NYダウってなに?

NYダウはアメリカを代表する株価指数の1つで、ニュースや新聞でも見ることの多い言葉です。ここでは、NYダウとはなにかを解説します。

NYダウってなに?

NYダウとは

NYダウとは

NYダウは、アメリカの代表的な株価指数の1つです。正式名称は「ダウ工業株30種平均」と言い、「ダウ平均株価」「ダウ平均」と呼ばれることもあります。『ウォール・ストリート・ジャーナル』を発行するダウ・ジョーンズ社が発表する平均株価指数で、ニューヨーク証券取引所やナスダック市場に上場している代表的な30銘柄の推移をもとに算出されているものです。「ダウ工業株30種平均」という名前ではありますが、現在では工業株のみならずさまざまな業種によって構成されています。

NYダウの歴史

NYダウは、1896年から算出が始まった世界でもっとも長い歴史を誇る指数です。当初は農業や鉱業株から12銘柄を選定してスタートしました。ダウ・ジョーンズ社による株価指数は、1884年にダウ・ジョーンズ平均の名称で公表されていましたが、当時のアメリカの産業構造を反映して鉄道株9種、工業株2種から構成されていました。

しかし、19世紀末以降、経済の発展によって従来のダウ・ジョーンズ平均(現在のダウ・ジョーンズ輸送株平均)株から分離し、1896年5月26日に農業・鉱工業などの12銘柄によりダウ・ジョーンズ工業株価平均の算出が新たにスタートすることになりました。その後、1928年に30銘柄となり、情報通信業や医療などのサービス業を取り込みながら現在に至ります。

以前まで構成銘柄は、すべてニューヨーク証券取引所の上場企業でした。しかし、1999年11月にNASDAQの上場企業からインテルとマイクロソフトが初めて選択され、2021年1月末時点においては、NYダウの構成銘柄のうち7社がNASDAQの企業となっています。

NASDAQは本来新興企業が上場する市場であり、アメリカの代表的な株価指数であるNYダウの構成銘柄に選ばれる銘柄が上場する市場ではありませんでした。
近年はIT・ハイテク株関連株の急成長に伴い、グーグルやアップルなどのGAFAMとして知られているアメリカ経済をけん引する企業が上場されている市場となっています。NASDAQに上場する企業のうち7社は、アメリカを代表する指標を構成する30社に含まれるまでになりました。

NYダウの代表的な銘柄

また、NYダウにはクレジットカードで有名なアメリカン・エキスプレスや、ウォルト・ディズニー、コカ・コーラなど、日本人もよく知っている企業もあります。現在、NYダウを構成しているうち日本人にも馴染みのある銘柄には、もっとも古いもので1939年に採用されたP&G(プロクター・アンド・ギャンブルの略)が挙げられるでしょう。

しかし、その他は1980年代頃以降の銘柄であり、世界でもっとも歴史のある株価指数であるにも拘わらず、構成されている銘柄の多くは比較的最近の銘柄が多くなっています。このように、常に構成銘柄も変動しながら今日に至っています。
なお、もっとも長い期間NYダウの構成銘柄として採用されていたGE(ゼネラル・エレクトリック)は110年以上もの間にわたり採用されていましたが、現在では採用されていません。

NYダウの動き

NYダウの動き

NYダウは1896年からスタートし、120年以上の歴史を持つ株価指数です。長い歴史の中で数々の波乱を経ていますが、長期的に見ると米国の経済が成長するのに伴い大きく成長し、始まり値と比較し現在までに1,000倍程度にもなっています。なお、大きく値下がりすることになった要因は下記のような出来事です。

・1987年:ブラックマンデー
・2001年:同時多発テロ、ITバブル崩壊
・2008年:リーマンショック
・2019年:日中貿易戦争の不安
・2020年:コロナショック

このような出来事があった際には大きく値下がりし、リーマンショックによる下落は特に大きなものでした。しかし、その後はアメリカ経済にけん引されるようにV字回復し、リーマンショック以前よりも大きく成長しています。中でも1990年代後半、パソコンとインターネットが普及し始めた頃からの成長は著しく、当時の株価から30倍程度にもなりました。

つまり、1990年頃にもし100万円を投資していれば、現在では3,000万円程度にもなっているということです。それに対して日本の代表的な指数である日経平均株価は、同時期から40%程度の上昇となっています。双方を比較すると、成長の度合いがどれだけ大きいかが分かるでしょう。パソコンやインターネットの普及、近年ではスマートフォンの普及などから以前は新興企業だったNASDAQ銘柄の急成長も大きく寄与し、アメリカ経済の成長と共に成長してきたと言えます。

NYダウの算出方法

NYダウの算出方法

NYダウは米国の主力産業が変化するのに合わせて、数年に一度、株価平均委員会により見直し・入れ替えを実施しています。NYダウの算出時点での構成銘柄で、現在も残っている銘柄はありません。

前述したP&Gが現在構成されている銘柄の中でもっとも歴史のある銘柄となっており、近年でIT・ハイテク系の銘柄やバイオテクノロジー関連の企業も採用されています。なお、NYダウに採用されるための主な観点としては以下のような点です。

・企業の知名度
・持続的な成長実績
・投資家の関心
・業界を代表する企業か
・アメリカで設立、アメリカに本社があるか

このようにして採用された銘柄からNYダウを算出しますが、NYダウは単純平均株価に近い指標となっています。株価指数を算出する方法は、「株価から算出」「時価総額から算出」の二つです。株価から算出している場合、株価の大きな銘柄の値動きが大きく反映されるという特徴があります。そして、時価総額から算出する場合は、時価総額の大きな企業の値動きが反映されやすいという点が特徴です。

また、「修正平均」と「加重平均」という平均値の算出の方法があり、構成する銘柄から単純な平均値を算出します。修正平均株価は増資や減資、株式分割、株式併合、銘柄入替など、特殊な株価変動を修正し、連続性を持たせた平均株価です。連続性に欠ける問題がある単純平均株価を修正して連続性を維持し、時系列分析を可能にした平均株価となっています。これに対して加重平均とは、株価などの単純な平均値ではなく、それぞれのウェイトを加味して平均値を算出することを言います。

NYダウは構成銘柄30社の株価を合計し、銘柄数30で割ってそれを修正したものです。日本では日経平均株価が同じ計算方法で算出されており、S&P500やTOPIXは時価総額を加重平均したものとなっています。株価の平均値から算出される指数は株価の高い銘柄の動きに大きな影響を受け、時価総額から算出される平均値は時価総額の大きな企業の影響を受けやすい特徴があります。

なお、NYダウを構成する30銘柄だけでも、日本の上場企業すべての銘柄の時価総額よりも大きくなっています。アメリカの株式市場がどれほど巨大であるか、NYダウの時価総額の合計だけでも理解することができるでしょう。

S&P500やNASDAQ総合指数との違い

S&P500やNASDAQ総合指数との違い

アメリカを代表する株価指数には、NYダウの他にS&P500があります。ウォーレン・バフェットが「資産の1割を国債に、残りの9割をS&P500に投資するように」という旨の遺言をしたことが有名で、昨今では日本人からもS&P500に投資する投資信託は人気です。

また、前述の通りNASDAQも以前は新興企業のための市場でしたが、各銘柄が1990年代後半よりPCやインターネットの普及によって急成長を遂げました。世界の時価総額のランキングを見てもNASDAQの銘柄がトップであり上位に名を連ねているように、新興市場とは言えない市場になってS&P500の変動にも大きな影響を与えています。

これらの指標は構成する銘柄や銘柄数などにおいて異なり、S&P500は30種のみのNYダウとは異なり500社から構成されています。そのため、よりアメリカの経済全体を反映していると言っても良いでしょう。

また、NASDAQ総合指数はNASDAQがIT・ハイテク関連株を主体に構成されているため、これらの業種の値動きが反映されます。特に、NYダウは厳選した企業により指数が算出されていているので、これら指数とは異なる値動きになります。
NYダウもS&P500も、アメリカの経済成長を反映し、大きく成長してきていると言えます。

NYダウに投資するには

NYダウに投資するには

NYダウは投資信託やETFを通じて投資することができます。NYダウの値動きに連動した成果を目指すインデックスファンドがあり、ETFを利用することで投資信託と同様の仕組みでありながらリアルタイムな値動きに投資が可能です。

昨今はS&P500のインデックス投資が人気を集めていますが、NYダウも大きく成長してきたアメリカ経済を反映して成長を続けています。iDeCoやつみたてNISAでもNYダウに投資でき、これらに投資することで今後のアメリカ経済の成長を自らの資産に取り込んでいけるでしょう。

また、NYダウは世界でもっとも歴史のある株価指数であり、過去にこれらのインデックスファンドに長期投資していれば、大きく資産を増やすことができたと言えます。また、算出され始めた当初からの成長を見ることで、長期投資による効果がいかに大きいかを実感することができるはずです。資産形成や資産運用の目的に応じて、NYダウへの投資も検討してみると良いでしょう。

まとめ

まとめ

NYダウとはなにか、その成り立ちや構成銘柄、算出方法などを解説しました。世界でもっとも古い歴史があり、現在でもアメリカの代表的な株価指数であるNYダウは、日本人にも馴染みのある企業が多数採用され、アメリカ経済を反映する指標となっています。急成長を遂げたIT関連銘柄も採用され、昨今人気を集めているS&P500と比較しても遜色ない実績を見せています。

また、長期投資がいかに重要か示すためにも有効で、長期分散投資のセミナーなどにおいてもNYダウの過去の値動きはよく取り上げられます。IT・ハイテク関連株を中心に成長を続けることが期待されているアメリカ経済ですので、投資信託などを用いて自身の資産の成長に活かしてみてはいかがでしょうか。あるいは他指標との違いを理解し、値動きの違いを観察してみるのも良いかもしれません。

監修者プロフィール

小川 洋平(オガワ ヨウヘイ)
日本FP協会認定 CFP®、合同会社clientsbenefit 代表、FP相談ねっと認定FP、SG中越代表

<プロフィール>
25歳でお金の知識・営業経験ゼロから保険営業の世界に飛び込み6年半従事。2年目に将来の資産形成のため金融知識が必要なことに気が付き、FPの勉強を始めて金融・経済の知識を学ぶ。その後、保険に限らずあらゆるお金の面でクライアントにとってベストな提案をしたいという想いで、商品販売ではなく相談業務を開始。2013年より資産形成の考え方に関するセミナーを自主開催。その他、大手金融機関からの委託により実施。現在は小規模事業者の年金や資産運用のサポートを中心に相談・経営支援の業務に携わり、確定拠出年金など起業家の将来の資産形成と経営のサポートを行っている。投資信託や資産形成の分野を得意としている。