ニューノーマルに移行する海運業界(野村アナリストの業界展望)

 

2021年7月14日

 

07/13 20:30 FINTOS!編集部

コンテナ船運賃はニューノーマルへ

 日系の大手海運会社は、主要事業の1つであるコンテナ船事業の収益性向上により、業績が拡大している。新型コロナウイルス(以下コロナ)の感染拡大を契機に、全世界で耐久消費財などモノの消費が拡大し、コンテナ船の輸送量が増加している。その一方で輸送能力増強が追い付かず、運賃市況が好調に推移しているためである。

 

 代表的な運賃指数である上海発のコンテナ船運賃(2009年10月16日=1000)は最新値となる7月2日で3,905と3月26日の2,571から上昇基調にある。野村では、コロナ禍が収束しても、コロナ前に比べてニューノーマル(新常態)なコンテナ運賃水準が定着するとみている。

 

 最大輸入国である米国では、郊外に移り住む、または家での滞在期間が増加するなど生活様式が変化した。現在、政府の現金給付策により消費水準が底上げされている面もあるが、コロナ禍が収束しても家具や電化製品等の耐久消費財の需要はコロナ前に比べて強く、コンテナの輸送量は高い水準を維持するとみている。

 また、コンテナ船業界では2009年以降、大型の船が大量発注されたことにより需給バランスが悪化し、大きな損失が発生することがしばしばあった。その結果、業界で企業間の合併、サービスの集約が進み、アジア発北米向け航路の主要船社は15年8月の16社から20年8月は9社、大手船社が各社と同盟を組み提供するサービスも4つから3つへ集約され、需要に合わせた供給管理が上手くいっている。

 

 業界再編の過程で、日本郵船、商船三井、川崎汽船も17年7 月に新会社のONE(Ocean Network Express)を立ち上げ、各社のコンテナ船事業を同社へ移管した。

 

 ONE は欧米のコンテナ船会社に比べてコンテナ船輸送の需要の強いアジア北米航路の比率が高く、利益率の上昇が競合他社に比べても大きい。21年1~3月期のONEの売上高純利益率は39%、野村では4~6月期に42%と推定している。今後、コンテナ船市況が軟化してくるとみているが、コロナ影響が収束していく23.3期、24.3期の同純利益率をそれぞれ19%、13%と予想しており、コロナ前に比べ高い利益率を達成できるとみる。

日本郵船と商船三井に注目

 野村では、22.3期の経常利益を、日本郵船が3,597億円、商船三井が2,645億円、川崎汽船が2,108億円と予想し、日本郵船と商船三井に注目している。

 

 日本郵船は海運事業でだけでなく、航空運送事業が国際旅客便の削減による貨物スペースのひっ迫により運賃高騰の恩恵を受け、同事業の利益拡大が続いている。

 

 商船三井は21.3期に低迷した鉄鉱石などの資源を運ぶドライバルク船や自動車船の回復が進んでおり、22.3期の経常利益の増加率は日本郵船に比べて高くなると予想している。

 

 今後の注目材料は、持分法適用会社ONEから親会社への株主還元である。ONEには日本郵船が38%、商船三井、川崎汽船がそれぞれ31%出資し、各社の持分法適用会社となっている。そのため、ONEの業績拡大は、株主である3社の単体の業績、財務の改善に直接寄与しておらず、同社からの配当が重要である。

 ONEは21.3期分の配当として、純利益に対し20%分を支払ったが、ONEの自己資本は、21.3期末に配当支払い控除後で53.06億米ドル(日本円で約5,800億円)と推定され、22.3期末には同97.86億米ドル(日本円で1.1兆円弱)と利益拡大により自己資本がさらに蓄積していくとみている。ONEの剰余金が株主に還元されば、日本郵船、商船三井の財務の改善につながり、なおかつ各社の株主還元の原資となろう。

 

 野村ではONEからの配当が22.3期から配当性向30%で支払われるとの前提を置き、23.3期から日本郵船と商船三井の配当性向30%(現在の方針は日本郵船が25%程度、商船三井が20%程度)を前提として配当予想を設定している。

 

 今後、コンテナ船運賃がピークを打ち、ONE の業績が落ち込むことを見込んでも、日本郵船と商船三井は株価純資産倍率の観点で割安感があり、22.3期の配当予想に基づく利回りでも他の運輸会社や上場企業と比べて魅力的であると考える。

 

 株式市場では、コロナ後のコンテナ船運賃の先行きに関し懐疑的で、上昇を続けているコンテナ船運賃もいつか下落に転じるため海運業界に投資しにくいとの見方がある。

 

 上記の懸念は、コロナ禍を踏まえて世界の消費構造が変化し高い水準のコンテナ船輸送が続くことや船の供給も適切に管理されていくことが徐々に確認されていくことにより払拭されていくとみている。

 

(廣兼 賢治)

 

※野村週報2021年7月12日号「産業界」より

提供元:野村證券 / FINTOS!作成資料

この記事は「FINTOS!」で2021年7月13日に公開されたものです。

元記事:ニューノーマルに移行する海運業界(野村アナリストの業界展望)

 

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