銀行セクターの投資戦略と中長期展望(野村アナリストの業界展望)

 

2021年9月1日

 

08/31 20:30 FINTOS!編集部

銀行セクターの投資戦略・注目材料

 主要銀行セクターに対する強気のスタンスを継続する。業績面では、2020年4~6月期を底に反転、21年4~6月期にかけて回復の勢いが加速した。3つのポジティブ材料すなわち、①株主還元策の進展、②強めの22.3期会社計画、③政策保有株削減、が銀行株価の反転を支持するであろう。

 

 PBR(株価純資産倍率)も3メガが0.4倍台(21.3期実績ベース)と割安感が強い。年初来からの米長期金利と内外株価の上昇傾向に加えて、ワクチン接種が本邦でも徐々に広がるなど、昨年に比して銀行株への投資環境は好転しているといえる。

 

 資本基盤については、新型コロナウイルス(以下コロナ)の影響を踏まえた貸出金増加額が想定を下ぶれたこと、期を通じて好調に推移した株価が有価証券含み益を支えたこと、などから、総じて改善傾向を維持している。大手行7社中4社が期初から22.3期配当の増配予想を示すなど、堅固な資本基盤を背景に、株主還元の改善は今後も継続すると野村では考えている。

 また、マクロ材料・リスク選好指標との相関性も引き続き注目される。具体的には、内外金利動向などに注目している。コロナ禍の先行き不透明感が払拭されれば、邦銀の余剰資本状況に照らして、従来の(コロナ禍以前の)株主還元方針に従った動きがでてくるか否かにも注目が集まろう。6月24日公表の米FRB(連邦準備理事会)によるストレステスト(健全性審査)において、大手米銀に還元正常化が認められた点は、グローバルな当局の銀行による株主還元への姿勢の柔軟化を示すもので、邦銀株にとっても支援材料と言えよう。また、政府・金融当局が地銀の経費削減・経営統合に向けて、相次ぎ施策を打つ中、今後の経費削減策と構造改革案の内容には注目が集まるだろう。

 

 中長期的には、①野村想定を上回る経費削減の可能性や② DX(デジタルトランスフォーメーション)進展とコロナ後のビジネスモデルのアップサイド実現、などについても注目したい。

 

 一方、リスク要因としては、株式市場の下落、コロナ影響の悪化、米量的緩和縮小や内外クレジット・サイクルの変調などが主なものとして挙げられる。

変わりゆく変わらぬもの

 コロナ禍という危機的な事態はバンキングの必要な部分と必要でない部分を本質的にあぶりだしたと野村では考えている。ブラック・ミュージックについて“Thechanging same”と表現されることがあるが、時代の変化に柔軟に対応しながら、一方でコアとなる部分は守っていくというブラック・ミュージックの精神は、バンキングにとっても重要であろう。

 

 コロナ禍は、他の産業においてと同様、銀行業においても「不要不急」の峻別を通じて、従来からあった変化を加速させ、バンキングのコアの価値を炙り出したといえる。加速する社会の変化に対応しつつ、コロナ禍で顕現化したバンキングに求められる価値を、既存銀行が磨き上げ、社会・顧客に提供していくことが求められている。

 

 コロナ禍の20年中、都市銀行の貸出はピーク時には前年同月比8%を上回り、リーマンショック当時(08年)よりも高い伸びを示した。本邦バブル崩壊後の貸し渋りを指摘されていた当時と比べれば、今回邦銀はその金融機能を十分に発揮したといえよう。一方で、遅れていたオンラインバンキングの利用数は接触回避の社会的な動きの中、急増した。コロナ禍において、金融機能あるいはバンキングサービスの必要性は再認識され、その提供方法は底流にある社会の変化にあわせて急速に変化しつつあるといえるだろう。

 今回のコロナ禍で明らかになったのは、顧客を「支援する」という銀行の機能であろう。「仲介する」、「融通する」という銀行の機能は不変であろうが、仲介の対象は単純な余剰資金の融通としての「融資(運転資金)」から「融資(資本)」や「融知(ナレッジ)」「融士(人材)」など、顧客企業の本業を支援する機能が求められるだろう。


 社会の変化に応じて明らかに変化(低下)するものとしては、①低成長・低金利下における単純な国内預貸金業務のバリュー(収益)、②事務手続きを行うために顧客が来店し、その事務処理を行員が行う場としての大型の銀行支店であろう。


 コロナ後のビジネスモデルを考えると、DX など新たな戦略事業領域にはむしろ積極的に経営資源を配分する必要があるだろう。来店客対応・事務業務など減少傾向にあるものに現在貼り付けている経営資源(経費枠・人員)を大胆に削減して、新たな事業領域に貼付け変えることができるか、野村では大手行各社の打ち手に注目している。


(高宮 健)


※野村週報2021年8月30日号「産業界」より

提供元:野村證券 / FINTOS!作成資料

この記事は「FINTOS!」で2021年8月31日に公開されたものです。

元記事:銀行セクターの投資戦略と中長期展望(野村アナリストの業界展望)

 

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