IPOとは?覚えておきたい基礎知識

2021年6月16日

 

言葉は聞いたことがあっても、ちゃんと意味を理解できている人は意外と少ない「IPO」。ここではIPOの基本的な知識を解説します。

IPOとは

IPOとは「Initial(最初の)Public (公開の)Offering (売り物)」の略。東京証券取引所などの証券取引所に上場していない未上場企業が新たに株式を証券取引所に上場し、投資家の株式買い付けによって資金を調達することです。
IPOを実施することで企業は直接、金融市場から広く資金を調達することができるようになります。つまり企業にとってIPOは、資金調達の手段が増えるメリットがあるわけです。また、上場することによって会社の認知度は飛躍的に上昇し、信頼向上にもつながります。

 

なお、2020年のIPO社数は合計で93社でした。2019年のIPO社数は86社だったため、前年比で7社増加しています。

IPOの魅力

IPOにはさまざまなメリットがありますが、主に3点に集約されます。その魅力について、1つずつ確認しておきましょう。

 

上場後に上昇する可能性がある

IPOの売り出し価格である公募価格は、低めに設定されていることが多くなっています。そのため、上場後に上昇する傾向にあります。
実際、2020年に上場した多くの企業の初値は公募価格を上回っています。初値とは上場して始めて付く株価のことです。


2020年のIPO銘柄は、93社中70社が上昇しました。IPO銘柄は上場後に公募価格を上回ることが多く、このことはIPOの最大のメリットといえるでしょう。

 

手数料がかからない

IPO銘柄を購入するための手数料は、特に必要ありません。上場後に株価が上昇する可能性があるIPO銘柄を、手数料なしで買えることは大きなメリットでしょう。

 

最近は平等に当たる

以前まで証券会社に多くのお金を入れていない投資家は、IPO銘柄を手にすることが非常に困難でした。なぜなら多くの証券会社では、お得意先や今後大口取引をしてくれそうな投資家に、IPO銘柄を優先的に配布する傾向があったからです。
しかし最近ではネット証券を中心に、完全平等の抽選を行う証券会社が多くなっています。そのため、少額投資家でもIPO銘柄を手にする確率は飛躍的に上昇しました。

IPOのデメリット

IPOには、主に2つのデメリットが挙げられます。投資を検討している方は、あらかじめ頭に入れておきましょう。

 

値下がりするリスクがある

IPO銘柄は、上場後に価格が上昇することが多く見られます。しかし、必ずしも初値が公募価格を上回るとは限りません。実際のところ、2020年のIPO銘柄のうち23社で初値が公募価格を下回りました。また初値が公募価格を上回ってもその後、株価が下がる可能性もあります。

 

IPO銘柄を手にしても必ず利益がでるわけではないという点に注意してください。

 

IPOは一般的に人気が高いため購入できるかがわからない

IPOは上場後に公募価格を上回る銘柄が多いことから、多くの株式投資家に人気があります。しかし、IPO銘柄には限りがありますので、IPO銘柄を希望するすべての投資家が購入できるわけではありません。申込み人数が多ければ抽選になり、抽選に当たる確率は人気銘柄ほど低くなってしまいます。このことは、IPOの大きなデメリットといえるでしょう。

IPOの関連用語

IPOにはさまざまな専門用語があります。IPOを正しく理解するために、基本的な関連用語の意味を確認しておきましょう。

 

売り出し

すでに発行された有価証券の売り付けの申込み、または、その買い付けの申込みを不特定かつ
多数(50名以上)の投資家に対して勧誘すること。新たに発行する有価証券の取得の申込みを勧誘する「公募」と「売り出し」を合わせて「PublicOffering」、略して「PO」と呼びます。なお、当初の公募・売り出しの数量を超える需要があった場合、大株主などから一時的に借り入れた有価証券を追加的に販売する「オーバーアロットメント」が行われる場合があります。

 

エクイティファイナンス

新株発行、CB(転換社債型新株予約権付社債)など新株予約権付社債の発行のように、エクイティ(株主資本)の増加をもたらす資金調達のこと。発行会社から見ると、原則として返済期限の定めない資金調達であり、財務体質を強固にする効果があります。これに対して、銀行借入・普通社債などのように他人資本が増加し、返済期限の定められた資金調達がデットファイナンスです。

 

仮条件

新規公開予定の会社の株式の発行価格がブックビルディング方式で決められる際、引受証券会社があらかじめ提示する価格帯のこと。投資家は、その価格帯を基に需要価格や株数を申告します。
仮条件は、株価算定能力が高いと思われる機関投資家や他の幹事証券会社などのヒアリング結果、類似会社との比較、マーケット環境、上場日までの期間における価格変動リスクなどを総合的に勘案。そして、主幹事会社と新規公開予定の会社が協議を行ったうえで決定されます。

 

幹事証券会社

幹事会社とも呼ばれるもの。有価証券の募集や売り出しの際、その発行者または所有者との間で締結される元引受契約の内容を確定させるための協議を行うとともに、募集・売り出しする有価証券の引受・販売などを行います。

 

公募割れ

初値が公募価格を下回ること。

 

新規公開

株式会社において、オーナーやその家族など少数の特定株主のみが株式を保有し、株式の自由な流通ができない状態から不特定多数の投資家が参加する市場で株式の売買が行われるよう市場へ新たに株式を供給すること。

 

ストックオブション

あらかじめ決めた価格で自社株を買うことができる権利のこと。役員や従業員に対する報酬の1つとして、アメリカなどで広まっています。日本でも1997年5月の商法改正により、ストックオブション制度の導入が可能になりました。企業業績が向上して株価が上がると、ストックオプションを付与された人の利益が増えるようになっているため、会社の業績を伸ばす動機づけになります。

 

ブックビルディング

新規公開株式及び既公開株式の募集・売り出し価格を決めるにあたり、あらかじめ提示された仮条件または割引率を参考に投資家に対して、引受証券会社が行う需要予測のこと。引受証券会社が行った調査結果は主幹事証券会社で取りまとめられ、需要株数や価格帯などを総合的に勘案し、新株発行または売り出しの価格「公開価格」が決定されます。なお、新規公開の際のブックビルディング期間は通常4~5営業日です。

 

持ち株会社

他の会社を支配する目的で、その会社の株式を保有する会社のこと。純粋持株会社と事業持株会社があります。純粋持株会社は自ら製造や販売といった事業を行わず、株式を所有することで、他の会社の事業活動を支配することのみを事業目的とする持株会社。子会社からの配当が売上げとなります。一方で事業持株会社とは、グループ各社の株式を持つことで子会社を支配しながら、自らも生産活動などの事業を営む持株会社のことです。

 

ロックアップ

会社役員や大株主、ベンチャーキャビタルなど公開前の会社の株主が、その株式が公開された後、一定期間において市場で持株を売却できないよう公開前に契約を交わす制度のこと。

 

MBO

ManagementBuyoutの略称でM&Aの手法のひとつ。会社の経営陣が金融支援(=買収しようとする企業の資産や将来のキャッシュフローを担保として、投資ファンドなどからの出資金融機関からの借り入れなどを行うこと)を受けることにより、自ら自社の株式や一事業部門を買収して会社から独立する手法のこと。

 

M&A

MergerandAcquisitionの略称で企業の合併・買収のこと。企業全体の合併・買収だけでなく、株式譲渡・新株引受・株式交換・事業譲渡・合併・会社分割などのさまざまな手法があります。特定の事業譲渡やゆるやかな資本業務提携などを含めた、広い意味での企業提携の総称として使われることもある用語です。

まとめ

IPOは上場後に値上がりをする可能性があることから、株主投資家からすれば魅力的なものに映ります。しかし、IPOには値下がりリスクなどのデメリットがあります。IPOに関心のある方は、ここで解説した内容を参考に理解を深めておきましょう。

監修者プロフィール:

渡辺 智(ワタナベ サトシ)

FP1級、証券アナリスト。

<プロフィール>

大学商学部卒業後は某メガバンクに11年勤務し、リテール営業やプライベートバンカー業務、資産運用コンサルティング(投資信託、保険、債券、外貨預金など)、融資関係業務(アパートローン、中小企業融資)などを経験。銀行在籍中、2度の最優秀営業賞を受賞。銀行在籍時の金融商品販売額は500億円を超え、3000人を超える顧客に金融商品営業を行う。その後、外資系保険会社でコンサルティング営業として従事し、現在は業務経験・知識を活かして金融ライターとして独立。難しい金融をわかりやすく伝えことをモットーに活動中。