアファンドのデメリット

ブルベアファンドのデメリット

ボックス相場になると、利益を得ることが難しい

ブルベアファンドのデメリットは、相場が一定の範囲内で上下を繰り返すボックス相場になると、上にも下にも大きく動かないため利益を得ることが難しくなる点です。
また、レバレッジを掛けることで、上昇した場合は価格がさらに上昇し大きなメリットとなりますが、下落した場合は振れ幅を増幅しているため、上下を繰り返しているうちにブルベアファンド共に基準価額が下がってしまうことがあります。

例えば、基準日の株価指数を100として、毎日5%ずつ価格の上昇を繰り返していくとこのような下記のようになります。

ボックス相場になると、利益を得ることが難しい

このように、ブル型もベア型も基準価額が下がる傾向にあります。

長期的な保有には向いていない

ブル型ファンドの基準価額が、「株価指数のレバレッジの倍率分になるわけではない」ということを先に解説しました。同様の理由で、同じ騰落率(とうらくりつ)を毎日繰り返していると、ブル型もベア型も基準価額がマイナスになっていく傾向が見られます。
そのため、このような相場の上下を繰り返すような局面では向いておらず、長期的な保有には向いていないと言えるでしょう。短期的な上昇局面、下落の局面に適していることから、短期的な相場の上昇局面や下落の局面を見極める分析が必要となります。

また、レバレッジで予想に反した値動きになると、大きな損失が発生する可能性もあります。ブルベアファンドは購入手数料が高いことが多く、手数料の負担が大きくなってしまうため、長期投資には不向きと言えます。
長期的に景気の拡大が続きそうな局面などを除き、一時的な上昇や下落が予想される局面、もしくは、保有している投資信託の商品の下落を抑えたいなどの一時的な局面でのみ利用することが望ましいでしょう。

ブルベアはハイリスクな商品

基本的に、レバレッジを効かせた取引はハイリスク・ハイリターンです。そのため、相場の下落に備えるような目的でベア型ファンドを用いる場合を除いて、初心者にはあまり向いていないと言えます。
また、先述したように長期的に相場の下落を繰り返していると、基準価額がマイナスしやすくなることも初心者には向かない点です。特に、レバレッジが大きくなるほどリスクも大きくなりますので、初心者のうちに投資するのであれば、少額に留めておき様子を見てみるのが良いでしょう。

まとめ

まとめ

ブルベアファンドを上手に活用すれば、投資の利益をさらに大きくすることができます。また、相場の下落局面でも利益を狙っていくことも可能であり、投資の幅を広げてくれる魅力のある商品です。しかし、リスクも大きく、値動きや仕組みがよくわからない初心者のうちは避けた方が良いでしょう。長期保有には不向きなことも、初心者に向かない理由の1つです。

また、単に相場の変動の2倍・3倍、もしくはその逆の基準価額になるわけではないことは、よく勘違いしてしまいがちな点ですので注意が必要です。相場にはリーマンショックで相場が大暴落した後、あるいはコロナショックで一時的に急落した際など、その後の回復が期待できるような局面があります。そんなタイミングでブル型ファンドを利用すれば、大きな利益を得ることもできるでしょう。
また、金融緩和や財政支出の拡大など景気拡大のための経済政策が発表された場合等にも、相場が上昇しやすくなります。そのため、政府の政策から株価の動きを読んで投資してみるのも良いでしょう。

反対に金融の引き締め、あるいは財政支出の縮小や増税等の政策が発表された場合には、株価が下落することが予想されます。こうしたタイミングでベア型ファンドを使い、利益を狙ってみることもできます。経済ニュースから相場を読み、ブルベアファンドを利用するなど投資の楽しみを広げてみるのも良いかもしれません。

また、国内の株価の指標だけでなく海外の株価の指標にも投資することができます。そのため、各国の経済政策や出来事などから、上昇・下落する局面を分析して見極めてみるのも良いでしょう。あるいはETFを利用することで、タイムリーに値動きを見ながら利益を狙っていくこともできます。投資に慣れ、相場の動きを経験してくれば、このようにブルベア型のファンドを利用してみると投資をさらに楽しむことができるはずです。

ここで取り上げた内容を参考に、ブルベアファンドについて理解を深めてみてください。その上で、相場の上昇・下落局面を狙ってみたり、一時的な相場の下落の保険として使ってみたり、それぞれの目的に応じてブルベアファンドを上手に活用すると良いでしょう。

監修者プロフィール

小川 洋平(オガワ ヨウヘイ)

日本FP協会認定 CFP®、合同会社clientsbenefit 代表、FP相談ねっと認定FP、SG中越代表
<プロフィール>
25歳でお金の知識・営業経験ゼロから保険営業の世界に飛び込み6年半従事。2年目に将来の資産形成のため金融知識が必要なことに気が付き、FPの勉強を始めて金融・経済の知識を学ぶ。その後、保険に限らずあらゆるお金の面でクライアントにとってベストな提案をしたいという想いで、商品販売ではなく相談業務を開始。2013年より資産形成の考え方に関するセミナーを自主開催。その他、大手金融機関からの委託により実施。現在は小規模事業者の年金や資産運用のサポートを中心に相談・経営支援の業務に携わり、確定拠出年金など起業家の将来の資産形成と経営のサポートを行っている。投資信託や資産形成の分野を得意としている。