株の銘柄の選び方を知りたい!

株式投資を始める際には、銘柄選びに迷うことがあるでしょう。本記事では株式の銘柄の選び方について解説します。

株の銘柄の選び方を知りたい!

株の銘柄はどのように決めればよい?

株の銘柄はどのように決めればよい?

日本の株式市場には、約3,800社(2022年4月30日現在)が上場しています。その中から株式を選ぶには、自分に合ったスタイルを見つけることが重要です。株式の選び方は大きく分けると、「身近な企業を選ぶこと」と「業績や株価で選ぶこと」の2つがあります。

身近な企業を選ぶというのは、多少なりとも知っている会社や親しみのある会社の株式を選ぶ方法です。自分が愛用している商品を開発している企業や、働いている業界の企業の株式などが挙げられるでしょう。その企業や商品の特性、市場での人気度を把握しやすく、流行り廃りについても消費者の立場から敏感に判断できます。

また、その企業のビジネスモデルも理解しやすいものです。例えば、日頃から愛用している化粧品の会社が、多くのユーザーの悩みを解消するような画期的な新商品の開発を公表したとします。こうした場合ユーザー目線から、その商品の人気が出るかどうかが感覚的に分かりやすいでしょう。また、同じ業界にいればその会社の位置づけや業界の動向も察知しやすく、何かの情報が公表された場合に業績への影響を判断しやすいでしょう。

株式のメリットで選ぶ

株式のメリットで選ぶ

株式を保有しているメリットには、配当および株主優待があります。

配当

会社が年間で出した利益の一部を、株主に還元する仕組みが「配当」です。会社は株式を発行することで投資家から資金を集め、その資金を元手に事業を拡大させます。配当は会社が儲かった際にその利益の一部を、お金を出してくれた株主に渡すという意味で支払われる株主の利益です。

一般的には年1~2回支払われますが、企業の業績や経営判断によって支払われない場合もあります。配当も株式投資によって得られる大きな利益の1つで、配当が高い株式(高配当株)を狙うのも選び方も1つです。

配当で選ぶ場合、配当利回りが高い銘柄を選ぶことを重視しても良いでしょう。ただし、特別配当や記念配当等があるために高い配当となっている可能性もあるので注意が必要です。また、株式は毎年配当を出していること、配当が毎年増えていること(連続増配株)、配当性向(はいとうせいこう)が高いなどの観点から選ぶと良いでしょう。

株主優待

株主優待とは、企業が自社の株を購入・保有している株主に対して、配当金とは別に自社商品やサービスなどを贈る制度のことを言います。株主優待は、株主に対して自社サービスや商品を知ってもらうこと、また、株主に自社の株式を長期的に保有してもらうことを目的として、各企業において導入しています。これら2つが、株式を保有することで得られる利益です。

そして、企業が成長することで株価が上昇し、株式を売却した際に購入した価格より高い価格で売却できれば、売却益が発生します。企業によっては配当や株主優待を抑え、その分を事業に再投資することで会社の成長速度を速めるために活用している場合もあります。配当や株主優待が無くとも、将来的に大きな売却益を得られることもありますので、配当や株主優待のみでなく総合的に判断すると良いでしょう。

株主優待には、アミューズメントパークの入場券や鉄道会社の回数券・全線パスなど魅力的なものが数多くあります。まずは、各企業が出している株式優待の内容を調べ、自分の欲しい物を受け取れる企業の株式をピックアップしましょう。ただし、権利確定日に株主名簿に名前が記載されていないと株主優待を受け取ることができません。株式を購入するタイミング等にも注意が必要です。

企業の業績や株価で選ぶ

企業の業績や株価で選ぶ

株式投資の基本は「安く買って高く売る」ことです。そのため、割安な株式や今後成長が見込める株式を探す選び方も知っておきましょう。企業の業績は、下記のような財務指標から見ていきます。

・EPS
EPS=当期純利益(税引後)÷発行済株式総数
株主が投資した株式1株あたりで、どの程度の利益を出すことができているのかを表す指標です。1株あたりの利益の高さを読み解くことができます。

・PER
PER=株価÷1株あたりの当期純利益(EPS)
1株あたり、純利益の何倍買われているかを表す指標のことです。利益に対して株価が割高か割安かを判断する判断材料となります。一般的に、15倍未満が割安とされています。

・PBR
PBR=株価÷1株あたりの純資産(BPS)
会社の純資産に対し、株価が何倍買われているかを表す指標です。純資産に対して株価が割高かどうかを示す数値となります。一般的に、1倍未満が割安とされています。

・ROE
ROE=当期純利益(税引後)÷自己資本×100
株主による資金が、どれだけ企業の利益につながったのかを表す指標です。いかに資本を有効活用し、利益を出しているかが分かります。

・BPS
BPS(円)=株主資本÷発行済株式数
1株に対して、純資産がどれくらいあるかを表す指標のことです。会社の安全性を表す指標の1つとなります。

・配当利回り
配当利回り(%)= 1株あたりの配当金額÷株価×100
株価に対して何パーセントの配当を得られるのかを示す指標です。

・配当性向
配当性向(%)= 1株あたりの配当金額÷1株あたりの純利益×100
利益のうち、どの程度が株主に還元されているかを示す数値です。

これらの指標を参考にすることで、成長株(グロース株)や割安株(バリュー株)を選ぶことができます。

株式を選ぶポイント

株式を選ぶポイント

株式を選ぶためには、企業を知るために市場動向を勉強したり、投資知識を学んだりすることが大切です。また、決算書の読み方を知っていると投資判断がしやすくなるでしょう。

貸借対照表

決算書のうち、貸借対照表(バランスシート)からは企業の資産・資本・負債がまとめてあるため、財務状況が分かります。その会社にどの程度現預金等の資産があり、どの程度返済する借入金や支払うべき売掛金があるのかなどが記載されており、ここから会社の安全性等を判断することが可能です。特に、流動比率という指標は流動資産と流動負債の割合のことを示し、直近の会社の安全性を読み解くのに重要な指標と言えます。

流動比率

流動比率とは1年以内に現金化できる資産のことで、現預金や棚卸資産、売掛金などがこれにあたります。それに対し、1年以内に支払う必要がある負債を流動負債と言い、1年以内に返済しなければならない借入金や買掛金などがあります。この比率が100%を下回ると、1年以内に支払うべき負債に対して現金化できる資産が少ないということになり、危険性が高いと言えます。特に、中小の株式を購入する際には注意が必要なポイントです。

【計算式】流動比率=流動資産÷流動負債

損益計算書

損益計算書(プロフィット・アンド・ロス)には売上高や利益、損失が記載されており、その会社の売上や掛かった経費、利益がいくらなのかが分かります。そのため会社の利益率や利益、損失の理由を読み解くことが可能です。当期純利益は赤字(純損失)でも、本業の儲けである営業利益が黒字で、一時的な損失が理由で赤字である場合もあります。こうした際は赤字が一時的なものと考えられるため、さほど気にしなくても良いでしょう。また、通年で損益計算書を比較することにより、売上高の成長やその会社がどのように成長してきたかといった情報を読み解くことができます。

キャッシュフロー計算書

キャッシュフロー計算書からは、企業の現金の増減が分かります。キャッシュフローは営業活動によるキャッシュフロー、財務活動によるキャッシュフロー、投資活動によるキャッシュフローの3つに分けられます。中でも営業活動によるキャッシュフローはもっとも重要な指標で、その会社の本業の収入と支出の差額のことです。つまり、営業活動によるキャッシュフローがマイナスになっているということは、本業でお金が減っていってしまっていることを表します。

財務活動によるキャッシュフロー

これに対して、財務活動によるキャッシュフローは金融機関から借入を行ったり、投資家から資金調達したりした場合にプラスになり、返済した場合などはマイナスになります。財務活動によるキャッシュフローはプラスでもマイナスでも、業績に対し良いて影響を与えるのかどうかは判断しにくいものです。プラスしていて業績も良い場合には今後の成長のために資金調達を行っているとも読み取れますが、ここだけで判断することは難しいでしょう。

投資活動によるキャッシュフロー

投資活動によるキャッシュフローは、設備投資を行ったり貸付を行ったりした場合にマイナスとなり、反対に設備などを売却した場合などにはプラスになります。投資活動によるキャッシュフローは、どちらかと言えば得られた利益により再投資し、さらなる利益を狙う際にマイナスしています。そのため、マイナスの方が企業の成長のために望ましい状態と言えるでしょう。

これらキャッシュフローの内容も確認しながら、損益計算書や貸借対照表等と照らし合わせて判断してください。企業のホームページにある「決算情報」や「IR情報」などの項目に掲載されているため、ぜひチェックしてみましょう。

ビジネスモデルや市場の動向を理解する

そして株式を選ぶうえでは、ビジネスモデルや市場の動向を理解することが大切です。現在は業績が好調でも、過去の動きがこの先も続くとは限りません。流行は必ず移り変わるもののため、今後もそれが続くかどうか情報を調べてみることも重要と言えます。特に中小の銘柄に多いことですが、値動きが激しい銘柄には注意が必要です。取引総量が少ない銘柄も、売買できないこともあるため気を付けましょう。

総合して考えると、自身が興味を持てる、情報を集めやすい身近な会社の銘柄を中心に、決算書のポイントを確認しながら銘柄を選んでみると良いでしょう。業界の動向を理解しやすく、決算書から財務状況を確認しながら投資できるため、自分に合った銘柄を選ぶことができるでしょう。

まとめ

まとめ

株式の銘柄は、「身近な企業を選ぶこと」、もしくは「業績や株価で選ぶこと」で考えると選びやすいものです。業績から判断するには財務指標の意味を理解すること、決算書を読むことが必要になります。そのため、多少の慣れが求められるでしょう。

しかし、決算書が読めるようになると、自分の勤務先や転職を考えている企業の決算書の内容も理解できるようになることもあります。働く企業の将来性を考えるために役立つこともあり、ビジネスの面でも役立つ場面が多いでしょう。また、市場の動向や世の中を読み解く感覚が育ちます。企業がどのように集客して利益を得ているか、収益構造も理解することができ、経営においてとても役立つことです。

株式投資は単に資産を増やすかどうかだけでなく、ビジネスに役立つ知識を身につけ、感覚を磨くためにも有効な方法となります。株式投資で得られる利益は、大金を投じなければさほど大きくはありません。しかし、もっと大きな価値を生み出す知識や感覚を身につけられる二次的な効果は、誰にとっても非常に大きなものでしょう。資産運用だけでなく、そうした意味でも株式投資を行う価値はあります。現在は小額でも株式投資を始められますので、ここで取り上げた内容を参考に、自分に合った銘柄を見つけてみてはいかがでしょうか。

監修者プロフィール

小川 洋平(オガワ ヨウヘイ)
日本FP協会認定 CFP®、合同会社clientsbenefit 代表、FP相談ねっと認定FP、SG中越代表

<プロフィール>
25歳でお金の知識・営業経験ゼロから保険営業の世界に飛び込み6年半従事。2年目に将来の資産形成のため金融知識が必要なことに気が付き、FPの勉強を始めて金融・経済の知識を学ぶ。その後、保険に限らずあらゆるお金の面でクライアントにとってベストな提案をしたいという想いで、商品販売ではなく相談業務を開始。2013年より資産形成の考え方に関するセミナーを自主開催。その他、大手金融機関からの委託により実施。現在は小規模事業者の年金や資産運用のサポートを中心に相談・経営支援の業務に携わり、確定拠出年金など起業家の将来の資産形成と経営のサポートを行っている。投資信託や資産形成の分野を得意としている。