グロース株・バリュー株とは?

株式投資の運用スタイルにグロース株投資とバリュー株投資があります。それぞれのメリット・デメリット、違いなどを解説します。

グロース株・バリュー株とは?

グロース株とは

売上や利益などの成長率が高く、将来大きな株価上昇が期待できそうな銘柄がグロース株です。主に、業績急拡大企業や革新的なサービス・商品を提供している会社が該当します。

このような会社の特徴として、売上高や経常利益が年々増えていて、これからも成長が期待できると言う点が挙げられるでしょう。高い技術力やノウハウを持っていたり、社会的にニーズの高い商品やサービスを扱っていたりと、今後成長が期待できる小型株や業界でも特に勢いがある新興企業等が該当します。
こういった銘柄の場合、成長分野への先行投資により損益赤字になることも少なくありません。損益計算書が赤字であっても、決算短信から赤字の理由や今後の見通し等の情報を読み判断しましょう。

グロース株を探す際の指標

グロース株を探す際には、ROEや売上高成長率などの指標を分析したり、売上高成長率という指標も使ったりします。2つの指標について解説します。

  • ROEや売上高成長率などの指標
    ROEとは「株主資本利益率」または「自己資本利益率」のことです。自己資本に対してどれだけの利益が生み出されたかを示し、どれだけ資本を活用して利益を生み出しているかという財務分析において使われる指標です。
    ROEは当期純利益を自己資本で割り、「%」で表します。例えば当期純利益が10億円で、自己資本が20億円だった場合の計算は下記の通りです。

    [計算式]10億円(当期純利益)÷自己資本(20億円)=50%

    一般的にROEが10%を上回っている企業は、高い売上があり成長性もあると考えられています。
  • 売上高成長率という指標
    また、売上高成長率という指標も使います。売上高成長率とは企業の売上高の伸び率のことです。売上高の伸び率が高い企業は、成長している企業であると考えられるでしょう。売上高成長率は、当期の売上高と前期の売上高との差を前期の売上高で割って算出します。例えば当期の売上高が20億円で、前期の売上高が15億円だった場合は下記のような計算です。

    [計算式](20億円(当期売上高)-15億円(前期売上高))÷15億円(前期売上高)=33.33%

    グロース株を探すうえでは、継続して成長しているかどうかを見極めることが大切です。売上高成長率は単年だけでなく、3~5年程度のスパンで見て判断するのが一般的です。同業他社と比較し、その企業がどの程度成長しているのかを比較することができます。

グロース株への投資まとめ

グロース株とは市場平均よりも価格が高く、成長している株のことです。急成長しているため、キャピタルゲインを増加させる可能性があるでしょう。一方、配当金を出さない場合が多いことや、価格が急変動する可能性があるといったデメリットも挙げられます。グロース株を探す際にはROEや売上高成長率という財務指標を参考に、その企業の技術力や業界の動向などもチェックしながら探してみましょう。

バリュー株とは

バリュー株とは

バリュー株は、別名「割安株」とも呼ばれ、利益や資産から算出される企業価値が株価と比較して割安になっている企業のこと。あまり成長が期待されていなかったり、知名度が低いため投資家が注目せず割安になっていたりすることが少なくありません。本来の価値よりも低い株価と考えられる銘柄のため、適正な価格に戻ろうとする動きを利用して利益を狙います。

バリュー株の選定にはPER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)を算出して探し出すことが多く、銘柄選定とタイミングがポイントです。

PERとは、株価を1株あたりの純利益(EPS)で割った数値のことです。例えば株価が1,000円で1株あたりの純利益が100円だった場合は、下記の計算式のようになります。

[計算式]1,000円(株価)÷100円(1株あたりの純利益)=10倍

一般的にPERの平均は15倍程度と言われていて、15倍を下回るようならば割安と言えるため、この計算例の10倍はかなり割安ということになります。

これに対してPBRとは、株価を1株あたりの純資産(BPS)で割った数値のことです。例えば株価が1,000円で1株あたりの純資産が800円だった場合、計算式は以下のようになります。

計算式:1,000円(株価)÷800円(1株あたりの純利益)=1.25倍

一般的にPBRが1未満の場合に株式は割安だと言われますので、この場合は割高ということになるでしょう。このように計算し、これらの数値を元に割安・割高を判断します。グロース株の成長性を見極めるより、バリュー株を探す方が易しいとも言えるでしょう。

グロース株のメリット/デメリット

グロース株のメリット/デメリット

グロース株のメリット

グロース株のメリットは企業が大きく成長することを期待でき、長期的に10倍や100倍など大きなキャピタルゲインを狙えることです。グロース株をうまく見つけることができれば、このような大きな成長も期待できます。長期保有で大きな利益を狙うことができ、短期的な価格の上下をあまり気にする必要もありません。また、短期的にも今後企業にとって大きな成長が見込めるような発表があった際、決算内容が良かった場合など短期間でも株価が2倍、3倍という大きな利益になることもあります。

グロース株のデメリット

  • 利益を得るのに時間がかかる場合がある
    これから利益が期待できる反面、グロース株は割高になっていることが多く、本来の株価に戻ろうとする動きがあると下落しやすいことも注意が必要です。そのため、利益が出るまでに時間がかかることがあります。また、業績の低迷などの場合には株価が急落する可能性もあり、乱高下することが特徴です。

  • 株価が割高なことが多い
    グロース株は投資家からの人気が集中するため、株価が割高なことが多くなっています。今後も上昇のトレンドが続くのか、業界の動向はどうかなど総合的な判断が必要です。また、本来の株価に戻ろうとする理由で株価が下落した場合には、また回復するまで時間がかかることがあります。

  • 配当が少ない(支払われない)ことが多い
    配当を抑えて事業への投資を行っていることも多く、配当が少ない、もしくは支払われない場合も少なくありません。

ROEと売上高成長率といった財務指標を利用することもできますが、グロース投資はその企業の技術力など決算書には表れない定性的な情報に着目することが非常に重要です。また、乱高下しやすいことから初心者にはあまり向かないとも言えます。

バリュー株のメリット/デメリット

バリュー株のメリット/デメリット

バリュー株のメリット

株価のボラティリティが低いため、グロース株と比較して低リスクです。バリュー株は利益や純資産に対し株価が元々割安となっていますので、株価の下落率は低く、大きく下落することは考えにくいです。割安な水準銘柄を手に入れることで、中長期的な利益を狙っていくことができます。

また、バリュー株は本来の価値に対し株価が安くなっているため配当利回りも高く、株主優待も割安な投資額で得ることができるのもメリットです。グロース株とは違って配当も少ないわけではなく、それなりに期待できるでしょう。魅力的な株主優待がある企業の株価が割安と判断したら、安くこれらの権利を手に入れることもできます。

バリュー株のデメリット

グロース株が何倍にもなることがあるのに対し、バリュー株はそこまで大きく値上がりすることはありません。長期保有する場合についてはグロース株が10倍、100倍と成長することもあるため、長期的にリターンを得たい場合はバリュー株より長期株の方が適しているでしょう。
また、中長期的な投資が前提であるため、投資側の資金の流動性が乏しくなります。株価が割安になっている理由がネガティブな場合もあり、割安だからと言って買った方が良いということではありません。なぜ割安なのかを分析し、業界の動向などから将来性を見極めて今後注目されそうな銘柄に絞って投資しましょう。

グロース株ほど定性的な情報が必要となるわけではありませんが、バリュー株の投資でも定性的な情報は必要になります。そのため、単に割安だからということで投資しないように注意してください。

グロース株とバリュー株の違い

グロース株とバリュー株の違い

グロース株は将来の大きな成長に期待し、株価も企業価値に比べ高い傾向にあります。これに対してバリュー株は、企業価値に対して株価が割安ですが、あまり大きな成長は期待できないという点が大きな違いです。同じように思えるこの二つの投資のスタイルですが、このように性質が大きく異なります。

また、グロース株の方が値動きは激しく、バリュー株の方が値動きは小さいという点も特徴です。投資を考える期間や資金、投資のスタンスによってどちらが適しているのかは変わります。どちらかと言えば、バリュー株を選ぶ方が易しいと言えるでしょう。しかし、どちらにしても決算書の内容だけでなく、定性的な情報についても確認しながら銘柄を選ぶことが大切です。

まとめ

まとめ

ここでは、グロース株・バリュー株について詳しく解説しました。どちらも価格の上昇が見込める株式です。しかし、割高な株でも将来の成長に期待して投資をするのか、さほど成長は期待できなくても割安な株で本来の株価に戻る際の値上がりに期待するのかといった違いがあります。どちらを選ぶかは、投資の目的や自身のスタンスによってよく検討してください。

また、グロース株やバリュー株の銘柄をファンドマネージャーが選定し、投資できる投資信託の商品もあります。一つの銘柄だけでなく複数の銘柄に分散投資したいという方にとって、グロース株やバリュー株の財務内容、業界の情報や技術力といった定性的な情報を一つ一つ確認していくのは多大な時間と労力がかかる作業です。
また、財務分析の知識が必要になり、初・中級者にはなかなか難しいことでしょう。そうした方はこういった株式を選定して投資する投資信託やETFを購入することで、これらの株に分散投資することが可能です。初心者でグロース投資やバリュー投資を行ってみたいという方は、まず投資信託やETFでリスク分散しながら始めてみるのも良いのではないでしょうか。

特にグロース株は長期的に大きな成長が期待できる銘柄に複数分散投資しながら、グロース株の成長を自身の資産形成に取り込むことができます。個別銘柄を選定して選ぶのも投資の面白さの一つですし、資産形成や長期の資産運用のポートフォリオに組み入れるのも良いかもしれません。グロース株・バリュー株とはどういうものか、どのような特徴があるかを理解し、自身の目的に合わせた投資に活用してください。

監修者プロフィール

小川 洋平(オガワ ヨウヘイ)
日本FP協会認定 CFP®、合同会社clientsbenefit 代表、FP相談ねっと認定FP、SG中越代表

<プロフィール>
25歳でお金の知識・営業経験ゼロから保険営業の世界に飛び込み6年半従事。2年目に将来の資産形成のため金融知識が必要なことに気が付き、FPの勉強を始めて金融・経済の知識を学ぶ。その後、保険に限らずあらゆるお金の面でクライアントにとってベストな提案をしたいという想いで、商品販売ではなく相談業務を開始。2013年より資産形成の考え方に関するセミナーを自主開催。その他、大手金融機関からの委託により実施。現在は小規模事業者の年金や資産運用のサポートを中心に相談・経営支援の業務に携わり、確定拠出年金など起業家の将来の資産形成と経営のサポートを行っている。投資信託や資産形成の分野を得意としている。