成長株(グロース株)の見つけ方は?

株式投資において大きな成長が期待できる成長株(グロース株)。どのようにして見つけていけば良いか、本記事で解説します。

成長株(グロース株)の見つけ方は?

成長株(グロース株)とは

成長株(グロース株)とは

成長株(グロース株)

成長株(グロース株)とは、業績や株価が高くても今後さらに成長が見込める株式のことです。成長株と呼ばれるものには主に流行の業種や最先端の技術を持つ企業が多くあります。昨今では例えば、IT・ハイテク系企業の株式などが挙げられます。

割安株(バリュー株)

成長株に対し、業績などのファンダメンタルズに比べて株価が低い状態で放置されている株のことを割安株(バリュー株)と言います。

成長株と割安株は混同されがちですが、成長株は業績などファンダメンタルズに比べ割高な場合もあるため、割安株とは異なる点を覚えておいてください。どちらもこれから先の値上がりが期待できる銘柄ではありますが、性質が異なります。

成長株の見つけ方

成長株の見つけ方

成長株の見つけ方を5つ紹介していきます。

①ROEと売上高成長率を参考にする

ROE(自己資本利益率)とは、企業の自己資本(株主資本)に対する当期純利益の割合を示す財務指標です。投資した資本に対してどれだけ利益を効率良く得られるかということを表す数値であり、株主から見て収益性を判断する重要な指標になります。なお、ROEの算出方法は以下の通りです。

【計算式】ROE(%)=当期純利益÷自己資本×100

ROEが高いほど自己資本に対する利益が大きいことを表します。
ただし、企業が事業の元手にするのは自己資本だけでなく借入(他人資本)もあるため、単にROEだけで資本を効率的に使えているか否かは判断できません。そのため、財務レバレッジにも注目しながら検討する必要があります。

財務レバレッジは、総資本を自己資本で割った数値です。財務レバレッジが大きいほど、借入など自己資本ではなく他人の資本が大きいことになります。

【計算式】財務レバレッジ(倍) = 総資本 ÷ 自己資本

そうすると、自己資本のみを利用しているわけではないため、ROEが高くても実際には資本から得られる利益の効率が良くはないかもしれません。こうしたことから、ROEと同時に考えることが必要でしょう。

売上高成長率とは企業の売上高の伸び率のことで、当期の売上高が前年に対しどの程度成長しているかを示す数値です。過去の売上高成長率の平均から平均的にどの程度成長しているのかをもとに今後の成長を予測します。

【計算式】売上高成長率(%)=(当期売上高-前期売上高)÷前期売上高

売上高成長率が過去継続的に成長しているようであれば、今後も成長が期待できると考えられます。

②中型・小型成長株を狙う

②中型・小型成長株を狙う

成長株の見つけ方の2点目は、中型・小型成長株を狙うことです。

すでに大企業となった時価総額の高い成長株は、以降の伸びしろが小さく、小型株のように10倍・100倍という株価の上昇は見込めません。これ対して、中小株はこれから大きな成長を遂げることもあり、株価が10倍・100倍になることもあります。中小株であるか否かは、時価総額によって以下のように判断します。

・大型株:時価総額3,000億円以上
・中型株:時価総額500億円以上、3,000億円未満
・小型株:時価総額500億円未満

ただし、マーケットが期待するような成長ができなかった場合、株価が大きく下落する可能性もあるので注意が必要です。また、中小株は損益赤字になりやすいと言えますが、赤字だからといって必ずしもマイナスではありません。重要なことはなぜ赤字になっているか、その理由をしっかり読み解くことです。

例えば、単に売上不振で赤字になってしまっている場合もあれば、設備投資していたり宣伝広告費に大きく投資していたり、今後のさらなる成長のために赤字になっている可能性もあります。そのため、損益計算書から過去の数字と比較して何の影響で赤字になっているのか要因を確認したり、決算情報にある企業のコメントからその理由を確認したりすることが重要です。

③EPSに注目

③EPSに注目

成長株の見つけ方の3点目は、EPSに注目することです。

EPS(1株当たり純利益)を確認し、高ければ利益分を次の投資に回せることも考えられます。利益が大きいほど、利益剰余金で積極的な投資に回しやすいでしょう。EPSが高いと今後の成長も見込めるため、多くの投資家が集まり株価が上りやすいと考えられます。なお、EPSの算出方法は下記の通りです。

【計算式】EPS(1株当たりの利益)=当期純利益÷発行済株式総数

このように、EPSによっても成長を予測することができます。

④株価が割高な企業に注目

成長株の見つけ方の4点目は、株価が割高な企業に注目することです。

成長株を保有する投資家は、現時点の企業価値よりも将来的に生み出される利益に期待しており、株価が割高になりやすい傾向があります。株価の割高・割安を判断する指標が「PER(株価収益率)」や「PBR(株価純資産倍率)」といったものです。

・PER(株価収益率)
PERは1株当たりの利益に対し、株価がその何倍になっているかを表します。そして、PERが高いと割高ということになります。

・PBR(株価純資産倍率)
これに対してPBRは、1株当たりの純資産に対し株価が何倍になっているかを表すものです。PERと同じく、PBRが高いほど割高ということになります。

PERとPBRの計算式
【計算式】PER(倍)=株価÷1株当たり利益(EPS)
【計算式】PBR(倍)=株価÷BPS(1株当たり純資産)

PERは通常10倍~15倍、PBRは1倍が適正とされていますが、どの程度が適正かを判断するのは難しい場合があります。

⑤配当を支払っていない

⑤配当を支払っていない

5点目、最後の成長株の見つけ方は、配当を支払っていないことです。

成長する企業では配当を支払わず、その分を会社の成長のために充てている場合もあります。このような企業でインカムゲインは期待できませんが、一方で会社の成長速度が大きいことも考えられるでしょう。株価が大きく値上がりすれば大きな利益を得ることができますので、こういった企業も狙い目とも言えるでしょう。

このように、成長株を見つける方法は様々です。いずれも決算情報から財務指標等を読み、会社の実情を把握することも求められますので、初心者には少しハードルが高いかもしれません。

成長株に分散投資する

成長株に分散投資する

個別株から成長株を見つけることはなかなか難しく、また、中小株は大型株に比べて損失となる可能性も高くなります。しかし、投資信託を活用して分散投資すれば、リスクを分散しながら比較的安定して成長株に投資できます。

投資信託は、投資のプロであるファンドマネージャーが投資家から集めた資金を複数の株式や債券等の資産に分散投資し、その成果を投資家に返す金融商品です。投資信託を用いることで、投資家は手軽に分散投資を行えます。そのため、個別の株式に比べて低リスクで成長株に投資しながら、銘柄の選定も投資のプロに任せることが可能です。財務分析が難しい初心者でも、手軽に成長株に対して投資できるでしょう。

また、特定の業種に対して投資可能なテーマ型と呼ばれる投資信託もあります。例えば、IT・ハイテク系関連の銘柄に対して分散投資を行い、これらが今後も成長すれば大きな利益を得ることができます。

ただし、これらの投資信託は市場に連動するインデックス型等と比較して手数料が割高である傾向にあり、投資のプロが選んだからといって必ずしも大きく成長が期待できるわけではありません。また、テーマ型も特定業種が予想通りに成長すれば良いのですが、予想に反して業界全体が伸び悩んでいるようであれば思ったような結果を得ることはできません。手数料も高めな傾向にあり、思ったように成長しなければ手数料分がマイナスになるケースもあります。

投資信託の目論見書から、どのような理由で銘柄を選定しているか、ファンドマネージャーの考え方をしっかり理解してから選ぶことが必要です。そのためにも、上記でご紹介したような見つけ方を参考にしてみてください。場合によって、これら投資信託の商品を活用することも視野に入れてみると良いでしょう。

まとめ

まとめ

成長株の見つけ方について解説しました。これから大きく成長していく企業を見つけ、投資することは株式投資の醍醐味の1つです。成長株の中には中小のベンチャー企業もあり、その中から将来日本の大企業の1つへと成長する銘柄もあるかもしれません。

実際、現在世界の時価総額ランキングの上位を占めているグーグルやアップルなどGAFAMと呼ばれている企業は、いずれも20年ほど前にはまだベンチャー企業でした。株式投資では、このような銘柄に運よく出会える可能性もあります。

ただし、そうした銘柄を選ぶ際には大企業と比較して倒産や株価暴落の可能性も高いので、財務指標を読み判断することが重要です。財務指標を読めない、個別の銘柄に投資することが不安という方なら複数の成長株の銘柄に対して投資したり、これから成長が予想される業種に対して集中的に投資できたりする投資信託を選んでみるのも良いでしょう。その場合も成長株の選び方を理解しておけば、投資信託の運用方針を読んでファンドマネージャーの考え方を把握しやすいはずです。

株式投資は会社の価値を読み解く力、そして世の中の時流を読む力を養うのに最適なトレーニングとも言えます。単にお金を増やしたいという目的のみでなく、そんなビジネスにも役立つ能力を醸成するためにも活用してみてください。

監修者プロフィール

小川 洋平(オガワ ヨウヘイ)
日本FP協会認定 CFP®、合同会社clientsbenefit 代表、FP相談ねっと認定FP、SG中越代表

<プロフィール>
25歳でお金の知識・営業経験ゼロから保険営業の世界に飛び込み6年半従事。2年目に将来の資産形成のため金融知識が必要なことに気が付き、FPの勉強を始めて金融・経済の知識を学ぶ。その後、保険に限らずあらゆるお金の面でクライアントにとってベストな提案をしたいという想いで、商品販売ではなく相談業務を開始。2013年より資産形成の考え方に関するセミナーを自主開催。その他、大手金融機関からの委託により実施。現在は小規模事業者の年金や資産運用のサポートを中心に相談・経営支援の業務に携わり、確定拠出年金など起業家の将来の資産形成と経営のサポートを行っている。投資信託や資産形成の分野を得意としている。