米国株にかかる税金は?

日本株と比べて高い配当、値上がりの利益が期待されている米国株にかかる税金について解説します。

米国株にかかる税金は?

米国株にかかる税金とは

米国株にかかる税金とは

米国株の税金のかかり方は、概ね国内株と同じです。主に「譲渡益課税」と「配当課税」の2つが発生します。

「譲渡益課税」とは国内株・外国株を問わず、株式の売却によって得られた利益に対して発生する税金。利益の20.315%(所得税15.315%、住民税10%)の税率が課税されます。例えば、100万円を投資して10万円の利益が出た場合は以下のようになります。

【計算式】10万円×20.315%=20,315円

米国株の場合は米ドルで投資するため、日本円に換算した利益に対してこの税率がかかることになります。

そして、「配当課税」は株式で受けられる配当に対して発生する税金のことです。日本の株を買った場合にも発生しますが、外国株の配当金に対して発生する税金は、その国の税率でまず源泉徴収されます。さらに、日本国内でも国内課税所得を対象に源泉徴収されます。

国内株と米国株の税金で異なる点

国内株と米国株の税金で異なる点

米国株は米ドルで売買するため、為替により損益が変わります。売却時に購入時より円安ドル高になっていれば、日本円に換算した時よりも大きな利益を得ることが可能です。

仮に株価自体が下落していても、為替が円安になっていれば日本円に換算して利益となる場合もあります。反対に、株価自体は上昇していても円高ドル安になっていれば、日本円に換算した際に損失になっていることもあるでしょう。

なお、外貨預金などではこの時に為替差益が発生していると、通常なら雑所得として課税されます。ただし、外国株式の場合は為替も含め円に換えた際の利益に対して譲渡益を計算し課税するため、雑所得はかかりません。

また、米国株の売却益は米国内で課税されませんが、配当は米国内でも二重で課税されます。米国株の場合は利益に対して10%が課税され、さらに日本でも国内株と同様に20.315%が課税されるため、合計の課税率は30.315%です。国内株式なら20.315%のみのため、米国株の方が10%多く税金を払うことになります。

例えば、1ドル=100円として米ドルで1,000ドルの配当を得ていた場合には、米国で10%分の100ドルの税金を支払います。日本では米国で控除された100ドルの税金が引かれ、900ドルに対して20.315%が課税されます。

1ドル=100円だと9万円に対して20.315%の税金がかかるため18,283.5円となり、円未満切り捨てとなり18,283円です。1,000ドル=10万円分の配当を受け取っても米国で1万円分が課税され、日本国内では18,283円が課税されるため源泉徴収後には71,717円となります。

税制面から見ると、米国株は不利なように思われるかもしれません。しかし、確定申告により、米国内での課税の全部または一部を取り戻すことができる「外国税額控除」という制度もあります。これについては後ほど解説しますので、参考にしてください。

外国株式の確定申告について

外国株式の確定申告につい

外国株投資で発生する税金について、国内株式と同様に確定申告が必要なケースと不要なケースがあります。まず、株式を取引する口座についてご説明しましょう。

一般口座

一般口座とは、株式の取引によって生じた損益を自身で計算し、他の所得と一緒に確定申告を行うことで税金を支払う口座のことです。一般の投資家においては損益を計算する、あるいは確定申告する手間がかかるため、この口座を利用するケースは少ないかもしれません。

特定口座

特定口座は、損益を証券会社が計算してくれる口座です。証券会社が税金を源泉徴収してくれる口座と、源泉徴収を行わず自分で確定申告を行う口座があります。

外国株式を購入して源泉徴収ありの口座を選んだ場合は、配当を受け取る際に外国と国内で二重で課税されます。そのため、予想していた配当より大幅に少ない金額だと感じることがあるでしょう。

NISA口座

NISA口座は、年間120万円の投資の利益が最長5年間非課税になる制度のことです。投資において利益への課税は、パフォーマンスに大きな影響を与えます。有利な制度と言えるでしょう。

外国株式も購入でき、この利益に対しても非課税となります。ただしNISA制度は、日本国内における株式投資の利益(譲渡益、配当)が非課税になるものです。外国で発生する配当の税金については、課税される点に注意してください。

なお、2024年には現行制度から変更になり、現在のつみたてNISAに相当する制度の部分が最大20万円と、現在の一般NISAに相当する部分が最大102万円の二階建ての制度となります。つみたてNISAでは長期の資産形成に適しているとされる株式投資信託が対象となっており、外国株式も含め個別の株式は対象外です。そのため、2024年以降はNISAで購入できる外国株式について102万円が限度となります。

外国株式を購入する際は、このような口座を選択します。上記の中で確定申告が必要なのは普通口座を選んだ場合、そして、特定口座で源泉徴収なしの口座を選んで利益が発生しているケースです。また、損失が発生して翌年以降の税金に繰り越したい、あるいは外国株式において外国税額控除の適用を受けたい場合も確定申告が必要になります。

特定口座(源泉徴収あり)で取引を行っていれば、原則として確定申告は不要です。ただし、外国株式では外国税額控除を受けられるので、基本的には確定申告を前提としておいた方が良いでしょう。なお、NISAの非課税枠を利用している場合には確定申告は不要です。

外国税額控除について

外国税額控除について

外国株式の配当には、その国の税金と日本の税金が二重で課税されます。この二重課税を防ぐのが「外国税額控除」です。確定申告で控除申請すれば、外国で源泉徴収された税額を控除することができます。

対象となるのは、外国で株式投資の配当所得や不動産所得などで利益を得て納税を済ませた場合になります。日本に居住する個人や法人が対象となり、外国税額控除額の限度額は下記の計算式によって算出されます。

【計算式】
所得税の控除限度額=その年分の所得税の額×(その年分の国外所得金額/その年分の所得総額)

この計算式よりも支払った外国税額が少ない場合は、全額が確定申告によって還付を受けられることになります。外国株式で配当を受ける際には、利用したい制度と言えるでしょう。

確定申告の際に必要な書類

確定申告の際に必要な書類

税額控除を受ける場合や外国株への投資によって得られた利益、繰越控除を受けたい場合に確定申告を行う際は、下記のようなものが必要になります。

1.確定申告書
2.外国税額控除に関する明細書
3.外国所得税の課せられたことを証明する書類など
4.国外所得総額の計算に関する明細書
5.各年の控除限度額や納付した外国所得税を記載した書類(繰越控除をしている場合)

外国税額控除を受けるために必要な書類は、記載方法が複雑です。書き方や申告に不安がある場合は、税理士や最寄りの税務署に相談しながら記載しましょう。

個人事業主や住宅ローンの控除などを受けたことがある方なら、確定申告は経験があるはずです。年末調整を受けている会社員にとっては、ハードルが高いと感じるかもしれませんが、外国税額控除を受けるためには必要なことです。

また、外国株式に限らず損失が発生した際に繰り越すこともできるため、確定申告を行った方が良い場合も多々あります。こうした背景から、投資する上で確定申告には慣れておくと良いでしょう。

まとめ

まとめ

米国株式の税金について解説しました。米国株式や外国株式にかかる税金の仕組みは,国内株式の税金と基本的に同じです。しかし、配当については各国の税金が引かれることから、国内株式よりも仕組みが複雑になります。
また、NISA口座や源泉徴収ありの特定口座を選べば原則的に確定申告は不要ですが、外国株式においては特に外国税額控除が投資の利益に大きく影響します。そのため、原則として確定申告は行った方が良いでしょう。

税制が複雑で確定申告の手間もありますが、米国株式は日本の株式と比べて過去に大きく成長してきました。また、連続増配株といった毎年配当を増やしている企業の株式も多く、魅力のある投資先と言えます。

株主優待がある日本の株式と比べ、米国をはじめ外国株では株主優待がありません。その分、配当が高く設定されているのが一般的です。ですから配当にかかる税金も大きく、税金が国内株より多く発生してしまえば、外国株の魅力を薄めてしまうことにもなります。米国株の成長や高い配当のメリットを十分に受けるためにも、外国株に投資する際の税制について十分に理解しておきましょう。

監修者プロフィール

小川 洋平(オガワ ヨウヘイ)
日本FP協会認定 CFP®、合同会社clientsbenefit 代表、FP相談ねっと認定FP、SG中越代表

<プロフィール>
25歳でお金の知識・営業経験ゼロから保険営業の世界に飛び込み6年半従事。2年目に将来の資産形成のため金融知識が必要なことに気が付き、FPの勉強を始めて金融・経済の知識を学ぶ。その後、保険に限らずあらゆるお金の面でクライアントにとってベストな提案をしたいという想いで、商品販売ではなく相談業務を開始。2013年より資産形成の考え方に関するセミナーを自主開催。その他、大手金融機関からの委託により実施。現在は小規模事業者の年金や資産運用のサポートを中心に相談・経営支援の業務に携わり、確定拠出年金など起業家の将来の資産形成と経営のサポートを行っている。投資信託や資産形成の分野を得意としている。