ストップ高・ストップ安って何?

経済ニュースや新聞などでよく耳にする「ストップ高」「ストップ安」という言葉について、その意味や値幅制限の仕組みなどを解説します。

ストップ高・ストップ安って何?

ストップ高・ストップ安とは

ストップ高・ストップ安とは、1日の株価の上昇や下落を一定の変動の幅を制限するための制度です。「値幅制限」とも呼ばれ、1日の価格の変動幅に前日の終値または気配値を基準に制限をかけています。

一度相場がストップ高・ストップ安となった場合には、その日の取引はストップ高以上、ストップ安以下の株価では取引することができなくなります。

株価が一定の価格以上に上がると「ストップ高」となり、株価はそれ以上には上昇しません。反対に株価が一定額まで下落すると「ストップ安」となり、株価はその価格以下には下落しなくなります。例えば、前日の終値が10,000円だった場合は値幅制限が3,000円となり、13,000円になればストップ高、7,000円になればストップ安となるわけです。

このような制度があるのは、株価の大きな変動があった時に市場が混乱してしまうのを防ぐためです。この値幅制限があるため、1日で株価が何倍にもなるということはなく、逆に1日で半分になってしまうようなこともありません。

ストップ高・ストップ安の制度は、すべての国で採用されているわけではありません。アメリカではストップ高・ストップ安がないため、前日の終値と比較して30%〜50%以上の株価変動が起きることがあります。なお、アメリカにはサーキットブレーカーという機能があり、これについては後にご説明します。

ストップ高・ストップ安がある理由

ストップ高・ストップ安がある理由

ストップ高・ストップ安は、なぜ存在するのでしょうか。その理由は先に解説した通り、株価の異常な急騰や暴落を防いで投資家を守るためです。

投資家を守るためのストップ高・ストップ安

株価が大きく上昇・下落の動きを見せた場合、市場は乱高下を繰り返すようになります。その変動の大きさが極端になると、1日で大きな利益を上げられることがあるでしょう。しかし、大きな損失を出してしまう可能性もあります。

このような場合に投資家が大きな損失を出してしまうことを予防する、または投資家の恐怖感・過熱感が和らげられパニック売りなど心理的不安による取引を一時的に抑制する効果があります。

米国株式市場やシンガポール証券取引所などに値幅制限(ストップ高・ストップ安)はありませんが、サーキットブレーカーという制度があります。サーキットブレーカー制度とは、相場が異常な変動を起こした時に取引を一度中断することで相場の過熱を鎮め、投資家が冷静な判断ができるようにするための制度です。電流が流れ過ぎた時に発熱などを食い止めるため電源を落とす電気回路の遮断器(サーキットブレーカー)と似ている制度であるため、このように呼ばれます。

日本では指数先物取引や債券先物取引、および、それらのオプション取引について導入されています。アメリカのニューヨーク証券取引所のサーキットブレーカーの例として、下記のような設定基準をご紹介しておきましょう。

「Market-Wide Circuit Breakers」

S&P500(アメリカの代表的な株価指数)の動きを基準にレベル1~3*まで最大3段階で発動。※2013年に以下の新ルールに改定

・Level 1 – 9:30~15:25の間にS&P 500が前日終値より7%下落したら15分間取引を停止する。

・Level 2 – 9:30~15:25の間にS&P 500が前日終値より13%下落したら15分間取引を停止する。

・Level 3 – 時間帯に関係なくS&P 500が前日終値より20%下落したらその日は取引を停止する。

ストップ高・ストップ安と同様に、終日取引停止になることもあれば、15分間取引が停止した後に再開することもあります。アメリカにおける過去の発動事例としては2020年3月9日、新型コロナウイルスによる各種懸念の中で原油価格の急落が売りに拍車をかけ、NYダウ下げ幅が一時2,000ドル超となりルール改正後初のレベル1が発動されました)。

値幅制限の基準値段

値幅制限の基準値段

どの程度株価が変わったらストップ高・ストップ安となるかは株価の価格帯によって異なり、値幅制限の金額は下記の表の様に変動します。

値幅制限の金額

▲参照:日本取引所グループ「内国株の売買制度」より

ストップ高・ストップ安は、基準値段から上下約15%~30%の間で設定されています。例えば、前日の終値が1,000円の場合は値幅制限が300円なので、1,300円で「ストップ高」、700円で「ストップ安」となります。

ただし、臨時に値幅制限を変更することがあります。内国株については、2営業日連続で以下いずれかに該当した場合、その翌営業日から値幅制限を拡大することとされているのです。

 (1) ストップ高・ストップ安となり、かつ、ストップ配分(※)も行われず売買高が0株

 (2) 売買高が0株のまま午後立会終了を迎え、午後立会終了時に限りストップ高(安)で売買が成立し、かつ、ストップ高(安)買(売)、呼値の残数がある場合

(※)ストップ配分とは売買のバランスが極端に一方に片寄り、ストップ高またはストップ安の水準まで最後まで動いた場合、その価格での売り数と買い数の比例で配分して売買を成立させる仕組みのことを言います。

上場廃止が決まった銘柄は、取引所の規定に基づき値幅制限が適用されないケースがあります。値幅制限が撤廃された銘柄にはストップ安が適用されないため、大量の売り注文により株価が一気に下落することも考えられるでしょう。過去には1日の取引で株価が約80%も下落するケースもあったため、値幅制限が撤廃された銘柄には注意が必要です。

保有する銘柄がストップ高、ストップ安になったら?

保有する銘柄がストップ高、ストップ安になったら?

業績アップに繋がりそう、反対に大きな損失になりそうな情報が公開された時、価格が大きく変動するのはよくあることです。この時、多くの投資家がその情報を元に反応して株式を売買し、ストップ高やストップ安になることがあります。

このように大きく株価が変動するタイミングは、投資家から冷静な判断力を失わせるタイミングです。特に、初心者で保有している株価がストップ安になった場合、怖くなって売ってしまうということも少なくありません。反対にストップ高になったタイミングで、トレンドに乗り遅れまいと買うこともあります。

しかし、一時的な価格の変動に惑わされて本来のその企業の価値を見誤り、感情的に判断してしまうと大きな損失を招く恐れがあるでしょう。ネガティブな情報であっても、その企業の価値が高いものであれば、一時的に損失にはなっても株価は本来の水準に戻ることも予測されます。そのため、下がったタイミングで慌てて売ってしまうことは避けたいものです。

また、反対に急上昇している際にも、そもそもの企業の価値以上に株価が上がっているようであれば今後下落も想定されます。そのため、この時に冷静になって考えていただきたいのが、本来の企業価値がどうかということです。財務が健全で今後再び成長していけそうな企業であれば、ストップ安になっている状況は割安な価格で株式を買える絶好のタイミングかもしれません。

反対にストップ高になっている時には、企業価値自体がそこまで高いように思えなければ、これからも上昇が続くとは限りません。そのような企業価値を正しく判断をするためには、財務分析や会社のホームページなどを確認し、経営方針やその企業のおかれている経営環境、そして財務をチェックしていくことが重要です。

また、同じ日にストップ高からストップ安になるような銘柄も過去にありました。(株)プランジビスタは2016年、午前に値幅制限の上限(ストップ高)となる前営業日比3,000円高(+約23%)上昇して年初来高値を更新しました。しかし、午後2時を過ぎると株価は突然一気に下降を始め、値幅制限の下限(ストップ安)となる3,000円安の9,850円で取引を終えることになったのです。高値と安値の差は6,000円の差になりましたが、このような事例もあるため、慎重に判断していくことが必要と言えるでしょう。

まとめ

まとめ

ストップ高・ストップ安について詳しく解説しました。これらの言葉は、経済ニュースなどで聞いたことがあるという方が多いかもしれません。しかし言葉は知っていても、その意味などを正しく理解していなかった方は少なくないはずです。

ストップ高・ストップ安は株式市場の乱高下を予防し、投資家を保護するために取り入れられている仕組みです。それによって、大きな損失が発生しないよう守られることもあるでしょう。しかし、仕組みや過去の事例を知らないと得られるはずだった利益を逃してしまったり、予想に反して価格が反転した際には大きな損失が出てしまったりする可能性もあります。

ストップ高やストップ安は、株式投資を行っていれば遭遇することも多いでしょう。だからこそ、あらかじめ意味をしっかり理解し、取引を行うようにしましょう。

また、ストップ高・ストップ安について正しく理解することで、利益を得るためのチャンスとして活用できるかもしれません。ストップ高・ストップ安の銘柄を見つけることができれば買い、もしくは信用売りで利益を得られる可能性も考えられるでしょう。

ただし、相場が思わぬ方向に動く可能性もある点には注意が必要です。特に投資初心者は、知らないまま自身が保有している銘柄がストップ高・ストップ安になった時に慌てないよう、理解を深めておきましょう。事前に、ストップ安になった銘柄の値動きを確認しておくのもおすすめです。

さらに、ストップ高・ストップ安になった理由については、企業の業績や公開されている情報から検証してみることでなぜ見えてくる場合が多いでしょう。どのような企業が今後上昇あるいは下落することが多いのか、少しずつ値動きの特徴が見えてきます。

事前に情報を知っておけば急な値動きにも慌てることなく落ち着いて対処でき、なおかつ利益を得るために活用できるでしょう。ストップ高・ストップ安と同様、投資家の保護を目的とした仕組みであるサーキットブレーカーについても頭に入れ、今後の取引に活かしてみてください。

監修者プロフィール

小川 洋平(オガワ ヨウヘイ)
日本FP協会認定 CFP®、合同会社clientsbenefit 代表、FP相談ねっと認定FP、SG中越代表

<プロフィール>
25歳でお金の知識・営業経験ゼロから保険営業の世界に飛び込み6年半従事。2年目に将来の資産形成のため金融知識が必要なことに気が付き、FPの勉強を始めて金融・経済の知識を学ぶ。その後、保険に限らずあらゆるお金の面でクライアントにとってベストな提案をしたいという想いで、商品販売ではなく相談業務を開始。2013年より資産形成の考え方に関するセミナーを自主開催。その他、大手金融機関からの委託により実施。現在は小規模事業者の年金や資産運用のサポートを中心に相談・経営支援の業務に携わり、確定拠出年金など起業家の将来の資産形成と経営のサポートを行っている。投資信託や資産形成の分野を得意としている。